《魔がない世界で魔を使って世界最強》銀の
冒険者は組合に寄せられる依頼をこなすことで報酬金を得ることができる。依頼には地域の手伝いや採取系のような簡単な依頼から、魔やモンスターの討伐のような危険なものまである。
モンスターとは魔とは違い危険生のことをモンスターという。魔は魔力を取り込んでおり強力だがモンスターは魔に比べ弱い。ただし魔と比べてというだけで普通に脅威だ。モンスターの種類によっては魔よりも強力なものもいる。モンスターの種類ではゴブリンやオークなど様々な種類が存在する。
今回は旅の路銀を稼ぐべく冒険者組合に向かっている。冒険者としての仕事をしに行くためだ。
二人は人繋ぎで手をつなぎながら冒険者組合への道を歩く。セナは嬉しそうにニコニコしながら彌一の腕に絡みつき頬をりつける。昨夜は彌一がセナへのを証明してお互いに激しく盛り上がった。いつもの優しい彌一とは違いしいじわるなじの彌一にセナはが高鳴り「こんな彌一もいい・・・!」とさらに惚れ直したらしく、昨夜の事を思い出してはイヤンイヤンとデレてしまう。
そんなセナを見ながら、しやりすぎたかも・・・、と思う彌一でもあったがまぁセナが嬉しそうだからいいかと思う。
そんなことを考えていると冒険者組合が見えてきた。組合の中にると晝間っから酒を飲んでいる冒険者が多くいた。そんな冒険者たちは組合にってきた彌一とセナを見ると驚愕する。
「あいつがクライトさんを倒した新人か。」
「ああ、なんでもクライトさんの【ウィルセルクの槍撃矢】を防いで降參させたとか・・・」
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「はぁ!?城壁を貫通したっていうクライトさんの技を防いだのか!?」
「ば、化けか・・・」
「それに橫のの子は昨日クルスと戦って圧勝だったらしいぜ。クルスの技が全く効かなかったらしい」
「第八階梯のクルスか!?あいつ確か今度第九階梯になる予定だったろ・・・!?」
「しかも無詠唱で魔法を使うらしい」
「む、無詠唱!?そんなの人間業なのか・・・!?」
どうやら昨日の試合について冒険者の中で出回っているらしく遠巻きにぼそぼそと話をしている。そんな視線が鬱陶しいが別に危害を加えられるわけでもないので放っておく。そんな視線のなか二人は依頼容が張ってあるボードで様々な依頼容の確認をする。
「う~ん・・・どの依頼がいいかな・・・?」
「犬の捜索、薬草採取、商會の護衛、グリーズベアーの討伐・・・いっぱいあるね」
「そうだな。できれば難しい依頼とかならいいんだけど・・・」
「あっ、ならこれとかどう?」
「ん?ヘルグ森林の魔討伐で報酬金は五十萬ネクトか。そうだなこれにするか」
推奨される階梯は第七階梯なので問題ない。依頼の紙を取って付に向かう。付嬢はその紙をけ取って容の確認と説明をする。
「『ヘルグ森林の魔討伐』ですね、わかりました。それではご説明いたしますね。ここから南に進んだところにあるヘルグ森林で商會の荷車が狼型魔に襲われることが多発しているため付近の魔の討伐をお願いします。魔の討伐數は二十です。討伐した際には魔の右耳を回収し、依頼完了の報告の際提出ください。それが討伐數のカウントになりますので。」
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「いつまでに報告すればいいですか?」
「そうですね、期間は二週間までなので二週間以に報告ください。」
「わかりました。それじぁいってきます」
「はい。お気を付けていってらっしゃいませ」
付嬢に送り出されて二人は組合を後にする。街で必要なものを買った後城門を抜けて二人は南に広がる森を目指す。
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歩いて一時間の所に森はあった。グリノア大森林ほど木が生い茂っているわけではないので森の中を比較的簡単に捜索ができる。森での探索で魔を見つけることは難しいのだが彌一は【探査魔】を使って魔を捜索する。普通は森の中で野営をしながら魔を探索していくのだが彌一の場合には魔の位置がわかるので必要ない。
【探査魔】を使うと魔の反応があった。その數三十と報告よりも多かった。
「いたぞ。ここから500メートル先に六の魔の反応がある。まずはそこからだ」
「わかった。急ごう」
「走るのはいいがついてこれるのか?」
ステータスが常人の遙か數倍の彌一の走りにセナは著いていくことができない。それを懸念して尋ねるがセナは問題ないとを張る。本當に大丈夫だろうかと思いながら彌一はし遅めに駆け出す。
