《ただの世界最強の村人と雙子の弟子》第30話 魔神の本心

===ユウキ視點=================

「おい、起きろって」

魔神は俺が膝から離れると、足はそのままで後ろに倒れてしまった。今は魔神のを揺さぶって起こそうとしている。

「…………もうし」

それに対し、魔神は顔を背けて子供のように二度寢をしようとする。

「起きろ」

俺は今度は顔をペチペチと軽く叩いて起こそうとする。

「…………………やじゃ」

俺の手を弱々しく押し、足をゆっくりとばし、今度は寢返りをうった。今更気付いたが、こいつの服は黒のバンドとTバックという無防備な姿で……はっ!

「起きろってんだろ!!」

俺は、頭の中の煩悩を振り払うかのように、大聲を出してしまい、

「ひゃい!!」

魔神は怒られた子供のように跳ね起きた。

「よぉ、目が覚めたか?」

眠たそうに目を開ける魔神を覗き込む。よく見たら、目の下にくまが出來ており、し痩せたように見えた。

「……おおっ!ようやく目を覚ましたか!!」

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目をパチパチさせ、俺の事をちょっと見ると、たちまち顔が明るくなった。俺が寢てたのは、どうやら1日どころではなさそうだな……。

「俺はいつまで寢てた?」

「ん~んと、3日ぐらいじゃの」

魔神は足元の土と石が混じった地面に、日をカウントしていたようで、地面を見ながらそう言った。

「マジか~~、家に帰ったらどうしよ……」

守姫に技姫にティフィラにリリもかな?あいつらに質問責めならマシだが、最悪監されるかも…………うん、何故か帰りたくなくなってきた……。でも、長引いた時の方が反はデカイよな……。うん、ここは普通に帰ってあいつらのご機嫌取りをしよ。

「………のう……ユウキよ」

俺が考え込んでいる時に、どうやら呼ばれていたらしく、俺に気付いてもらう為か、俺のはゆらゆらと左右に揺れていた。

「何だ?」

「妾はこれからどうすればよい?」

うっわ~~、重そうなのキタ~~……。

「どうするって………お前はどうしたいんだ?」

正直、なんて言ったらいいか分からん。だから、本人の意思を尊重する事にした。

「……………裁いてほしい」

「は?」

「じゃから、妾をお主が裁いてほしい」

「裁くって俺が?」

(コクッ)

うっわ~~、マジかよ~~……。何でこいつはそんな重そうなのばっかチョイスするんだよ………。

「……はぁ、何で俺がお前を裁かなくちゃいけないんだ?」

「いや、だって……妾の部下が………《オウガ》を壊滅させ、《ブリュンビレ》でも重傷者を出してしもうた…………。じゃから妾は、1000年前に先代魔神を殺したお主に妾を裁いてほしい……」

魔神は見るからに落ち込んだ。これで落ち込まず、ヒャッハーって言いながら自慢げに話してたら、こいつの首を即座にはねただろう…。だが、こいつは罪の意識を持って、償いきれない罪を俺に裁かせようとしている。その罪を償えるとしたら……

「お前……裁くって言ってるが、それは遠回しに殺してしいと言ってるじゃねえーか」

この世界では、終刑は無い。有るのは罰金か懲罰か死刑のみ。人殺しは場合によるが、ほぼ死刑だ。つまり、大量殺戮者の上司であり、大量の重傷者をつくった魔神は、死刑しかあり得ない。

「ああ」

その事が分かっている筈なのに、魔神は堂々と肯定した。

「………覚悟は出來ているのか?」

「ああ」

「後悔はねぇのか?」

「…ああ」

「生きたいと思わねぇのか?」

「……ああ」

はぁ、駄目だ。こいつの覚悟は本だな。はぁ~あ、こういった事はあまり俺のに合って無いんだがな………。

「いくぞ」

俺は立ち上がって、腰に収めてあった日本刀を抜き、胡座をかいて座っている魔神の首元に添える。

「………ああ」

し間があったが、俺のラストチャンスも意味が無く、魔神は目を閉じてしまった。……俺も覚悟を決めるか。

「……スゥーッ………はぁっ!!」

首元に添えた日本刀を縦にして、俺の耳辺りの高さまで上げ、両手に持ち、思いっきり袈裟斬りのように、刀を斜めから橫にして魔神の髪をちょうど背中の半分辺りのところで斬った。

