地面はただひたすらに白かった。さくさくと、音を立てながら庭を歩いている。足跡が地面についているのだ。俺は空を見る。同じほどに白かった。地面と空、そのすべてが白く。それ以外にはなかった。白い世界とはこれのことを言うのだと納得できるほどに視界には白という報しか存在しないのである。ひらひらと、空から降ってくる。俺はそれを一つ手のひらに置き、見てみる。結晶が幾何學的にしく形作り、それを眺めているだけで何時間でも時間をつぶせそうであるとじていた。

がブルリと震えた。息も白く吐き出される。防寒著を著ているから、恐ろしいまでではないのだが、やはり寒いものは寒いのである。普通なら屋敷で溫まるのも悪くないだろうが、俺はこの景を見ていたかったのだ。

ハルたちはし遠くの場所に三人で遊んでいる。正確には駆けまわっているというほうが正しいかもしれない。アリスが生み出した人形……雪で出來たウサギを周囲に引き連れて遊んでいるのだ。雪のふわりとしたを殘したままにウサギとして形作っているのだ。やはり、は良いのだ。俺もったが、冷たいウサギであった。冷たいという生命の正直から一歩外れたところにいるのだとふと思った。生きていないのにも関わらず、まるで生きているかのようにくこの姿に命を見てしまったということであった。

俺はその姿を眺めながらなんとなく雪を固めながら椅子を作っている。ゆっくりと腰かけてこの景を見ているのも悪くはないと思ったわけである。そうしてできた椅子は、切り株のようでずんぐりとしたものであった。椅子と思い浮かべる姿をしているわけではないのだ。ただ、腰かけるものというものでしかない。だが、それも椅子であろう。

白い地面は、雪を積もらせていて、らかに綺麗な白を見せていたのだが、彼たちが駆けまわるたんびに雪がえぐれて、飛び散り、地面はボコボコになっていく。だけではなかった。歩くだけ、走るだけではないのだ。全てを使っているのだ。ゴロゴロと転がるように巻き込まれて、だんだんと汚れが目立つようになっていくのである。しかし、それもまたしいものであった。変質であるのだ。

俺もまねするように地面へと倒れ込む。俺のに沿うようにして、雪はつぶれるのだろう。形作られるのだろう。跡が殘ってしまうのだ。しかし、今も絶えず振り続けている。俺たちが付けた跡は、だんだんと郭がぼやけていき消えていく。それもまた良いのである。形が殘り続けることは難しいことを伝えているのだから。俺はじっと空を眺めているのだった。こちらへと雪が飛んできているのだ。ゆっくりと直線的に向かってきているようにじて仕方がない。橫に振っている雪というのは初めて見たが、それもまた趣があるだろうと思える。

ルーシィがこちらへ近づいてきており、俺の隣に寢転がる。そして、ぎゅっと抱きしめるのである。防寒著によって、は普段よりも太くなってしまっているのであるが、それでも、彼は力を込めて俺に抱きついていた。ゆっくりとが著しているのをじるのである。そこから熱をじている。俺は外にいながら溫かさをじているのだ。

「アラン、今日は寒いね。でも、アランと一緒にいるとあったかいよ。アランを抱きしめていると、とっても溫かくなるの。がポカポカと熱を持って來ていてね、の奧底からきゅっとしているの。アラン、大好き。この気持ちが暖かくしてくれているのだと思う。だからね、アラン。あたしは、アランのことが好き、好き好き、大好き。アランと一緒にいられてうれしいよ。嬉しいなんてもんじゃないかもしれない。なんていえばいいのかわからないけど……たぶん、世界で一番幸せなんだと思う」

彼の言葉を聞いて、俺も負けじとばかりに彼を抱きしめる。二人の熱がお互いがお互いを溫めるようにわっていくのをじる。おしくらまんじゅうであった。二人だけで出來る。が俺たちの熱をより増幅させていくのをじるのである。

俺たちの顔がお互いに向き直る。じっと視線を合わせていく。彼の吐く息は白いのであった。俺も同じように息を吐くと、白い。その二つの息が俺たちの間で混ざり合って溶けて消えてしまう。俺たちはそれを見つめていた。再び息を吐き出す。そして、また絡まり合い混ざり合い、溶けて消えていくのだ。しい変化であった。消えつつもそこに殘っているのだ。ればじることが出來ると確かに思うことが出來るのである。

息のわずかな熱はお互いに屆かない。しかし、俺たちの中心にその熱の力が混ざり合って存在しているのをじる。そこにあるのだ。二人のが混ざり合って、そこにあるようなものである。

俺たちの目は逸れることなくお互いを見ている。じわじわと近寄っている。鼻がくっついた。そこから熱がわされているのだ。お互いを行ったり來たりとしているのである。舌が俺のにれる。

