――この世に存在する全てのに於いて、人間が最も興するものとは何だろう。

ぼくは、そんなことをよく考える。

漫畫、ライトノベル、ゲーム、アニメ、ビデオ、テレビ、DVDやCD……その他にも、地球上には様々なメディアミックスが世に出ている。

だが、そういった一般的なものではなく。

ぼくは是非とも、十八の年向けだけに絞って考えたい。

俗に、エロ漫畫だとかエロゲだとか、はたまたAVだとか。

人した男をターゲットにした、男の的な艶かしい描寫の欠かせないである。

男でありながら一度も見たことのない人は、皆無にも等しいのではないだろうか。

ぼく自大好きだし、自室には親にも見せられない寶がいっぱいある。今までに、何度十八コーナーにったことか分からないくらいだ。

だけど、そんなぼくも悩んでいることがある。

それが、前述の通り――人間に最も的興を及ぼすものが何なのか、ということ。

もちろん、その人によって異なるだろう。

しかせない人もいれば、しか好きになれない者もいる。

二次元にしか興味を示せない人もいれば、三次元以外のよさが分からない者もいる。

の太ももや部に興する男もいれば、のに発する男もいる。

それこそが、まさにフェティシズムってやつかもしれない。

端的に、何が言いたいのかというと。

今ぼくは、書店の中にいる。複數の漫畫を見比べて、どれを購しようかと迷っているところだ。

この話の流れで健全な容の漫畫なわけがなく、當然十八コーナーにあるエロ漫畫である。

スク水といちゃいちゃする漫畫か、巨子高生と々しちゃう漫畫か、むちむちお姉さんとのおねショタ漫畫か、妹や馴染たちとのハーレム漫畫か。

どれも絵柄が好みで、表紙に描かれているヒロインが凄く可い。

だがしかし、生憎とぼくの所持金じゃ全てを購することはできない。

だから、この中で一番エロそうなものを買いたいと思うのだが……どれがそうなのかは読んでみないと分からないわけで。

どうするべきか悩んでいるうちに、人間が最も興できるは何なのかなどという訳の分からない思考に至ってしまったのである。

ストーリーも重要視されがちなエロゲとは違い、エロ漫畫の場合は基本的にエロが全て。

こうなったら、表紙や裏表紙、タイトルなどから察するしかないか。

悩み抜くこと、およそ二十分。

ぼくは、結局のところ全財産を使って、ものと子高生ものの二冊を購した。

ここの書店員は昔からの顔なじみで、ぼくが未年であることを知りつつも売ってくれる、とても心優しい人だ。本當にありがとう。だけど大丈夫なのか、ちょっと心配になってくるよ。

自分の所持金がなくなった悲しさより、新たなけしからん漫畫を買えた嬉しさのほうが勝り。

ぼくは、しご機嫌な態度を隠すこともできず、口元が緩むのをじながら帰路につく。

帰宅したら、何度も読み返そう。

逸る気持ちを抑えることなんてできずに、ぼくは青へと変わった信號を見て道路を渡る。

やはり、本やゲームなどをしているときや、新しいお寶を購したときが一番楽しい。

ぼくの友人に旅行が好きな人がいるが、そんなことに大金を使ってしまうくらいなら、絶対に家で本を読んだりゲームをしたほうがいいと思う。

この思想は、インドア派なら共してくれると信じている。

なんてことを、歩きながら考えていたら。

ふと視界の端にとある影が映り込み、ぼくは足を止める。

道路の真ん中。差點の上で、一人のが座り込んでいた。

その華奢な両腕には、白い貓が抱き抱えられている。

あのは、貓が好きなのだろうか。道路で貓が歩いているのを見かけて、つい寄ってしまったのだろうか。

……いや、そんな推測をしている暇はない。

見上げてみれば、信號はいつの間にか赤を照らし出している。

更に、と貓に向かって一臺の車が走ってきていた。

だけど、何故か一向に止まる気配がない。

誰かががいることは、多離れていても見えるだろう。なのに、車の速度は全く変わらずへと迫っていく。

怪訝に思ったぼくは、目を凝らし――運転手が、ハンドルに突っ伏していることに気づいた。

何をしているんだ。まさか、運転中なのにも拘わらず、眠っているのか？

「……ちッ」

考えるより先に、がいた。

はまだ、車が來ていることに気づいていない。

運転手は今、おそらく居眠り運転のためブレーキを踏むことなどできない。

このまま放置していたら、どうなる？

言わずもがな、數秒後には車に轢かれたのが、地面に転がっていることだろう。

「間に合え――ッ」

とは友達じゃないし、そもそも知り合ったことすらない赤の他人だ。

でも、今ぼくたちの他に周りには誰もいない。

ぼくが放置してしまえば、まず間違いなくきの命は確実に奪われてしまう。

見捨てることなんて、できるわけがなかった。

両腕をばし、貓ごとを突き飛ばす。

その、剎那。

鋭い衝撃とともに、ぼく――雷夢らいむ杏きょうの意識は深い深い闇の中へと落ちていった。

……ああ。

何でだろう。何で、こんなことになったのだろう。

ぼくは――こんなに勇敢な人間じゃなかったはずなのに。