《人喰い転移者の異世界復讐譚 ~無能はスキル『捕食』でり上がる~》1 異世界召喚は失とともに

弁當をトイレの床にぶちまけられ、それを食えと命令される。

もう吐き気を催すこともなかった。

僕は無表のまま、捨てられたコンビニ弁當を見て立ち盡くす。

すると背中から蹴飛ばされ、僕は顔から床に捨てられた弁當に飛び込んだ。

痛い。臭い。汚い。

けれど僕は文句は言わない。

僕と彼らは同じ言語を使っているようで全く別の世界に生きる生なんだ、だから抗ったって無駄なんだ。

「おら、とっとと食えよ」

「は、あぐ……」

髪を捕まれ、僕の額は潰れた弁當のでべちゃべちゃになった。

トイレの匂いと混じって、吐瀉のようでもある。

「つまんねーの、お前もうちょっと面白いリアクション取れねーの? 最初のびーびー泣いてたときの方がまだ可げがあったぞっ……と!」

「ぶっ、が、ひ……っ」

グチャ。

額に粘り気のあると、床に叩きつけられた痛みをじる。

僕はもう泣かない。

泣いたって無駄だと知ったから。

どうせ誰も僕を救わない、どうせ反撃したって無駄。

出來るだけ無駄なエネルギーを使わないよう、ただただ無関心を貫くしかない。

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「おい折鶴おりづる、そろそろ授業始まるぞ」

「わかってるって磯べえ、まあミサキちゃんと遊んでたって言ったらミズキーも大目に見てくれると思うけどね」

「ま、俺たちは可哀想な白詰と遊んでやってる優しいクラスメイトだからな」

「違いない、あっはははは!」

何がおかしいのやら。

僕の髪を摑む折鶴と、近くに立っていた磯干がゲラゲラと笑った。

そしてそのまま、僕を放って教室へと戻っていく。

彼らがいなくなったことを確認すると、僕はゆっくりと立ち上がり、洗面臺で顔を洗った。

晝食は、あとで人の居ない場所で食べるつもりだったのに。

でも、まさかその前の休み時間でこんなことになるなんて。

僕としたことが、油斷してたな。

今までだって同じことは何度も繰り返してきたはずなのに。

僕がこんな目に會っているのは今日に限った話じゃない。

そして僕をこんな目に合わせるのは、折鶴と磯干の二人だけでもない。

僕――白詰しろつめ岬みさきは、他人から見下されるために生まれてきた生きなんだと思う。

トイレで弁當を捨てられ、地面に叩きつけられるぐらいは日常茶飯事。

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勝手にカバンを探られて財布を盜られたり。

返してほしいと懇願すると毆られたり。

そうでなくとも、放課後突然呼び出されて意味もなくボコボコにされたり。

靴は頻繁になくなるから學校指定の靴はあまり履けず、生活指導の教師にそれを咎められて呼び出され、恫喝されることもしばしばある。

ちなみに生活指導の教師は磯干ととても仲がいい。

授業中、機と椅子がなくなっていて、ずっと立たされている事もあった。

擔任は完全にあちら側・・・・の人間で、『どうしてノートを取らないんだ? それじゃ授業をサボっているのと一緒だぞ?』と僕を指差して笑った。

男子だけじゃなく、子も同様に。

子は何も無くても冷たい視線を向けてきて、ハサミで髪を切られたこともあるし、中學まで仲の良かった馴染を使って、罵倒されたこともある。

『私たち友達だよね? 友達だったら、同じ価値観を共有しないと』

『あ、あの……』

『あいつ気持ち悪いよね? 見てるだけで吐き気がするでしょ? ね?』

『わたし、は……』

『気持ち悪い、って言えよ。ほら早く。言わないと友達やめちゃうよ?』

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『っ……き、も……い、です』

『ん―? きこえなーい』

『気持ち悪い、です』

『誰が?』

『み、岬……くん、が』

今でもその時のやり取りは鮮明に覚えてる。

目の前が真っ白になった、ぼろぼろと涙を流した。

その姿を見て、さらに気持ち悪いと罵倒された。

を強要されて、それを畫で撮影されたこともある。

畫はクラスで共有され、擔任や生活指導の教師も脅すようにそれを僕に見せてくることがあった。