「…………………………あれ?」

魔神は中々來ない終焉に、痺れを切らしたのか、振り返った。その顔はよく分からない揺の顔になっていた。

「ん?どうした?」

「……いや………何故妾を斬ん?」

「は?斬ったぞ」

「…………はい?」

あ~あ、この展開なら察してくれよ!魔神さん!!俺が言わないといけねぇじゃねえーか!!!

「魔のような黒い髪なら斬ったよ?」

「はい?」

「髪と神をかけたの!!そんなくだらない事を聞き返すなよ!!恥ずかしいだろ!?」

今、この場に攻武がいなくて良かった~~!!

顔を真っ赤にしている俺に対し、魔神は、俺のシャレがそんなに面白かったのか、それともこんな俺が面白かったのか、し俯き、肩を震わせ、

「バカにするでないっ!!!そんなくだらないシャレを聞くためにお主を捜していたのでないわっ!!!」

違いました、激おこの方でした。しかも、さりげなく俺のシャレをくだらないって………。

「かつての妾はっ!!魔神として、人々の生活を!幸せを!奪っていた事になんの抵抗の無かった!!!じゃが!神に追い出され、《オウガ》に逃げ込んだ時に!人のを持つ妾が生まれた!!妾は!人として生きていく事に喜びを覚え、そして、かつての妾には殺意すらも覚えた!!」

魔神は途中から涙を流し、それでも話を続ける。

「じゃが、《ブリュンビレ》の事件で、妾に魔神だった頃の考え方が頭をよぎるようになった!!人を重んじる妾と、人を軽くみる妾!!妾は人を重んじたい!!じゃが、魔神としての妾が戻っていく覚が確かにある!!それならいっそ……!!人としての妾のまま!!殺してしい!!!」

魔神は泣きじゃくりながらも、言葉だけはしっかりとつむいで、本心をぶちまけたようだ。

「今、自分で言って分かっただろう。お前の本心は、"人になりたい"だ。"裁いてしい"じゃない。それは本心を隠す為の都合の良い言い訳だ」

「………………………!!」

「人の死を、自分のけない本心の言い訳に利用する事を俺は裁きたいね…」

魔神は、最初こそ罪の意識の事を曝け出した。それもきっと本心なのだろう…。だが、魔神の本心の核は"人への憧れ"。

魔族が、魔神が、人には決してなれないし、周りがれない。だって魔神は人殺しの種族、もっと言えば人殺しの種族の神だからだ。それを、魔神はよく理解している。しているから、人になれない事も、れない事も分かるんだ。

「お前は人にはなれない……。だが、人になろうとする事は出來るだろ?」

「…………あの村で…妾は……人のように生きていこうと思うた。……じゃが、妾が魔神だった頃は長い………。數日ぐらいでそれが抑えられるはずも無かった事に気付くべきじゃった……。気づいていれば…!こんな思いを…………!!」

「それは違う」

「………?」

「お前が気づいていたら、きっと魔王や大魔王の被害がさらに拡大していただろう…………。そうなれば、第2、第3の《オウガ》があちこちに出來ることになるぞ」

まあ、だって気づいてなかったら、リリとルルが魔神を殺しに行ってただろうしな。

「………のう、ユウキ」

「なんだよ?」

「妾はなれるじゃろうか………。人に」

「さあ?頑張れば人間もどきにはなれるんじゃねーの?」

俺は寢っ転がって素っ気なく答えながら、不安と期待が混じったような顔になっている魔神を見ていた………。

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すみませんっ!シリアス苦手なんで、あんまり上手く書けませんでした……。

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