《召喚チート付きで異世界に飛ばされたので、とりあえず俺を転移させた神さまを召喚することにしました》第8話 召喚士の特権

幸い、俺はこの世界のことを全くと言っていいほど知らない。

話題に事欠くことはない。

「ところで話は変わるが、武の鑑定……のようなことはできるか?」

「鑑定ですか? 私は専門ではないのですが」

「簡単にでいい。召喚したものがどの程度の品なのか把握しておきたいのだ」

石の剣も木の棒も大した価値があるとは思えないが、一応見てもらうことにする。

鍛冶屋の目なら、俺にはわからないこともわかるかもしれないしな。

「なるほど。わかりました」

「では、とりあえずこれを」

そう言って、俺は椅子に立て掛けてあった石の剣を差し出した。

フィンを助けたとき、召喚で呼び出したものだ。

パパさんは石の剣を手に取ると、眉を寄せた。

「これはあまりいい品ではありませんね」

「やはりそうか」

「全的にさが目立ちます。真っ當なドワーフであればこんな適當な仕事はしないでしょう。打ち直すこともできなくはないですが、石素材であれば一から作ってしまった方が安上がりですね」

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「な、なるほど」

相當よくない品のようだ。

溫厚なパパさんがここまで言うとは。

職人だからか、品を見る目は厳しいのか。

とはいえ、今の俺は無一文だ。

悪品でもないよりはあるほうがいい。

一応石の剣もインベントリにれておくことにする。

「次はこれを」

俺が次に取り出したのは、木の棒だ。

持ち運ぶのも面倒だったので、折ってズボンのポケットにれていたものである。

次からは折らずにそのままインベントリにれておこう。

もう二度と召喚したくないが、どうせ顔を合わせることになるだろうし。

「ふむ、初めて見る木材です。とても軽いですね。うーん、それ以上のことは、見ただけではなんとも言えません」

「……なるほど」

ただの木の棒のようだ。

やはり、あまり用途があるとは思えない。

「召喚で出てくるのが大抵それでな。処分に困っている」

本當に困っている。

心の底から困っている。

しかし彼の話を聞く限り、薪ぐらいにしか使えなさそうだ。

ゴミガチャめ……。

「召喚士の方がこんなものを召喚するなどという話は、聞いたことがありませんが」

「そうなのか?」

そんなことを言われると悲しくなってくる。

俺だって好き好んで木の棒を召喚しているわけではないのだ。

もっとかっこいい武しいです。

「ええ。召喚士ギルドに在籍しているような召喚士であれば、そちらの石の剣のような石製の武が最低ランクの召喚品かと……」

木の棒を召喚するどころか、石の剣が最低ランクの召喚品だという。

さすがにつらくなってきた……。

いや、今はそれよりも気になることがある。

會話の中で、なにやら聞き覚えのない単語が飛び出した。

「召喚士ギルド? そんなものがあるのか?」

「ご存知ないのですか? ……ああ、そういえば遠方からいらっしゃったのでしたね」

俺の設定を思い出したのか、納得したような表をしている。

パパさんにだけ納得されても困るのだが。

「あ、ああ。よければ教えてもらえるとありがたい」

「召喚士ギルドは、文字通り召喚士のジョブを持つ者が在籍するギルドです。私もあまり詳しくは知りませんが、召喚士の安全と利権を守っているそうです」

「召喚士の安全と利権?」

イマイチ話が見えない。

どういうことなのだろうか。

「召喚士は主に依頼者の霊石をとして召喚を行います。しかし、召喚には依頼者とのトラブルがつきものです。召喚士ギルドはそういった召喚士の安全を保障し、取引の仲介を行う組織だと考えていただければ」

