《最強転生者は無限の魔力で世界を征服することにしました ~勘違い魔王による魔の國再興記~》その17 魔王さま、奔走する
水のアーティファクトは魔王城の地下に設置された。
そこから山の麓へ水を供給する仕組みだ。
ちなみに水道は魔法でズバッとを開き、々といじくり回すことで完。
いずれは魔たちの力だけで作ってしいとは思ってるんだけど、殘念ながら今はそんな余裕は無い。
ゆくゆくは上水道と下水道の整備を進めて、各家庭への水の供給や、生活排水の処理なんかも考えないとね、今はひとまず共同のトイレや水道で満足してくれてるからいいんだけどさ。
そして水のアーティファクトを設置してから一週間後、どこから嗅ぎつけてきたのかさっそく新たな種族の魔が自ら近づいてきた。
半明で不定形、跡で見たモンスターと違うのは一応人型をしている所かな。
タレ目でおっとりとした彼は、
「スライム族の長のミュージィですだ、おいしそーな水の匂いがしたんでみんなで移ってきましただ」
地方訛りっぽい喋り方で、そう名乗った。
”みんな”と言う言葉通り、麓にはどうやら數十のスライムたちがやって來ているようで、オークが不思議そうにったり、フェアリーが楽しそうに戯れたりしている。
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「スライム族はきは緩慢ですが、溫厚で他者との爭いを嫌う種族です。基本的に綺麗な水のある場所に生息しているのですが、水の魔法を得意としていますので、時には汚染された水を浄化して自らの住処にしてしまうこともあるんだとか」
グリムが説明してくれた。
本的に跡のスライムとは違う生きみたいだ。
「水の浄化か……」
「ちなみに、過去の魔王城での水の管理はスライム族に任せていましたよ」
いきなり下水処理の問題を解決する方法が見つかってしまった。
問題は、スライム族がその役割をけれてくれるかだけど――
「……と言うわけなんだけど、どうかな。それさえ承諾してくれれば、魔王城の近くに領地を與えよう」
「そんなことでいいですだ? なら喜んで引きけるですだ、あんなに綺麗な水がそれだけで手にるなら安いもんですだ!」
ミュージィは笑顔で快諾してくれた。
こうして、スライム族が僕の配下として新たに加わることとなるのだった。
もちろん魔がやってくるのを待つだけでなく、自ら強い魔を倒したり、勧活も続けている。
例えば魔王城から見て西の大地にを張っていた巨大な木の怪、トレント。
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彼の周囲の木々は栄養を奪われ枯れ果て、かつてのかな自然は跡形もなく消えてしまったのだという。
元々トレントは樹人族と呼ばれる魔で、それが突然変異的に巨大化してこのようになってしまったらしい。
彼のせいで、森に生息していた樹人族もその數を激減させてしまったのだとか。
「人間よ、その汚らしい足で我が大地を踏むとは、許せん、許せんぞおおおっ!」
耳をつんざくような大音量でぶトレント、うるさいなあ。
この手の魔にありがちなことなんだけど、みんな何故か偉そうなんだよね。
力に溺れてるっていうか。
自信を持つのは大切なことだけど、の程は弁えないと。
「イグニス、アネモイ!」
「その程度の力で我を倒そうなどと片腹痛……ぐわああぁぁぁぁぁぁっ!」
アネモイの風が吹き込むことで火力を増したイグニスが、トレントを容赦なく焼き盡くした。
ニーズヘッグに見られたらまた”人間に変えないのか?”って言われそうだけど、彼みたいなのが何人も増えたって僕は制しきれないよ。
今だって、々と頭を悩ませてる所なのにさ。
「トレントが倒れたことで、このあたりの森も元の姿を取り戻すことでしょう。マオさまに謝する魔もたくさん出てくると思いますよ。特に生き殘った樹人族なんかはすぐに近づいてくるかもしれませんね」
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いまいち実が無いんだけど、ニーズヘッグを倒した時點で僕の名前は結構広まっていたらしい。
その上トレントまで倒したとなれば、各地の有力な魔にとっても無視できない存在になるだろうとのこと。
けれどグリムはまだまだ満足しない。
まるで二次會をハシゴするように、その日のうちに次の魔の元へと向かった。
結局、その日は合計で3の魔を撃破。
うち2は改心しそうになかったので焼き盡くし、殘りの1は僕に付いてきて弟子にしてしいと言い出した。
