《最強転生者は無限の魔力で世界を征服することにしました ~勘違い魔王による魔の國再興記~》その13 魔王さま、ダンジョンをひたすら潛る

「うっへぇ、こりゃ見つかんないわけだ」

「たまたま乙の涙が落ちなければならないわけだからな、神とやらも意地が悪いな」

ザガンに案された場所は、魔王城から飛んで1時間ほどの所にある、何の変哲もない森の中だった。

そこに落ちている、不自然と言われれば不自然な、白くて丸い石。

これに乙の涙が落ちることこそ、封印が解かれる條件なんだとか。

隠しダンジョンにしたって無茶すぎるよ、神様。

これが本當にゲームだったら、僕はを張ってクソゲーと呼ぼう。

白い石の側には、経年劣化を全くじさせない、綺麗な石の階段が地下に向かって続いていた。

ご丁寧に明かりまで燈されて、地底深くに僕たちをおうとしている。

「本當に書いてありますね、水のアーティファクトここに眠る、って」

階段のすぐそばには石碑が設置されており、ザガンが言っていた文言はそこに記されていた。

「こういうダンジョンを見るとわくわくするな!」

「そうだね、たしかにワクワクする。でも、ザガンはどうして一人でらなかったの?」

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「わたしの目的はまおーを名乗るやからを倒して、新たなまおーになることだからな。寄り道はよくないと思った」

「偉いね」

「んふふー、褒められてしまった」

ほんとちょろいなあ、簡単に騙されて知らない人についていったりしそうで不安になる。

自分で言うのも何だけど、魔王が殘じゃないヤツでよかったね。

雑談もほどほどに、跡へと足を踏みれる僕たち。

しばらくほの暗い階段を降りると、重厚な鉄の扉が見えてきた。

扉にはめ込まれたプレートには、『1/100』という數字が記してある。

「100分の1、ってなんのことだろ」

「フロア數ではないですか、跡の」

「……100階もあるの?」

「あるんでしょうねえ、なんたってアーティファクトを保管してる跡ですから」

まさに隠しダンジョンってことか。

ってことは、強いモンスターもわんさか居たりするんだろうな。

干しをちょっと持ってきただけで、そんな長々と潛る準備はしてきてないんだよね。

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扉を開き中へると、そこにはだだっ広い部屋が広がっていた。

これで小さな部屋が100個あるんじゃないかっていう僕の希も打ち砕かれてしまった。

「この広さは……さすがに面倒だな、魔王様の力で一気に下の階層まで降りることはできんのか?」

「ズルはよくないぞ、ニーズヘッグ」

「ズルではないぞザガンよ、これも実力のうちだ」

「試してみる価値はあるかもね、とりあえずでも開けて様子を見てみようか……ピアッシングレイ!」

僕は床に向けて魔法を放つ。

だが、床には傷一つついていなかった。

頑丈というより、最初から當たっていない、すり抜けたような覚。

「どうした、不発か?」

「いや……確かに魔法は発したはずなんだけど……」

「どれ、私もブレスで試してみるか」

床に向けてニーズヘッグが手をかざす。

キュイイィィィィ……カッ!

