ハイソーサリーサーベルを握りしめ、僕はあえて魔の群れへと突っ込んでいく。

魔が魔を押しのけながら押し寄せてくる景は、鳥がたつほどおぞましい。

心をい立たせなければ、今すぐにでも立ちすくんでけなくなりそうなほどだった。

「ガオオォォオオンッ！」

一斉に飛びかかってくる犬型の魔たち。

四方八方を立的に囲まれた狀況じゃまともに戦えやしない、まずは一方向から集中的に叩く。

ヴゥン――ザシュウッ！

魔をサーベルでなぎ払うと、さらに上から犬型を押し倒すように黒りする甲蟲型が襲い掛かってきた。

「キシァアアァァァッ！」

さらに一閃。

數は多いが所詮Lv.1の魔、ウルティオの出力なら一撃で倒すことが出來る。

まあ、その分だけ數が多いわけで――10匹や20匹程度・・消えた所で、群れに全く変化は無い。

「っく、りゃあああぁっ！」

背中を引っ掻く鉤爪のに、慌てて振り向き、空に向かって一薙ぎ。

一撃一撃は軽い、今のならダメージはせいぜい300程度だ。

もっとも、今の僕にはそれが致命傷なわけだけど。

ツプ……ザシュッ！

迫る鳥型を突き刺し、側から掻っ捌く。

平面的に警戒したって無駄だ、敵は立的に攻めてくる。

常に四方八方にアンテナを張り巡らせろ、スキルに頼るな、あれはせいぜい參考程度にしかならない。

再び元の向きへと振り返ると、そこには互いを踏み臺にしながら壁のように押し寄せる魔の姿。

さらに側方のし離れた場所には、余裕をもって魔たちの援護撃をするヘイロスも存在していた。

「クラウソラス、行け」

魔たちに気を使ってか、桂は追尾武裝でこちらを狙ってくる。

避けるには親なる友スウィンドラーを使って変裝するしかない。

しかしこちらに著弾するまでには若干の時間がある。

まずは前方に迫る魔から処理、次に背後の羽蟲ども、そして最後にクラウソラスの処理を――

「アラーネア！」

手の平から紫の魔力球が放たれると、球は魔の目の前で広がり、大きな網となって足止めを行う。

モンスで喰らったアニマから奪った武裝、魔導網アラーネア。

魔力で出來た網は、微量のダメージを與えながら敵のきを封じることができる。

絡め取られた魔たちが苦しみ悶える。

とどめを刺すまでには至らないものの、雑魚にはこれで十分。

次、まだし離れた場所に居る羽蟲型を頭部ハイソーサリーガンを使って掃討。

もがきながら墮ちていく羽蟲たち。

後方に若干の余裕を確保すると、最後にスキル発ブート。

「親なる友スウィンドラー！」

変裝するのは犬型魔。

クラウソラスの追尾を回避しつつ、魔の群れの中に紛れ込む。

獣や昆蟲に、この群れの中から変裝したウルティオを判別する知能は無い。

もちろんヘイロスは気づいているようだけど、魔たちを気遣ってガラティーンを使えないのだとしたら、次に打ってくる手はエクスカリバーによる近接戦闘。

なら、近づかれる前にしでも魔を減らすしかない。

群れのど真ん中、そして空中の魔がない場所にまで移すると、変裝を解除。

ハイソーサリーサーベルによる回し斬りを放つ。

ズザザザザザザザッ！

「グオオォオオッ！」

「ギシイィィィッ！」

魔たちが斷末魔のびを上げながら、次々と真っ二つにされて倒れていく。

ああ、それでも全く數が減った気がしない、とっくに數十はやったはずなのに、群れは次から次にこっちに近づいてくる。

もちろん、近づいてくるのは魔だけじゃない、ヘイロスだって――

「しぶといな、白詰」

「フリームスルスッ！」

エクスカリバーを振り上げたヘイロスを見て、足元を踏みつけ凍結させる。

そしてすぐさま右に飛び退き、斬撃を回避。

ズドォンッ！

地面を叩いたエクスカリバーは、衝撃波だけで衝突地點に大きなを開け、さらに前方にある木々をっこからひっくり返した。

舞い上がる土と氷。

「同じ手を使うか」

読まれてるし、混じってる土の量が多くてさっきほどは反していない。

けど――多の足止めになればそれで十分！

「スキル発ブート、影の病ドッペルゲンガー！」

ヘイロスの姿を映し出した氷から、ずるりとコピーが這い出てくる。

