《ただの世界最強の村人と雙子の弟子》第0話の16 勇者召喚

===ユウキ視點========================

「え~?そんなことがあったんですか?」

「噓だと思うだろ?実はこれは現実なんだよな~」

「まだあるぜ。あれは珍しく魔たちがこの村を囲うように襲って來た時なんだがな」

「あと、これは外せないわよねー。ほら、あのいけ好かない王がいる國とのアレよ」

「「「「「「「「「あぁ~あ、確かにな」」」」」」」」」

俺は今、ティフィラが村の中心辺りの広場で、村の人たちと仲良く話しているところをただ、し離れた所から見ている。

俺が昨日まで心配に思った事なんて、馬鹿馬鹿しくなるほど仲良さげに話している。

「………はぁ」

(お~?どうしたんだ~?王が危懼してた問題は見事に解決しているように見えるが、何に溜息を吐いてるのかな~?)

何故か朝は話しかけて來なかった攻武が、からかい口調で話しかけて來る。

守姫、技姫。攻武をボコっとけ。

(了解しました!)(承知しました)

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(はぁ!?おいっ!同じ同類として手加減くらいはしてくれるんだよな!?)

手加減は要らねぇぞ。あ、でも『ソウルウェポン』として使える程度にボコっといて。

(この鬼ぃぃ!!)と攻武のぶ聲と同時に攻武の悲鳴と剣や魔法で鳴る破壊音が聞こえてくる。

俺はそれを聞きながら、ティフィラの方を見る。

もちろん、ティフィラが村の人たちと馴染んでるのは嬉しい。けど、そのキッカケがーー

「俺じゃなくて良いだろ……」

俺は天を仰いだ。今日の空はどこまでも澄んだ水で、俺の複雑な気持ちと対をしているみたいだった………。

「……ふぅ、ここの人たちはいい人たちだね?」

「…ああ、そうだな。本當に……」

あんな楽しそうに、誇らしそうに俺の事を語る村人たちを怒るのは筋違いもいいところなので、グッと不満を押さえつけ、ティフィラと共に並んで家へと向かう。

「それにしても、あの王國襲撃事件がユウキだったなんて、思いもしなか………いや、ユウキらしいと思ったよ」

「…もうやめてくれ……」

過去の消し去りたい事のベスト3にるあの、一時の迷いでやった王國襲撃。

別に後悔もしてないが、こんなにも長く言われると、もっと俺だとバレないように出來たかもしれないと思ってしまう。

「……ま、俺の話なんてどうでも良いんだけど、ティフィラはどう思った?この村を」

俺はすれ違った村人と軽く挨拶をわしながら、ティフィラに尋ねる。

「…凄く良い人たちがたくさん居るし、私の事もれてくれた優しい村だと思う」

ティフィラはし頰を赤らめながら言った。どうやら、村人たちと話せて嬉しかったみたいだ。

「なら、明日から俺と同じ用心棒として、この村に盡くしていこうな?」

「……うんっ」

ティフィラは俺の前に回り込んで、嬉しそうに笑った。

それを見れただけでも、今日は良かったと思う………。

あれから何年かの月日が流れた。

ティフィラは完全に村に溶け込み、持ち前の大量の霊を使って効率良くこの村に近づく魔たちを退治している。

俺ももちろん退治はしているが、村を囲うように霊を配置しているティフィラの方が魔を多く退治出來るのは目に見えて明らかだった。

今では、霊だけでは退治出來ない魔のみを退治している。

そんな村が落ち著いた頃に、一枚の新聞紙が大きなニュースを連れてやって來た。

「……ん?この村に新聞?」

「確か、ここにはひと月に一度しか來なかったよね?」

ティフィラが橫から俺が持っている新聞紙が包まれた茶封筒を見ながら言った。

そう、この村には1ヶ月に一度、1ヶ月に起きた大きなニュースだけをまとめた新聞が來る。だが、今月のはまだまだ先の筈だ。

もちろん、例外はある。それはこの新聞を発行しているあのいけ好かない王がいる王國にとっての大きな出來事があった場合だ。