常人の全力ダッシュ以上の速度で地面を蹴り駆ける。地面を踏みしめばらばらに生える木を避けながらしも速度を落とすことなく走る。セナは付いてこれているだろうかと思い後ろを見るがいない。
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「やっぱ無理か・・・ん?えっ・・・?」
後ろについてこれていないので一度戻るかと考えて速度を落とした瞬間、何かに追い抜かれた。追い抜かれた先を見るとそこにはーーセナがいた。
地面を蹴り何かに後押しされているかのように駆けるセナを見て慌てて走り出し追いつく。追いつくとセナは風を纏っていた。セナは自分に風を纏いその風の力で加速し彌一を追い抜いたのだ。そうこの技はビルファが使っていた魔法と同じ。
「いつの間に【疾風加速ゲイルアクセラレイション】を・・・!?」
「昨日クライトさんの魔法を見て覚えた」
「ま、まじか・・・」
【疾風加速ゲイルアクセラレイション】を使いこなすには相當の練習が必要となりたった一日二日で覚えられる魔ではない。それを昨日の試合時間だけで見て覚えたというセナに彌一は驚愕する。屬系の魔に関してはセナは天才だな、とその魔の制センスに戦慄すると同時にこれなら大丈夫と駆け出す。
あっというまに到著するとそこには狼型魔が六座っていた。すぐそばに臓を食い破られた鹿の死が転がっている事から食事後だったらしい。魔に気づかれないように移し木の上に登る。
木の上に登ると下の魔が全て視界に収まる。セナは魔に向けて手をばす。
「【凍氷雨】」
鋭い氷が雨のように頭上から魔を襲う。四肢を、臓を、頭を貫かれ魔は自分が攻撃されたことに気付かずなすすべなく骸となる。
しかし一だけ足を貫かれただけの殺し損ねた魔が
木の上のセナに大きく口を開け喰らい付くべく飛びかかる。そんな魔に彌一はレルバーホークを向け、発砲。
プラズマを纏う弾丸が魔の口からに侵し口から全てを貫いて地面に弾丸が埋まる。
「うっ、失敗した・・・」
「一くらい別に大丈夫だ。てかセナが全部殲滅すると俺の仕事が無くなるから別に一人で全部やろうとしなくていい」
「うん。わかった」
「それじゃ、耳を回収して次行くか。ここから三メートルに三いる」
「じゃあ急ごう」
をズタズタに貫かれた魔から右耳を回収して。次の獲を狩りに行く。
「これで三十だな。ふー、木々を避けながら森を駆け抜けるのはいい訓練になるな」
「【疾風加速】のいい訓練にもなる」
「そうだな。あの魔は超制が要求されるからこうやって駆け抜けながら木々を避けて行くのはいい訓練になる。今度から定期的に森で訓練でもするかな」
「そうしよう」
普通は死と隣り合わせで危険な魔の討伐をいい訓練になったと言いながら終え帰路に著く彌一とセナ。
あの後も魔の掃討は順調に進んでいき、第七階梯の冒険者パーティーが三日かけて行う魔の討伐を僅か一時間以に終えてしまった。しかも三十の魔をだ。
本人達には自分がやらかした事のすごさを理解しておらずさも普通のような態度だ。きっとこの景を見たら大抵の冒険者は顔を引攣らせ自信を々にブレイクされる事は必須だろう。
街に帰るべく森を歩いていると鼻に付くような腐臭が漂う。
「うん?なんだこの匂いーーーッツ!の匂いだ!」
匂いを嗅いで覚えのある匂いを嗅いだ彌一は臭いの元を探る。セナも遅れての匂いに気付く。
匂いのする方向に駆け出す。草むらを掻き分け、木々を避け、蹴り、匂いの元へ急ぐ。そして森を抜け道に出ると無殘にも壊された荷車があった。
二人は急いで駆け寄るとそこにはあちこちを喰われ、大きな三本傷などのせいで既に息をしていない人達がいた。荷車の中も荒らされており、そして周りに転がる熊型の魔の死から熊型魔の襲撃に遭ったと思われる。熊型魔の頭部はとても綺麗な傷の斷面で刈り取られた様に無くなっている。一誰がこれをと思いつつ息のない人々を見る。
人々の顔には苦痛と恐怖が混ざり合った死を目の前にした人間の表が浮かんでいる。の乾き合や死後直が始まっていない事から死後一時間以だと推測できる。救えたかもしれない命に彌一は顔を顰めるとそんな人たちに向かって右人差し指と中指を揃え唱える。
「《汝死を恐るる事なかれ・その命は生命の円環へと戻り・汝に救済を與える・紡がれる生命の縁は新たな命を育む・迷える魂・汝の死に安らかなる眠りを》」
生き絶えた人々のの心臓部分に白い焔の玉が生まれその焔が一度激しく燃えた後萎み、消える。
唱えたのは死霊魔【浄化】。死んだ人間の現世に迷える魂が憎悪や嫉妬、憤怒などの負ので人リッチなどの邪霊になる前に迷える魂を死後の世界に導くのがこの魔。
彌一は浄化された人々に手を合わせる。せめて死後の世界では安らかに生きれますようにと願いを込めて。
