《魔がない世界で魔を使って世界最強》迷宮の真実

「ま、マスター?・・・えーと、すまん、話がよく見えないんだが・・・」

地下工房で出會ったエルネウィア、エルと言ったは彌一たちをマスターと呼ぶ。話の流れが見えてこない彌一たちに向かってエルは言葉を発する。

「最初にここに辿り著いた方の従者として、共に行する。それが前のマスター、日伊月甲明様から仰せつかった事ですので」

「ーー!父さんが!?」

甲明の名が出てきた事に彌一は驚く。

「父さん?もしかして貴方は甲明様の息子さんですか?」

「ああ、俺は日伊月彌一、甲明の息子だ。あんたは父さんの事を知ってるのか?」

「はい。私は二十年ほど前に甲明様に助けていただいたので」

エルはそこで話を區切ると二人を奧のテーブルに促す。二人が席に座ると紅茶が用意され、エルが正面に座って話の続きをする。

「それでは改めて、私の名はエルネウィア、見てわかる通り古霊種族エルフです。」

古霊種族エルフは壽命がとても長く、賢い知恵をもつ種族とされている。森と共に生きる種族でもあるため人間族の土地に現れる事は滅多にない。

「俺は日伊月彌一。こっちのセナ、俺の嫁だ。で今ここには居ないが街には娘のユノがいる」

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「私はセナ・アイヤード。彌一の妻です。よろしくね、エルさん」

「わかりました。マスター、セナ様」

「な、なぜ俺だけマスターなんだ・・・?」

「甲明様の息子さんですから敬意を込めてそうお呼びするのがよろしいかと」

「さいですか・・・まぁ、いい。それで話の続きだけど、父さんに助けられたってのは?」

彌一は話の続きを質問する。

「私の故郷の森は二十年前に魔の襲撃によって壊滅させられ、唯一生き殘った私も瀕死の重傷を負いました。しかしそんななか、甲明様は魔を全て倒され、私をお救いくださり、さらには私に足と腕を下さいました」

そしてそんな彼は甲明に命を救われ、足と腕をもらったという。

「もしかしてその腕と足は義手と義足か?」

見た目は完全に人のそれなので分からない。しかし【解析眼】でよく見てみると確かに義手、義足のようだ。

【解析眼】を使ってようやく分かるレベルの技に驚く。

「見た目で義手と義足とはわからないように、人工皮でコーティングしているそうで、の質や溫度まで完全に再現しているそうです」

「ま、マジか・・・」

流石の仕事ぶりに呆れるしかない彌一。

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「それで、貴方はどうしてここにいるの?」

呆れてものも言えない彌一に変わりセナが會話を続ける。

「私は命を救われた後、ここで甲明様から戦うや魔導に関する知識などを學びました。私は瀕死の重傷のせいか魔法が使えなくなっていたので。それから五年ほど経ち甲明様は私に先程申し上げた事を仰った後姿を消したのです。そしてそれと同時に甲明様がお創りなさった五つの迷宮もき出したのです」

