《天の仙人様》第53話
ハルには一足先に帰ってもらった。俺とルーシィが二人きりになることに不満があるようであったが、出來るだけ、二人きりでいなくてはならなかった。そのために、ハルには帰ってもらったわけだが、説得するのには骨がおれた。一緒に風呂にるのだから許してくれと、頭を下げて何とか納得してもらった。
そういうわけもあり、俺とルーシィの二人で屋敷への道を歩いている。しっかりと、手をつないで、それが誰にでも見えるように堂々と歩いている。ひそひそと話す聲が聞こえる。おそらく、ルーシィの悪口なのであろう。俺は、そこまで好かれているのかとしうれしくはなったが、だからといって、彼に対する悪口を許容する必要はない。特にでこそこそと話しているのが好きではない。ハルは、目の前にいるというのに、堂々と近寄るなと言い放つ。俺と二人でいたいがためにだ。だが、彼はそれに対抗するように、俺に抱きついたりするので、なんとなく、仲良くやれているのではないだろうかと思う。俺がいない時では仲良く話しているそうだし。俺の目の前でもしてほしいが、それが彼たちのスキンシップなのだろうと諦める。
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俺たちは、近くにある適當なベンチに腰を掛けて、人通りを見る。俺たちと同い年位のたちが嫌悪を隠すことなくこちらを見ている。明らかに、ルーシィに対する視線であることが分かる。俺はそれに対してわずかながらに顔をゆがめてしまうが、そのもまたすべきものであるために、すぐににこやかなものへと戻る。彼に対して怒りはない。あるのだが、それは些細なことだ。大きく変わるほどではない。
俺は、ゆっくりとルーシィの腰に手を回して抱き寄せる。彼は、顔を赤く染めながら、俺の肩に頭を乗せる。俺は優しく頭をなでていく。彼の髪はやわらかくふんわりとしたである。彼のを表すようにぴこぴこと耳がいている。優しく耳をなでる。ゆっくりと、貴重品を扱うように。彼の吐息がさわやかなものとして俺の気持ちを落ち著かせていく。
俺たちがこれほどまでに、著しているというのを見ているたちは、大でずんずんとこちらへ近づいてくる。俺はその様子をにっこりと笑って眺めている。やはり、ここまでし合っている姿を見せれば、向こうから寄ってくるのはわかっていた。きっと、真実を教えに來るのだろう。俺がもう知っている真実を。たとえ、知らないとしても結果は変わらない。だが、そういう努力を見せる彼たちもおしいのだ。邪険に扱うことではないのだ。
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「アラン様!」
たちの中で一番背の大きい子が俺に呼びかける。おそらく、たちのボス的な存在なのではないかと思う。やはり、でも力の強い人は上に立ちやすいのだろうな。彼は、ルーシィをきっと睨み付けると、俺に目を向ける。俺たちは目と目が合う。俺はにこりと笑顔を向ける。やかんのように湯気が出ている。その後ろのたちも視線を逸らしたり、顔を赤らめたりとしている。俺の顔はそれほどまでに魅力的なのだろうか。そういえば、鏡を見たことがなかったような気がする。別に高級品というわけではないはずなのだがなあ。後で見るとしよう。
「どうしたんだい? そんなに怒って。何か嫌なことでもあったのかな? そんな顔をしていたら、もったいないよ。笑わなくちゃ」
俺は、らかな音をもってたちに話しかける。変に、怖がらせることに意味はないからね。だから、和な顔を作って安らぎを持たせるように努力をしているわけである。後ろに立っているの子たちはぽーっと俺のことを見ている。うーん、仙人の顔ってどれほどしいのだろうか。傾國の男子なのだろうか。クレオパトラレベルのを持っているとしたら、なかなかどうしたものか。まあ、村のことしか知らない小さなの子たちだ。大人になれば、俺程度の顔で惚けることはないだろう。今の時代だけの特権だな。ならば、その特権をバリバリに使うのも問題はあるまい。
「あ、アラン様! ルーシィは……そのは、あなたに噓をついています! だましています! 大ウソつきです!」
俺の予想通りのことを大聲で話し出したな。しかも、新しい事実でもなんでもなく、ルーシィ本人から直接聞いたことである。俺は別に表を変えることなどせずに、続きを促していく。すこし、変に思っているような気もするが、俺に促されたから、続きを話してくれた。
「このは、自分のことをだと知っていながら男だと噓をついたのです! そして、アラン様に近づきました! そうやって、わたしたちを出し抜いてアラン様ととっても仲良くなり、婚約者になったのです! しかも、アラン様が男だと勘違いをしていたために、油斷をしていたために、え、え、エッチなことを警戒させることなくできたのです! そのために、アラン様は婚約者にならねばならなくなり、そのは婚約者となることが出來たのです! そんな噓つきと結婚したら、アラン様は幸せになれません!」
は顔を真っ赤にしながらこちらを見ている。人前で大聲を出すなんて恥ずかしいから、気持ちはわかる。しかし、それ以上にルーシィを許せないという思いが強いのだろうということもわかる。彼たちの怒りの矛先がどこに向いているのかが視線からも態度からもわかるからだ。それに、先ほどから、あのという時にちらっとルーシィを見ていたしね。だからといって、その理論に納得できるものはない。それは俺の気持ちというものを理解していないからこそできる暴論であった。
