《魔がない世界で魔を使って世界最強》ユノ

「・・・パパ。・・・ママ」

その言葉に驚愕の聲が響く。いきなりのパパ、ママ宣言で二人は固まるが、はっと気をとり直して彌一が屈んで銀のと同じ目線になりゆっくりと聞いてみる。

「君の名前はなに?」

「・・・ユノ」

は思い出したようにユノ、と名前をいう。名前をがわかったことで今度は別の質問をする。

「それじゃあ次だ。どうして俺とこのお姉ちゃんの事をパパとママって呼ぶ?」

「パパとママだから」

彌一たちをパパとママと認識している事から両親に関する記憶は深いものではないかと考えその方向に話しを持っていき、その両親に関する記憶から記憶を回復できないかと試みる。その為にもこれは言っておかなければならない。

「いいかい?よく聞いてくれ。俺とこのお姉ちゃんは君のパパでもママでもない。俺は彌一、日伊月彌一。このお姉ちゃんはセナ。わかるかい?」

「・・・?」

ユノは頭をコテンと傾げわからないという。そんなにこれ以上聞いてみても良いものかと迷うがそれでも今後の事を考えると聞いておかなければならない。

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彌一はゆっくりと諭すように言い聞かせる。

「君のパパとママは・・・死んだんだ」

彌一は躊躇った後にその殘酷な現実を突きつける。必要なこととはいえやはり言っても後悔は殘る。しかしーー

「・・・??。パパとママはここにいるよ?」

わからないといった合に今度は反対の方に首を傾げる。そんなユノの反応に彌一とセナはお互いに息を呑み、その顔に悲痛な表を浮かべる。

一番深いはずの両親の記憶さえも思い出せない程なのかと息を呑んだのだ。の心の傷は相當深刻なようでそれほどまでの両親の殘酷な場面を見てしまったのかと思うとセナは涙を流し、ユノを正面から抱きしめる。

「ママ?」

「・・・そうだよ。ママだよ。もう大丈夫だからね・・・」

セナは背中をポンポンと叩き優しくユノの頭をでる。丁寧に優しく、忘れているすぎるの子が背負うにはあまりにも殘酷な現実を洗い流すように。

ユノの方はなにをされているかわからないといった合だが、セナの暖かさをじて嬉しそうに笑顔で頬をスリスリとこり付ける。

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彌一は抱き合う二人を見て、ここまでだな、と質問を諦め、痩せ細っているユノの為に消化の良い料理を作るべくそっと部屋を出て一階の廚房に降りる。