その數、5機。

どうせロクなダメージは與えられないんだ、足止めさえしてくれれば十分。

ヘイロスから視線を外し、再びいつの間にか僕を囲んでいた魔たちと向き合う。

數百、あるいは數千。

數えるのも億劫になるほどの魔の波が迫っている。

迫力に気圧されそうになる、”無理だ”と弱音を吐きそうになる。

いや――果たしてそれは弱音なんだろうか、ただの正論なんじゃないだろうか。

殘り1000にも満たないHPで戦うには、ヘイロスも、この魔たちも、あまりに容赦がさすぎる。

工夫や小細工でひっくり返せる戦力差じゃない。

「グルアアァァァァッ！」

攻撃から逃れた犬型魔の牙が、ウルティオの肩に突き刺さる。

「くっそがああぁぁっ！」

すぐさま振りほどく。

犬型は地面に叩きつけられ、「きゃんっ」とけなく鳴いた。

しかしその間にも次の魔が攻撃を仕掛けてくる。

甲蟲型の鋭い足がウルティオの腕を切り裂く。

サーベルで対処、攻撃はもらったものの難なく両斷。

次は背後から鳥型が迫り、くちばしで背中を啄む。

「っぐ……いった……！」

肩甲骨の當たりに鋭い痛みが走り、反的に聲がれた。

やけくそ気味に、啄んできた鳥型を切り伏せる。

一瞬だけ魔たちからの攻撃が止む。

その剎那、ふいに冷靜になった僕は、とある事実に気づいた。

――痛い？

HPがある限りはに傷は付けられない、痛みもじない。

つまり痛いという事は、HPが0になったということを意味しており――

「あ……あ……うわあああああぁぁぁぁああっ！」

一気に現実味を帯びた死が恐ろしくなった僕は、がむしゃらにサーベルを振り回した。

さらに、取り囲む魔に対して出せる限り全ての武裝を駆使し、死への恐怖に立ち向かう。

さっきは啄まれるだけだから”痛い”で済んだ。

今度まともに當たれば、それだけじゃ済まないだろう。

皮が剝げる、骨が折れる、臓が潰れる、そして死ぬ。絶対に死ぬ。避けられない運命だ。

嫌だ――そんなの絶対に嫌だ！

「はあああああぁぁぁぁぁぁぁッ！」

が潰れるほどんだ。

そうしないと、今にも心が潰れてしまいそうだったから。

一度折れたらもう立ち上がれない、二度目は無い。

ならば今に、全ての力を注ぎ込み、死力を盡くすしか無いんだ。

頭部から放ったソーサリーガンによって甲蟲型がぜる。

サーベルで犬型の下半は両斷され、さらに食らいついてきた別の犬型の口に拳を突っ込み即座にシヴァージーを展開、脳を破壊する。

そのまま死を鈍のように使い、背後から近づいてきていた鳥型を毆打。

飛びかかってきた犬型の牙をギリギリで回避、しかし肩を掠める。

り切れるような痛みに呼吸がれた。

この狀況、テンポのズレは致命傷だ。

地を這うワーム型の魔が口から毒を吹き出す、前方に跳躍して回避。

飛沫が接、足に焼けるような痛みが走る。

鈍ったき、逃すまいとヘイロスがエクスカリバーを振るう。

回避には功したものの、衝撃波が左腕を襲った。

メキ、と嫌な音と。

左腕が、本來ありえない方向に曲がっている。

その現実を認識した瞬間、今までとは比べにならない、呼吸すら困難な程の痛みをじた。

「はっ、はっ、はっ……あ、ぐ……あぁ、はああぁぁぁぁ……っ！」

とにかく息を吐いていないと、痛みで意識が飛んでしまいそうだった。

右手で支えようと試みるも、左手はぷらんと力なく垂れ下がるばかり。

しかもれるたび、揺れるたびに激しい疼痛が走る。

視界がチカチカする、痛みですくんでがうまくかない。

こんなことをしている間にも、魔たちはこちらに迫っていると言うのに。

「キチキチキチキチッ」

気づけば、目の前で灰の、カマキリのような魔が口を蠢かせていた。

まるで、獲の前で舌なめずりするように。

「あ――」

ぶ暇もなく、その前足がウルティオの肩にかかると、気づけば僕は地面に押し倒されていた。

目の前にはさらに近づいた魔の口。

それがウルティオの頬を食らおうと近づいてくると――ガシャン、と獲をよこせと言わんばかりに別の甲蟲型魔がのしかかる。