憎たらしいことに報統制は完璧で、外部にれることはなかった。

……ただ、一度をだけを除いて。

僕には姉がいる。とても優秀な姉だ。

高校3年、僕とは違ってみんなの憧れの的だ。

両親は劣等生である僕に興味が無かったけれど、姉はゴミクズのような僕にとても優しくしてくれた。

泣けばめてくれたし、績が上がれば褒めてくれる。

僕の唯一の心の拠り所、だった。

変わってしまったのは、その畫が姉の手に渡ってしまってからだ。

中に、姉の名前を呼ぶように命令された。

言うことを聞かなければ、安全ピンで手の甲を刺していくと言われた。

怖かった、だからやった。

結果、この世界に僕の味方は一人も居なくなった。

だから、もう興味を持たないことに決めた。

期待しても無駄だから、僕を救ってくれる誰かなんてどこにも居ないから。

◇◇◇

ある日の育の授業が終わり、子は更室へ向かった。

教室に居るのは男子だけ。

そこに軽い足取りで現れたのは折鶴だった。

その手にはなぜか子の制服が握られている。

「折鶴、それどうしたんだよ」

そう問いかけたのは、クラスにおけるカーストの上位に位置するいわゆる”勝ち組”の1人、1年にしてバスケ部レギュラーの座を止めた広瀬団十郎だ。

「楠くすのきから借りてきたんだよ」

楠……それは僕の稚園からの馴染の名字だ。

フルネームは楠くすのき彩花あやか、気弱な格で、中學までは姉と同じく僕の味方だった。

「つまり、それを白詰に著せるってことか?」

「さすが磯べえ、鋭いわあ。つーわけでさ、著ろよミサキちゃん」

そう言って、折鶴は僕に彩花の制服を投げつけた。

吐き気がした。

けれど、僕に拒否権なんて無い。

僕は大人しく命令に従う。

そんな僕を見て、周囲の男子たちは「本當に著やがったぞ!」と嘲笑した。

著替えの途中で子たちが戻り始め、ドン引きしながらひそひそと話し始める。

彩花も、1人だけ著のまま戻ってきた。

の頬は引きつっており、目が合いそうになると骨に避けられた。

著替えを終えて立ち上がると、男子たちの笑い聲は更に勢いを増し、子からは心無い聲が降り注ぐ。

「変態」、「最悪」、「気持ち悪い」、「死ねばいいのに」。

まるで日々のストレスのはけ口にでもするように。

お前は人間じゃない、ただのゴミだと決めつけるように。

教室の前方の扉ががらりと開く。

擔任の水木が教室にるなり、子の制服を纏う僕を見て言った。

「またお前たち面白そうなことやってるな、先生も混ぜてくれよ」

そう言って、笑ってこちらに近づいてくる。

悪意が渦巻き、蔓延している。

ここは、地獄だ。

ここから、何をされるんだろう。

毆られて、寫真を撮られるのは當然として、今度はネットにばらまかれたりするのかな。

変態裝野郎とかタイトル付けられてさ。

何をされるにしても、僕に抗うことをはできないのだけど――

僕は諦め、から力を抜いた。

その時だった。

僕の足元がる。

いや、足元だけじゃない、教室全の床に魔法陣めいた図形が浮き上がった。

図形が放つは次第に強くなり、やがて教室は白いに包まれる。

「きゃああああぁぁぁぁっ!」

子のび、

「何が起きてるんだよっ!?」

男子は困し――やがて視界どころか、何の音も聞こえなくなる。

真っ白の世界の中、聲も出せず、きも取れず、水中をたゆたうようなだけが全を包み込む。

水の流れは僕をどこかへ向かって連れていく。

そして、目を開くとそこは――広い広い、ゴシック調の部屋の中だった。

広いだけじゃない、天井も冗談みたいな高さだ。

そこには、これまた冗談のような大きさのシャンデリアがぶら下がっていた。

絨毯じゅうたんは赤くふかふかで、靴で踏むのが申し訳なぐらいだ。

周囲を見渡すと、僕と同じくクラスメイトたちが戸った様子で挙不審なきを見せていた。

「転移魔法は功したようだな、プラナス」

赤い絨毯の終點、金の玉座に腰掛けた偉そうなおじさんが、白い髭をでながら言った。

「はい、予定通り10代の異世界人を數十名召喚功しました。中に20代の男も混じっていますが、保護者と判斷し共に召喚しました」

玉座の右側に立つ眼鏡をかけた長髪のが言った。

「うむ、神的支柱は必要だろう。良い判斷だ」

「ありがたきお言葉」

う僕たちをよそに、落ち著いた様子で會話をわすおじさんと

