《職業魔王にジョブチェンジ~それでも俺は天使です~》キャンディ・ポリス裏話~証拠~
『天使達はNOを選択した。しかし、最上級神の威により、その選択は取り消された。天使達はパワハラではないかとざわついている。伝説の弁護人(自稱)最上級神秋天雨月尊{クレアシオンの親友(自稱)}がこちらをじっと見ている。ツッコミ待ちのようだ。
ツッコミをする YES⬅
YES⬅』
秋天雨月が目を合わせると合わせられた者達は視線を逸らし、他の者達も目を合わせまいと、視線を下げている。
だが、視線を逸らしても、コマンド畫面は視線に合わせてき、逃れる事が出來ない。
天使達は視線でお前が突っ込め、とお互いに押しつけ合っている。彼らには無視をするという選択肢はないのだ。なぜなら、このコマンド畫面は逃れる事の出來ない秋天雨月のユニークスキルだからだ。
ピコンッと言う機械音と共にコマンドが切り替わった。
『天使達は視線を合わせない。秋天雨月尊は寂しがっている。しかし、天使達には『無視』と言う選択肢は認められていない。新たな選択肢が加わった。
顔を上げる。
ツッコミをする。⬅
存在を消去する。
自然発火する。
自害。』
天使達は顔を青くした。この選択では、選択した通りにがいてしまうからだ。それに、この選択は選ばない、と言う選択は無い。選ばなければ、秋天雨月が選択してしまう。
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もし、『存在を消去する』を選んだら、その場でがドット化して消えてしまう事になる。天使達が覚悟を決め、『ツッコミをする』を選択しようとしたとき、
『帰れ!!』
ぷるぷると怒りに耐えているシエルと嫌そうな顔をしているクレアシオンが重なった。
両手を縛られている筈のクレアシオンから、何かのがった瓶が投げつけられる。
秋天雨月は危なげも無く、高速で顔面目がけて飛んでくる瓶をけ止め、瓶を観察する。
瓶の中を満たしているには、赤い実が浮かんでいた。
「それやるから、帰れ」
クレアシオンはクイッと顎で秋天雨月がやって來た方をさした。
秋天雨月がいると只でさえ面倒くさいこの狀況が余計に混沌としてしまうと思ったクレアシオンは、で釣ることにしたのだ。
同じような事を考えていたシエルはよくやった、とクレアシオンに親指を立て、二人は頷いた。
キュポンッと音を立てて、瓶の蓋が外される。
なんとも言えない芳醇な香りが漂いだし、クビッと秋天雨月はを煽った。
「か~!!堪んねぇ~!」
プハーっと彼は息を吐き出した。中は酒だったのだろう。
顔がし赤くなり、上機嫌に再び煽ろうとした。が、しかし、一気に飲み干し半分程になった瓶の中の酒を傾けた時、中に浮かぶ赤い実が空気にれ、発火した。
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燃え上がる炎に彼は顔を仰け反らせた。彼の鼻先を舐める様に火柱が上がる。
それはさながら火龍の咆哮。その火柱は上空で膨れあがると溶けるように掻き消えた。
シエルがそこまでするか、とクレアシオンをどん引きしたように見た。
アルコール度數の高い酒に起剤をれて渡したのだと思った周りの者達はシエルと同じように、呆然とクレアシオンを見ていた。
ドカッと背中に衝撃をけ、肺の空気が押し出され、可笑しな音が鳴り、前に倒れそうにるが、ジャラッと言う音と共に後ろに引き戻され、倒れる事は無かった。
「貴様!!秋天雨月様に何をした!?」
ラジュの足がクレアシオンの背を踏み付け、鎖を後ろに引いているのだ。
「ガッ――!」
クレアシオンの前に立った天使が彼の元を摑み、顔面を數度毆り、鳩尾に蹴りを決めた。
き聲を上げるクレアシオンに、槍を持った天使達が槍でクレアシオンを毆り始めた。
「止めなさい!!」
「シエル様、奴には立場を分からせる必要があります」
