《人喰い転移者の異世界復讐譚 ~無能はスキル『捕食』でり上がる~》40 ペルソナの側
ちらりとパーラの方を見ると、顔面蒼白で、口をパクパクさせている。
口に布を詰められたエルレアを見てつい殺しちゃったけど、あの人……誰なんだろう。
まあいいや、次は妹の方を――
「くっ……!」
素早いきでパーラは僕との距離を詰め、ナイフの柄に手をばす。
17歳のとはけないき。
そういや、この子もアニマ使いなんだっけ。
常人に比べれば化じみたき、彼氏が殺された直後にしては思い切りもいい。
だけど、アニマ使いとしては、レベルも経験も実力も足りちゃいない。
ばされた手を容易くかわし、腹部に膝蹴りを叩き込む。
「う、ぐっ……」
腹を抑えながら、一歩、二歩と後退するパーラ。
その低い姿勢は、彼の頭部をちょうど蹴りごろ・・・・の高さにまで導いてくれる。
スパァンッ!
こめかみに向けて放たれたハイキックは、小気味いい音を立てながらクリーンヒット。
彼の意識をごっそりと削り取った。
軽い脳震盪を起こし、ふらふらと覚束ない足取りで後ずさるパーラ。
僕はその頭を暴に摑み、強引に椅子に座らせた。
パーラは意識を保つのに一杯で、抵抗する様子はない。
僕はベッドに寢そべったままのエルレアに近づくと、彼のを抱き上げる。
その時、彼の脇腹に僕の指先がれた。
「ん……ぁっ」
反的にエルレアの口かられた甘い聲に、不覚にも僕のが高鳴る。
「ご、ごめんなさい。今まではこんなこと無かったのですが」
エルレアも戸っているのか、頬を赤らめながら弁解した。
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まあ、僕への好意が生まれた結果だと思っておこう。
彼のを抱き上げた僕は、改めてベッドの上にそのを座らせた。
寢そべったままじゃ格好つかないからね。
「ありがとうございます、ミサキ」
僕を見てにこりと笑うエルレア。
そういや、前からたまにあったけど、よく考えてみればおかしな話だ。
なんで彼はしっかりと僕の顔を見て話すことができるのだろう。
「エルレアさ、もしかして目が見えてる?」
「いいえ、見えていません。私がミサキの顔を見ているから不思議だと思ったのですね」
「見えてないなら、どうやって顔の場所を判斷してるの?」
「今の私にはわかるんです。聲の聞こえる方向や、手の位置、匂い、溫、呼吸、心臓の音。それがミサキの居場所を教えてくれますから」
エルレアは自慢げに言った。
なるほど、視覚以外の覚が鋭いと、そういう蕓當も出來るんだ。
やっぱり、笑顔は真正面から向けられた方が嬉しい。
それを理解しているからこそ、エルレアはわざわざ僕の顔の方を向いて笑ってくれたんだろう。
こんな優しい子に、どうして家族は応えてやれないのか。
善意で他人に與え続ける人間に、どういう神経をしていたらさらにねだることが出來るのか。
エルレアが優しいからこそ、余計に許せなくなる。
いっそ僕の意志で殺してしまいたくなるけれど、ここは我慢しなければ。
「お気に召しませんでしたか?」
「まさか、嬉しいよ」
「なら良かった。ですが……覚だけでミサキをじるのも悪くありませんが、早くあなたの顔を見たいです。場所はわかっても、形まではわかりませんから」
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その言葉から、僕は彼の意図を察した。
エルレアのスキルの発には、お互いの同意が必要だ。
同意があって初めて、のパーツを換することができる。
つまり――
「じゃあ早速だけど……エルレア、この子をどうする?」
「私が決めてもよいのですか?」
「もちろん。だってこの復讐は、エルレアの持ち・・・なんだから」
「なら……そうですね、まずはパーラの右手をナイフで突き刺して頂いてもよろしいでしょうか」
エルレアのリクエストをけ、僕はだらんと垂れ下がっているパーラの右腕をテーブルの上に乗せる。
そしてヴェルので赤く染まるナイフ、その鋭く尖った先端部を、手の甲の中心に當てた。
ツプ、と當てるだけで皮は貫かれ、小さな玉のような赤いが溢れ出してくる。
