《人喰い転移者の異世界復讐譚 ~無能はスキル『捕食』でり上がる~》2 アニマの目覚め
訓練所へと向かう途中、アイヴィと名乗るに僕の狀態について問いかけた。
しかし返ってきた答えは、僕の期待したからはかけ離れている。
異世界からの召喚はサンプルがなく謎が多い、裝をしていたことも理由の一つではあるかもしれないが、詳しい原因まではわからない、と。
裝というフレーズを使う度に半笑いになりながら彼は言った。
なぜそのような姿を、とは聞かれなかったが……だいたい何を考えているのかはわかる。
僕が自らの意志で裝する変態だと思っていたんだろう。
その証拠に、以降彼は僕の話に耳を傾けようとはしなかった。
それにしても、この……やっぱり男の時とは違う。
歩く度には揺れるし、下著は男用のをに著けているから特に下半の違和が強い。
たぶん、無いんだろうな、あれも。
そういった確認はあとでするとして。
今は、とにかく折鶴の視線が不快でたまらない。
ねっとりとした視線をや太ももに向けながら、ニヤニヤと笑っている。
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折鶴から目を背けて歩いていると、偶然に彩花と目が合った。
心配そうにこちらを見ていたけど、目が合うと気まずそうに逸らされる。
今の僕を見て、どう思ってるんだろう。
そういや……ここ數ヶ月、まともに會話すらしてないな。
家は隣同士で、中學の時までは一緒に返ってたのに。
どうして、こんな風になっちゃったのかな。
訓練所と呼ばれる施設は城から直接行ける場所にあった。
數人の生徒が思わず「おぉ」と聲をあげる。
僕も驚いた。
そこにあったのは、人と人が戦うには大きすぎる、學校の運場よりも広いスペースだったからだ。
「ふふ、驚いたか?」
生徒たちの嘆の聲を聞いて、アイヴィは自慢げだ。
「しかし、場合によってはこれでもアニマの訓練に使うには狹いぐらいなんだ」
「先程から何度も聞いていますが、アニマとは一?」
桂がアイヴィに問いかける。
ここに來るまでの間にアイヴィと話し込み、隨分と距離をめたみたいだ。
出來る人間はやっぱコミュニケーション能力も高いよね。
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「実際に見たらわかる。まずは全員距離を取って散らばってくれ」
指示に従い、僕たちは一定間隔で広がった。
途中で誰かに背中を押され転んだけど、誰も手を差しべてはくれなかった。
「さて、まずは私のアニマを見せよう、驚いて腰を抜かすなよ!」
アイヴィは自信ありげににやりと笑う。
「來い――レスレクティオ!」
そして彼がんだ瞬間、そのをが包み込んだ。
は天高くそそり立つ柱となり、柱の中では巨大な何かがく。
が晴れると、そこには――
「で、でかい……」
擔任の水木が驚きのあまり、思わず聲をらす。
それは他の生徒も、もちろん僕も一緒で、見上げなければ見ることの出來ない巨大なソレを前に、驚愕を隠しきれない。
これが――アニマなのか。
「これが私のアニマ、レスレクティオだ」
彼が”レスレクティオ”と呼んだそいつから、アイヴィの聲が聞こえてきた。
あの中に居るのか、それともあれが彼自なのか。
レスレクティオは――僕の目には、人型ロボットのようにしか見えなかった。
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あるいは巨大な鎧か。
高さは7メートルほどだろうか、白をベースに、青のラインがり、手に持つ盾とランスのせいでやけに騎士らしく見える。
「本來は選ばれし一部の人間にしか與えられない特別な力だ、だが異世界から転移してきた人間にはアニマが例外なく與えられている。すでにお前たちの魂にもアニマの存在が刻まれているはず。その名をべ、さすれがお前たちにも私のようにアニマが発現できるはずだ」
僕にも、本當にあんな力が宿ってるんだろうか。
にわかには信じがたい。
けど確かに、にはこの世界に來る前には無かった何かが宿っているた。
目を閉じ、自分に問いかける。
お前の名前を教えてくれ、と。
「來い、ヘイロス」
一番最初にアニマを発現させたのは、當然のように桂だった。
金の裝飾、赤いマント、そして背中に背負った巨大な剣。
絵に描いたような勇者だ。
そして桂に続いて、次々とみんながアニマを発現させていく。
「き、來て、マグス」