「ん? 霊石を持っている依頼者が、召喚士に召喚を依頼するのか?」

なぜガチャを引くのに、いちいち召喚士に依頼するのか。

自分で引くより召喚士が召喚したほうがよりよい武が手にりやすいとか、そういうことだろうか。

「當然でしょう。霊石を使った召喚は、召喚士しか行うことができないのですから」

…………えっ。

「……待て。霊石を使った召喚は、召喚士しかできないのか?」

「もちろんです。というより、召喚士は霊石を使った召喚が行えるからジョブとしてり立っているのです」

「な、なるほど」

そうなのか。

ここに來て明らかになった新たなる事実。

ガチャは召喚士じゃないと引けない。

言われてみればそうか。

誰でも召喚できるのなら、召喚士などというジョブの存在意義はない。

というより、俺の中で召喚とガチャがごっちゃになっていた。

この世界における召喚=日本におけるガチャ、という認識が正しいのだ。

ならやはり、俺は召喚士を選んで正解だったのだろう。

召喚士ギルドに行って召喚を依頼するにしても、霊石の數が多すぎる。

なにせ57億個もあるのだ。

短い期間で何度も通うのも不審がられるだろうし。

召喚にトラブルがつきものというのも納得がいく。

召喚した結果ゴミのようなものしか出なければ、依頼者もいい気分ではないだろう。

「召喚士以外で召喚を行えるジョブは無いのか?」

「召喚師サモナーという、召喚士の上位職が存在すると言われています。私も聞いたことしかありませんが」

「召喚師サモナー? それはどうやったらなれるんだ?」

「さあ。そこまでは私も……」

ふむ、召喚士の上位職か。

レア裝備の出現率が上がるのであれば、ぜひともそちらに転職したいところだが。

條件がわからない以上、今すぐにどうこうということは難しいか。

「あとはこちらもおとぎ話のようなものですが、初代勇者も召喚を扱うことができたそうです。もっとも、武だけでなく神を召喚したという逸話が殘っているくらいなので、信ぴょうは怪しいものですがね」

「なるほど」

そんな話もあるのか。

一応頭の片隅には置いておこう。

なんせ俺自、勇者になることを願って召喚されたらしいからな。

今のところ、ほとんど木の棒を召喚することしかできないが。

「ちなみに、木の棒が召喚されるというのは、どういうことだと思う?」

「うーん、そうですね。私にはなんとも……」

パパさんも困ったような顔をしている。

さすがにわからないか。

わからないというか、気を遣ってくれているのかもしれない。

俺は最低ランクの召喚品もロクに呼び出せない、落ちこぼれ召喚士ということなのかもしれない。

涙が出そうだ。

「パパー、ソーマさーん! ごはんできたよー!」

「ああ。ありがとうフィン。ソーマさん、し手伝っていただいてもいいですか?」

「あ、ああ。もちろん」

し凹んでいたが、どうやら飯ができたらしい。

考えてみれば、こちらの世界に來てから初めての食事だ。

それを思い出すと、級にお腹が減ってきた。

皿やコップを出すのを軽く手伝う。

誰かと一緒に夕食の準備をするなんて何年ぶりだろうか。

準備と呼べるほどのものでもないのだが。

夕食は野菜のスープにサラダ、それとパンだ。

量こそさほどないものの、見た目に大きな違和はない。

「それじゃあ、いただきます」

「はい。どうぞー」

パパさんの行儀のいいいただきますを見て、フィンが笑顔をこぼしていた。

この時間になっても、フィンの母親は見當たらない。

もしかしなくても父子家庭なのだろう。

その代わりに、この家ではフィンが臺所を背負っているのだ。

「それじゃあ、俺もいただく」

「はい。どうぞ」

『いただきます』すら言えない言語能力に若干の悲しみを覚えながらも、俺はスープを口に運ぶ。

「うん、うまい」

「ほんとですか? ありがとうございますっ!」

お世辭は抜きにして、普通に味しい。

家庭的な味だ。

農村部でこれなら、この世界の食レベルは日本のそれとそこまで大きな差はない気がする。

夕食のあとは食を洗う。

三人分だからすぐに終わるだろう。

「そういえば、この水はどこから引いてるんだ?」

「ああ、この家の水は魔晶石ましょうせきを使ってるんですよ。だから別に水を引かなくても大丈夫なんです」

「なるほど」

いや、なるほどじゃねえ。

また謎の単語が飛び出した。

「ところで魔晶石っていうのは何だ?」

「魔晶石というのは、大気中の魔力が結晶化したものです。たとえばこの水魔晶石みずましょうせきだと、こうやって刺激するだけで水が出てきます」

そう言ってフィンがレバーを引くと、蛇口のようなところから水が出てくる。

ここからでは見えないが、レバーの先が水魔晶石にぶつかるようになっているのだろう。

ぱっと見では日本のそれとほとんど変わらない。

「すごいなこれは」

「都市に行けばいっぱい売られてますよ。安いですし。消耗品なので、けっこう頻繁に買い換えないとダメなんですけどね」

消耗品なのか。

さすがにずっと水が出続けるというのは無理なのだろう。

それにしてもファンタジーすごい。

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