微かな痛みに、「あぅ……」とパーラが小さく聲をらした。
しかし、まだ意識は完全には戻っていない。
僕はナイフの柄を両手で握りしめ、ぐっと力を込め押し込んだ。
ナイフは手の甲の皮を裂き、を刳り進み、ゴリゴリと中手骨を削りながらパーラの右手を刺し貫く。
「あ、ぎっ、あああァァァああああっ!」
足をピンとばし、目を見開きながら、パーラが一杯んだ。
「おはようございます、パーラ」
笑顔で妹に語りかけるエルレア。
それを聞いたパーラは、失しながら「はぁっ、はぁっ」と呼吸を荒くすることしか出來ない。
「返事がありませんね。ミサキ、ナイフの予備はありますか?」
「何本かあるよ」
「なら問題ありませんね、次は左手を固定・・してください」
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痛みに耐えるので一杯で、パーラには反抗しようという意志が見えない。
僕は容易く彼の左腕をテーブルに乗せると、右手と同じように串刺しにした。
を貫くった音に、木に突き刺さる打撃音が響く。
「あっ、ぎゃああああああァァァアアッ!」
気のないび聲がパーラの部屋に轟いた。
これじゃ下にまで聞こえそうだ。
僕は念のため素早く部屋の扉を閉め、鍵をかける。
遅れて、1階から誰かが階段を駆け上がる音が聞こえてくた。
ギリギリセーフ、でもあんまり時間は無いな。
「はああぁぁぁ……ひゅうぅぅぅ……」
呼吸を繰り返し痛みに耐えるパーラ。
よほどの激痛だったのか、失しスカートと椅子、そしてカーペットがじっとりと濡れている。
それを見たエルレアは、また笑顔のまま言い放った。
「次に爪と指の間にナイフを突き刺し、ぐりっと回して爪を剝がしてください」
「どの指から行く?」
「右手の人差し指にしましょう」
指示された通り、ナイフの切っ先を右手人差し指の先端に當てる。
そして一気にぐちゅっ、と突き刺した。
「っんううぅぅうううううううっ!」
パーラは聲にならないびをあげる。
続けてナイフをひねると、べり、とを巻き込んで指から爪が剝離する。
「っ、ひ、ぎいいぃぃぃぃいぃいっ」
「そのまま中指を落としてしまってください」
妹のびなど気にする様子もなく、エルレアは淡々と僕に指示を出す。
ドスッ、と中指を切り落とし、次はナイフの柄で左手の薬指の骨を砕いた。
その度にパーラは悲痛なびをあげる。
そうこうしている間に、扉の前にエルレアの両親が到著し、力強く扉をノックする。
「パーラ、エルレア、変な聲が聞こえたが大丈夫か? 何をしているんだ?」
「大丈夫ですよお父さん、パーラと遊んでいるだけですから」
「そ、そうか……」
平然と答えるエルレアに父親は部屋の前を去ろうとするが――
「だ、だずげでっ! おとーさんっ、おとーさんっ、殺されるううぅぅうっ!」
パーラが父親に対して助けを乞う。
まだそんな元気が殘ってたんだ。
エルレアも全く同じ想を抱いたようで、”仕方ない妹ね”とでも言いたそうな困ったような笑顔を浮かべると、僕に次の指示を與えた。
「頭を何度かテーブルに打ち付けて黙らせてください」
「わかった」
後頭部を髪を巻き込みながら摑み、そのまま力いっぱいテーブルに叩きつける。
ドンッ、と鈍い打撃音が響いた。
「だずげっ……はびゅっ!」
「パーラッ、どうした、何が起きたんだ! エルレア、ここを開けなさいっ!」
「お父さんはあとです、今はパーラと遊ばせてください」
一度で黙りそうに無かったので、その後も何度か繰り返した。
最初は木にぶつかる音だけだったけど、回數を重ねると鼻や口から流れ出た、涎が絡み、べちゃ、という音がまじり始める。
折れた歯がちょうど下にあったせいだろうか、気づけば顎や頬にも切り傷が出來ていた。
「お、おと……ひゃ……たす、け……あぎゅっ!」
「パーラッ! 開けろっ、開けるんだエルレアァッ!」
父親の必死のびも虛しく、パーラの可らしい顔面はテーブルにぶつかる度に歪んでいく。
助けを呼ぶ聲も徐々に弱まっていき、彼が完全に沈黙するまでに、10回ほどの回數を要した。
それでも気絶しなかったのは、やはりアニマ使いのの丈夫さがす技だろうか。
「くそっ、こうなったら……!」
ドンッ!
