《天の仙人様》第16話 最初の友人

朝は森の中へとっていくわけだが、別に友達がいないからとかそういうことではない。たしかに、低位であるとはいえ俺は貴族階級である。だから、貴族の子息としか友達になってはいけないと思われるかもしれないだろう。だが、そんなことはない。自分の気の置けない友人を平民からでも手にれて自分のそばに置くべきであるという考え方がある。だから、積極的に平民とかかわりを持つべきであるという。まあ、金目當ての品のない卑しいものたちと関わる必要はないそうだが。そうでなくてはをもってかかわることが出來ないだろうからな。特に、俺は三男だ。平民と寄り深くかかわることになることだろう。だからこそ、平民と友を深めることを推奨されている。

で、俺は父さんの治める領地の村に足を運んでいる。この村の西の方角に自宅がある。何故西かというと、西へまっすぐ行けば王都に著くからだ。王城を上座の方角として、立地は決まっている。この村では裕福なものほど西に家を持つ。當然だが、俺たちの住んでいる村が父さんの領地、バルドラン領にある村で一番西だ。そこもしっかりとしないといけないそうで。この村の名前はイキレオウス村だったか。

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この村は、父さんの領地にある村で一番大きくはあるが、所詮は村だとしか言えない程度の広さであり、人が住んでいる場所よりも農地の方が當然広い。住んでいる人も全員が知り合いのようなものであり、小さなコミュニティーでまとまっており、都市部のようなせわしない世界からは隔離されたかのような場所である。ゆったりとした、時間の引きばした流れがこの村にはある。俺はこの村のこのゆったりとした時間も、空気も好きである。

「おはよう、アラン!」

俺を呼ぶ聲だ。そちらへと振り向く。そこには獣の耳としっぽを生やしている年が立っていた。

彼が俺の友達のルーシィだ。っぽい名前だがどうやら男のようで、たまに自分の名前がっぽいことに不満を持っている。まあ、ルーシィの顔も顔だからな。裝すればと見分けがつかないことだろう。年は俺と同い年だ。それもあって俺たちは仲がいい。とはいっても、仲良くなってからあまり日は経っていないが。

ルーシィは見ての通り獣人と呼ばれる種族である。獣人には耳や尾、牙が獣になっているタイプと、顔全てが獣になっているタイプの二種類がいる。ルーシィは前者である。

この違いはどうして生まれるのかというと、染が関わっているそうだ。だから、どちらが優伝とかそういうことではないらしい。また、獣人のハーフで獣人が生まれる場合、男親の場合は親のタイプが伝するらしく、親だと、どちらかに分かれるそうだ。その仕組みのおかげで、獣人がどちらのタイプで生まれるかを決めているのはだということは學會でも決定されている。覆ることはないだろう。

「どうしたのアラン? なにかおかしなものでも食べた? そんなことしちゃだめだぞ。アランは貴族様なんだからな」

ルーシィは俺の顔をのぞき込んでくる。どうやら、考え事をしている顔つきがなにやら彼に心配を與えてしまったらしい。それは申し訳ないことをしたと思うわけである。

「かわいいな」

「何言ってるんだよ! 男のオレにそんなこと言うんじゃないよ!」

からかいがいのあるやつだ。前は、そう言うと毆られたりもしたのだが、今では冗談だと割り切っているのか諦めたのか攻撃はしてこない。大聲で否定はするが。可げのあるやつである。だが、そのおかげで、今は俺が何か考え事をしていたということを忘れたように思える。

ルーシィの種族はハイエナの獣人だそうで。まん丸とした特徴的な耳があいらしいものである。本人の前では言ったりはしないが。これでも、ハイエナらしく骨までバリボリとかみ砕くほどに顎が強いのだ。骨付きの揚げ鳥なんかを買った時も、骨までぺろりと平らげていた。俺の骨も食べてくれた。間接キスだぞとか言ってからかったりはしない。