すると3目、4目と僕に群がる魔數は次々と増えていき、気づけば視界は魔たちで埋め盡くされていた。

獣のうめき聲、呼吸音、蟲の鳴き聲、関節が軋む音、鳥のさえずり、羽蟲の羽ばたき。

様々な音が耳にり込んでくる。

共通しているのは、それら全てが、僕を殺そうとしていることだ。

「……っ、ぁ……」

もう、聲も出なかった。

恐怖とかそういう境地はとっくに超えていて、頭の中が真っ白で何も考えることが出來ない。

ギ……バキ……。

「ぅ、あが……っ」

重量に耐えきれないのか、足の方の裝甲が潰れる音がした。

同様に、折られた左腕の周辺にも魔たちの重がかかり、引きちぎれそうな痛みを與えてくる。

死ぬと思った。

いや、もう死んでるようなものだ。

食われる前に、このまま押しつぶされて死ぬんだ。

だって痛いから、辛いから、苦しいから。

脳に満ちる、強い無力。

けど――なんていうかな。

今の僕がどうしようもない無力を覚えているのは事実、なんだけどさ。

無力って観點に限って言えば……彩花が死んだあの時の方が、ずっと辛かったな。

小さい頃からずっと一緒で、初の相手で、今もい焦がれて――彩花の命は、僕にとって、僕自の命以上に尊いものだった。

でも、もう手遅れだった。

救えない、それが一目瞭然の事実だった。

それに比べて、今はどうだろう。

僕はまだ生きている、彩花と比べれば無価値に等しい僕の命はまだここにある。

辛くないのは當然だ、これで心が折れるとか甘えているにも程がある。

それにさ、僕に死ぬことは許されないんだ。

出來るとか出來ないとかじゃなくてさ、やっちゃいけないんだよ。

だって復讐ってつまり、彩花の命の価値を証明する行為なんだから。

僕の命はもちろん、クラス全員を束ねたって彩花の命には屆かない。

だから殺す、命を奪った連中を全員殘らず殺し盡くす。

使命だ、宿命だ、僕に死ぬのが許されるのは復讐を終えた時だけなんだ。

は、はは、そうだ、そうだよ。

僕は試したのか？　出來得る限りの全てを。

僕は捨てたのか？　差し出せる全ての代償を。

違う、違う、違う、捨ててない、足りない、この程度で努力とか頑張ったとか全力とか死力とか口が裂けても言えやしない！

言い訳は、何もかもを吐き出したあとにやるべきだ。

殘っているのなら、無駄だと理解していても実踐しろ。

それで何もかも殘らない抜け殻になって始めて、全會一致の罵倒の中で、死んだ言い訳をさせてやる。

今、かすべきは――口よりも、魂だ。

「ぐ……あ……ヴァジュ、ラァァァァッ！」

むき出しになった部コアが輝きを放ち、死にの機から魔力を吸い上げていく。

チャージ完了――発。

キィィィ……シュゴオオオォォォォオオッ！

の柱が天に向かってび、群がる魔の帳に風を開ける。

ウルティオを食らおうと群がっていた魔の一部は壊滅的な被害をけたのか、耳障りな音は聞こえなくなった。

差し込む一筋の、青い空。

僕はそこに向かって手をばすと――

「ぎ、いぃ……ぐ、が、ああああぁぁぁぁぁぁあっ！」

痛みを押し殺し、勢いをつけて立ち上がった。

でも、立ち上がったってまだ痛い。

そりゃそうだ、腕と足が折れてるんだから。

だとしても――！

うめき聲をあげながら魔の山から這い出ると、僕は手頃にあった鳥型の死に手をばす。

「スキル発ブート、捕食プレデーション！」

捕食口が開き、そこに死を放り込むと、すぐさま咀嚼を開始する。

魔の裝甲に牙が食い込む。

ガリ、ゴリュ、バキ、グチ……。

ためらいは無かった。

オリハルコンを摂取しているとか、もうどうでもよかった。

例え汚染されていたとしても、桂のように意志は殘る、気持ち悪い言を繰り返したとしても、この想いが失われるわけじゃない。

クラスメイトを全員殺す、その強い意志があれば、変わり果てた僕が復讐を完遂してくれるだろう。

なら、いい。

例え最後に立っているのがもはや僕ではない何かだったとしても――正直言えば嫌で嫌で仕方ないし、百合やエルレアを悲しませたくは無いけれど――死ねば全て臺無しだ、ならばしでもみを葉えられる手段を僕は選ぶ！