父親はまっとうに扉を開けることを諦め、扉に當たりを始める。
けど、丈夫な扉をぶち破るまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。
家を改築したのが仇になったね。
「ミサキ、私をパーラの向かいの椅子に座らせてもらってもいいでしょうか」
「はいよ、っと」
彼の脇に手を當て持ち上げると、言われた通り向かいの椅子に座らせる。
ちょうどパーラとエルレアが向かい合う形になった。
何本かの歯と鼻骨が折れ、口から混じりの涎を垂らすパーラ。
そんな妹の姿を見て、嬉しそうに微笑むエルレア。
姉妹が、生まれて初めて本音をさらけ出し、向かい合った瞬間だった。
「さあパーラ、ここまでしたら、私が何をんでいるのかわかりますよね?」
「は、ひゅ……ひぃ……か、けほっ……」
パーラはか細い呼吸を繰り返す。
瞳は虛ろだったが、しかしはっきりとエルレアの姿を捉えていた。
見えているんだろう、聞こえているんだろう、そして理解しているんだろう。
「死に、たく、無い……」
「わかりました、殺しはしません。その代わりに――」
「目を、返し、ます」
「ふふ、パーラが賢い子で助かります」
「ころ、さない?」
「今まで私が家族に噓をついたこと、一度だってありましたか?」
そう自信を持って言い切れるほど、エルレアは家族に対して……いや、誰に対しても正直に接してきたんだろう。
奪われたつもりなんて無く、與えてきただけだった。
彼の誠実さに誠実さを以て応えていれば、こんなことにはならなかった。
起こるべくして起きた慘劇に、躊躇いなど一片も存在しなかった。
エルレアは表を変えること無く宣言する。
「スキル発ブート、聖の微笑リバーサル」
スキルの対象となった姉妹の元に、白く淡いが燈る。
互いのから1本の糸がゆっくりとび、やがて糸同士がれ合い、ひとつになり、繋がった。
とくん、とくん、とくん。
パーラのが微かに脈を打ち、糸に何かを送り込む。
そして送り込まれた何かは、エルレアのへと注ぎ込まれていった。
「あ、あぁ……ああぁぁ……景が……くらく……また、あの暗闇に……っ」
パーラが嘆きの聲をあげた。
しかし、発したスキルはもう止まらない。
彼はを失い、エルレアはを取り戻す。
スキルの発が終わると、糸は朽ち果てるように消え、やがてに燈っていたも霧散していった。
「見えない……見えないよぉ……」
視覚を失ったパーラは嘆き、涙を流す。
一方エルレアは視覚を取り戻したはずなのに、なぜか目を瞑ったままだ。
そして隣に立つ僕の方を向き、ようやく目を開く。
「……ああ」
エルレアは頬を赤らめながら、熱っぽい息を吐いた。
「ミサキは――私が思っていたよりずっと、優しい顔をしているのですね」
「もっと悪い顔をしてると思ってた?」
「ええ、実はし不安でした。でも今は、最初に見たのがあなたの顔で良かったと、心の底から思っています」
その目は確かに僕の姿を捉え、しっかりと見つめている。
例え部屋がの匂いで充満していようと、妹がもがき苦しんでいようと、父親が扉に當たりを繰り返していようと、そんなはエルレアの眼中にない。
ただ僕だけを、ひたすら妄信的に求めている。
自然とが引き寄せられていた。
手足のない彼には抵抗のしようが無い。
けど、自分から目を閉じたってことはけれてくれたに違いない。
「んぁ……」
微かに開いたに、僕のを重ねる。
「いきなりはずるいと思います」
「ごめん、どうしてもしたくなっちゃって」
「謝らないでいいんですよ、別に不満があるわけではありませんから。ミサキがしいと思ったらいつでも求めてください、それが今の私にとっての喜びですから」
「一方的にしがるばっかりじゃ不公平だよ。さっきのキスの分、何かしてしいことは無い?」
「それでは――」
人に甘えるように、彼は言った。
「パーラの首にナイフを突き刺して、殺してください」
斷る理由は無い。
僕は新たなナイフを取り出すと、パーラに近づいていった。
「う、うそ……違う、約束が……っ、噓はつかないって……!」
「私、そんなこと言いましたっけ?」
「言って……いった……はず……」
