《魔がない世界で魔を使って世界最強》師の怒り

霊の里を出発してから二日経った。道中特に問題は起きず順調に旅を続けていた。もともと霊の里とエルネ街は小さな道で結ばれており、定期的に整備しているのか魔との遭遇もなく安全に進むことができた。

「でもここまで魔が出ないと暇だな。」

「うん。ただ歩くだけってのも味気ない」

そんな騒な事を言いながら彌一とセナはただひたすらに道に沿って歩く。道の景はどこを見ても森、森、森でそんな代わり映えしない景に思わずため息を溢す。

それからも休憩を挾みつつ進んでいくと、二人が待ちわびた変化が訪れた。ただし悪い方向で。

「・・・セナ、気付いてるか?」

「うん。三十くらい?」

「惜しい、三二だ」

お互いに顔は前を向き小聲で話す。それは彌一達の周りを囲むようにして何者かが近ずいて來ているからだ。気付いていることに気付かれないようにお互いに前を向いておく。

「どうする?」

「取り敢えず様子を見る。攻撃してくる様だったらそん時は制圧する。一応離れないでおいてくれ」

「わかった」

取り敢えずの方向が決まり、歩いていると橫の森から野暮ったい格好をした三人の男が現れ彌一達の行く先を阻む。男達の腰には剣が吊り下げられており、その顔には気味の悪い笑みを浮かべている。いかにも山賊といったような男達だ。

Advertisement

「リーダーなかなかの上玉ですぜ!」

「こりゃあ楽しみだな!おい、そこのガキ。死にたくなけりゃとっととそこのを置いていけ。そしたら見逃してやるよ。」

そう言って男は剣の先を彌一に向け下品な笑いをあげ、セナの全で回すように見てくる。後ろの男達も同じよな目で見てくる。ロクでもない事を考えているような様子だ。

そんな男に気持ち悪くなったセナは彌一の後ろに隠れ袖を摑む。確かにセナは正真正銘の文句なしのでそんな彼に興しているのだろう。セナが隠れた事に怯えていると勘違いした男はさらに調子に乗る。

「ほら命が惜しけりゃさっさと逃げろよ。なにそこのは殺しはしねえさ、逆にたっぷりと可がってやるよ。ゲハハ!なぁ!お前ら!!」

すると後ろの道を塞ぐよに五人の男が現れる。それに続き右から左からと正面の男達も含め合計三十人の山賊が現れる。男の笑い聲に釣られ周りの山賊も笑い出す。

そんな中、彌一はかずただし靜かに佇んでいる。全く怯えずただただ靜かに佇ずむ彌一に男はイラただしげにぶ。

「おい聞いてんのか!とっととを置いて消えーー」

Advertisement

「《黙れ》」

男のびを遮り、靜かな冷たい言葉を放つ。すると周りの空気が一瞬にして極寒の如き溫度に下がる。神的にではない、理的にだ。

そして彌一は発的に全力の殺気と威圧を辺りに無造作に撒き散らす。その極寒の溫度と大瀑布のごとき殺気と威圧に誰もが呼吸を忘れ直する。

神寒気スピリット・コールド】。神的な恐怖をじる時の寒気を魔で昇華させ人間の潛在的な恐怖を増幅させ、神だけでなく周りの空間の溫度を低下させて、理的にも恐怖をあたえる神系魔だ。

極寒のなか、この現象を引き起こした張本人である彌一は靜かに殺気を込めた言葉を紡ぐ。

「お前ら、何俺の嫁に手出そうとしてやがる。」

そう言って冷徹な眼を向ける。彌一はブチ切れていた。自分の嫁に気の悪い視線を向け、あまつさえ襲おうとした事に。彌一を殺そうとするだけならまだ許された、しかし奴らはセナを襲おうとした。それなら容赦は要らない。

