《ただの世界最強の村人と雙子の弟子》第119話 ただの世界最強の村人
私の力は"神殺し"。なのに、何故神である彼を殺せたのか。
答えは明確。彼が私の"神殺し"を"神気殺し"へと昇華させたから。
本當に怖いね。
人の力というものは。
本當に…………
(ピチャ、ピチャ、ピチャ)
足音と水の滴る音が聞こえる。揺れている覚、重い瞼、かない。
重すぎる瞼に嫌気が差すが、今の狀況を知らない訳には行かない。何とか目を開ける。
そこは何も無い更地。滴る水は俺の。揺れている覚はイエリアスにお姫様抱っこのような形で抱き上げられているからだった。
「………あ…、どう……なって……」
「ふふっ、無理に喋らないで。ちゃんと説明するから」
イエリアスは簡単に起こった出來事を教えてくれた。
俺が『強神』の心臓を貫いた瞬間、奴が大発を起こしたそうだ。
それを俺が最小限に留めようと善処した結果がこの更地と四肢の無いこの。
「リルも、守姫ちゃん達もみーんな生きてるよ」
イエリアスは嬉しそうに言った後、ある方向へ歩き出した。
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「……さあ、著いたよ。ねぇ、どうする?」
イエリアスが指差した所には、漆黒の大剣、純白の大剣、業の日本刀が突き刺されていた。
どうやら、大した事も無いようで、魂に傷は無いみたいだ。今はさしずめ、気絶しているような狀態。
「……俺のをあいつらに付けてくれ」
「…はーい」
時間がある程度経ったからなのか、幾分とマシになった今なら、使えるだろう。
イエリアスは俺を抱き上げたまま、守姫達の周りを回り、未だ滴る俺のを付けた。
「……ありがとな」
「ふふっ、何を今更♪」
イエリアスはそう言うと、俺があいつらを良く見えるところまで移してくれた。どうやら何をするのかを分かっているみたいだ。
「……『魔導』"心礎しんそ"」
『魔導』を発した瞬間、眩しいがあいつらを包む。
イエリアスはそれをし見せてくれた後、踵を返して進み出した。
これで俺の役目は全て終わった。
『強神』を倒して『神の強ゴットグリード』の企みを防ぎ、次にそうなっても大丈夫なよう、弟子も育てた。
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「本當に頑張ったね」
「………そうでもない……よ」
イエリアスの言葉を否定しようとしていた時、イエリアスが急に止まった。
何事かとさっきまでイエリアスの方を向いていた顔を前に向けると、そこには前に見た映像を映し出す球を持つアギラが居た。
「……本當にお前は化けだな」
「…何度も聞かせるなよ」
アギラは微笑を浮かべると持っていた球を前に突き出す。すると、そこから上に映像が現れ、アルナとお姉さんが映し出された。
『……まずは、この世界の管理者、アルナとしてお禮を申し上げます。…本當に良くやってくれました』
アルナの聲は張ってはいるものの、いつ泣き聲が混ざってもおかしくないほどの弱々しさがあった。
「…いえ、ここを更地にしてしまいました。俺の力不足ですみません」
俺は頭を軽く下げた。
『いえっ!あなたが謝る事ではありません!!今からアギラに門を開けさせますのでこっちにーー』
「すみません、それは出來ません」
アルナを黙らせるように、出來る限り力強く靜かに言うと、案の定、アルナは黙った。
そこへしっかりと俺は話す。
「俺の魂はもう持ちません。長くて後數分……。もう何をしても意味は無いです」
『………そう、使ってしまったのね。彼を』
「……私と彼は一心同。最後くらい、2人の時間を優先するわ」
俺がもう死ぬ事にあまり驚かず、むしろ予想が當たったような顔のお姉さんに喧嘩腰で話すイエリアス。
『……それは悪い事をしたわ。じゃあ、さようなら、ユウキくん』
「……お姉さんも元気で。アルナ様、俺の弟子をよろしくお願いします」