會話が一段落すると、ようやくおじさんは僕たちの方に意識を向けた。

「私の名はレグナトリクス王國の王、レクス・レイ・ヴァシレウスだ。まずはこちらの非禮を詫びよう、突然に説明もなく連れてきてすまなかった」

「連れてきたとは、どういうことですか?」

一歩前に出て、おじさんに詰め寄ったのは、文武両道の天才、桂かつら偉月いつきだった。

頭脳明晰、運神経抜群、顔も良ければ格もいい。

僕に対するいじめにも加擔することはなく、時折折鶴たちを諌めることすらあるような、完璧な人間だ。

突然の出來事に困していた擔任の水木を含めた生徒たちは、冷靜さを失わない桂を見てし落ち著きを取り戻す。

「察しておる者も居るやもしれぬが、ここは異世界だ。おぬしらはこの國を救うための勇者として召喚されたのだ」

異世界、その言葉を聞いてクラスメイトたちがざわつく。

にわかには信じがたいことだけど、集団幻覚にしてはリアルすぎる。

確かに僕たちはついさっきまで教室に居た。

そしてみんなが僕を指差して笑っていたはずなのだから。

「異世界などありえません、夢語ですね」

「信じられんのもしょうがない、だがそれ以外に説明する方法が無い」

「仮に事実だったとして、僕たちを拉致した理由は一なんだと?」

「拉致ではない、召喚だ」

「言葉遊びをするつもりはありません、拉致した理由を聞かせてください」

さすが桂、王様相手にも引けを取らない迫力だ。

「論より証拠、まずはおぬしらのに宿った”アニマ”を見るのが早かろう。アイヴィ、この者たちを訓練所へと連れてゆけ!」

「はっ、畏かしこまりました!」

王の傍らに居たアイヴィと呼ばれたが前へ出て、僕たちの方を見た。

「レグナトリクス騎士団の団長、アイヴィ・フェデラだ。見知らぬ土地に戸う気持ちもわかるが、まず私についてきてしい。自分たちのアニマを見れば、この世界に呼ばれた理由もわかるはずだ」

何が何やら理解できないことばかりだ。

とりあえず、まずは彼についていくしかないのか。

され、僕たちは玉座の間を後にする。

それにしても……ああ、やだな。

こんな格好、あんなタイミングで異世界に飛ばされるだなんて。

が重い。

事態がうやむやになったのは喜ばしいことだけど、この世界の人たちは僕を見てどう思うだろう。

「なあ」

誰かに肩を叩かれる。

振り向くと、そこには折鶴がいた。

彼は僕の目をみて一言、

「あんた、誰だよ」

と言った。

誰、って。

まさか異世界に來てまで、そんな低レベルな行為を続けるつもりなの?

「僕は、白詰だけど?」

當然のようにそう返した時、僕も自分の異変に気付く。

あれ……なんか、聲が、高いような。

そう言えば、もやけに重いし、他にも――そう、手のひらの形とか、視線の高さとか、変わってる。

髪も肩までびてるし、じゃあ顔も?

「は……白詰? は、ははっ、そうか、白詰か! はっははははははははっ!」

っていると、突然に折鶴が笑い出す。

裝した僕を見た時と同じように、悪意のこもった笑い聲で、ゲラゲラと。

「おいみんな、見ろよ!」

彼の聲に釣られて、クラスメイトたちの視線が僕に集中した。

「こいつ、白詰だってさ! 気合いれて裝してんのかと思ったら、本當にになってやがる! あっははははは!」

に? 僕が?

まさか、どうしてそんなことが――

けれど確かに聲は高くて、も違って、あるべきものも無いような気がして、何より……が、あった。

顔は見えない、けど折鶴がすぐにわからなかったってことは、こっちもらしく変わってるんだろうか。

「名実ともにミサキちゃんだなァ、ははっ、あはははひゃはははっ!」

僕を見る折鶴の瞳に、悪意に混じって微量のが宿っているのに気付く。

全てに関心を無くしていた僕は、久方ぶりに酷い嫌悪を覚えた。

自分の大事な人や尊厳だけでない。

まさか、別というアイデンティティまで失ってしまうなんて。

裝していたから、召喚された時にと間違えられたとでも?

そんな下らない理由で別まで変えられるなんて、そんな、馬鹿げた話があっていいはずがない。

吐き気がする。

寒気がする。

人だけでなく。

世界だけでなく。

運命の神様まで、僕を見捨てるのか――

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