俺は三歳になった。大きくなったものだ。三歳の誕生日を迎えた日を境にお師匠様が來なくなってしまったが、これからは自分自で仙を磨いていく必要があるとのことだ。がんばろう。俺はそう意気込むのである。

俺は今、森の中にいる。一人でだ。子供一人で森の中にることは出來る。しかし、決められた範囲だけだ。で、俺はその範囲で森の中にっている。その區域は危険な生が出てこないと言われている範囲だ。だから、親もそこまで心配しない。特に俺は、魔法も使えるし、いざとなったら逃げだすことぐらいはできるだろうと思われているのだ。むしろ、そうじゃないとこの世界は生き殘れない。人同士の殺し合いで死ぬことはないが、他の生に殺されることが非常に多い。人間が絶対的な食連鎖の頂點にいるわけではないのだ。とはいえ、人間を食べるというよりも、返り討ちにあって死ぬということの方が何倍も多いが。まあ、仙の訓練としても森の中というのはいいところなのだ。自然の力に満ち溢れていて。

「よしっと」

俺は最近見つけた、ひときわ大きな巖の上に乗り、瞑想を開始する。すうっと、自然に溶け込むかのような覚の中に溺れていくのである。

ここは非常に心地がいい。森の中は基本的に木が日のを遮っているために薄暗いのだが、この巖の周囲には日差しがり込んできており、程よい溫かさをじることが出來る。日浴は生にとって重要な要素だからな。

森の中には自然のすべてが詰まっている。そのために、仙との相は最高であると言わざるを得ない。寒さも暑さも、溫かさも冷たさも、そのすべてがここに存在していた。その面の全てが知覚できるし、一面しか知覚できない。自然は微笑み、怒り、悲しみ、楽しんでいる。俺はそれをじるまでになったのだとしみじみと思うが、まだまだその程度では仙人とはいえないであろう。仙人であるが、仙人には程遠いゆるりとした存在であるのだ。だからといって急がない。時間の流れに沿ってゆったりとを乗せる。急ぐことに意味はない。過去も今も未來も、永遠に変わらずにいている。俺はそれを歩いていればいいのだ。

どれほどか。草むらから何かが迫ってくる音が聞こえてくる。俺は片目を開けてそれを確認すると、そこにはオオカミがいた。こちらをすんすんと鼻を嗅いで誰かを確かめているようだ。だが、なくとも彼の知り合いの中に俺はいないだろう。なにせ、俺自がオオカミと初めて遭遇したのだから。

魔かかを見分ける手段として最も簡単なことは魔力をみることである。や植は魔力が一か所にとどまりくことはない。そうでなければ魔である。魔は俺たちと同じように魔力を絶え間なくかしているからな。

で、俺の目の前にいるオオカミはだ。のそのそと俺の近くへと寄ってくると、俺の背中に重を預けるように橫になる。俺がたとえれたとしても、そこに嫌悪を示すということはしない。ただ、されるがままになることをけれたかのようにを預けているのであった。

「グルル……」

とても気持ちよさそうに目を細めている。

仙の基本は自然の力と俺の中に存在する力の換である。循環である。俺のにあるエネルギーを外に放出し、自然に存在するエネルギーを俺の中に取り込む。この循環が仙の源である。このときに発生する空間は他の生きにも影響を示し、疲労の回復など自然治癒能力の向上などがある。と、お師匠様が言っていた。

どうやら、オオカミはそれに本能で気づいているらしい。だから、俺に対して何の警戒も示していないのだろう。ただ安らぐように安心しきった顔で俺のそばに陣取っているのだから。俺でなければ、すぐにでも殺されて皮を売られてもおかしくはないだろう。だが、俺はそれはしない。彼に対する裏切りでもあるし、皮として彼を著たとしても、それはしくないように思えたのだからであった。

またお客が來た。今度は熊だった。これもである。

「がう」

一聲上げると近くの木にもたれかかって目をつむった。どこから足を運んできたのだろうか。たちにはこの空間を知覚する能力が備わっているのか。なくとも、この場所には危険な生が現れることはないと言われているのだから。だからこそ、どこからここまで遠出してきたのかが気になって仕方がなかった。もし見つかったら、二度とこの場所にることは出來ないだろう。俺はそれをわずかに恐れた。

小鳥たちもオオカミや熊に恐れることなく俺の肩へと乗る。誰もが目を細めこの快楽に抗うことをしないようであった。

俺は周囲を見渡すと、軽く微笑んで再び目を閉じる。自然の大いなる力をじ、自と同調させ、頂く。永遠に存在し続けるエネルギーの流れをじ続けることなのだ。

俺の瞳から涙がこぼれる。偉大なものに謝し、震え、俺の心をより強くする。そのための大事な儀式なのだろうと。

ゆったりとした永遠にもじる力の本流の中で、俺の神はゆっくりと溶け込んでいくのであった。