《召喚チート付きで異世界に飛ばされたので、とりあえず俺を転移させた神さまを召喚することにしました》第25話 神さまつょぃ

今の俺の心を、どう表せばいいのだろう。

目の前にある景が信じられない。

こんな都合のいい現実があるはずがない。

そう思っていても、確認せずにはいられなかった。

「本當にルナなのか?」

「なによ、疑ってるの? だいたい前から思ってたけど、軽々しく名前で呼ぶんじゃないわよ。ルナ様と呼びなさい」

「……ルナだ」

「ちょっと、どういう意味よ!」

相変わらずの刺々しい態度を見て、目の前にいるがあのルナなのだと確信する。

き通るような白いに、ガーネットのように輝く赤の瞳。

腰のあたりまでびた、長い銀の髪をツインテールにしている。

長は低く、その小さなれただけで折れてしまうのではないかと錯覚させるほどだ。

そんな彼の全を、見事な裝飾の施されたドレスが包んでいる。

その姿は、まさに地上に降り立った神と呼ぶに相応しい。

いや、実際に月の神なのだが。

「――月の神、ですって?」

そんな俺たちの様子を靜観していた――ディアナが、ようやく聲を上げる。

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その表にあるのは驚きと困に他ならない。

先ほどまでの勢いはどこに行ったのか、ディアナは完全に直している。

今なら俺でも一発叩き込めるのではないかと思わせるほど隙だらけだ。

「あー、ルナ。俺は今とても困っている。助けてくれ」

「ふーん。そうなんだ」

俺がそう言うと、ルナは微笑を浮かべた。

これ以上ないほど意地悪そうな笑みだ。

ものすごく嫌な予がする。

「まあ、召喚してもらったみたいだし、助けるのもやぶさかじゃないけど。助けてほしいなら、それなりの誠意を示してほしいものね」

「……的に何をすればいい?」

「うーん。そうね」

ルナは俺の顔を見ると、その視線を自分の足元に落とした。

俺もつられてルナの足元に視線が移る。

「ルナの靴を舐めなさい」

「……は?」

今なんつったこの神。

なんで俺がこんな極限狀態の中で、ルナとSMプレイに興じなければいけないのか。

まるで意味がわからない。

俺が反抗的な顔をしたのが気にらなかったのか、ルナはすました顔をで言葉を続ける。

「嫌ならやらなくてもいいのよ? やらなかったら、契約が無効になるだけだから」

「理不盡すぎるだろ! 俺このままだと殺されるんだぞ!」

「でも、正式な契約に口づけが必要なのは事実なのよ。やってくれないと、ルナは天界に帰らないといけなくなるわ」

ルナが悲しげな表でそんなことを言っているが、俺は誤魔化されない。

さっきあなた口づけじゃなくて、靴舐めろって言いましたよね?

