《召喚チート付きで異世界に飛ばされたので、とりあえず俺を転移させた神さまを召喚することにしました》プロローグ 神召喚

異世界の夜空は澄み渡っている。

輝く星たちをより一層引き立てているのは、ため息が出そうになるほど見事な月だった。

今日は満月だ。

「……くそッ!!」

「見つけたぞ! あっちだ!」

しかし今の俺に、ゆっくりと夜空を眺めていられる余裕などない。

追っ手を振り払い、街中を逃げ回るのでいっぱいだ。

追いつかれたら殺される。

俺の中を支配していたのは、初めて近にじた死への恐怖だった。

ただひたすら、走る。

すれ違う人たちは、そんな俺のことを気にもしていない。

よくある景なのだろうか。

「って、行き止まりかよ!」

いつの間にか、あまりよくない道を選んでしまったらしい。

俺の視界を、巨大な街の外壁が覆いつくしていた。

辺りに人の気配はない。

ここで何かが起きたとしても、すぐには発見されないだろう。

すぐにここから離れるべきだ。

「――やっと追いつきましたよ」

「ぐっ!?」

手に衝撃が走り、持っていた鉄の剣を落としてしまった。

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振り返ると、一人のが立っている。

頭の上に、二本のねじれた角を生やしただ。

その後ろに、何人もの男たちが待機していた。

の手には、長い鞭のようなものが握られている。

おそらく、あれで手を打たれたのだろう。

見事としか言えないコントロール能力だ。

「もう逃げられませんよ? 勇者候補さん?」

猥な微笑を浮かべたは、を舐めた。

の髪が揺れ、金の瞳が猛禽の如く俺を見據える。

月のに照らされたその姿は、ほとんど出魔だ。

したを惜しげもなく曬している。

どう見ても公共の場を歩いていい恰好ではない。

俺は観察眼のスキルを発させる。

ディアナ・スーリアデス サキュバス

魔Lv.66

六魔將

見るからに強そうだ。

六魔將というのは、魔王軍の役職か何かだろうか。

強そうな名前だし幹部レベルな気がする。

……どうするか。

冷や汗を流しながらも、俺はこの狀況を打開する策を考える。

「……冥土の土産に教えてくれよ。どうして俺が勇者候補だってわかったんだ?」

「私は観察眼のスキルを持っているんです。あなたの名前が見たことのない文字だったから、ピンときたんですよ。あなたはこの世界の人間じゃない、ってね」

「なるほどな」

俺の名前はもちろん漢字だ。

観察眼で出てきた名前が未知の言語だった場合、転移という現象を知っていれば、そいつはこの世界の人間ではないという結論を導き出せる。

そしてこの世界の人間ではないなら、それは勇者候補として召喚された人間だけ、というわけだ。

魔王軍の幹部級になると、そういった報も持っているのか。厄介だな。

の話ぶりからして、観察眼のスキルを持っているのは俺だけではないようだ。

今後同じようなことを繰り返さないためにも、改名か何かする必要がある。

しかしそれは、この狀況をどうにかしてから考えるべき問題だ。

「さて、もういいでしょう? 私たちの王のために、ここで死んでください」

が、ゆっくりと腰のサーベルを抜いた。

きが無駄にエロい。

今はそんなことはどうでもいい。

鉄の剣を拾い上げ、正眼に構える。

「……ふー」

「あら、抵抗するつもりですか? うふふ、そうでなくては面白くありませんものね」

俺は覚悟を決めた。

魔力はほとんど殘っていない。チャンスは一度きりだろう。

今日、この場所で來てくれなければ、俺には彼との縁が無かったということだ。

だが、不思議と負ける気はしなかった。

――想像イメージする。

これから先、彼と共に歩んでいく道を。

がいる未來を。

あの場所で、ずっと一人で寂しそうにしていた。

召喚などあり得ない可能、夢語なのだと、諦めきっていた。

俺と來ても、きっと楽なことばかりじゃないだろう。

苦しいことや悲しいことだってたくさんあるに違いない。

でも、それでも、俺は彼に來てほしいと思った。

この世界を一緒に見たいと思った。

だから俺は、その名をんだ。

「來い! ルナぁぁぁぁああああああ!!!!」

「――なによ、うるさいわね」

いつもとは違う手ごたえがあった。

も違う。

ただの白ではなく、あたたかな銀だ。

「なにっ!? 馬鹿な……これは……!」

が狼狽うろたえたような様子で、銀を凝視している。

何が起きているのかわからない。そう言いたげな表だ。

やがて、溢れんばかりのが消える。

何事もなかったかのように、闇夜がその姿を取り戻す。

しかし一つだけ、変化したものがあった。

俺の目の前に、先ほどまではいなかったはずの一人のが立っている。

小柄な銀髪のだ。

闇夜の中でなおその輝きを失わない銀に、俺は魅ってしまっていた。

「あら、そういうこと。なかなかやるじゃない」

――ルナが振り返り、俺に向かって微笑みかける。

その顔はし小馬鹿にしたようでいて、どこか嬉しそうで。

「月の神、ルナ。召喚者の危機を察し、契約に応じて參上したわ」

俺とルナの語は、ここから始まった。

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