その言葉で我を取り戻したリーダーの男が恐怖に怯えながら周りに命令する。

「お、お前ら!!さ、さ、さっさと掛かれ!!相手は二人だ!!男はすぐに殺せ!!」

Advertisement

こんな超常現象の前にあって恐怖のあまり冷靜な判斷ができず、を任せたのか、あるいはただ相手の力量も判斷できない阿呆なのか。男の指示に従い、周りの男達が一斉に矢を放ってくる。

全方位からと降り注ぐ矢の雨。普通ならここでおしまいだろうが、ここに居るのはそんな普通は通じない、世界を想うがままに変える魔師である。

彌一に殺到してきた無數の矢が彌一の周りに瞬時に出現した複數の魔陣に阻まれ、全てカキンと質な音を立てて落ちる。

突如空中に出現した魔陣に男達は驚愕する。この世界において魔陣は詠唱をして魔法を発させる時に現れるもの。詠唱も無しにいきなり出現した魔陣に誰しも理解が追いつかない。

「な、なんだ、いまの・・・!?。クソッ!!魔法だ!最大威力の魔法を放て!!」

そして今度は森の中に隠れていた二人の魔法使いが炎を放ってくる。しかしその攻撃は今まで見てきた攻撃に比べれば劣る。

迫り來る炎に焦ることもなく彌一は右手をかざすと、魔力障壁を局所展開。魔力の障壁に阻まれた炎は消滅する。

「魔法の炎が効かないだと!?な、なんなんだてめぇ!!」

矢も魔法も効かないとなり、ならば直接と思うが、彌一が放つ【神寒気】の前には本能的に近ずくことを拒む。

圧倒的有利なはずだった狀況が経ったしの時間で逆転した現狀に男は酷く狼狽する。

そんな男を目に、彌一は呆れた口調で話す。

「あんな炎で俺の魔力障壁を突破できるわけないだろ。セナを襲おうとしたその対価、生きてその炎に焼かれろ」

そう言って殺気のこもった聲で、しかし靜かな聲で唱える。

「《輝け・眩ゆきマグナスの幻炎》!」

彌一の足元に赤く輝く魔陣が描かれ、そこから炎の輝きが溢れる。カッと輝きが増した瞬間、彌一とセナを中心として白い炎が放線狀に地面を這いながら発的に広がる。

その白い炎は神的な輝きを放ちながら周りのものを全て飲み込む。しかし炎は森などは焼かず、男達だけに纏わりつく。

「なっ、なんだ!!ぐがぁあああああーー!!」

「ぐぁああああああああああ!!!熱い!熱い!

「助けて!助けて!水!水ぅうう!!」

「消えない!!なんで消えないんだぁああ!!」

そこからは地獄絵図だった。纏わりついた炎は本人を燃やし、いくら暴れようが消えることはない。誰しも全を生きたまま焼かれる苦しみにもがく。そして魔法使いが水の魔法を味方にかけるが、それでもなお、白炎は消えず、全纏わりつく。

生きたまま炎に焼かれる苦しみに、次々と倒れふす。また一人、また一人と倒れ、その場には彌一とセナ以外誰も立っていなかった。

それを見屆けた彌一は、指を鳴らす。

パチンと良い音が響くと、男達に纏わりついていた炎が、しぼむ様に消失する。男達を見ると、誰一人としてを焼かれていない。服も皮も、何一つだ。

「お前らには死すら生溫い。生きてまま焼かれた恐怖を刻め」

彌一が使った炎は、【マグナスの幻火】と呼ばれる非殺傷系の神魔。いくら暴れたり、水で消火しようとしても幻影の炎は消えず、その纏わりついた本人に生きたまま炎に焼かれる苦痛を直接神経に、神に刻む魔で、その苦痛は通常で炎に焼かれるよりもはるかに強力である。あまりの慘たらしさに、使用規制がかかる程の魔でもある。

