《魔がない世界で魔を使って世界最強》フェルセン大迷宮
七夕から三日後、彌一一家は冒険者組合でビルファといた。
彌一とセナは旅用のリュックを背負っている。
「それじゃぁクライトさんユノをお願いします」
「ああ、ユノくんは冒険者組合で確かに預かろう」
彌一とセナはこれから迷宮を攻略しに行く。ユノはお留守番だ。
そのユノはセナの腰に抱きついたまま離れようとしない。
「ユノちゃんママとパパが帰るまでお留守番していてくれる?」
「やだ!パパとママと一緒がいい!!」
普段は聞き分けの良いのだがパパとママがいないとなると年齢相応のわがままをいう。そんなユノのわがままが嬉しくもあるがどうしようと困ってしまう。
「ユノ、これからパパとママは危険な所に行かなきゃならない。そんな場所にユノは危ないから連れていけないんだ。ユノは良い子だからそのへんよくわかるだろう?」
「でも・・・」
「じゃあパパとママがいない間これを渡しておく」
そう言ってユノに渡したのは二枚の呪符。ユノはなんだろう?、と不思議そうな目でみると彌一は呪符に魔力を流す。
「【式神生】」
そう唱えると呪符が変化し、青い鳥と白い子貓になった。
目の前で紙がになった景にユノは瞳を輝かせる。
「ねこさん!とりさん!」
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ユノは白貓を抱き上げ、頭には鳥が止まっている。と戯れる我が子を見ながら彌一とセナは微笑み、再度ユノに話しかける。
「ユノ、これならお留守番できるか?」
「うん!」
「えらいね、ユノちゃん」
セナはユノの頭をでて褒める。彌一もユノの頭をで、そんあ二人にでられているユノはとても嬉しそうな表を浮かべる。
そろそろ行かないとマズい時間になり二人は立ち上がろうとするとユノに裾を引かれる。
「パパ、ママ行ってらっしゃい!」
そう言って元気な明るい聲で二人の頬に行ってらっしゃいのチュウをする。
娘の可い見送りにセナは微笑み、彌一は悶える。
「・・・セナ、俺もう死んでも良いかも」
「うん、気持ちはわかるけど私とユノちゃんが悲しむからやめようね?」
そんな親バカな彌一はユノの頭をでて立ち上がる。
「それじゃあ行ってきます」
「行ってくるねユノちゃん」
「行ってらっしゃい!」
二人は手を振り、歩く出す。ユノは手を大きく振りながら満面の明るい笑顔で二人を送り出す。ユノは二人が見えなくなるまでずっと手を振り続けた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
エルネ街から西に進み、ようやく目的地が見えてきた
フェルセン山岳地帯。ゴツゴツした巖でできた標高五千メートル級の山々が集まりそのどれもが崖や急勾配な坂でできている。とても一筋縄ではいかないような山がある中、その中でも一際大きな存在がある山、その頂上に今回の目的地の【フェルセン大迷宮】のり口がある。
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り口にたどり著くためには酸素が薄い山のなか、巖がむき出しの崖などを越えなければならない。それだけでも大変なのにこのあたりは魔も多く発生する。そのためこの大迷宮に挑もうとする人は年間に片手で數えれるくらいしかいない。
このように厳しい環境なのは【フェルセン大迷宮】だけではない。すべての大迷宮がり口にたどり著くまでの危険度が高く、その迷宮に挑むまでの危険度も【世界六大迷宮】と呼ばれる所以の一つでもある。
「あれがフェルセン山岳地帯か。確かにあの頂上まで行こうとしたら大変だな」
「山に魔も多くいるし、それに空にも飛行型の魔がいる。地上にも気おつけなきゃいけないし、空にも気おつけなきゃいけないから大変」
山の空には大型の鳥の魔が複數見られ、また山にも【探査魔】で多數の魔の存在が確認できた。
こだけの難所となるとり口にたどり著くまでに相當な苦労を強いられる。
しかし彌一たちには関係ない。
「よし、それじゃ飛んでいくか」
「なんかインチキくさい・・・」
「いいだろべつに!?」
飛んでいけば山を登る必要はなく魔を相手にする必要もない。飛んでいけば空の魔に襲われるが、フェーズⅡでもない魔など今の二人の相手にはならない。
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【飛行魔】をセナにもかけて飛ぼうとすると、セナが裾を引っ張ってくる。
「じー・・・」
「・・・もしかして抱えて飛ぶのか?」
「うん。そのほうが好き」
「でも魔の相手は?」