「なるほど。……なら、どうすれば幸せになれると思う。俺が、何をしたら幸せになれると思う?」
「それは、ルーシィと婚約を解消することです」
「そんなことなの? そんなことをしたら俺は幸せになれるの?」
「え?」
「アラン!」
ルーシィが何か驚いたようであったが、しっと人差し指をに當てる。それで彼は靜かになってくれた。今の質問は、彼たちが俺のことをどう思っているのかを知りたいから聞いただけである。別に、婚約者になろうなどとは思っていない。なくとも、彼たちではだめな理由があるのだ。
「なら、わたしがなります。ルーシィと婚約を破棄する代わりに私と婚約します。そうすれば、アラン様は婚約者を一人失いことはありませんし、それに……わたしなら、必ず、アラン様を幸せにして見せます。自信があります。ルーシィみたいな噓つきとは違います」
と、リーダーらしいがそんなことを言っている。後ろのたちは白い目で見ているのには気づいていないようであった。まあ、彼が同じ平民のルーシィに嫉妬しているからこんなことを言っているのだろうということはわかった。ハルみたいなものである。だからといって、婚約者にしてあげればいいかというとそういうわけでもないし、彼はダメだろう。なくとも、今は。
俺はにこりと笑った。それで彼の意見がけれられたのだと思ったのだろう。恥ずかしそうに全を真っ赤にさせながら、輝くような笑顔で俺のことを見ているのだ。しかし、現実というものを教えるのである。それは非常につらいが、それをしないと、ダメなことは理解しているのだ。だからこそ、あくまで笑顔でそれを伝えていくわけである。
「なるほどね。わかったよ。でも、俺はルーシィが好きだから、ルーシィと結婚することにするよ」
「なんで! アラン様をだましたのですよ!」
「騙していたらしいけど、出會った當初から好きだったからね、騙されたことも、可らしいの子のいたずら程度にしか見えないんだ。それに、そうやって噓をついてまで俺と仲良くなりたいって想ってくれているんだよ。これは運命だと思うんだよね。ね、そう思うだろ、ルーシィ」
「う、うん。あたしと、アランは結ばれる運命だと思う……」
最後がぼそぼそとつぶやいたせいで、聞き取りづらかったが、彼の今にも発しそうな顔を見たから許すとしよう。
俺は、たちに囲まれているために、それ以外の人たちには見られていないということを確認する。つまり、目撃者はたちだけになる。ならば、しよう。
というわけで、俺はルーシィに顔を近づけ、同士でれ合わせる。簡単に言うと、たちの目の前でキスをして見せたわけである。軽くであるが。ただ、れ合わせただけのらかな軽いキス。しかし、それでも効果は大きい。
「あ、ああ……あああ……」
目の前のはあまりの出來事に固まってしまっているらしい。仕方がない。同い年の年が目の前で接吻をしたのだから。し合っている証をしたのだから。脳みその処理が追い付かなくてもしょうがないことなのだ。
彼たちは、悲鳴を上げて逃げていった。その悲鳴は恐怖からではなく、喜びを面に含んでいるかのようなものであった。
「うん、これでルーシィに悪く言う人はいなくなったんじゃないかな」
というのは楽観的だろうか。しかし、キスをするということ、人前でそれを見せるということの意味がどれほど重大なことを表しているのかを知っているのならば、俺たち二人が、どれほどまでに深くし合っているのかということを理解するのは難しくないのだ。だから、もう気にしなくていいと思うわけだ。そのは誰にも揺りかすことのできない強固なものとして存在するのだ。だからこそ、証明するのに最も簡単なことであるのだ。俺は、全然この件に関しては心配していないのである。
俺は、ルーシィへと視線を向けると、あわあわと口をパクパクかしている姿があった。
「大丈夫かい、ルーシィ?」
「あ、あの……その……人前で、キス、しちゃった。しちゃった? しちゃった……そ、そんなの、恥ずかしくて、もうお嫁にいけない」
「何を言っているんだい? ルーシィは俺のお嫁さんでしょ? だから、大人になったら、俺と結婚するんじゃないの?」
「あ、そう、でも……あわわわわ……」
彼は混しているかのように思考も視界も巡っていた。これは、し大変なことになってしまったと、後悔してしまったが、彼が堂々と村を歩けるようになるにはこうするしかなかったのではないかと自分を正當化させていく。
「ほら、ルーシィ。帰ろう。早く元に戻らないと……またキスするよ?」
俺は、最後の言葉だけ耳元に囁くように言う。と、彼は立ち上がるわけでもなく、期待するような目であわあわと呟いているばかりであった。今は、たちがいないから、大人にみられるかもしれないのだが、彼のねだるような目に逆らえないのだ。おしいのだ。らしいのだ。
「わかったよ……」
「ほんと?」
「もちろん」
俺は腕で顔を隠すようにしながら、彼と口づけをわしたのであった。
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