《魔がない世界で魔を使って世界最強》不穏な知らせ
ユノの検証も終わり【ラッカン】に戻ってくると、宿に戻る前に鍛冶屋に向かう。この間整備を頼んだ【蒼羽】を取りに行くためだ。
街を歩いていると通りの人達が彌一たちに注目してくる。それもそうだろう、何故なら彌一達の橫には、銀の綺麗な髪のと、同じく銀の綺麗ない狼が仲良く歩いているのだから。
それに加えてセナとエルはどちらも絶世の・人だ。このメンバーで注目されない方がおかしい。
街の人達は、ユノとサニアを見てほっこりする者、セナとエルを見て息を呑む者、彌一を見て嫉妬と怨嗟の視線を送る者の三種類である。
陣三人と獣一匹は気にしていないが、人を殺せるのでは?と思うほどの視線を送られる彌一は、胃が痛い思いだ。
(また今度全員に認識阻害用の魔導を作らないと・・・)
彌一はそんな事を考えながら、もう何回目になるかわからない認識阻害の魔を全員にかける。毎度毎度街を歩く度に認識阻害の魔をかけるのは面倒だ。
街の人の意識が外れ、彌一達に注目しなくなり、彌一はほっとすると、鍛冶屋に向かう。
鍛冶屋に著くとグウラがカウンターに座っていた。その表は疲れ切っているがどこか晴れやかだ。
「こんにちはグウラさん。どうなりましたか蒼羽は?」
「ふん、ほらよ」
グウラはぶっきら棒に言うと蒼羽を投げつけてくる。彌一は蒼羽をけ取ると鞘から抜き、刃を確かめる。
刃は刃こぼれ一切なく、を反して白く輝く。
「流石ですね。前とは全然違う」
「ふん、當たり前だ。俺が整備するんだから當然だ」
グウラは自分の腕にプライドを持っているのか自信満々に答える。彌一は蒼羽を軽く振ってを確かめた後別空間に転移させる。
「それで料金はいくらですか?」
「金はいらない。俺も多くの事を學べたからな。報酬はそれでいい」
「え?でもいいんですか?」
「ふん、いらねぇと言ってるだろうが」
「・・・そうですか、ありがとうございます」
「おう」
彌一はそうお禮をいって禮をするとグウラはそう一言言うと奧の工房に戻ってしまった。彌一はもう一度奧の工房に向かって「ありがとうございます!」と聲を掛けて、鍛冶屋をあとにする。
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「さて、用事は済んだわけだがどうする?俺はし冒険者組合で依頼でもこなそうかと思ってるんだが」
「ならみんなで難易度の高い依頼をけたらいいと思う。それなら手っ取り早くお金が稼げる」
「それもそうだな。よし、それじゃあ冒険者組合に行くか」
最近路銀がし心細くなってきたので、ここでドンと稼いでおいた方が後々いい。
ラッカンの冒険者組合は多種族が集まるので依頼の容も富で珍しいが多い。どんな依頼があるのか楽しみにしながら、彌一達は冒険者組合に向かう。
鍛冶屋から街の中心街に向かって十分ほど歩くと、冒険者組合の看板が見えてきた。ラッカンの冒険者組合はエルネよりも大きく、人間以外にも大きな剣を持った虎の獣人や、トカゲの顔の戦士までいる。
彌一達はそんな周りの景を珍しく見ながら中にる。
中にるとそこはエルネとは違う雰囲気の冒険者組合だった。基本の配置はエルネの冒険者組合と同じだが、そこにいる冒険者たちの雰囲気が違う。誰も彼もがギラついた目をしており、ピリピリとしている。
亜人はそれぞれ高い能力を持っており、ここラッカンに集まる冒険者は誰もが強者揃いだ。そしてそれぞれ種族が違うため、お互いに張り合っているのだろう。
彌一達がった瞬間、冒険者組合の全員が彌一達を見たあと、「あのふざけた野郎殺す!」とばかりの視線を殺気と共に彌一に送りつける。まぁ當然といえば當然だろう。これほどピリピリと殺伐としたところに、・・人を連れた彌一が來ればそうなるのは必須。
彌一は「しまったー・・・」と言葉をらす。
(こうなるんならまだ認識阻害を掛けてれば良かった。うーん、こうなれば今からでも認識阻害を掛けて、穏便に・・・「パパ怖い!」オーケー、無事で帰れると思うなよお前ら。ア"ァ"?)