そして、かざした手からまばゆいが放たれた。

が人間の形になってからは、竜形態の時に放っていたブレスは口からではなく、魔法のように手から放てるようになった。

しかもブレスは竜の固有スキルだとかで、魔法みたいに詠唱は必要ない。

「むぅ、やはり効果はないか。魔王様が無理なのだからダメだとは思っておったが」

「まるっきり別次元の質ってじだね、石みたいに見えるだけで石ですらないのかも」

「ズルはするなっていう神様からのメッセージかもしれませんね、素直に自分の足で進んでいきましょう」

「だからズルではないと言っておるだろうに……」

観念して跡の探索を始めることに。

部屋は広いだけでなく複雑にり組んでいて、ちょっと油斷すると迷ってしまいそうだ。

どこもかしこも灰の石の壁と石の床ばかりで、まるで同じ場所をぐるぐると回ってるみたいだし。

これはマッピングしながら進んだほうがいいかもしれない。

本當に地図を作るのは面倒だから、最低限一度回った場所さえわかればいい。

そう、要するに僕の足跡さえ殘っていれば。

「フットプリンター」

ひねりのないネーミングだと自嘲しながらも魔法を発する。

僕の靴の裏がほのかに輝き始めた。

「なにをしてるんだ、まおーさま」

「足跡を殘してるんだよ、どこを通ったかわかるようにしておけば迷わないでしょ?」

「なるほど、頭いいな!」

ザガンに褒められてると、本當に頭が良い気がしてくるから危険だ。

足裏がった狀態で歩くと、スタンプのように足跡が地面に殘されていく。

消費する魔力の量も微々たるものだし、跡を出るまでは常に発しておくかな。

「魔王さまー、こっちに寶箱がありますよ!」

し先行して探索していたグリムが、曲がり角の向こうから聲をあげた。

寶箱なんてまで設置してるなんて、いよいよダンジョンらしくなってきた。

「いかにも、な寶箱だね」

そこにあったのは、木で作られたシンプルな寶箱。

箱の見た目からして、レアアイテムは期待できそうにない。

鍵も無さそうだし、萬が一罠があったとしても即座に障壁でも張ればいい。

僕は迷わずに箱を開く。

を見た瞬間、僕は思わずこけそうになってしまった。

「何がっていたのだ?」

「パン」

「は?」

「だから、パンがってたんだって」

何言ってんだこいつみたいな顔でニーズヘッグが睨んでくる。

そんな顔されたって、僕はただ事実を言っただけなんだから。

「なぜ寶箱の中にパンがっているのだ?」

「これまた味しそうなバゲットですねえ」

「わたし知ってるぞ、これがゆーざーふれんどりーってやつだな!」

違うと思う。

「貸してみろ、私が毒味をしてやろう」

毒に耐のあるニーズヘッグが真っ先にパンを摑み、一口分ちぎって口に放り込んだ。

目を閉じて、じっくりと咀嚼しながら味わう。

確かに、箱に罠はなかったけど、このパン自が罠って可能もあるからね。

でも、僕の想像通りなら――

「……うまい」

ああ、やっぱり。

この調子だと、下の階層に行くほど豪華な料理になっていくんだろうな。

……箱からアップルパイとか出てきても驚かないようにしておかないと。

「一何のために……はむ、このようなパンを……はぐ、ん……箱にれたのだろうな」

よっぽど味しかったのか、ニーズヘッグはすごい勢いでバゲットにかじりついている。

「まあ、これで食糧問題が解決するめどは立ったわけだし、深く考えずに先に進もうか」

床が壊せなかったことと言い、この跡はどうにも理屈で考えても無駄なことが多そうだ。

その後、探索を再開した僕たちは、ほどなくして未知のモンスターと遭遇した。

明のぶよぶよとした、どんな仕組みでいているのかもわからない謎の生命

名付けるならスライムが一番適當なんだろうけど――

「スライム族でしょうか、でしたら意思疎通ぐらいはできるはずなのですが……」

そう、この世界にはスライムって呼ばれてる生がすでに存在してるんだよね。

明で好きに形を変えられるって點では目の前の魔と共通してるんだけど、スライム族の方は溫厚でおっとりとした格らしい。

対して目の前に現れたモンスターは、出會った瞬間に敵意を剝き出しにしてる。

「僕たちが魔と呼んでいる存在とは別の生きなんじゃないかな。もしくは、跡探索者を邪魔するためだけの防衛裝置とか」

「どちらでも良い、我々の進行を阻むのなら破壊して先に進めばいいだけだ」

「だね」

なかなか生き相手に魔法をぶっ放す機會ってのは無いし、この際、々な魔法を試してみるかな。

まずは単一屬作、炎の魔法であの気味の悪いスライムを蒸発させる。

溫を急上昇させる? いや、それじゃ蕓がない、見た目も派手じゃないと。

服の時に、魔王ってのはヴィジュアルも大事だってことを痛したから。

派手で、強くて、炎屬の――例えば、炎の魔神が敵を焼き盡くすとか、そういうの。

「イグニス!」

魔法を発すると、僕の前方に炎のを持つ巨人が現れた。

もちろん僕が自分で作り出した炎をそういう形にしてるだけなんだけど、イグニスと呼ばれた魔神をってるとちょっとした召喚師気分。

「グゥオオオオオオオォォォォォッ!」

風をって聲っぽい音を出して雰囲気を演出してみたり。

ゴオォッッ!

イグニスが腕を振るうと、巻き込まれたスライムは蒸発し、一瞬にして姿を消した。

「魔力の無駄遣いだな」

「魔王っぽい魔法でとても良いと思いますよ、私は」

「すげー! まおーさまかっけー!」

リアクションは様々だけど、概ね評判は良さそうだ。

ニーズヘッグが素直に褒めてくれるとは最初から思ってないしね。

こうして、その後現れたスライムやコボルト、ゴブリンと言った雑魚モンスターを新たな屬魔法で蹴散らしながら進んだ僕たちは、數分後に階段を発見。

淺い階層には良いアイテムは落ちていないはずだ、という僕の元ゲーマーとしての勘に従い、探索もほどほどに降りることにした。

階段を下っていくと、前方に『2/100』と書かれた扉が現れる。

開くと、そこには再び似たような広い部屋が。

僕たちは石の階層をひたすら進み――およそ2時間ほどで、地下20階まで到達した。

アイテムをれるために用意しておいた袋は、すでにはちきれんばかりに膨らんでいる。

ただし中は、半分以上がパンだった。

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