彼の名前はアラック。
自分に勝てる相手を求めて、各地を旅していたオーク族の戦士だ。
弟子ではなく、配下になるなら付いてきても良いよ、という條件を付けると、アラックは快諾してくれた。
ザガンといい彼といい、素直で助かるよ。
彼自、他のオークを凌駕する能力を持っているみたいで、それが味方になってくれるのなら心強い。
城に彼を連れて帰ると、オーク族のみんなは驚いた表で彼を凝視した。
やっぱり知り合いだったのか。
「アラック……オ前ナノか……?」
「長ヨ、久しイナ」
「何処ヲふラツイてイタノダ、コノ親不孝者ガ!」
そう言いながら、涙を流すカルヴァトス。
なにやら込みった事があるみたいだ。
部外者の僕は、靜かにその場を離れることにした。
なにはともあれ、これだけ倒せば魔王の名も広まるだろうし、配下も増えたしで、遠征した甲斐があったというもの。
「まおーさま、おかえり!」
「ああ、ただいま」
城へ戻る途中、山で訓練をするザガンとはち合う。
小さな見た目からは想像できないぐらいのある彼は、こうして真面目に訓練を続けている。
その甲斐あってか、ダインスレイヴの力もしずつ引き出せるようになってきたみたいで――
「みてくれまおーさま、わたしの修行のせいかを!」
ザガンが目を閉じ集中すると、黒い刀が怪しくり始める。
ふぅ、と小さく息を吐き、カッと目を開いたザガンは、剣を目にも留まらぬ速度で振り下ろした。
フォンッ! ガガガガガガッ!
剣から放たれた衝撃波は、ザガンの前方にあった巖を削りながらえぐる。
ダインスレイヴの扱いだけじゃない、太刀筋も以前よりかなり鋭くなってる。
気づいていないかもしれないけど、本人が纏う雰囲気も以前とは段違いだ。
「どうだった? どうだった?」
けど、気を抜くとすぐにいつものザガンに戻ってしまう。
いや、彼の場合はこれでいいのかもね、せっかくみんなのムードメーカーにりつつあるんだから。
最近じゃフェアリーやオークはもちろん、ニーズヘッグとも上手くやってる。
フォラスも彼が居たからこそ、城の地下の研究室に住み著いたわけだし。
「うん、すごかった。修行がんばったんだね、褒めてやろう」
「んへへー……」
いつかのフォラスに倣って頭をわしゃわしゃとでると、ザガンは頬を赤らめながら頬を緩ませた。
グリムの予想通り、トレントの撃破から數日後、魔王城を樹人族の長を名乗る魔が訪れた。
上半は人間っぽいけど、下半は完全に樹で出來ていて、を足のように使って移している。
水と日さえあれば生きていけるらしいけど、臓とかどうなってるんだろう。
「トレントは消えたが、朽ちた森はすぐには戻らない。だから我々は、新天地に賭けてみようと思ったのだ。どうか、樹人族も魔王様の配下に加えては頂けないだろうか」
彼は言わなかったけど、清らかな水があっていうのも、配下にりたがる要因の一つなんだと思う。
樹人族は樹木の長を促す力を持っているとグリムから聞いている。
(本人たちは無自覚だけど)草花の長を促す力を持ち、どこからともなく種を運んでくるフェアリー族と合わせれば、農産への心配事はなくなりそうだ。
僕は快く彼らの提案をけれた。
玉座の間を出て、魔王城の二階の廊下からり口あたりを見下ろすと、樹人族の長が仲間たちに結果を報告する姿が見えた。
無事配下になれることが決まり安堵したのか、長は先ほどとはうってかわってリラックスした表をしている。
トレントのせいで壊滅的な被害をけた樹人族は、どうやらもう若い者しか殘ってないみたいだ。
見る限りじゃわからなかったけど、死ぬほど張してたんだろうな、きっと。
「勢力拡大は順調ですね、マオさまっ」
背後からグリムが話しかけてくる。
確かに順調だ、ちょっと不安になるぐらい。
「この調子でずっと続けばいいんだけどね」
「だめですよ、肝心のマオさまがそんなんじゃ。まだまだ配下を増やしてもらわないといけないんですから」
「そうだよね、まだまだ始まったばっかりだ。そろそろ種族間のめ事とかも出てきそうだし、ライフライン以外の整備も考えておかないと」
「いよいよ國らしくなってきましたね。そういえば設備で思い出しましたが、どうやらフォラスが子供たちを中心に読み書きを教えてるみたいですよ」
「フォラスが?」
魔王城の地下を気にったのも、いくら発させても壊れないからって言ってたぐらいの変態のくせに。
「ちょうど今やってる時間だと思いますし、見てきたらどうですか?」
子どもたちに変な知識を植え付けられても困る。