彩花は長い銃を持った黒く細のアニマを。
「エクエス!」
広瀬は赤が目立つ、腕にパイルバンカーらしき武裝を著けたアニマを。
「ルゾール……でいいのか?」
折鶴は、ド派手な金の、いかにも遊び人めいたアニマを。
そして僕は――
「ウルティオ……!」
真っ白でのっぺりとした、無特徴が特徴のアニマを発現させる。
他のクラスメイトのアニマと違い、武裝すら見當たらない。
腕を変形させて銃にしたり、腳部にダガーが収納されてたりと様々なパターンがあるようだけど、そういったギミックすら存在しない。
いや、まさか。
どこかに隠れているだけで、何も無いなんて、そんなわけが。
「良し良し、無事に発現できたみたいだな。しかし、これだけの數のアニマが揃うと壯観だな、帝國にも負ける気がしない。さあ、それじゃあ次はアニマの能を見てもらおう。”能を見たい”と意識するだけでいい、それだけで視界に表示されるはずだ。他の人間に見せたければ、”能を見せたい”とでも意識してみろ」
誰もが自分のアニマを自慢したかったのか、次々と周囲のアニマの能が表示されていく。
真っ先に僕の目についたのは、折鶴のアニマ”ルゾール”だった。
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名稱 ルゾール
武裝 非実剣:ソーサリーサーベル
腕部ソーサリーガン
頭部ソーサリーガン
スキル 親なる友スウィンドラー
能力 Lv.1
HP 4500/4500
MP 4000/4000
魔力 480
機 600
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能力自は周囲と比べると平々凡々としたもの。
しかし、ルゾールの特徴的な部分は”スキル”だ。
「HP……か、知っている言葉に置き換えられるとは聞いていたが、お前たちの場合は”障壁値”ではなく”HP”なのだな。まあ意味は一緒だから良いだろう。HPとは、アニマを守る障壁の殘り耐久値のことだ。アニマ自の耐久力は大したものじゃない、故にアニマは常に障壁に守られているのだ。その障壁が耐えうる限度が、HPというわけだな。HPが無い狀態でまともにダメージをければ死ぬぞ。死なずともアニマは自分のを直結している、扱いには気をつけることだ」
つまり、アニマの傷はそのまま生にフィードバックされるってことか。
「MPは武裝を扱うためのエネルギー値、これがゼロになるとほとんどの武裝は扱えなくなる。魔力は武裝の威力は関係する値だ。どれだけ武が強かろうと、アニマ自の魔力が低ければ実際の威力は上がらない。機は言うまでもあるまい、どれだけ俊敏なきが出來るか、だ。ちなみに、これらの能力はレベルが上がれば一緒に上がっていく、今が低いからと言って嘆くなよ。長の余地はあるんだ」
能力と武裝についてはだいたいわかった。
なら、このスキルというは何なのだろう。
「あと、武裝の下にスキルが表示されている者も居ると思う。これはアニマの持つ固有の能力のことだ。持つ者と持たない者が存在する。基本的には発條件を満たさなければ表示されないものでな、今は出ていないからと言ってがっかりすることはないぞ、もしスキルを持っていれば、実踐訓練中に見つかるはずだからな」
アイヴィの言い方からして、そもそもスキルを持っていないアニマも存在するんだろう。
けれど、現狀ではスキルが表示されていない者の方が多く、誰がスキルを持たない”外れ”なのかははっきりしていない。
彩花も、スキルが表示されていないうちの1人だった。
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名稱 マグス
兵裝 頭部ソーサリーガン
可変ソーサリーガン:モードブリューナク
可変ソーサリーガン:モードアンサラー
能力 Lv.1
HP 3000/3000
MP 2000/2000
魔力 1000
機 100
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しかし、魔力は折鶴のアニマ”ルゾール”の倍以上、武裝の威力はそれよりもさらに高い。
だがその代償として機力が低く魔力の消費も多いようで、つまりは固定砲臺のようなアニマなのだろうか。
と、その時、し離れた場所からひときわ大きな歓聲が上がる。
歓聲の方を向くと、1のアニマがクラスメイトたちのアニマに囲まれていた。
あれは……桂の”ヘイロス”?