俺たちは東へと進み、草原へと出る。西には森があり、東には草原が広がっている。さすがに、森の中に村を築き上げたりはしていない。基本的に子供は草原で遊ぶ。

「遠くへ行くなよー!」

村のり口で警備をしている自警団のおじさんが大聲を出して俺たちに注意をする。この通りである。大人の目のあるところなのだから、安全だとみんなが知っている。子供は村の大人全員で育てるという意識があるのだ。だからこそ、大人は子供たちの手本になるような姿を見せるし、俺たちもそんな大人の姿を見て育つ。

「よし、ここにしようよ」

しばらく草原の中をウロチョロと歩いていたわけだが、ルーシィは立ち止まるとこちらへと振り向く。

俺は腰に差していたいた木刀を一本ルーシィに渡す。

ルーシィは將來ハンターになりたいらしい。今ぐらいの歳の子供らしい將來の夢だと言えるだろう。おそらく、男の子に聞けば、たいていの子がその職業を夢に答えることだろう。

ハンターとは、人間に被害をもたらしている魔を殺し、それに対する報酬や素材を買い取ってもらって生活をする者たちである。それだけなら、大したことはないかもしれないが、彼らは時たま、英雄譚の主人公として語られることがある。だからこそ子供に人気なのだ。

だから、ルーシィは剣の腕を磨いているのだそうだ。しかも、俺と一緒にパーティを組んでハンターとして一旗あげたいらしい。

貴族の三男だからな。親の領地はルイス兄さんが継ぐことだろう。だから、ハンターになったとしてもそこまで困ることはないだろうという彼の判斷なのだ。

というわけで、今日も一日チャンバラごっこをするわけだ。今の年齢から筋をつけるようなことをしてはいけないからな。かすことのほうが大事だ。

「よし、こい!」

ルーシィは木刀を正眼に構え、じっと俺のきを見る。俺はゆっくりと力を抜いてルーシィに相対する。

「はあっ!」

気合。踏み込み、全力で間合いへと近づく。そして木刀を思いきり振り下ろす。俺はそれをゆったりとした作で躱す。剣は飛び跳ねる。俺に狙いを定めて返ってくる。それはかがんで避ける。

ルーシィの剣撃は鋭く、早く、なされている。俺はそれを軽やかに避ける。人が風を切ることが出來ないように、自らを流れる風のごとく、ゆるやかに、ながらかに。

「くっ!」

苦悶の表を上げながら、疲れなどじさせないようなきを見せる。獣人の力というものは素晴らしい。數分間程度なら激しい運を休まずに行えるのだ。しかも、魔力の力を借りずにである。さすがに仙人にはかなわないが。

ルーシィは一旦離れて、呼吸を整える。

「はあ……はあ……」

舌を出して息を荒く、熱を放出していく。

「強いなあ、アランは。こっちが攻撃しているだけなのに、一撃も當たらないよ」

ルーシィは俺に心している風に言った。お師匠様から武を叩き込まれてきたからな。今はそれすらも教わっていないが、型を練習したり、分解したりと自分で出來ることをしているだけである。それに、このように実戦練習が出來るのだから、戦闘勘が鈍らないようにいろいろなきを試しながら戦っているというものである。丁度いい特訓相手なのである。

「まあ、俺は魔法が使えるからな」

先ほどの打ち合いでは魔力なんてかけらも使っていないが。だが、魔法を使える人間とそうではない人間では実力差は大きく開く。そういうことで、今の実力差は魔法の差だと思わせることで、ルーシィが変なショックをけないようにしているのである。俺なりの心遣いである。

「魔法なあ。いいよなあ。オレも使えるようになりたいよ」

ルーシィは母親から魔力の扱い方の特訓をけているそうだが、いまだに上手く魔力をかせないでいるらしい。これは俺がどうこうアドバイスできることではないので、頑張ってほしいとしか言えない。

「隙あり!」

ルーシィは飛び掛かってきたが、俺は難なく避ける。そう簡単に攻撃を當てさせてあげるほど、俺は優しくはない。彼は悔しそうな表を見せているが、だからといって手加減はしない。それでは俺の特訓にはならないだろう。

それからも、空が赤くなるまでチャンバラごっこは続いた。

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