《職業魔王にジョブチェンジ~それでも俺は天使です~》閑話 trick & treat 中編

「アリア嬢にイザベラ嬢、馬鹿が失禮をした。止めにるのが遅れてすまない。ルイスもすまなかった」

「い、いえ、元はと言えば、クレア――――クレアシオンがいけないのですから……」

「そうです。頭をお上げ下さい」

アリアとイザベラは余りのことに恐して、慌てているが、ルイスは當然だと言うばかりに鼻を鳴らし、謝罪をれている。

「それでも、すまなかった」

頭を上げるようにアリアとイザベラが言うが、フォティアは頭を上げることはせず、より深く頭を下げた。

彼としてはヤクトが前に出た時は、有利な條件を引き出すために渉に言ったのだと思っていたのだ。

だが、ヤクトの口から出たのは自己の立場を利用した脅迫だった。

神界十五柱とは、最上級神を総べる最上級神。當に神々の顔と言ってもいい。

十五柱がそれぞれ派閥を持ち、々な事を討議し、自分の派閥や味方の利益を損なわないようにかなければならない。

そこに、私などあってはならないのだ。

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だからこそ、フォティアはくのが遅れてしまった。隠そうともしないに呆気に取られてしまったのだ。

「頭をお上げ下さい。フォティア様お嬢様達が困られております」

「これはすまない」

老紳士が言うとフォティアは頭を掻きながら顔を上げた。

「差し出がましいようですが、彼は何故八聖神になれたのですか?」

原神六柱とは違い、八聖神は創造神の眷屬では無いため、ほとんどれ替わることは何が任期があり、最上級神の中から選ばれる。

ヤクトの前の八聖神は邪神との戦いに敗れ、戦死してしまっていた。

だが、ヤクトよりマシ、という條件だけならば、いくらでもふさわしい神はいる。それどころか、人格、権能の強さで言えば、八聖神と比べても遜のない神はいくらでもいる。

だからこそ、ヤクトが選ばれた理由がわからなかった。比較的若く、経験のなく、考えの足りないヤクトが選ばれた理由が。

「それは、こいつが我ら以外で一番強いからだ。……それに、打倒クレアシオンを掲げ、支持が多いからだ。こいつは見た目だけは良いからな支持するが多いのだ」

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その場にいる者全てが納得できたような気がした。彼が八聖神に選ばれたのはなくともクレアシオンの存在があったのかもしれない、そう思ったのか、気絶してかなくなたヤクトに同の篭った生暖かい視線が集まっていた。