彌一が作った特製おかゆをユノを膝の上に置いてセナが食べさせながら今後の事について話し合う。

「取り敢えず午前中に必要品を買って、晝から冒険者組合に向かおう」

「うん。この子の服とか必要だもんね」

「おでかけするの!?」

買いにいくと聞いてユノの顔がパーッと明るくなる。セナはそんなユノに優しく微笑みかける。

「そうだよ〜。可いお洋服とか買いにね」

「やったー!」

お出かけするのがそんなに嬉しいのかギューッとセナに抱きつく。セナも優しく微笑みながら頭をでる。

い子供の笑顔とセナの嬉しそうな母溢れる笑みを見て彌一も自然と頬を緩める。やっぱり子供は元気な方がいいな、と思いながら二人に聲をかける。

「よし、それじゃ行くか!」

「いくー!」

街に出ると晝前のせいか仕事の休憩中の人達や彌一と同じく家族ずれの親子を多く見かける。

ユノが彌一とセナの手をとってユノを挾んで三人で歩きながら広場を散策する。

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「ユノは何処か行きたいところはあるか?」

「うーん・・・あ!あれ味しそう!」

「あっ、あのお店って・・・」

ユノが指を差した店はこの前のデートの時に立ち寄ったガル豚包みのお店だった。

あの時の味を思い出してセナも頷く。

「彌一行こう!」

「パパ行こう!」

そういって目をキラキラさせ親子二人の聲が見事にシンクロし、彌一は微笑みながら、「行くか」と頷く。

店に近ずくと店のおっちゃんが彌一達の事を覚えていたのか手を挙げて元気な挨拶をする。

「すみません。ガル豚包みを三つお願いします」

「いらっしゃいお二人さん!ん?今日は可らしいお嬢ちゃんを連れてるじゃないか。どうしたんだい?」

「あー、この子についてはその、聞かないでやって下さい」

そう言うとおっちゃんは大方の事を察したのかし申し訳ないといった表になる。

この世界で魔やモンスターに襲われ、両親を失った子供達はなくない。寄りのない子供は國が管理する孤児院に保護されたり、養子として引き取ったりすることもある。

おっちゃんは直ぐに元気な笑みを浮かべるとユノに向かって元気に話す。

「お嬢ちゃん可いいから一個サービスしてやる!」

「ありがとうおじちゃん!」

ユノは天真爛漫な明るい笑顔でおっちゃんにお禮を言うとおっちゃんも笑顔になりユノの頭をでる。

「すみません。ありがとうございます」

「いいってことよ!可い子供の笑顔が見られたんだから十分さ!」

「それじゃあ、この後に人と會うんでもう一つのお土産用に注文しますね」

「はいよ!それじゃあ、ガル豚包み四つね!毎度!」

おっちゃんの威勢の良い掛け聲と共に注文を終え、出來上がるまでの料理の様子を眺める。

四つとサービスで一つ出來上がると三人は隣のベンチに腰掛け早速ガル豚をいただく。

「「いただきます」」

「・・・?い、た、だ、き、ま、す?」

彌一達の真似をしてユノもいただきますをしてガル豚を小さな口で食べ始める。ピリッと辛いのは大丈夫かと心配したが、おっちゃんが気を効かせて甘口ソースにしてくれていたので安心だ。

ユノはガル豚を噛んでその小さな口をモグモグさせながら食べて飲み込むと綺麗な紅い目をさらにキラキラさせる。

「おいしい!」

ユノはそのまま口の周りを汚しながら、はむはむと夢中で食べ進めていく。味しそうにガル豚包みを食べ進めていくユノを見て彌一とセナは安心する。最初は元気がないようだったが今では歳相応の無邪気な笑顔を浮かべている。そんなユノを見る彌一とセナの目には本當の我が子の用に慈に満ちている。

セナは口の周りをソースで汚したユノの口をハンカチで拭うとユノが笑顔でお禮をいって再びガル豚包みに夢中になる。

夢中になりながら食べているユノを見ながら二人はこっそりと話し合う。

「彌一はユノちゃんをこのあとどうするつもり?」

「それなんだがこのままユノは俺たちで預かろうと思う。今のユノのアストラルは俺の魔で一時的な応急処置を施してるだけだ。取り憑いてるものが何なのかわかって正しい処置ができるまでは応急処置の魔が切れるたびに新たに掛け直すしかない。だからこのまま預かろうと思ってる」

「わかった」

こうして二人で話し合っているとユノがガル豚包みを食べ終わり、トコトコと歩み寄って彌一の方を向くようにして膝の上に座ってくる。

「パパ、どうしたの?」

心配がが表に表れていたのかユノが大丈夫?と顔を寄せてくる。彌一は「なんでもない」といって笑い、ユノの頭をでてやる。そんなパパのなでなでが気持ちよくてユノは目を細め彌一の元にすりすりと顔を寄せる。

「さ!次行くか!」

「うん!」

彌一はユノを肩車し歩き出す。セナもそんな二人を微笑ましく見ながら歩き出す。

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ユノの服や旅に必要な買いなどを済ませ三人は冒険者組合を訪れていた。彌一はビルファと話をするため応接室にセナとユノは応接室の隣の部屋で待機している。

仕事がひと段落したビルファが席に著いたことで話し合いが始まる。

「それで彌一くん。昨日保護したの子、えっとユノくんについてだったね」

「はい。それなんですがユノは今記憶喪失なようで、名前しか思い出せないみたいなんです」

「・・・!よっぽど辛い験だったんだろうね」

記憶喪失のことをいうとビルファは顔を顰めユノを心配する。しかし彌一はビルファにまだ伝えなければいけない事がある。

「それと実はユノのにはなにかが取り憑いてるみたいなんです」

「その取り憑いてるものとは?」

「何が取り憑いてるかはわかりませんが過去に死んだ生命が守護霊として取り憑いてるみたいです。ただ、その守護霊の存在の霊格が高過ぎてユノの魂に負擔が掛かってる狀態なんです」

「なるほど。それで今はどうしているんだい?」

「今は魔でアストラルに負擔にならないようにしてます。魔が切れればまた掛け直すようにしてなんとか繋いでいます」

「となると今後はユノくんを連れて旅をすることになるのかい?」

「ええ、そうなります」

ユノを連れての旅はユノに大きな危険を伴うが、魔が切れた場合掛け直さなければそれこそユノの命に直結する。どれくらいでこの問題が解決するかわからないが一緒に旅をする必要がある。