『……ええ。……任せてっ…』
最後のアルナの泣き聲が混ざった聲を最後に映像が消え、アギラも居なくなっていた。
「……じゃあ、行きましょ。靜かな場所に」
「………ああ、いい加減眠たくてな。良い場所だろうな?」
「ふふっ、もちろんよ」
この言葉を最後に、彼らを見た者は居ない。
彼は世界中のどこを探しても見つからない異常な存在。
"特異點"、イレギュラー、化け。
別に彼はなりたくてなった訳では無い。
守りたい人達を守れる力さえあれば良かったのだ。
偶然と偶然が重なり、決意と覚悟が生まれ、たまたまそういう存在になってしまっただけ。
世界を滅ぼしかねない力を持った彼は、たった1つの願いを葉える為に死に、たった1つの大切な世界を守る為に戦った。
きっと神界の連中は彼が死んだ事に喜ぶ者こそ居ても、彼の死を嘆く者は居ない。
彼は大英雄に相応しい人だ。
世界最強の稱號に相応しい人だ。
ただ、彼はきっと大英雄までは目を瞑るだろうが、世界最強の稱號はけれてくれないだろう。
だが、世界最強という事実は変わらない確かなものだ。
………そうだ、こうしよう。これなら誤魔化せるだろう。
『ただの世界最強の村人』
彼は騎士のような忠誠心も、冒険者のようなも、政治家や神どものような野心、支配も無い、ただ一日一日を當たり前に過ごしたかっただけ。
それは世界最強の男してはいささか普通過ぎるだ。そんなを持っているのは魔に怯えながらも、たくましく、支え合って生きている村人ぐらいでは無いだろうか?
彼の生き様を知る者は時の流れと共に風化していくだろう。
それはあまりにも悲しい。
だから、私は書き記す。彼の生き様を。
今回で2回目になるが、今回で最終巻。
何とも言えない、寂しさをじるが、生みんなそんなものだ。
だが、そんな寂しさはすぐに無くなるだろう。なんたって、彼が育てた弟子が居るではないか。
彼達はまだまだこれからだ。彼の代わりに世界を良くも悪くも掻きしてくれるだろう。
「……だが、楽しませてもらった。せめてもの禮を用意しよう。……と言っても、いつになるかは分からないが」
私は自の書斎へと通じる門を開き、振り返り、更地を軽く一瞥した後、門へと足を踏みれた………。
「……あ、あぁぁぁぁぁっ!!」
「………ぁああー!!」
「………っ!!」
堪え難い喪失が私の意識を現実に引き戻した。
を起こすとそこは何も無い更地になってやがった。
そして、私達から我が主人へと繋がる魂の糸が消えています。
それに、ご主人様の魂を何処にもじられません。
俺は立ち上がり、のあちこちをる。
私達のは以前の不安定なとは違い、確かで強いになっています。
まるで、このはご主人様が死んだ時の為だけのよう。
「………起きましたか?」
聲がする方へ向くとそこにはアマナとか言う、いけ好かないアルナの部下らしい神が居た。
「…あなた方にはいくつかの選択肢があります」
「一つは完全に私達と関わりを切って、この世界で暮らすか」
一つ目の選択肢は我が主人の居ない私達には妥當です。
「もう一つは……神界へ行き、何かしらの役目を與えてもらうかです。こちらは何とも言えませんが」
二つ目の選択肢はご主人様の『ソウルウェポン』では無い今となってはあまり考えられません。
だが、王はこの世界を守るべくして戦った。
それを考えると、二つ目の選択肢は我が主人の意志を継いで、害のある神たちを殲滅しやすいかもしれません。
「「「なら、私達(俺達)はーー」」」
この選択肢はきっと間違っていないですよね?
きっと、ご主人様だってこっちを選びますよね?
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今回はユウキ関係の話でした。
次の話はリル関係です。
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