「しかし、強さで選ばれるのは問題では?」

強さと支持の多さで選ばれて、思想や行に問題があってはどうしようもない。

「それを言えば、お主らも同じであろう【十二神鬼】序列四位【兇剣】が」

その問にフォティアはそのまま聞き返した。【十二神鬼】鬼狐の魔の中の鋭たちであり、他の鬼狐とは隔絶し、その実力は原神六柱と八聖神にも劣らない。

そんな【十二神鬼】には序列がある分、八聖神より強さを絶対視しているのではないか、と聞いた。

「我々は強さより、クレアシオン様への忠誠を重視しております」

「【愚者】はどうなのだ?あれに忠誠心があるとは思えん」

「【愚者】は忠誠心はともかく、クレアシオン様の為なら一番命を賭けますから……」

【愚者】その名がでた瞬間、アリアとイザベラは骨に嫌そうな顔をして、他の神々もあいつか、と辟易したようにしている。

【兇剣】も余り否定が出來ないのか、當たり障りの無い事を言ってお茶を濁した。

◆◇◆◇◆

「それで、セバスよ、ここには何の用があってきたのじゃ?」

ヤクトが目を覚ましてから、責任の追及より、クレアシオン対策について話をしようと言う創造神の鶴の一聲により、全員が席に座り會議を再開した。

そこには當然のように、【兇剣】とアリア、イザベラも座っていた。

「はい、我々もクレアシオン様の悪戯には困っておりまして、皆様には協力して頂きたく、參りました」

【兇剣】――――セバスはそう創造神に答えた。

クレアシオンの悪戯は神や天使達に留まらず、シュヴァレアの魔達にまで及んでいたのだ。

その事実にアリアは頭を押さえる事しか出來なかったら。

「因みに……、クレアの居場所は知っているかの?ヤクトの索敵でも見つからなくての……」

創造神の言葉にヤクトは気を悪くしたのか、ふて腐れた態度を取っていた。クレアシオンの本気の隠は神界一の狩人の目をも欺くのだ。

このまま、闇雲に探していては延々に見つからない可能すらあった。

否、クレアシオンが飽きれば終わるであろうが、それまで被害者が出続ける事になる。

創造神としては、今すぐ見つけて辭めさせたい所だ。だから、藁にでも縋るつもりでクレアシオンの執事であるセバスに尋ねたのだが、セバスは首を橫に振った。

「なんだ?飼い主の居場所も分からないのかい?」

ニヤニヤとヤクトが煽ってくるが、セバスは意に介さず、指をパチンッと鳴らした。

「創造神様、こちらをご覧下さい」

いつの間にか、まるで初めからそこに居たかのように褐の長の男が現れ、丸い大きな球狀のを機の真ん中に置いた。

「無眼ムゲンか、これは……?」

突然現れた男に護衛の神達が武を構えるが、創造神はそれを下がらせ、無眼と呼ばれた男の差し出した球狀のを興味深そうに眺めた。

球狀の中には、小さな點が集まり、宇宙空間の様になっている。

「【蟲神】の造った【世界の狹間】を映す魔導です。見たい場所を思い浮かべるとそこを映し出します」

「フコがの~。おお、流石じゃ」

無眼が説明をすると創造神は手に取ると、球の中が変わり、創造神達の姿が映った。

「創造神様!!わ、私にそれをお見せ下さい!!」

そのことに、鍛冶の神である、スミスが興気味に創造神から引ったくり、ふむふむと言いながら、目をきらきらと輝かせ、その構造を眺めていく。

「も、申し訳座いません。フコの作品が余りに素晴らしく……」

そして、ある程度調べてから、顔を青くして創造神に謝った。

「良い良い。お主の探究心にはいつも心しておる。して、無眼よ、これでどうするのかの?」

スミスのこの行は何時ものことなのだろう。創造神は特に気にした様子もなく、無眼に用途を尋ねた。

「スミスさん、しお貸し下さい。……使い終わったら、お譲りしますから」

を使うために、スミスに返して貰おうとすると、スミスがこの世の終わりでも見たような顔をしたので、無眼は、使い終わったら譲ることを條件に返して貰うことに功した。

「約束だからな!!約束したからな!!」

「はい、大丈夫ですよ。これは、今回、クレア様を探す為だけに造ったですから」

最後まで渋るスミスから返して貰った無眼は道を手に取り、両眼を閉じた。

「今から、クレア様の居場所を映し出します。赤い點がクレア様の大まかな居場所だと思ってください」

そう言い終わると無眼の額から、ギョロッと眼が開いた。【魔眼】と呼ばれる無眼は、名前とは反対に無限の眼を持ち、死角がない魔眼の持ち主だと言われている。

彼の能力を使えば、無數の世界からクレアシオンを探し出すことも可能だと言うことだ。

だが、

「なんだ?これは……?」

クレアシオンの居場を示すマークが現れたと思ったら消える、と言うのを繰り返していたのだ。

それも、同じ世界の中を、ではなく、遠く離れた世界を転々と不規則に移していたのだ。

赤い點が消える前に新しい點が現れ、まるでクレアシオンが何人も居るように映っている。

「この様に、現在地は分かっても居ると分かった瞬間にそこは過去のへとなっているのです」

額の眼を忙しなくかしている無眼がそう言った。

彼の眼は、世界を転々とするクレアシオンの姿を追っているのだろう。

「どうやって、これだけ早く移しているんだ?……どう考えても『道』を使って無いだろ」

誰もが思っている事をルイスが代表して尋ねた。

『道』とは、無數にある世界から、目的の世界に行くまでに経由する世界の事を言う。

だが、クレアシオンの足取りを見ると『道』が見えないのだ。

「【世界の狹間】を次元を歪めながら疾走しています」

無眼の言葉に神々は言葉も出なかったという。

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