鳥型魔の捕食途中にも、魔は襲い掛かってくる。

転がり、這いずり、痛みに悶ながらも捕食を終え、その力を取り込むと――飛びかかってくる犬型魔の攻撃を、僕は上空へ飛翔・・して回避した。

奇妙な覚だ。

本來人間には存在しない機関、翼が生えているというのは。

「無駄な足掻きだな」

わかっている。

ヘイロスは、付け焼き刃で翼を手にれたウルティオよりもよほど早く飛べるんだろう。

実際、直後に振るわれたエクスカリバーを回避するのも、本當に紙一重だった。

だとしても――これが僕の全てじゃあない。

攻撃が途切れると著地、

「スキル発ブート、捕食プレデーション！」

地面に転がる魔を摑み捕食口に放り込む。

捕食によりHPが上昇すれば、その分のHPは回復する。

傷も人ならざるもののによって補われていく。

骨折は癒え、僕は再び全力疾走しながら次の魔の死を拾い上げた。

「捕食プレデーション！」

スキルを繰り返し発。

まどろっこしいとじながらも、ヘイロスに打ち勝つためにはこうするしかなかった。

100も食えば屆くだろうか。

いや、足りない。こんな雑魚魔が100程度じゃヘイロスには勝てない。

ならば何食えばいい？　1000？　2000？

わからない、でもそれでもまだ足りないような気がする。

「捕食プレデーション、捕食プレデーション、捕虜プレデーション、捕食プレデーションッ！」

ひたすらに喰らった。

魔に追われながら、ヘイロスに翻弄されながら、時折転げ、無様な姿を曬しても、それでも喰らいついた。

時に捕食途中の魔を盾に使い、時に手にれたばかりの武裝で意表を突き桂の裏をかきながら。

でも――足りない。

いくら捕食を発しようと、HPが増えようと、結局はその分のダメージをけてしまう、到底ヘイロスには追いつけない。

遅い、遅い、遅すぎる。

この程度でヘイロスを倒そうだなんて笑わせる、復讐をやり遂げるなんて馬鹿馬鹿しい。

否定できるか？　出來ないだろう？

だったら喰え、悔しければ喰え、痛ければ喰え、苦しければ喰え！

「捕食プレーデション」

足りない、足りない、ぜんぜん足りない。

何が足りない？

魔の量？　いいや十分だ。

食べる速度？　これ以上は上げられない。

だったら――口？

「捕食プレデーション」

ああ、そうだ。

単純な話だ。

捕食速度を上げられないのなら、口を増やせばいい。

増やせばいい。

増やせばいい。

そっか、そうだったんだ。

とても簡単な話だ。

増えろ、増えろ、増えろ、はは、あははは、増えろ、もっと、もっと、もっと！

「白詰、そろそろ終わりにしよう」

ヘイロスは今までで最も早い速度でウルティオに薄し、剣を振るった。

フオォンッ！ バギィッ！

クリーンヒット、強い衝撃に視界が激しく揺れる。

機は木々をなぎ倒しながら吹き飛ばされ、地面に叩きつけられ、転がると――僕はその場で、ゆっくりと立ち上がった。

「……」

桂は無言でウルティオとエクスカリバーを互に見た。

確かに當たった、言い訳の使用も無いほどの見事な當たり方だった。

それが――なぜ、こうして立ち上がっているのか。

桂はそれを不思議に思ったんだろう。

僕も不思議だった。

けれど考えるも億劫だったので、ちょうど襲い掛かってきた羽蟲型を仕留め、スキルを発させる。

「スキル発ブート、捕食プレデーション」

捕食口が開く。

喰らった。喰らい盡くした。

新たの力がウルティオに注ぎ込まれ、全の形が変わる。

翼が大きくなり、爪が生え、黒はさらに深い漆黒となる。

それで――

「ガラティーン……今度こそ、殺す」

周囲の魔を巻き込まないため、今まで封じてきた切り札をヘイロスがこちらに向ける。

そしてすぐさま放たれ、巨大なが迫ってきた。

僕はふらりと回避する。

は避けきれなかった右肩を焼き、瀕死のウルティオはそれでなくとも右腕を失うはずだった。

しかし、やはり僕は全く平気で、當然のようにそこに立っている。

「スキル発ブート、プレデーション」

また発した。

目の前には死もない。

けれど何となく発できる気がして、試してみると、あっさりと口・が魔を喰らい、僕の力へと還元する。

再び、ウルティオは形を変えた。

「クラウソラス、仕留めろ」

ヘイロスは三度僕に攻撃を仕掛けてきた。

3本のの筋がこちらに迫り――ウルティオに真正面から命中した。

ドオォォオオンッ！