表示されたそのステータスを見たとき、僕は驚いた。
しかし同時に、”あの桂なら”と納得もしていた。
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名稱 ヘイロス
武裝 頭部ソーサリーガン
背部ソーサリーガン:クラウソラス
大型ソーサリーガン:ガラティーン
大型実剣:エクスカリバー
スキル 約束された栄グロリア
能力 Lv.1
HP 10000/10000
MP 10000/10000
魔力 1500
機 1000
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他のアニマと比べて、あまりに圧倒的なステータスを見て、騎士団長たるアイヴィですら驚きを隠せない。
「なんだこのステータスは。それにスキルも、近くに居るだけで力が湧いてくる覚がある、まさか常時発型なのか!?」
「範囲の友軍の能力を20%上げると説明には書いてあります」
桂がそう言った。
どうやら本人にはスキルの効果まで見えているみたいだ。
それにしても、居るだけで能力20%アップだなんて、まさにチートと呼ぶしか無いスキルだ。
「素晴らしい、この力があれば帝國との戦いも有利に進められるに違いない!」
興した様子のアイヴィ。
もっとも、興しているのは彼たちだけじゃない。
みんなが、お互いにアニマの能を見せあって盛り上がっている。
そんな中、僕は1人で自分のアニマの能をぼーっと眺めていた。
見せる相手もいないし、あえて見せるようなものでもないから。
そんな僕の傍に、擔任の水木がアニマ”マリティア”を纏った姿で近づいてくる。
それはまるで彼の悪意を現化したかのような毒々しいをしていて、実にお似合いだと心で嘲る。
「だめだぞ白詰、みんなが見せあって楽しんでいる時に自分の殻に引きこもってちゃ。お前もにれって、な?」
「いや、僕は……」
「れつってんだよ」
水木が低く冷たい聲で言い放つ。
心臓がぎゅっと締め付けられ、呼吸ができなくなった。
水木のこれ・・が僕は苦手だった。
ふとした瞬間、油斷した時に限って見せつけてくるむき出しの悪意が。
「ミズキーってばやっさしー」
「だろ? 俺って出來る先生だから」
「に手を出すのも早いし尊敬しちゃうわ、いやほんと。なあ彩花ちゃん?」
「え?」
急に話を振られて戸う彩花。
どうしてそこで彼の名前が出てくるんだか。
いいから早く、僕に突っかかってくるなら來ればいいじゃないか。
「んー……あぁ、そっか。そうだったね。いやぁ、なんでもないわ。つーわけでさ、ミサキちゃんもこっちに來てみんなにアニマの能を見せな? 大丈夫、誰も笑わないからさ」
アニマを纏っていては相手の表は見えない。
けれど折鶴がニヤニヤと笑っている姿が、その聲から容易に想像できた。
すでに子からも、クスクスと笑い聲がれている。
誰もが確信していたんだ、僕のアニマは外れ・・に違いないと。
けれどそれは、僕にとっても同じこと。
最初から期待なんてしてなかった。
落ちこぼれは落ちこぼれのまま、それは異世界に來たって変わらないのだから。
僕は大きくため息をついて、ステータスを公開した。
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名稱 ウルティオ
武裝 なし
能力 Lv.1
HP 2000/2000
MP 2000/2000
魔力 100
機 100
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訓練所に一瞬だけ沈黙が流れ――そしてすぐに、笑い聲で包まれた。
「あっははははは! なんだよそれっ、能力も低けりゃ武裝もなしって!」
笑わないと言っていた折鶴が、真っ先に大聲を出して笑う。
最初から信じてたわけじゃないけど。
「くっくく、異世界來ても変わらないな白詰は。大丈夫だぞ、か弱いの子の白詰を、先生がちゃあんと守ってやるからな?」
水木は心の底から僕をこけおどす。
こんなのがどうして教師になれたのか、常々不思議でならない。
「うわ、雑魚じゃん……」
そして離れた場所に居た、クラスのカースト上位に位置する子、赤羽百合が冷たい口調で言った。
アイヴィは僕のステータスを見て鼻で笑い、彩花は気まずそうに目をそらす。
桂は最初から興味など無さそうに、そもそもこちらを見ていなかった。
できれば僕も目を背けたかったけれど、これは僕自のに食い込む呪縛だ。
逃げたくても逃げられるものじゃない。
ほどなくして、早速自分の力を試すための訓練が始まったが、指導する立場であるアイヴィは全く僕に興味を占め淺ない。
クラスメイトたちも、僕にかまってる暇はないと言わんばかりに自分のアニマに夢中だ。
異世界に來たって僕は孤獨なままで。
訓練終了後に宿舎に案されるまで、その場で立ち盡くすことしかできなかった。
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