というか本當にそれが必要なのであれば、

「契約に口づけが必要なだけなら、手とかでいいだろ!」

「あっ……」

俺はルナを多強引に引き寄せ、その右手に口づけした。

これで文句ないだろう。

ルナは顔をし赤くして、俺の突然の行に抗議する。

「ちょっと! ルナはまだ心の準備が……」

「もうやっちゃったものは仕方ないだろ。大人しく契約されてくれよ」

「まったくもう……。仕方ないわね」

ルナは渋々といった様子で、ディアナの方を見る。

その目は、俺を見るときよりとても冷たかった。

「あれを倒せばいいのね?」

「ああ。でも大丈夫なのか? あいつめちゃくちゃ強いぞ」

タルクを使う暇もなかった。

つまり俺には、奴の攻撃を見切ることはできないということだ。

しかし、ルナは鼻で笑った。

なんだか々とお変わりないようで安心する。

「ただのサキュバスでしょ。ルナの敵じゃないわね」

「それは頼もしいな」

し不安はあったが、ルナがそう言うのであれば大丈夫なのだろう。

俺は鉄の剣を構えながらも、ルナのお手並みを拝見することにした。

「まずは後ろの奴らからね」

そう呟き、瞳を閉じたルナの周囲に、一瞬にして無數のの球が現れる。

赤、青、緑、黃、橙、紫、水――そのも様々だ。

「おぉ……」

これは魔法なのだろうか。

詠唱なども全くしていなかったが。

あまりにも幻想的な景に、俺は目を奪われてしまっていた。

無數のの中心に立つルナは、それだけで周囲の生きを惹きつける魔力のようなものを持っている。

それは、人間離れした貌のせいだけではないような気がする。

それは敵も同じだったようで、男たちはもちろん、ディアナまで目を奪われていた。

そんな隙を、ルナは見逃さない。

ルナはゆっくりと目を開き、その口元を歪める。

「これを使うのは本當に久しぶりだから、加減を間違ったらごめんなさいね」

「っ! やりなさい! お前たち!」

「オラぁぁぁああああ!!!」

ディアナの號令と同時に、後ろに控えていた男たちが飛び出した。

だが、あまりにも遅い。

ルナの魔法は既に完している。

宙に浮かぶの球たちが、一斉に男たちに襲いかかった。

「なっ、なんだ!?」

ルナの放ったの球が男の頭部を覆うと、男は糸が切れた人形のようにその場に倒れこんだ。

同じように、次々と男たちがの球にれて意識を失っていく。

その中にはガレウスの姿もあった。

あまりにも一方的な展開に、開いた口が塞がらない。

見たじ男たちは生きているようだし、これでもルナは手加減しているのだろう。

「ど、どうなってるんだそれ」

「安心しなさい。寢てるだけよ。朝までは起きないでしょうけどね」

ルナのその説明に、俺はホッと息をで下ろした。

あまり心配はしていなかったが、「廃人になっただけよ」とか言われたらどうしようかと思った。

あれだけいた男たちは、たった一回のルナの攻撃によって壊滅していた。

様々な格好をした男たちが大量に倒れこんでいる様は、はっきり言って異様な景だ。

「すごいな……」

そんな慘狀を見て、俺の口からはそんな小學生並みの想しか出てこない。

文字通り、格が違う。

これが神の力なのか。

「すごいでしょ。でも、ちょっとだけ甘く見てたみたい」

「え?」

ルナの視線の先には、そんな慘狀の中にあってもいまだに立ち続けているの姿があった。

ディアナだ。

「……くっ」

周りの慘狀を見て、苦蟲を噛み潰したような顔をしていた。

本人に目立った外傷はなく、ルナのの球による攻撃はレジストされたようだ。

基準はいまだに謎だが、さすがにLv.66ともなるとかなり強いのだろう。

「さすがですね。私の兵隊たちをたった一撃で無力化するとは」

「ルナも驚いたわ。あんたも倒れてくれると思ってたんだけど、アテがはずれたわね」

優雅な微笑を浮かべてディアナを賞賛するようなことを言っているが、その目は笑っていない。

ルナは周りの男たちのするついでに、彼のことも無力化しようと考えていたらしい。

末恐ろしいな。

「……今日のところはお暇させていただきます。でも、これで勝ったと思わないでくださいね」

「あら、そう。つまりルナの勝ちね」

ルナがそう言うと、ディアナは苛立ちを抑えるようにを噛む。

しかしそれでひとまず怒りは収まったのか、彼の姿は闇夜に消えていった。

殘されたのは、俺とルナだけだ。

周りに転がっている男たちを除けば、だが。

「終わったわよ」

「あ、ああ。ありがとう。ルナが來てくれたおかげで助かった」

「ふふ、當然ね」

上機嫌に笑うルナを見て、俺は心の底からルナに謝していた。

あの時召喚されたのがルナではなかったら、俺はきっと今頃この世にいなかっただろう。

そう考えると、背筋に冷たいものが走る。

「大丈夫よ。あんたは生きてる。今もその小さな頭で、くだらないことを考えられてるんだから」

「……そう、だよな。生きてるよな」

に手を當てると、確かに心臓の鼓じる。

俺は生きている。

うん。大丈夫だ。

「あ……」

「ん? なに、今の音?」

「いや、なんでもない」

安心したせいか、突然腹の蟲が鳴った。

空腹すら忘れていたようだ。

そういえば、フィンのことをすっかり忘れていた。

まだ公衆浴場の近くで俺のことを探しているのだろうか。

大丈夫だとは思うが、ディアナも完全に倒すことができたわけではない。

フィンとも早く合流したほうがいいだろう。

っと、そうだ。

肝心なことを忘れていた。

「……? なに?」

「俺なりのけじめだ。これからもお世話になるだろうからな」

俺が手を差し出すと、ルナは骨に眉を上げた。

しかしすぐに「仕方ないわねぇ……」などと言いながら、俺の手を取る。

ルナの手は溫かかった。

「これからよろしくな、ルナ」

「はいはい。よろしくね」

こうして、俺とルナはこちらの世界での出會いを果たしたのだった。

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