「おかしいですね、”今まで噓をついたことがない”と言っただけだと思うのですが」
「そ、そんな……へり、くつがっ……!」
そう、噓をつかないなんて一言も言っていない。
それを勝手に都合よく拡大解釈したのは、いつだって自分の都合を他人に押し付けてきたこいつらの方だ。
エルレアを糾弾する資格なんてあるものか。
「あ、あ……やだぁ……」
「全ての人に等しく誠実であることの無意味さを教えてくれたのは、他でもないパーラやお父さん、お母さんです」
「ちが、やめ……やだっ、死にたくないっ……せっかく、せっかくアニマ使いになれて……これからなのに……!」
「これから私が誠実であるのは、ミサキと、ミサキが心を許した誰かにだけ」
「結婚も、して……幸せに……だから、ころさ……ないで……!」
顔中からを垂れ流しながら命乞いをするパーラ。
けれどそんな彼の言葉は、エルレアには微塵も屆かない。
もはや、ただの雑音である。
「どうでもいいです、死んでください」
ジュブッ!
僕はエルレアに言われた通り、パーラの下顎にナイフを突き刺した。
深く、深く、刃が脳にまで到達するように。
刃が彼のに包まれ見えなくなった瞬間、そのがびくんと震える。
そしてそのまま、二度とかなくなった。
死とはあっけないものだ。
だからこそ、その手前を楽しまなければ味気がない。
「ありがとうございます、ミサキ」
妹の死に顔を見たエルレアは、満足気にそう言った。
もう彼が復讐を否定することは無いだろう。
だって、その素晴らしさををもって知ってしまったのだから。
さて、死だけのこの部屋にもう用はない。
懲りもなく扉に當たりを続ける父親が可哀想になってきたので、タイミングを見計らって扉を開いてやる。
「パーラッ!」
扉が開いた瞬間、最の娘の名前を呼ぶものの、もちろん返事はない。
部屋何が起きたのかを充満する匂いですぐに気づいたのか、父親の顔はみるみるうちに青ざめていく。
「な、なんてことを……」
なんてことをしてくれたんだ、はエルレアの臺詞だと思うんだけどね。
パーラに向けるそのあたり前の価値観をエルレアにも適用できていれば、こんなことにはならなかったのに。
「エルレア、こいつ・・・はどうする?」
「はい、そいつ・・・も殺してしまいましょう」
もはや父と呼ぶこともない。
彼の意志をけ、あえてパーラの右手に突き刺さっていたナイフを抜き、僕は父親に迫る。
「ひっ……う……うわああああぁぁぁぁあっ!」
すると彼は、あっさりと階段を降り逃げていってしまった。
部屋から頭だけを出して確認すると、どうも母親を連れて外に飛び出したみたいだ。
「どうする、追う? 腕と足も取り戻すんだよね」
「それについてなんですが……実は、あまり手足には未練は無いのです」
「そうなの?」
意外だった。
目を取り戻したんだし、てっきり手足も戻すものだと思ってたんだけど。
確かに、この町で彼からを分け與えられたのは父親だけで、右腕だけだと中途半端ではあるけれど。
しかし、エルレアの語る手足に未練がない理由は、意外なものだった。
「だって、手足を取り戻したら……もう、ミサキにお世話をしてもらうことも出來ないではないですか」
ああ……そういうことか。
以前は嫌がってたり、申し訳なさそうにしてたけど、今はむしろ嬉しいぐらいだと。
「手足が無ければ、ずっとくっついておけるもんね」
「それもありますし。あとは……その、言いづらいのですが。私はあなたに所有されて、管理されたいのです」
上目遣いのくせに、言ってることはえげつない。
「……ダメ、ですか?」
でも、そんな可い仕草で言われたら――
「僕にダメだって言えると思う?」
エルレアの表がぱあっと輝く。
所有だとか管理だとか、彼の希に添えるかどうかは別として、最後まで添い遂げる覚悟はある。
彼が僕を求めてくれるうちは、絶対に見捨てたりはしない。
けど、そうなるとどうやって今後エルレアを守るのかも問題になってくるな。
ラビーは自分の足があるからいいとして、エルレアは1人で逃げるのも難しいし。
「あの……っ」
エルレアが再び何かを言いかけた、その時だった。
ドオオォンッ!