僕はすぐさま城を出て、フォラスの元へと向かった。
ろくに場所も聞かずに外に飛び出してしまったんだけど、その居場所は広場に出るとすぐにわかった。
老若男、フェアリーもオークもスライムもり混じった、魔だかりができていたからだ。
その中央では木のテーブルの上に(おそらく私の)白紙の本を開き、簡単な文字を書きながら説明するフォラスの姿があった。
見たところ、意外とまともに授業やってるみたいだけど。
僕が近づくとみんなはすぐに道を開けてくれた、中には深々と頭を下げる者もいるほどで……別にそこまでしてくれなくたっていいんだけどな。
「フォラス、なにやってんの?」
「ん、魔王君か。何って彼らに文字を教えてるんだよ」
彼は僕のことを魔王君という妙な呼び方で呼んでいる。
ならいっそマオ君って呼んでほしいんだけど、魔王と呼ぶ部分に敬意が含まれているらしく、頑なに譲ってくれなかった。
「魔王君も來たことだし、そろそろ頃合いか、今日の授業はここまでにしよう」
「良かったの?」
「ちょうどいい時間だったんだ、私も魔王君と話したい事があったからね。それではまた明日、同じ時間にここで授業を開くつもりだ、興味がある者は來ると良い」
フォラスの言葉をけて、魔たちは僕に一禮をしてから散り散りになった。
「勝手に文字を教えるのはまずかったか?」
「いや、むしろいずれやるつもりだったから助かるぐらいだよ。ただ意外でさ、フォラスはてっきり発にしか興味が無いんだと思ってたから」
「これでも研究者でな、人並みに普通の好奇心も持ち合わせているのだよ。ところで、魔王君は城の中に図書室があるのを知っているか?」
「もちろん、蔵書がこそぎ奪われて空っぽになってるあの部屋のことでしょ?」
グリム曰く、人間たちの魔法技は魔王城から奪われた書によって劇的に高まったんだそうだ。
倒れた本棚だけが殘るあの部屋には、なんとも言えない哀愁が漂っていた。
今は本棚を元の位置に戻して、掃除もやったから、多は見られるようになってるけど、それでも一冊も本は殘っていない。
「私は、あの部屋をまた図書室として活用したいと思っていてな。魔たちは種族ごとに、他の種族が知り得ない農業や林業、武に関するノウハウを所持している。それらは口伝で伝えられ、書に殘されることは無かった。ああ、実に勿無い、歴史に中に消えてしまった、一子相伝の発に関する技もあったのではないかと思うと、夜も眠れないほど悔しいのだ、私は!」
「はぁ。つまり、そういう口伝で使われてきた技を、書として殘したいと?」
「そうだ、そういうことだ! 魔王君は他種族國家を目指しているんだろう? その強みは十分に活かさなければならない、種族だけで完結させておくにはあまりに惜しい、惜しすぎる! それにな、私の予想なんだが、魔王君は最終的に人間すらも國家に取り込もうとしているのだろう?」
「……鋭いね、さすがデーモン」
人間である僕が魔王になれたんだ、人間が魔の國の一員になれた所で何の問題があるというのか。
それに、この世界の最大勢力である人間という存在を駆逐した上で世界征服を果たすというのは現実的じゃない。
どの道、どこかで人間たちを取り込む必要があった。
「魔王君の計畫は僕の知的好奇心をくすぐる。行く末を見たいと思わせる力がある。だからこそ、できればそのお手伝いをしたいと思ってね」
それで読み書きを教えようだなんて考えたのか。
「そういうことなら、正式に先生役をお願いしようかな。必要なら學校を建設するように命令してもいいけど?」
「私は教育者ではないからな、まとも・・・に教えられるのは読み書きぐらいだぞ。本格的に學校を開くつもりなら、もっと人數が必要だ。それでも良ければ、屋のある小屋ぐらいは用意してもらえると助かる」
「わかった、じゃあさっそくオークたちに頼んでくるよ」
僕は軽い足取りで、カルヴァトスの元へと向かった。
畑作業も一段落し、割と暇していたらしいオークたちは、すぐさま建設作業に取り掛かった。
広場に割と立派な小屋が完したのは、それから一週間後のこと。
フォラスの読み書き講座は大人気で、毎日満員禮だった。
「學校……か」
ふと、かつて憧れていた魔法學園のことを思い出す。
結局、僕はあの學園にはれなかったけど……るのが無理なら、作ってみるのもありかもね。
僕は真新しい學び舎を見上げながら、そんな新たな野を抱くのだった。
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