著弾、同時に発。

視界を炎が埋め盡くし、僕はふらりとしだけよろめく。

「……どういうことだ？」

どういうことだろうね。

桂にわからないことは僕にはわからない、だって桂の方がずっと頭がいいから。

それは誰にもわからないこと。

けれど、僕は再びスキルを発させる。

「スキル発ブート……」

言いかけて、僕は違和を覚えた。

このスキル、そんな名前でいいのかな、と。

捕食は捕食だ。

喰らい、ウルティオの力とする、それはたぶん変わっていない。

でも――手元には死は無い、だったら僕は、一どこから喰らっているんだろう。

我ながら疑問だったけれど、まあ喰えているならどうでもいいと、深くは考えなかった。

ただ、繰り返し発するうちに、何となく意味や形はわかってきた。

きっとこのスキルは、もう捕食プレデーションなんて名前は相応しくない。

名付けるなら、そう――

「暴食グラトニィ」

発を宣言、同時に捕食口が開く。

ウルティオのが裂け、グロテスクな粘が姿を表したように――今度は空間が裂け、醜い捕食口が姿を現した。

1つではなく、いくつも、いくつも、僕がするほどに數多の口が魔たちを喰らっていく。

生死問わず、喰えるものなら、全てを対象として。

アニマとは魂の形。

エルレアが変わり果て、スキュラーと言う新たな手足を手にれたように。

死の間際、強いみによって、元からあった力が変異したんだろう。

いや、本當はよくわからないんだけどさ。

きっと誰にもわからない、だったら、そういうことでいいんじゃないかな。

「ギ、ギイィィィィィッ！」

「グギャアアアァァァァァッ！」

「ガルゥッ、グゥゥ、ガアアァァァツ！」

周囲の魔たちが、一斉に不快なびをあげる。

しかし、じきに歯に噛み潰され、彼らは微かに斷末魔をあげて絶命した。

種族も大きさも問わずに、弱者ならば――正確にはHPが一定以下ならば、選り好みせずにあらゆるアニマを取り込んでいく。

「そうか……防いでいたのではなく、けたダメージ分だけ強くなっていたのか」

冷靜な分析、ありがとう。

そう、これは単純な話。

例えばヘイロスのエクスカリバーで3萬のダメージをけるのなら、3萬だけHPを増やせばいい。

ガラティーンが5萬のHPを削るのなら、5萬HPが増えるように喰えばいい。

そのためのエサは――嫌気がさすほど、この場に大量に存在していた。

「失態だったな、數で押しつぶせば勝てると思ったのだが」

その通り、桂が自分の力だけで僕を殺そうとしていたら絶対に葉わなかった。

念には念をれたつもりなのかもしれないけど……。

「裏目に出たね」

「問題はない、これ以上捕食され、戦力が拮抗する前に殺してしまえばいいだけの話だ」

ヘイロスがエクスカリバーを構える。

そして馬鹿正直に、真正面からウルティオに斬りかかってくる。

そこに、桂の自信を垣間見た。

あるいは慢心と呼ぶべきか。

「シヴァージー・マギア」

両手首から、手甲剣がびる。

だがそれは実を持った金屬ではなく、魔力の剣。

ソーサリーサーベルとシヴァージーの両方の特を持った新たな武裝。

もちろんそれだけじゃない、武裝としての威力も向上している。

數多の魔を喰らい、様々な武裝を取り込んだ結果、ウルティオは効率化のために、いくつかの武裝を統合・・した。

これは、そんな武裝のうちの1つ。

「はぁっ！」

ヘイロスがエクスカリバーを振り下ろす。

衝撃波だけで吹き飛ばされるような代だ、だからこそ今まで僕は必死になって避けてきた。

それをあえて、手甲剣をクロスさせながらけ止める。

バヂィッ――ゴオオオオォォォオオッ！

衝突。

そして生じた余波が風となって周囲の魔や木々を吹き飛ばす。

まだ……さすがにパワーじゃあっちの方が上か。

ウルティオのかかとは、ヘイロスに押されてじりじりと後退していた。

けど、十分すぎるほどの果だ。

周囲に魔はまだ殘っている、これでヘイロスの圧倒的優位という狀況は崩れた。

「け止めた……だと？」

反応は平坦。

羽化してがなくなったから仕方ない。

でも、十分なインパクトは與えられたはずだ。

剣同士がぶつかり合い、火花を散らす中、僕は挑発的に桂に語りかける。

「ねえ桂、さっきは”戦力が拮抗する前に殺す”って言ってたけどさ」

そして、ここまでさんざん好き放題にやってくれた桂に対する意趣返しとして、皮たっぷりに言い放った。

「もう遅いんだよ」