彼は恥ずかしそうに俺から離れる。俺は上を起こす。それに続いてルーシィもを起こした。俺は彼の手を小さく握った。彼とのつながりはまだ切れていないのであった。俺の想いがふらふらと、求めるように寄せられていくのである。それから背けることなく向き合うのだ。それはとてもしいことだと知っているのだから。

彼はゆっくりと力をれたり抜いたりしている。俺の手のひらはそれを正確に伝えていく。俺も同じように手のひらに力をれたりとしている。何かのメッセージを持たせているかのように信號を送り合うのだ。ただ、それだけであった。

俺たちは傍目には何もしていないように見えつつ、お互いだけが理解できるような靜かなコミュニケーションを取り合っているという事実に、酔っているのである。そのわずかな力が心地よいのだ。二人の世界でしか通用しない、二人だけの言語が生み出されているのである。それがたまらなくうれしくじているのである。

手を握ったまま腕を絡ませる。より著する。俺も自分から進んでさらに寄っていく。彼の方を向けば上目遣いで見ているのだ。彼のらしい瞳に吸い込まれていってしまう。にらかいものがれた。彼のであった。冷えた世界ですべてが固まるとも知れない中、その中でただ彼のらかさに俺は奪われているのであった。求めているのかもしれない。頬にれる。そして、がれ合う。再びらかく、らしく、しいのであった。

顔が離れる。視線はお互いを離すことなく見ている。顔が赤くなっている。熱を持っている。蒸気が出ているかのように錯覚すらさせるほどであるのだ。それがたまらないのであるのだ。

彼は目をつむる。そして、を突き出すようにして要求しているのであった。俺もそれに応えようと再び顔を寄せていくと、彼の顔はだんだんと離れていってしまった。犯人はもう一人の婚約者であった。

彼は怒っているわけではなかった。表からそれが伝わるのであった。羨ましくもあり、だがそれだけではない何かがあるようであった。彼だってわかっているのだろう。だが、それだけではないのだ。そういうであるのだ。だかららしいし、しているともいえた。

「二人でイチャイチャしていてずるいよ。私だってアランとイチャイチャしたいのに。一人占めはダメだよ」

「でも、ハルちゃん。ハルちゃんだってアランのこと一人占めしたいでしょ。今日はあたしが一人占めしてもいいでしょ」

二人は頬を膨らませるようにしながら、俺の腕にしがみつくようにしている。両手に華の狀態である。俺は彼たちを引き寄せてより著するようにする。これで溫かい。寒さをわずかに緩和させることが出來るだろう。

やはり、ハルは嫉妬しているのである。二人きりになると、俺のを常に奪ってくるような積極を見せているハルなのだが、それでもルーシィが俺と二人きりになったからと言ってキスをしたのならば、すぐ嫉妬に駆られるらしさを持っているのであった。

「それに、今日朝起きた時におはようのキスとか言ってしていたじゃん。あたし、あの時起きていたからね。あんなにエッチなキスをしちゃってさ。ハルちゃんって、本當にスケベだよね。アランのことで頭がいっぱいなんでしょう？　頭の中できっと、もっとエッチなことをしているんだよ。変態だよねえ。毎日毎日、変態なことばかり考えてスケベさんなんだね」

「そ、そんなことないもん！　そんなエッチなことなんか考えてない！　ルーシィこそ、最近発期にっているからって、そんなことばかり考えているんじゃないの？　アランのクローゼットを開けて顔を突っ込んでいたの知っているんだから！　そうやって、エッチな気分を発散させているんでしょ！　どっちが変態なんだか」

「は、はあ！　そ、そんなことするわけないじゃん！　ハルちゃんと一緒にしないでよ！　あたしそんなエッチなの子じゃないもん！　そういうことをするのはハルちゃんの方でしょ！」

俺は靜かにさせるように二人の顔を抱き寄せる。髪の匂いが俺の鼻をくすぐっている。彼たちのの子らしい匂いである。二人とも、それだけ俺をしてくれているということでもある。別に、そのことで何か思うことがあるわけがない。でも、そうやって、恥ずかしそうにしているのがとてもらしいのも事実である。

俺は、二人に順番に口づけをする。二人して、顔を赤く染めながら、こちらを熱っぽく見つめている。彼たちは同時に俺の頬にキスをする。寸分の狂いもなかった。二人は似た者同時なのだと深く実させられる。それを指摘するでもなく、彼たちもまた気づいたのだろう。むっと頬を膨らませてお互いを見ているのである。

「しているよ、ルーシィ、ハル。どんなの子だとしてもね」

俺の言葉で何かが外れてしまったのか、俺の元に顔をこすりつけるようにしている。俺はその二人の頭をゆっくりでているのであった。