「ん?迷宮は六つじゃないのか?」

十五年前に出現した大迷宮は六つ。數が合わない事に彌一が疑問を投げ掛ける。

「グリノア大森林に作った迷宮は甲明様が生活していた拠點ですので迷宮ではないんです」

「じゃあなんの為にゴーレムを?」

「施設の警備と後はなんでも、『ロボットは男のロマンだ!!』と仰っていました」

「やっぱりか・・・」

見事予想通りの解答に彌一は頭を押さえる。セナも半分苦笑いだ。

「あ、そういえば新しいマスターとなられる方には必ずこう聞くようにと仰っていたのを忘れていました」

「・・・!それはいったい!」

エルが思い出したように口を開く。甲明から、必ず聞くようにとのことだからよほど重要な事に違いない。彌一は一言も聞き逃さないように耳を傾ける。

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そしてエルは口を開きーーー

「問おう。貴方が私のマスターか」

「なに教えてるんだ父さん!!」

まさかあの有名な騎士王のセリフをここで聞く事になろうとは思いもよらず。機を叩きぶ。

彌一は椅子に座り直し、ごほんっ、と咳をして線した話を元に戻す。

しかしここまでの話のなかで甲明はなくとも二十年前にはこの世界に來ていることがわかった。そして疑問も殘る。

「どうして父さんは迷宮を五つも作ったんだ?」

「なんでも『船』を渡さない為に、だそうです」

意外な答えに彌一は困する。それもそうだろう、あれ程大掛かりな迷宮を作っておいて守るが、『船』なのだから。

それにーーー

「渡さないようにって、いったい誰に?」

「すみません、そこまでは詳しく教えられておりません」

甲明はいったい誰から守ろうとしていたのか、結局分からないままになってしまった。

「それでその『船』ってのは?」

「ご案いたします」

エルネウィアは席を立つと奧の扉に向かう。彌一たちもエルの後について行く。

扉の向こうには幾つもの扉がある通路で、奧に進むと一際厳重な扉があった。理的にも魔的にも厳重にロックされた扉は、エルに促され彌一が手を當てると、プシュウウウーーー!!と音を立てて開いた。

「この地下施設にる際に魔力パターンを測定して、そのパターンと一致すると扉が開くそうです」

「なるほど、エレベーターに乗った時にか」

彌一が納得していると、先に中にったセナが手招きをする。

「彌一、これ ・・・」

「なっ!これは・・・!!」

部屋の中央の臺の上には一枚の紙が引いてあった。用紙には巨大な船が描かれており、隅々に至るまで様々な書き込みがなされている。船の全長は全長百二十メートル、幅二十メートル近く、その大きさはかの有名なタイタニック號に迫る大きさだ。所々の説明を見て見ると材料や作製方法が書かれている。そうこれは設計図だ。

彌一は目を眼ちまなこにして設計図を読んでいく。そしてある程度読み終わった後、深いため息を吐く。

「彌一なにかわかった?」

「あ、ああ、大まかに把握しか出來ていないが、これは・・・『世界を渡る船』だ」

「世界を、渡る・・・?」

設計図に描かれていたのは『世界を渡る船』だった。時空や世界の壁を越え、様々な世界へ行くことの出來る船だ。確かにこんなものが良心のない者に渡ってしまえば大変だ。甲明がこうして守ろうとする理由も分かる。

「てことはそれがあれば彌一の世界にも戻れるの?」

「ああ!そうだ!設計図にはまだ足りない部分があるが、多分それが他の迷宮にあるんだろう。つまり全ての迷宮を攻略して船を作れば地球に帰れる!」

帰還への道が分かったことで彌一は舞い上がる。あちらの世界にはやり殘したことは多くある。

「エル!父さんは他になにか言ってなかったか?」

「はい。甲明様からこちらを預かっております」

エルは部屋の奧の棚から、ウォレットチェーンに繋がれた白い寶石を取り出す。

寶石にはローマ數字の『Ⅰ』が刻まれている。

「こちらは【転移石】です。これを使えばいつでもこの地下施設に戻って來ることができます」

「なるほどな、これでここで研究することができるな。他には?」

「あとはなにも。ですが地下施設にあるものは好きに使っていいと仰っていました」

「よし!なら早速・・・ってダメだ。先にユノを迎えに行かないと」

「うん、ユノちゃん寂しがってると思う」

「エル。転移魔陣はどこにある?」

娘の事を思い、彌一とセナは急ぐ。見送りの時は元気一杯だったが、心のどこかでは寂しがっていることだろう。そう思いうかうかしていられない。【転移石】があるので研究するのはユノを連れてきてからでも遅くはない。