「わかったよ。書類には彌一くんが引き取り人として記しておく。あとユノくんのご両親のだが、の損傷が激しくてまだ判別が出來ていないんだ。判別次第報告するよ」

「ありがとうございます。それと一つお願いしていいですか?」

「ん?なんだい?」

「俺とセナがこの近くの迷宮を攻略する間ユノを預かっていてほしいんです」

ここから西のフェルセン山岳地帯にある【フェルセン大迷宮】は高い山の山頂にあり、そこまで行くには急勾配な坂や崖を登らなければいけない。また魔も多く生息するため山頂にたどり著く前に死亡することも多い。そんな場合にユノを連れて行くのは流石に危険なためビルファに預かってもらおうということだ。

「【フェルセン大迷宮】だね。わかった、ユノくんはこちらで預かろう。 ただユノくんの魔に関しては大丈夫なのかい?」

「出発する前に念に掛けるので一週間は保ちます」

「それなら大丈夫だね。それじゃ、ユノくんは組合が責任を持って預かろう」

「ありがとうございます」

二人はその後細々とした話し合いや書類整理を終えて解散となった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

宿に戻ると気がつけば既に夕食の時間帯だった。夕食を食べ終えセナとユノは先にお風呂へ、彌一は部屋で今日買った道の整理をする。

いつもなら彌一とセナは一緒にるが今回はらない。ユノの前で獣になるわけにはいかないからだ・・・

セナとユノが上がるとれ違いで彌一も風呂にり一日の疲れを癒す。

「パパ〜!」

「おっ、と」

風呂から上がり部屋に戻ると薄手の寢間著をきたユノが彌一のに飛び込んでくる。ユノがぶつかっても痛くないように勢いをけ流し抱っこする。

するとさっきの元気は何処へやら、抱っこされたユノは彌一の腕の中で眠そうに可らしい小さなあくびをもらす。

部屋に飾られている時計をみると既に十時。まだ寢るような時間でもないが子供にとってはもう寢る時間だ。

「よしユノもう寢るぞ」

「うん。ねりゅ・・・」

眠気で呂律が怪しくなったユノを見て彌一とセナは微笑みつつベットに移する。

ユノを真ん中に左に彌一、右にセナと家族三人川の字になってベットに潛る。

「おやすみなさいパパ、ママ・・・」

「おやすみユノ」

「おやすみユノちゃん」

ベットに橫になると今日一日お出かけではしゃいだせいで疲れがきたのか眠そうにおやすみなさいという。

二人も優しく耳元でおやすみを囁くとユは靜かに目を閉じて小さな寢息を発する。

らしい寢顔を見ながらセナが小さく話しかけてくる。

「ふふ、可いい寢顔だね。・・・ねぇ彌一、私たちの子供ってこんなじかな?」

「ぶっ、!!」

いきなりの質問に思わずむせてしまう。実は彌一も心、娘が出來たらこんなじかな?と考えていたためし恥ずかしい。

「あ、あぁそんなじじゃないか?」

「うん。そうかも」

そういって笑うセナは可らしい寢顔のユノの頭を優しくゆっくりとでる。ただその顔にはし悲痛の表が浮かんでいる。

「ユノちゃんの本當のパパとママは私達じゃない・・・これからはどんな風に接したらいいかな・・・?」

本當の両親は自分たちではない、でもユノは知らず自分たちをパパとママとして接して來る。そんなユノにらしさをじ、両親のように接してしまう。

だがこの関係は偽の関係。

セナ自これからどのようにして接していったらいいかわからないでいる。

しかし彌一はなんでもないようなじで答える。

「別にいまのままで接すればいいじゃないか。いつか本當のことを思い出してもそのショックから立ち直れるように楽しい思い出を作ってやれればそれで充分だと思うぞ」

「そう、かな・・・?」

「いつかきちんと向き合える時に支えてやれるようにいままで通りに接すればいい。そうだろ?」

「・・・うん。そうだね」

彌一の言葉にセナなりに折り合いがついたのかし穏やかな表になり、そのまま橫にいるユノを優しく抱き締めて目を瞑る。

彌一はそれ以上は何も言わず、優しくセナごとユノを抱き締めて目を瞑った。

親子三人が抱き合ってお互いをじながら靜かに眠りについた。

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