シエルが止めにり、魔を展開して、クレアシオンを癒やそうとするが、天使達に阻まれる。
「離しなさい!!」
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「そうです。これ以上、奴に好き勝手されれば、我々の面子が……」
シエルは取りしていた。【制約の枷】を著けられたクレアシオンの防力は生の人間と変わりない程にまで落ちてしまっていると知っているからだ。
普段なら、かすり傷すらつかない筈の攻撃がクレアシオンのを傷つけていく。
【制約の枷】でクレアシオンがけず、自分達でも殺す事が出來る狀態だと知っている天使達は尋問中の事故に見せかけて殺そうとしているのが嫌でも分かってしまう。
ラジュがクレアシオンの髪を摑み、顔を上げさせる。
痛みに歪んだクレアシオンの顔を拝もうとでもしたのだろう。下卑た笑みを浮かべていたが、顔を見てラジュの顔が固まった。
痣だらけの顔で、価値が無いを見るようなクレアシオンの眼に薄ら寒いをじたラジュはそれを振り払うように、自分の優位を思い出すように、見せつける様に聲を張り上げた。
「なんだ?その目は?【制約の枷】が有るんだ。何が出來るって言う……ん……だ……?」
不意に、クレアシオンの影が膨れ上がり、彼に傷を負わせた者達の影に接した。
それを天使達は不思議に思ったが、直後、それどころでは無くなった。
圧倒的な威圧をじ、鎖を落とし、後ろに下がってしまう。
その威圧に天使達はその威圧を発する人から距離を取り出した。
「クレアシオン……俺が龍神だと知っての事か……?」
その人とは秋天雨月だ。クレアシオンの呼び方がクレアからクレアシオンに変わっている。
俯き、ゆらゆらと歩み寄るその姿に誰もがクレアシオンの行為に怒ったのだとじたのだろう。手の甲には鱗の様な紋様が浮かんでいる。
ざわつく天使達の中から、『荒霊』『禍津神』等と言う言葉が聞こえてくる。
秋天雨月――――【呪天穹月】【朱天雨月】遙か昔、別の世界で彼はそう呼ばれていた。
呪いを死を振りまき、空を赤く染め、の雨を降らす月の化と呼ばれた武神。
彼は神界で生まれた神ではなく、信仰から生まれた神だ。
神界で生まれた神は創造神に従うのと対照的に、信仰から生まれた神は自分の生まれた伝承に従いく。
それは【神の本能】と呼ばれ、彼が荒神や禍津神と呼ばれていた時に従っていたものだ。
信仰から生まれた神のほとんどが自の信仰に振り回される事が多く、【神の理】と呼ばれる自我が培われるまで、それが正しいと善であるとく。
生まれたばかりの彼を鎮めにいった同じ境遇を持つ武神達を返り討ちにした、と言う話は天使達にも広まっている。
天使達が彼を畏れる理由はそこにあった。
「ああ」
「ば、馬鹿が!!」
クレアシオンは彼の問に肯定で返した。その答えに天使達は顔を青ざめさせるが、
「そうか。そうか!!俺の為に!!」
上機嫌に顔を上げた彼の眼の下には紅い鱗が生えている。そして、炎が噴き出す瓶を傾け、燃え盛るを口に含み、味わいながら飲んだ。
火龍酒――――ファイヤープランツと呼ばれる植を使ったアルコール度數の高い酒がある。
ファイヤープランツとは、【森の放火魔】、【火竜の心臓】と言われる植で、生涯の、たった一つだけ赤い実をつけると言われている。
なぜ、たった一つなのか、それはファイヤープランツの生態に関係している。ファイヤープランツの実はすと発火するのだ。
落下と同時にそのを燃やし、親である木を燃やし、森を燃やし、自の料とする。
故に、ファイヤープランツは生涯でたった一つだけしか実をつけることが出來ないのだ。
果の下にある耐火の高い種子は火が鎮火すると灰の中に芽生え、ファイヤープランツの苗を中心によりかな森へと再生するのだ。
ファイヤープランツによる山火事があった年は作が約束され、以降十數年は兇作は無い、と言われている。
その事から、ファイヤープランツは再生と作の象徴であり、その生態から子が親を超えると龍種に好まれている。