「それは私がやる。それに彌一なら抱えたままでもあれくらいなんてことないはず」
「それはそうだが・・・ああ、わかった、わかった。まったく甘えん坊だな」
「それは彌一と二人きりの時だけ」
そういって微笑むセナがあまりにも魅力的でドキッとなり、まぁ抱えたままでも十分いけるか、と思いセナの背中と膝裏に腕を回して、引き寄せながら抱き上げる。
お姫様だっこで抱きかかえられたセナは、前に【飛行魔】で朝焼けの空を飛んだことを思い出して嬉しくなり、離れないように彌一の首に腕を回ししっかりと著する。
「よし、飛ぶぞ!」
この前は空が限界だった【飛行魔】も、今ではお手の。
足ともから魔陣が通り過ぎていくと、二人は重力の楔から解き放たれ、空へと舞う。
コートの裾をたなびかせ空を自由自在に飛び回る。
そんな彌一たちを見つけた飛行型の魔たちが一斉に殺到してくる。
先行してきたのは鷲の魔。鷲の魔は翼を閉じ全速力の急降下で彌一たちを襲うが、彌一はそれをさっ、と回避しつつすれ違いざまに回し蹴りをその側面に喰らわせる。
飛ばされた鷲はそのまま橫から襲おうとしてきた鷹の魔二に直撃し、まとめて吹き飛ばされる。
蹴りを喰らわせたと同時に今度は背後からツバメ型の魔の集団が一斉に突撃を始める。
「【風碧砲】!」
風の大砲が放たれ突撃してくるツバメを飲み込み、その圧倒的圧力で、圧殺。
次から次へと襲ってくる魔を避け、蹴り技で対処していく。セナも魔法で次々と魔を撃ち落としていく。
しかし、どれだけ対処しても一向に減る様子のない魔の集団に、し焦り始める。
「セナ、このままじゃジリ貧だ。加速してここを抜けるからしっかり摑まってろ!」
「うん!」
グッと力を溜め、加速する。周りの景が凄い勢いで後ろに流れ、置き去りにしていく。襲い來る魔を避けて、避けるいく。魔は後ろから追跡して來るが遅過ぎる。
彌一はそれを確認すると振り切るために更に加速する。
程なくして魔が追跡を諦め見えなくなる。そしてそのままの勢いで雲を抜け、山頂が見えた。
「何処だり口は?」
「彌一、あそこ!」
指を差した方向にはり口を緑に輝く幾何學模様の石材で縁取られた窟が見えた。
近くに著地し、セナを下ろすとり口に向かう。
「この模様、【グリノア大迷宮】にもあったやつだ。あの時はわからなかったが、この式は【空間魔】のそれだ」
「つまり?」
「この迷宮の部は外部から切り離された魔的に空間が切斷されてる。だから【探索魔】も機能しない」
「なるほど」
「さて、いよいよ大迷宮だがここは【グリノア大迷宮】とはレベルが違う。気を引き締めていくぞ!」
「うん!」
大迷宮部は【グリノア大迷宮】と同じように薄明かりが部を照らし、視界の確保には困らなかった。
壁や天井は荒く切り抜かれた巖盤で出來ている。巖盤を掘って行けばと考えたが、所々にある緑の杭が壁を破壊するたびに高速で修復していくためそれは出來ない。
二人は前と後ろを十分に警戒しながら進んでいく。今のところ魔の気配はない。
「不思議だな、魔の気配がない。」
「なんか不気味・・・」
不思議と先程から魔の気配がじ取れないことに、まだ層が淺いからか?、と思いながら進んでいきーー
「セナ!!」
「え?きゃっ!」
咄嗟にセナの腕を摑んで引き寄せる。腕の中に収まったセナはいきなりのことに揺するが、さっきまで自分がいた所を見て、戦慄する。
さっきまでセナがいた所の地面が、シュゥウウーと音を立てて溶けているのだ。
彌一はレルバーホークを抜きざまに壁の一點に放つ。
銃口からプラズマのスパークを放ち発された弾丸は壁の一部に命中しーーー片とを撒き散らす。
一何が!?、とセナが驚愕していると壁の一部がぼやけたと思ったらそこから元は生きだったであろう片がぼとりと落ちる。
「い、いったいなに?」
「迷彩能力をもった魔だ、壁の一部に同化して獲が來たら強力な酸の毒を浴びせるんだろう。魔力も隠蔽しているとなると多分この魔はフェーズⅡだ。まさかいきなりの魔がフェーズⅡとはな・・・こりゃ確かに【グリノア大迷宮】とは比べにならないな」
「確かに・・・あと、ありがとう彌一」
「気にするな。俺も攻撃されるまで気づけなかったんだ。ダメだな、父さんならこんなの攻撃される前に見つけられたどろうに。俺もまだまだだな」
「そんなことない。彌一は私を必ず守ってくれる。それにこれからそうなればいいだけの話」
「そうだな。よし!先に行くか!」
「うん!」
彌一は【解析眼】で看破系の魔を発し、壁や天井、床などに魔が隠れていないかを視認しながら、セナは周りに炎の球を展開しながらいつでも反撃できるようにして二人は先を急ぐ。
「行け!」