しかし彌一に躊躇いは無かった。セナを襲おうとした瞬間に彌一の中に容赦や躊躇いはなくなりその時點でもう既に男達に死という選択肢は殘されていなかった。

そして気絶した男達が死累々と倒れ伏しているこの慘狀にセナが彌一に言う。

「彌一、流石にしやり過ぎだと思う・・・」

し批難めいた視線を送るセナだが、彌一は全く気にした様子もなくさも當たり前の様に言葉を返す。

「殺してはいないだろ?それに俺のセナに手を出そうとしたんだ、これくらいで十分だ。いや、むしろまだ怒りが収まらないんだが・・・」

そう言って握り拳を作る彌一に、セナは改めて自分お為に怒ってくれた事に嬉しくなり、「んっ、ありがと」とキスをして嬉しそうにお禮を言う。彌一もセナのキスで冷靜になる。

累々と倒れ伏す男達の慘狀の中で、イチャつく二人はもの凄くシュールだった。そんな景を気にする事なく二人は再び歩き出す。

「よし、それじゃ進むか」

「うん。早く森を抜けよ」

セナが彌一の腕に抱き付いて、腕を組みながら二人して道に沿って歩き始めた。ちなみに山賊達はそのまま放置である。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

あれからまたしばらく経ち、夕刻の時間。今は山の山頂にいる。そこからついに待ちに待ったエルネ街が遠くの方に見えた。夕日に照らされた街並みとそれを囲む城壁がしい。

「おお、あれがエルネ街か!ようやくつくな」

「早く行きたい!」

「確かにそうだが此処からじゃし遠い。今日はここで野営をして、明日エルネ街にろう」

「わかった」

エルネ街は見えたが此処からだとし遠く、つく頃には夜中頃だろう。そんな時間に行っても中にれるかわからないので今日は野営をして、明日エルネ街にる事にする。

彌一とセナはお互いに必要なものを用意し、野営の準備をする。彌一は獲の狩りに、セナは料理を作る。近くの森で鹿をゲット出來たので、今晩は鹿鍋だ。

暗い森の中で焚き火の炎を頼りに二人で食事をする。

脂ののった鹿は絶品だ。

「うまい!らかいから口の中ですぐになくなるな」

「今日のは自信作」

そう言ってフフーンとその膨よかなを張って褒めて褒めてと言わんばかりにもたれかかってくる。

そんなセナが可くてしょうがない彌一は名一杯甘やかす。

プロポーズしてからセナは彌一によく甘える様になった。それが信用やによる行だと分かっている彌一は嬉しくて更に甘やかす。

用意した鹿鍋が無くな頃には焚き火の炎よりもアツアツな空気が漂っている。

その後セナはテントの中で明日の準備をし、彌一はし辺りの探索を行う。そして特に異常がないと判斷して、テントの周りに【知魔】を展開しテントに潛る。

テントの中にはゆったりとした部屋著に著替えたセナが寢袋を敷いて待っていた。部屋著などは荷になり旅に持っていくべきではないと思うが、寢るときも旅の服裝では気が休まらず、それだけで力を消費し、ストレスを溜め込んでしまう。そのため著替えを持っておくことは重要だ。

「どうだった?」

「異常なしだ。【知魔】も張ってるしな」

「なら良かった。お疲れ様」

そう言って労い隣に座った彌一にもたれかかる様にしてセナがを預けてくる。その顔には赤みがさし、潤んだ瞳で見てくる。セナがなにを期待しているか読み取った彌一はその頬に手を添えを合わせる。

舌をれるとセナは一瞬ビクッとするが、すぐに甘える様に絡ませてくる。呼吸も忘れひたすらお互いに求め合う。

やがてぷはっと息をしセナはその場で崩れ落ち息を荒くする。そしてとろけた目で彌一を見ると彌一はセナを押し倒す。

ランタンの小さながテントの中を薄っすらと照らす。薄っすらな明かりの中でもセナが顔を上気させているのがわかる。し息の荒い聲でセナが発してくる。

「今日もたくさんして」

そうして再びを重ね、熱いキスをする。

その後、テントから二人も息づかいが暗い靜かな森に微かに響き、溶けていった。

    人が読んでいる<魔術がない世界で魔術を使って世界最強>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください