「……さん……て……さい」

誰かの聲がする。誰かにを揺すられている。

だけど、何を言っているのかよく聞き取れない。

「……杏さん、起きてくださいっ」

そこでようやく聲の主が誰なのかを察し、ぼくはゆっくりと瞼を開いていく。

澄み渡る青空をバックに、ユズの整ったい顔が、ぼくの顔を覗き込んでいた。

心地よい風が、ぼくたちのをで、ユズは長い髪を靡かせる。

どうやら、本當に異世界転生をしてしまったらしい。

「あれ、何でユズもいるの？」

疑問に思ったことを問いながら、ぼくは上を起こす。

そして辺りを見回すと、途轍もなく広大な草原がどこまでも続いていた。

もし治安の悪い荒んだ街とかに飛ばされたらどうしようと思っていたが、とても穏やかな土地のようで安心した。

「わたしは神ですけど、一応ここら辺にある街で暮らしてるんですよ」

「神って、ぼくたちを見守ってるだけじゃないんだ」

「だって、ずっと上でみんなを見ているだけなんて暇じゃないですか。だから、わたしが神だと気づかれないようにしながら、他の住民と同じように平穏に暮らしているわけです」

得心がいった。

確かに、そう考えれば神とは退屈なものなのかもしれない。

ただの可いにしか見えないし、たとえ近くに住んでいたとしても、誰も神さまだとは思えないだろう。

きっと自分が神だと告げたところで、信じてくれる者などいないはずだ。

ぼくは狀況が狀況だったし、割とあっさり信じたけど……まあ、それは例外だろう。

「そういや、ここってどういう世界なの？」

「ここのことを話すには長くなりますから、とりあえずわたしの家に行きましょう」

そう言ってユズは立ち上がり、スカートについた埃を手で払う。

そうか。普通に暮らしていると言っていたから、當然家もあるわけか。

生憎との子の部屋なんて行ったことがないため、し張してしまう。

ぼくも起立し、そのまま歩き出そう――と、して。

「……っ？」

突如として、ぼくのに異変が生じた。

徐々に、徐々に、目線が下がっていく。

ユズの長より大分高い位置にあったぼくの視界は、あっという間にユズの頭よりし上というところにまで下りてしまっていた。

しかも、異変はそれだけではなく。

頭から首、背中にかけて何だか鬱陶しいものが纏わりついている気がする。

背後を振り向き、手で掬ってみると――それは、長い長い白銀の髪だった。

更に、しが重い。いや、が、というよりは――部の辺りが。

気になって見下ろしてみれば、ぼくのに不自然な膨らみが見えた。

えっと……何だろう、これ。どういうことなのでしょう。

「……」

ユズは手鏡を取り出し、ぼくに見せてくる。

そこに映っていたのは――とても整った顔立ちの、一人の。

長い銀髪、適度に膨らんだ、あどけなさの殘る可らしい容貌……どこからどう見ても、可いの子だ。

だけど、今鏡の前にいるのはぼくだけなわけで。

そうなると、當然この姿は――。

「あ、あれ？　ぼく……の子になっちゃった？」

「……そう、みたいですね」

ユズは、神妙な面持ちで頷いた。

異世界転生を果たしただけでは飽き足らず、まさか転換まで経験しちゃうなんて。

元々男にしては高めの聲を持っていたぼくだが、先ほど発した聲は明らかに甲高いのものだ。

ぼくは咄嗟に間を手で押さえてみるが……本當に、不思議なことに何もついていなかった。

でも、代わりについているものもある。

微かな張を覚えながら、ゆっくりと手を上げる。

そして、自の部に現れた雙丘を鷲摑み。

ぐにゅっ……とが潰れ、掌にらかいのが伝わってくる。

巨とまではいかないものの、それなりに大きい。

興と快が、ぼくの頭を支配する。

「お、おぉぉおぉおおぉぉぉおっ！？　すごいっ！　の子すごい！　ふあぁぁぁあああっ！」

自分でもよく分からなくなるほどの甲高い奇聲をあげ、ぼくはひたすら自分のをみ続ける。

一みする度に、のはむにゅむにゅと形を変える。

この大きさは……せいぜいCかD辺りだろうか。

大して大きくはない並だと思っていたが、こうしてんでみると改めて素晴らしさを実できた。

ずっとんでいても飽きない、この覚。

やはり、の子のおっぱいには男の夢と希が詰まっているというわけだ。最高です。

「ちょ、いきなり何してるんですかっ！　とにかく落ち著いてください！」

「あ、ユズ。大丈夫だよ、ぼくはちっぱいも好きだから」

「そんなこと一言も言ってません！　わたしのを見るのはやめてくださいっ！」

元々男であるぼくのほうがユズより大きいになってしまったために凹んでいるかもしれないと思ったが、どうやら違ったらしい。

あれ、待てよ……。の子になったということは、もちろん便所は子トイレ、風呂は湯……。

しかもぼくが男だったという事実は、ユズしか知らない。

今日から始まる異世界生活は、ぼくにとってかなり有意義なものになりそうだ。凄く楽しみ。

「でも、何での子になっちゃったんだ……？」

「あ、それはきっと杏さんが別の世界の住人だからですよ。世界を越えてやって來たわけですから、にかかる負荷とかその他諸々によって、杏さん自があべこべになってしまったのだと思います」

「……うん、何言ってるか分からない」

ぼくの脳みそじゃ足りない部分は、全てユズに任せよう。

ぼくはあまり理解できなかったけど、ユズが分かっているならそれでいいや。

「そういえば、これから名前はどうするんですか？」

「名前？」

「はい。杏さんはになってしまったじゃないですか。これからも、雷夢杏と名乗っていくんですか？」

生活をしていくなら、當然ながら自分の名前は必要になる。

本名である雷夢杏でも構わないけど、ぼくの場合は「あんず」ではなく「きょう」である。

の子になったというのに、男っぽい名前はやめておきたい。

雷夢……らいむ……きょう……あんず……か。

「じゃあ――ライム・アプリコットとか、どうかな」

異世界ならば、どちらかと言うと外國人みたいな名前のほうがいいだろう。

そう思って雷夢をそのままカタカナにし、杏を英語にしてみた。

し安直すぎる気もするが、他に良さそうな名前は思いつかない。

「だったら、わたしはライムさんと呼んだほうがいいですね」

「うん、これからはの子として暮らしていくからよろしくねっ」

「は、はい……ノリノリですね……」

口角を引きつらせて苦笑するユズに続いて、ぼくは歩く。

これから、この世界で、どんなことが起きるのか。

そんな期待に、をみ――否、膨らませながら。

「……って、自分のをみながら歩くのはやめてくださいっ！」

このあとめちゃくちゃ怒られた。