セナがピッと指を指すと辺りに浮遊していた數十の焔の弾丸が焔の尾を引いて一斉に放たれる。
流星群のように通路を埋め盡くし、迫り來る魔の集団に直撃し、殲滅する。
 「ハッ!」
壁から現れた石でできたゴリラ型の魔を彌一は攻撃をされる前に懐に潛り込む。
そして地面を踏み抜き、腰だめの拳の一撃を顎に叩き込む。
ゴリラの巨は彌一の拳をけ天井に頭だけ突き刺さる。
ゴリラはぷらーんと垂れ下がっていたが意識を取り戻したのか出しようともがき天井を両手で押す。だが迷宮の自修復のせいで高速で隙間が埋まり、頭部が完全に天井の一部となり、呼吸ができなくなったゴリラが思いっきり暴れた後、再びぷらーんとなってかなくなった。
「彌一、さすがにそのやり方は酷い・・・」
「し、しかたないだろこうなったんだから」
ぷらーんと垂れ下がるゴリラを見てセナが哀れむような視線を向ける。彌一もまさかぷらーんとなるとは思わなくて、言い訳がましくセナに言葉を返す。
二人はぷらーんとなったシュールなゴリラを見據え「行くか」「うん」と再び歩き出した。
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「ん?この鉱石はもしかしてミスリルか!?」
あれから魔や階層のボスを倒しながら進み、現在は第十六層階層で通路を進んでいると壁に鈍く銀に輝く鉱石を見つけた。
【錬魔】で鉱石を取り出すとそれはミスリル鉱石だった。
「おお!凄い!この前のミスリルより魔力循環率もいいぞ!」
「そんなに凄いの?」
「この前のミスリルにこのミスリルを混ぜればより上質なミスリルになるはずだ」
「でも彌一ミスリル使ってないよね?」
「まぁミスリルを加工しようにも設備がないしな。【グリノア大迷宮】の工房ならできるけど、ここんとこ忙しくて行けてないしな。あ、それならちょうど道も狹くなってきたしミスリル使ってみるか」
彌一は腕に裝著しているミスリルのリングにれ、魔を発する。
「《魔鉱錬》」
するとリングがドロッとのようにうねり腕を伝って手のひらに集まる。集まったミスリルは手の中で剣の形になった。剣の長さは刃渡り四十センチ程の両刃の短剣だ。
彌一はそのミスリルの短剣をその場で払いを確かめる。
「うん、なかなかのできだ。流石ミスリルだ」
「剣?」
「ここからは道が狹くなってて【蒼羽】じゃあ満足に振るえないからな」
「なるほど。それにしても鉱石がこんなに簡単に変形するなんて」
「魔力を込めた鉱石をあらかじめ設定しておいた武に変形させる【錬魔】の一種だ。なかなか汎用高いぞ?」
彌一は【蒼羽】を転移させて仕舞うと代わりにミスリル剣をこちらもミスリルで作った鞘に仕舞い腰に裝著して歩き出す。
「さて、ミスリルを回収したわけだが、そろそろ次のボス部屋だ。さっさと倒して最深部でいくぞ」
「うん。ユノちゃんが待ってるもんね」
見えてきたボス部屋を見つつ二人は戦闘態勢になる。
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數十時間後、二人はようやく迷宮の二十九層まで來ていた。戦闘自は大したことは無かったが流石に連続の戦闘に神的疲労はある。
最後のボス戦を前に食事をとって休憩をしている。
「はい彌一、あーん」
「あーん」
差し出されたサンドイッチを食べる。レタスのシャキシャキとハムとチーズとマヨネーズの組み合わせがよく合っておりまたマスタードが効いていて疲れた脳に喝をれ集中力が増す。シンプルながらも丁寧に作られておりさらには先を調を見據えた料理に驚く。
「うん!うまい!流石セナだなよく考えて作ってある」
「ありがと、まだあるよ?食べる?」
「もちろん食べるけどセナも食べるだろ?ほら、あーん」
「あーん。・・・うんよくできた」
「うん、ほんとにうまい。もぐもぐ」
「あっ、彌一マヨネーズついてる」
「え?どこだ?」
「まって・・・ぺろっ」
「うお!?」
マヨネーズをセナが舐めてふき取る。突然の事に彌一は思わず驚いて飛び跳ねる。セナはやっておいて恥ずかしくなったのかし頬を赤く染める。
「これ、思いのほか恥ずかしい・・・」
「そ、そうか・・・」
彌一は舐められたところに手を當て目を逸らす。セナも自然を目を逸らす。いつもはこれ以上の凄いことしているのだが初めての事に恥ずかしさが勝ったのだろう。
「さ、さぁそろそろいくか」
「・・・うん」
二人は恥ずかしくなりつつも片付け、休憩を終える。片付けた後最終準備をする。意識を切り替え準備を完了する。
「さぁ、いくぞ」
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