手を合わせて願っていると荷臺を確認しにいったセナが慌てた様子で駆け寄ってくる。
「彌一!來て!まだ生きてる子供が!!」
「本當か!!」
まだ生きている命がある事に喜ぶがすぐにセナの様子からその命も危険な狀態である事を察し急いで荷臺に駆け寄る。
荷臺には倒れた荷の下敷きになっているの子がいた。周りの荷を蹴散らしを抱えて外に出る。の子は見た目は四、五歳くらいで腰辺りまである綺麗な銀の髪が特徴のだ。白い布の服を一枚著ているだけで、中埃にまみれは痩せており腕には下敷きの際に負ったと思われる切り傷がある。
腕の傷を塞ぐべく傷口を持ってきた水とタオルで綺麗に洗浄し【治癒魔】を行使する。傷口が逆再生のように塞がってゆき傷が無くなる。彌一は腕以外に傷が無いのを確認すると今度は部に異常がないかの額に手を當て検査用魔を使う。彌一の母は世界最高峰の防・支援系魔師の為、負傷時の際の処置の仕方や醫療についても知識がある。
検査用魔で調べても特に異常は見られなかったので彌一は一安心する。セナはそんな彌一を不安そうに見つめていたが彌一が大丈夫だと言うとホッとをで下ろす。
「取り敢えずこの子を連れて街へ戻ろう。この事についも組合に報告すればいいはずだ」
「うん。そうだね・・・」
この子だけが生き殘った事にセナは悲しそうな表を浮かべる。これから一人で生きていかないといけない現実で、これからこの子を襲う苦悩を思うと同してしまう。そんな現実はまだ過ぎるこの子にはあまりにも殘酷な事だ。俯くセナの頭を彌一は優しくでる。
「確かにこれからこの子を襲う現実は辛いだろう。でもこうして生き殘ることが出來た事にいつか折り合いをつけることができる筈だ。だから心配するな」
「・・・そうだね」
薄ではあるがこの現実はこの子が乗り越えなければならない現実だ。
悲しみでけないセナに変わって彌一はを軽く拭いてやり清潔なタオルを巻いて抱き抱える。二人はそのまま急いでエルネ街に戻った。
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エルネ街に戻ると直ぐさま組合に駆け込むそして依頼達と荷車のこと、そしての事を伝えると付嬢が急いでビルファを呼んでくる。それから話會いの結果、依頼についての話や荷臺については明日話し合う事にして解散した。に関しても明日話し合う事にして今日は取り敢えず彌一達が元を預かる事になった。
宿に到著しセナにのを溫かいタオルで拭いてもらって服は宿の人に事を話すと貸してくれた。
埃も無くなり清潔になったをベットに橫たえ二人は話し合う。
「目を覚まさないね。やっぱりショックだったのかな?」
「ああ、気絶してるだけだから心配ないと思う。ただ一つ不可解な事があるんだ」
「不可解な事?」
彌一は検査用魔でを検査した際、気になった事をいう。
「アストラル、つまり魂が異常に消耗しているんだ。普通はこれ程アストラルが消耗する事はまずない。それにこの子も中には何かいる。その何かがこの子のアストラルの消耗をさらに進めてるんだ。今はその消耗を魔的に抑制しているから大丈夫なんだが・・・一この子に何があったんだ?」
「何かがいる・・・?」
その話にセナは不安になるがでも明日には目が醒めるだろうと聞いてし安心する。二人は床に座り寄せ合って布を掛けて就寢する事にした。セナは不安で彌一にギュッとしがみつき彌一はセナの頭を安心させるようにでる。程なくしてセナの規則正しい呼吸が聞こえてくる。彌一もセナの頭をでながら意識を睡眠の海に沈めた。
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翌朝。窓から差し込む朝日で目を覚ました彌一は座って寢たせいで凝り固まったをに眉を顰めつつ膝を枕にして寢ているセナを起こす。目をしょぼしょぼしつつ起き上がる。二人はベットに視線を向けると銀髪は靜かに眠っている。
「まだ起きないね」
「うーん。そろそろ起きる頃だと思うーー」
と言おうとした瞬間、の目がプルプルと震えーー目を開ける。ルビーの様な紅い目でし意識が朦朧としているのかボーッとしたじでこちらを見ている。
二人は驚き、の目を覗き込む。
「大丈夫か?どこかに異常はないか?」
「自分が誰かわかる?」
二人が心配しているとは意識がハッキリとしてきたのか彌一とセナの顔を見て口を開きーー
「・・・パパ。・・・ママ」
可いらしい鈴の様な音で超弩級の弾を落とす。しばらくフリーズした二人は同時に口を開く。
「「え、えぇえええええええーー!?」」
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