外から地鳴りを伴うほどの、盛大で派手な破砕音が聞こえてくる。
「思ったより早かったな」
「ひょっとして、ユリが何かやったのですか?」
「まあ見たらわかるよ」
エルレアのを抱き上げ、窓の近くへと連れて行く。
外に見える景は、見慣れたイングラトゥスの町並み。
そして――ゾウブ格納庫に突っ込む、灰の巨人の姿だった。
「プルムブムがゾウブ格納庫に……」
「アニムスの奪取、及びゾウブの破壊を、ここに戻ってくる直前に百合とラビーに頼んだんだ。あのプルムブムにはたぶんラビーが乗ってる」
「ラビーさん、アニムスの縦ができるのですか!?」
エルレアが驚くのも仕方ない、僕だって聞いた時はびっくりしたから。
考えてみれば、アニムスに乗ってた商人の弟子なんだから縦できてもおかしくないんだけどね。
「多はって言ってたけど、十分に仕事は果たしてくれたよ」
「つまり……アニマを使えるということですね」
「そういうことになるね。さっそく僕がウルティオで――」
「待ってください!」
「どうしたの?」
彼を抱いたまま外へ出ようとした僕は、強い意志のこもった言葉に足を止めた。
「全部、私がやります。やらせてください」
「でもそのじゃ、アニマを発現したって手足が無いんじゃない?」
「確かにその通りです。ですが――今の生まれ変わった私なら、ちゃんと町のみんなを殺すことができると思うんです。両親ぐらいは私の手で息のを止めたいですし、それに……ただの足手まといじゃない、ちゃんと役にも立つんだって所をミサキに見せたくて」
もしかして、さっき言いかけてたことってそれなのかな。
仮に戦えなかったとしても、僕がエルレアを見捨てることはない。
それは、彼が自分を納得させるための、いわば自己満足だ。
だったら、彼自が満足できるまでやらせるしかない。
「わかった、じゃあエルレアに全部委ねる。僕はサポートに回るよ」
「ありがとうございますっ」
禮を言われる立場じゃない。
元よりここは彼の故郷、以前の自分に決別するためには、エルレア自が決著を付けるのが一番なんだから。
エルレアを抱いて家の外に出ると、アニマの発現に巻き込まれ無いよう、彼を道の真ん中に置いてし距離を取る。
アニマ使いだってことだけ聞いてたけど、アニマの姿を見るのは初めてだ。
きっと、エルレアの心を象徴するように、綺麗なアニマなんだろうな。
「テネリタス」
”優しさ”を意味するアニマの名をぶと、エルレアがで包まれる。
顕現するのは、彼の心のように真っ白な、汚れ一つ無いアニマ。
細のに、曲線系の腳部、天使の翼を思わせる両腕部。
しかし腳部も両腕部も半ばで途切れ、それぞれの機能を果たしていない。
立ち上がることも出來ないテネリタス。
けれど、エルレアの自信が失われることはなかった。
「さあ、私たちの本をさらけ出しましょう!」
ギ、ギギギ……。
両手足の切斷面・・・が不気味に軋む。
アニマの姿とは人の魂の形。
心が善意に溢れていればアニマはしく、心が悪意に満ちていればアニマは醜い。
その在り方が変われば、當然アニマの形だって変わる。
エルレアはこれまで、負のをずっとの奧底に閉じ込めてきた。
ならばアニマの側から這い出ようとしているのは、心に閉じ込めてきた負のに他ならない。
「ん、んあぁ……あはぁ……あはっ、あっはははははははは!」
ズルズルズルゥッ!