その実がすと同時に、落下する前に空気にれないように酒に漬けなくてはならない。
漬ける酒も相応に特殊だ。
その難易度から、実の貴重さから火龍酒は神でさえ、金を積んでも手にらない貴重品だ。
火龍酒をクレアシオンの行為を師である自分を超える、と言う挑戦狀だと思った彼は今までの思い出を振り返りながら、火龍酒を傾けた。
「いや、違う」
クレアシオンの言葉にピタッと止まる。耳を疑っているのか、小指で耳をほじり、耳の橫に手を添えた。
「明日飲もうと集めていたの一つだ」
そう言って、クレアシオンは十九本の火龍酒を地面に並べ、もう一度何処かに仕舞い込んだ。
秋天雨月はまるで特別な意味は無い、とでも言いたいかのように並べられた瓶を呆然と眺める事しか出來なかった。
「く、クレア~」
クレアシオンの言葉を聞いて、秋天雨月は泣いた。上げて落とすとはこの事だ。
再び、周りのそれはないだろ、と言う視線がクレアシオンに刺さる。
同じく秋天雨月の登場を良く思っていなかったシエルでさえ、軽蔑の視線を治療をしながらクレアシオンに浴びせている。
幾ら面倒でもそこまでし無くても良いだろ、と。
「呑んだら帰れ」
「い、いや、わ、賄賂を貰ったから、には、しっかりと弁護しなくちゃな!」
涙聲でそれでもクレアシオンの弁護をすると健気に言う秋天雨月の姿に天使達はラジュ達ににもう、クレアシオンに罪を問うことを辭めろよ、と言う聲が上がり出す。
秋天雨月様が可哀想だろ?と。
しかし、ラジュを初めとして、クレアシオンを殺したい者達からしたら、これは千載一遇のチャンスだ。
秋天雨月がどれだけクレアシオンを弁護しようとも、クレアシオンのしでかした事は大きすぎる。
過去の行いを見ても、弁論の余地が無いと言わざるを得ない。
【制約の枷】がある以上、クレアシオンが力盡くでどうこうする事は出來ないと言って良いだろう。
つまり、今まで問えなかった罪に対して罰を下せる事が出來る、と言うことだ。
反クレアシオンを掲げる者達からしたら、この機會を逃す手はない。
「秋天雨月様。いくら貴方様が神であろうとも、神界の規則を破る訳には行きません。この墮天使が無罪である、と言う証拠があるのですか?」
群衆を分けって、年老いた一人の天使が出て來た。
深い皺のった老天使は忌々しげにクレアシオンを睨み付け、今すぐにでも殺すべきだ、それが嫌なら、証拠を出せ、と言った。
「……」
「……如何したのですか?まさか、最上級神の権力を盾に押し切るつもりでしたか?貴方様がその気なら、オスタリカ様にお越し頂きましょうか?」
応えない秋天雨月に対して老天使は慇懃無禮に言い放った。
彼が絶対的な力差のある主に対して強気に出たのは、彼の後ろに原神六柱の一柱である原始の聖闇を司る神、オスタリカの派閥が有ったからだ。
「……フッフッフ!」
「……何が可笑しいのですか?」
決まった、と確信に似たものを得ていた老天使は突然笑い出した秋天雨月の様子を怪訝そうに見つめる。
「これが証拠だ!!」
自信満々に差し出された手には水晶の原石の様なが握られていた。
それを見た瞬間、クレアシオンとシエルの顔が引き攣った。
「そ、それは?」
間違えであってしい、と言う想いでシエルが恐る恐ると尋ねると、
「【愚者】から貰った」
「それは使っちゃ不味いわよ!」
シエルは秋天雨月から水晶を取り上げようとするが、背の低い彼が必死に手をばそうと、跳び上がろうと手が屆かない。
シエルの頭上で屆かないギリギリを狙ってひらひらと水晶を見せ、ニヤニヤと笑う秋天雨月を毆り飛ばしてやろうか、と彼が思っていると、ポチッとスイッチのった音がした。
「あ~っ!?」
「【鬼狐】のあいつが困ったら使えってくれたんだ。この狀況を打破してくれるだろ!」
シエルが悲鳴を上げるが、秋天雨月は満足げに頷いている。
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