エルは二人の言葉をけて首を橫に振る。

「この地下施設には転移魔陣はございません」

「え?じゃあいったいどうやって出るんだ?」

「著いてきて下さい」

そう言ってエルは部屋から出て行く。彌一とセナは顔を見合わせ不思議そうに顔を傾げながらも後を著いて行く。

通路にある別の扉にる。

中は部屋と言うよりも倉庫に近い。倉庫の高さは二十メートルにも達し奧行きも広い。そしてその倉庫の壁にはプラズマの魔導人形が立っていた。

「あのゴーレムいつの間に」

「お二人に説明している間に別の魔導人形が回収していました。ここは魔導人形の整備などを行う格納庫です。そしてお二人にはこちらを」

「え?こいつは!」

エルが指した方向を見るとそこには一臺の黒塗りの車が停まっていた。

見た目は軍隊で見かけるようなハマーに近く、六人は余裕で乗れそうな大きさの車だ。

彌一はこの車をよく知っている。

「へカートじゃないか!いや、地球のとはし違うな」

「彌一、知ってるの?」

「地球で父さんが乗ってた車だ。俺も父さんに借りて何回か運転したことがあるからよく知ってるんだ」

へカートは甲明が作った魔導の一種で、魔力によって裝甲の強度を上げたり、ガソリンだけでは屆かない速さまで加速できたりする。

しかしこれは地球のへカートとは違い、力は全て魔力だ。空気中から魔力を吸収する【神聖結晶】が使われており、絶え間なく魔力を供給する。もちろん自らの魔力を注ぎ、チャージすることも出來る。

「これを使ってここから出ればいいのか?」

「はい。へカートに乗ってここから出ます」

三人はへカートに乗り込む。彌一は運転席、セナは助手席、エルは後部座席にそれぞれ乗り込む。

するとへカートの地面が沈み、視界が上に流れていく。

エレベーターによって下がり、ようやく著くと左右の壁の明かりが手前から奧に続いていき、通路が現れる。

「なんじゃこりゃ・・・」

まるで「ア○ロ行きまーす!!」のような演出に彌一はガクッとうな垂れハンドルに顔面を打ち付ける。「大丈夫?」「ああ、々としてただけだ・・・うん」とそんな會話をして彌一は改め直して顔を上げハンドルを握る。

「よし。二人ともいくぞ!」

「うん!」

「はい!」

彌一は足元のアクセルを踏む。タイヤは地面を噛み締め回転し、走り出す。

徐々にスピードが上がっていき時速は約八十キロ、高速道路並みの速度で通路を進み、加速する。すると前の壁が橫に開き、し込む。

「出るぞ!」

が大きくなり、へカートで抜けて飛び出すと、そこは山岳地帯の麓だった。時刻は既に夕方のようで遠くに夕日が沈んでいくのが見える。

飛び出したあと數回バウンドし山道を下っていく。

「速いね!彌一!」

セナは後ろへ流れる景を見ながら、車の速さに興し、はしゃいでいるセナ。

「久しぶりの空です」

紅く染まる空を見上げながら、慨深い気持ちになるエル。

「このまま行けば夕食どきには街に帰れるはずだ。飛ばすぞ!」

彌一はさらにアクセルを踏み込む。夕焼けを反させ土煙を上げながら山道を疾走していった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

一時間後、無事三人はエルネ街に到著した。へカートを門の近くに停め、彌一はサイドミラーの上のボタンを作する。

へカートの前方に大きな魔陣が現れそれが通り過ぎるとへカートが消えた。

これはへカートの機能の一つで別の専用空間にへカートをしまうことができる。

へカートをしまい、三人は閉門ギリギリで門を潛り抜けエルネ街にる。

晝とは違い店の數はないが、仕事が終わった後の大人が多く、また違う賑わいを見せている。

そんな店を見ながら三人は冒険者組合に急ぐ。冒険者組合は基本的にいつでも開いている。急の依頼があった時対応できるようにする為だ。

 角を曲がると直ぐに冒険者組合だ。し急ぎつつ、角を曲がるとーーーーーー

「なっ、!?」

彌一が思わず固まる。続いてやってきたセナやエルも同じように驚愕する。

三人の視線の先では冒険者組合が半壊していた。

まるで発があったように一階部分の壁が大きく吹き飛び、外から中の様子が丸見えだ。二階の床も吹き飛んでおり一階と二階の隔てりがない。

組合の前では修理の為に大工が集まっており、冒険者も多く見られる。そしてその中にビルファを見つけた。

「クライトさん!」

「・・・!彌一君!」

彌一に聲を掛けられこちらに振り向くと、ビルファは腕に包帯を巻いて固定し、頭にも包帯を巻いている。

「一なにがあったんです!?それとユノは無事ですか!?」

「それなんだが・・・」

ビルファは悔しそうに顔を顰めた後、彌一に向かって深く頭を下げる。なぜか周りにいた負傷している冒険者も同じように頭を下げた。

なにが起こっているかわからない彌一に向かってビルファは言葉を発する。

「すまない!ユノ君は・・・連れ去られてしまった・・・!!」

「・・・・・・・・・えっ、」

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