ぎ混じりの笑い聲と共に、テネリタスの切斷面から、赤黒い手が吹き出した。
同時に、ただただ白かった機の表面に似たような赤黒いラインがる。
現れた手の束はやがて手足の形を取り、テネリタスは――いや、エルレアは、ついに自らの力で立ち上がった。
「ふ、ふふふふ……あはははははははっ! 私……私、立ってます、歩いてます! 見ていますかミサキ? これで役に立てます、みんなを殺せるんです!」
エルレアは子供のようにはしゃいだ口調で僕に問いかける。
「うん、見てるよ」
誰よりも近くで、何よりもしっかりと。
むき出しの筋のような、手を束ねた手足。
純白の裝甲に刻まれた、白と相反するような赤黒い線。
一見して、グロテスクなその造形。
けれど僕は、それがエルレアが生まれて初めて自分をさらけ出した結果だということを知っている。
だから、彼を見て言えることはただ一つ。
「すごく、綺麗だ」
純粋に、そう思った。
「えへへ」とエルレアが恥ずかしそうにはにかむ。
世界中の誰もが彼を”間違っている”と罵ろうと、僕の意志は変わらない。
これこそが、心の在り方として最も正しい形なのだと、迷いなく言い切れる。
「それでは、殺いってきますね」
「うん、殺いってらっしゃい」
手を振って彼を送り出す。
こうして、結果のわかりきった殺が始まるのだった。
ニジノタビビト ―虹をつくる記憶喪失の旅人と翡翠の渦に巻き込まれた青年―
第七五六系、恒星シタールタを中心に公転している《惑星メカニカ》。 この星で生まれ育った青年キラはあるとき、《翡翠の渦》という発生原因不明の事故に巻き込まれて知らない星に飛ばされてしまう。 キラは飛ばされてしまった星で、虹をつくりながらある目的のために宇宙を巡る旅しているという記憶喪失のニジノタビビトに出會う。 ニジノタビビトは人が住む星々を巡って、えも言われぬ感情を抱える人々や、大きな思いを抱く人たちの協力のもと感情の具現化を行い、七つのカケラを生成して虹をつくっていた。 しかし、感情の具現化という技術は過去の出來事から禁術のような扱いを受けているものだった。 ニジノタビビトは自分が誰であるのかを知らない。 ニジノタビビトは自分がどうしてカケラを集めて虹をつくっているのかを知らない。 ニジノタビビトは虹をつくる方法と、虹をつくることでしか自分を知れないことだけを知っている。 記憶喪失であるニジノタビビトは名前すら思い出せずに「虹つくること」に関するだけを覚えている。ニジノタビビトはつくった虹を見るたびに何かが分かりそうで、何かの景色が見えそうで、それでも思い出せないもどかしさを抱えたままずっと旅を続けている。 これは一人ぼっちのニジノタビビトが、キラという青年と出會い、共に旅をするお話。 ※カクヨム様でも投稿しております。
8 177神様を拾った俺はイケメンになれるそうです
「あなたの特徴は何ですか?」 こう問われたことはないだろうか。 一般的には「背が高い」や「運動が好き」などと答えるのが妥當だろう だがそこには恥ずかし気もなくにこう答える奴がいた。 「イケメンです」 この話は、ひょんなことから神様を拾った主人公の工藤春樹がリアル顔面チートでのんびり?高校生活を送る物語です
8 154継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》
☆TOブックス様にて書籍版が発売されてます☆ ☆ニコニコ靜畫にて漫畫版が公開されています☆ ☆四巻12/10発売☆ 「この世界には魔法がある。しかし、魔法を使うためには何かしらの適性魔法と魔法が使えるだけの魔力が必要だ」 これを俺は、転生して數ヶ月で知った。しかし、まだ赤ん坊の俺は適性魔法を知ることは出來ない.... 「なら、知ることが出來るまで魔力を鍛えればいいじゃん」 それから毎日、魔力を黙々と鍛え続けた。そして時が経ち、適性魔法が『創造魔法』である事を知る。俺は、創造魔法と知ると「これは當たりだ」と思い、喜んだ。しかし、周りの大人は創造魔法と知ると喜ぶどころか悲しんでいた...「創造魔法は珍しいが、簡単な物も作ることの出來ない無能魔法なんだよ」これが、悲しむ理由だった。その後、実際に創造魔法を使ってみるが、本當に何も造ることは出來なかった。「これは無能魔法と言われても仕方ないか...」しかし、俺はある創造魔法の秘密を見つけた。そして、今まで鍛えてきた魔力のおかげで無能魔法が便利魔法に変わっていく.... ※小説家になろうで投稿してから修正が終わった話を載せています。
8 88この度、晴れてお姫様になりました。
現世での幕を閉じることとなった、貝塚內地。神様のはからいによって転生した異世界ではお姫様?ちょっぴりバカな主人公と少し癖のある人達との異世界生活です。 拙い點の方が多いと思いますが、少しでも笑顔になってくれると嬉しいです。 誤字・脫字等の訂正がありましたら、教えて下さい。
8 146幻影虛空の囚人
プロジェクト「DIVE」と一人の犠牲者、「So」によって生み出された究極の裝置、「DIE:VER(ダイバー)」。長らく空想の産物とされてきた「ゲームの世界への完全沒入」という技術を現実のものとしたこの裝置は、全世界からとてつもない注目を集めていた。 完成披露會の開催に際して、制作會社であり技術開発元でもある「吾蔵脳科學研究所」は、完成品を用いた実プレイテストを行うためにベータテスターを募集した。 その結果選ばれた5名のベータテスターが、新たな物語を繰り広げる事となる。
8 87じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。
「お前は勇者に相応しくない」 勇者として異世界に召喚された俺は、即行で処刑されることになった。 理由は、俺が「死霊術師/ネクロマンサー」だから…… 冗談じゃない!この能力を使って、誰にも負けない第三勢力を作ってやる!! ==================== 主人公『桜下』は十四歳。突如として異世界に召喚されてしまった、ごく普通の少年だ。いや、”だった”。 彼が目を覚ました時、そこには見知らぬ國、見知らぬ人、見知らぬ大地が広がっていた。 人々は、彼をこう呼んだ。”勇者様”と。 狀況を受け入れられない彼をよそに、人々はにわかに騒ぎ始める。 「こやつは、ネクロマンサーだ!」 次の瞬間、彼の肩書は”勇者”から”罪人”へと書き換わった。 牢獄にぶち込まれ、死を待つだけの存在となった桜下。 何もかもが彼を蚊帳の外に放置したまま、刻一刻と死が迫る。絶望する桜下。 そんな彼に、聲が掛けられる。「このまま死を待つおつもりか?」……だが牢獄には、彼以外は誰もいないはずだった。 そこに立っていたのは、一體の骸骨。かつて桜下と同じように死を遂げた、過去の勇者の成れの果てだった。 「そなたが望むのならば、手を貸そう」 桜下は悩んだ末に、骨だけとなった手を取った。 そして桜下は、決意する。復讐?否。報復?否、否。 勇者として戦いに身を投じる気も、魔王に寢返って人類を殺戮して回る気も、彼には無かった。 若干十四歳の少年には、復讐の蜜の味も、血を見て興奮する性癖も分からないのだ。 故に彼が望むのは、ただ一つ。 「俺はこの世界で、自由に生きてやる!」 ==================== そして彼は出會うことになる。 呪いの森をさ迷い続ける、ゾンビの少女に。 自らの葬儀で涙を流す、幽霊のシスターに。 主なき城を守り続ける、首なし騎士に。 そして彼は知ることになる。 この世界の文化と人々の暮らし、獨自の生態系と環境を。 この世界において、『勇者』がどのような役割を持つのかを。 『勇者』とは何か?そして、『魔王』とはどんな存在なのか?……その、答えを。 これは、十四歳の少年が、誰にも負けない第三勢力を作るまでの物語。 ==================== ※毎週月~土曜日の、0時更新です。 ※時々挿絵がつきます(筆者ツイッターで見ていただく形になります)。 ※アンデッドが登場する都合、死亡などの殘酷な描寫を含みます。ご了承ください。
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