因みに、俺が王國を襲撃した時にも発行され、その所為で俺が起こした事がバレたという過去もある。

「……そうなんです。今の時期に來るという事はそれなりに大きな出來事が王國で起きたと思うんです……」

俺の恩人である親父さん達が亡くなった後に村長になったミウが心配そうに俺が持っている茶封筒を見ている。

ミウは今50をいってた筈で、所々にシワが隠せないほど現れ、髪も白く染まっている。

この世界での50歳は中々高壽で、平均では大45くらいが壽命とされている。

この世界は魔がはびこっているし、栄養も『地球』に比べて良くない事からそのくらいになってしまうのは仕方ない事だが、やっぱり知り合いが死んでしまうのは悲しい。

親父さん達が亡くなった時の葬儀も、この村にしては豪勢に行われ、俺はその後にこの村を離れる事がどうにも出來なくて、今に至っている。

「ま、取り敢えず中を見てみますか」

俺は茶封筒を破り捨て、新聞紙を広げる。そこには大きな見出しでこう書かれていた。

"勇者様の召喚に功!!"

その見出しの橫には、紛れも無い俺と同じ黒髪黒目の學生服を著た男が寫っていた。

……勇者召喚って何だ?

(…勇者召喚とは、別世界に居る人たちをこの世界に適応させて呼び出す魔法儀式です。その多くが『地球』に居る人たちが呼ばれます)

技姫が解説してくれた通りなら、こいつらは俺が死んだ後の日本がどうなっているのかを知っているだろう。

「ーーキ!ユウキっ!!」

俺はティフィラに揺さぶられ、意識が現実に帰る。

「……悪い。考え事をしてた」

「…それなら良いけど」

ティフィラは俺から新聞紙を奪い取ると、ミウと隣に並んで新聞を読んでいる。

俺はその場から離れた。あのままあそこに居たら、絶対に勇者と俺との関係を聞かれてしまうと思ったからだ。

俺は"転移"で丘に移し、座り込む。

(……どうします?)

別に…、どうもしないよ。

(とか言って、気になってんだろ?)

……まあな、でも、俺がく必要は無い。

(本當に?)

…俺がかないといけない事態にならなければな。

「あ、おかえり。夕飯は出來てるよ」

あれから暗くなるまで丘に居た俺は、流石に帰ろうと"転移"を使って家に帰ると、キッチンで料理をしているティフィラが居た。

「……おう、ただいま」

俺は手を洗う事も無く、ダイニングにある椅子に座る。

ちょっとしたら、機には2つのオムライスが置かれた。上の卵は綺麗じゃないし、ケチャップライスもしっかりと混ざり切っては無かったが、どうにも俺には味しそうに見えた。

「…あんまり上手くいかなかったけど、作ってみたんだ。食べてみて?」

ティフィラがスプーンを差し出しながら、言ってきたので、俺はスプーンをけ取り、オムライスを口に頬張る。

はっきり言って、俺が守姫のレシピ通りに作った方が味い。けど、そんな事なんてどうでも良かった。俺は無言でオムライスを頬張る。

「……深くは聞かないけど、せめて私が居ることは忘れないでね?」

俺は無言で頷いた。今日だけ、今日だけだから、明日からは普通に過ごすから、今日だけは……、日本での事を考えさせてくれ。

そうは思うが、俺には日本での過ごした記憶がほとんど無かった。

そして、數ヶ月後、1人の來客がこの村にやって來た。その來客とは、傷だらけの、服の所々が破けて威厳のカケラも無い、20代ほどになったあのいけ好かない王だった………。

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あ、因みにティフィラの語りと違うところがありますが、それはティフィラが勝手に捉えた事ばかりで、本當に起きた事はこの章なので、そこは注意してください。

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