彌一は冒険者たちの鋭い視線に怯えるユノを片腕抱っこし、上著の側のレルバーホークを摑む。パパは娘の敵を許さない!
レルバーホークのゴム弾で軽く四、五人撃ち抜いてやろうか、と考えレルバーホークを抜こうとした瞬間、ホール全を極低の凍気が支配する。そして次の瞬間にはドンッ!という衝撃音が聞こえそうなほどの圧倒的存在とプレッシャーが冒険者達に容赦なく浴びせられる。
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空間が歪んでいるのでは、と思うほどのプレッシャーを浴びせられた冒険者達は、未な者は意識を刈り取られ、なんとか耐えられた者も足がガクブルガクブルと震え、顔面蒼白だ。
彌一はプレッシャーの発生源を見ると、そこには冒険者達に向けて凍気とプレッシャーを撒き散らすサニアの姿が。
二メートルほどの大きさになったサニアは、王者のように堂々と立っており、冒険者達を視線だけで靜かに威嚇する。それだけで神話の魔としての圧倒的存在とプレッシャーを與えている。
大好きな主を怯えさせられサニアは怒っているようだ。彌一はそんなサニアを嬉しく思いつつ、同時に娘に関して先を越された事にし嫉妬する。なのでその嫉妬を冒険者達に威圧としてぶつけ八つ當たりする!冒険者達は完全に倒れた!もうHPはゼロよ!
「サニアもういいぞ」
『わっふ!』
獣狀態に戻ったサニアが元気よく吠える。彌一はユノにもう大丈夫だ、というとユノを降ろす。ユノはサニアをギュッと抱きかかえ、サニアはユノの頬をペロリと舐める。
冒険者組合の中は冒険者達が白目を剝き泡を吹いて死累々と倒れている。自業自得だな、となんとも勝手な言葉を言うと、セナとエルも同じく頷く。
そして彌一たちは冒険者達を放って依頼の張られてあるボードに向かう。
「うーん、なんの依頼にするかな・・・」
「こんなのどう?『オーガ二十の討伐』報酬は二百萬ネクト」
「おお、隨分と報酬が高いな。場所は・・・ここからすぐ近くの平原か。うん、いいんじゃないか?これならすぐ終わるだろう」
彌一は依頼書を取ると付に持っていく。付嬢は先ほどのホールでの出來事を見ていたらしく、顔面蒼白でガクブルだ。付嬢が泣きそうな顔で奧の同僚に視線で、助けを求めるが、彼らは申し訳そうに眼を瞑り「・・・すまん。我々は無力だ・・・」と首を橫に振る。
「ええっと、そんなに怖がらないでください。別に暴れたりとかしませんから。うちの娘を怖がらせた罰なんで」
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「は、はい・・・!しゅ、しゅみません!」
よほどテンパっているようで付嬢はテンプレのような噛みかたをする。彌一は苦笑いしつつ依頼用紙を付嬢に渡す。付嬢はガチガチに張しつつも依頼用紙をけ取って容を確認する。
「え、えっと・・・『オーガ二十の討伐』ですね。あ、あの、申し訳ありません。この依頼は第八階梯以上の冒険者じゃないと注できないんですけど・・・」
「ああ、それなら心配いらない」
「ふぇ?」
彌一とセナ、エルは冒険者カードを取り出す。そこには金の冒険者カードが二枚と銀の冒険者カードが一枚。金は第十階梯の証、銀は第九階梯の証だ。ちなみにエルはこの前冒険者登録で第九階梯の冒険者を瞬殺した。どれだけ強い冒険者でも現代兵で武裝した者の前では無力だった・・・
付嬢は差し出された冒険者カードを見て驚愕をあらわにする。第十階梯の冒険者は全冒険者の中で五十人しかいない。また第九階梯の冒険者は八十一人だ。
そのため第十階梯と第九階梯の冒険者の名前や特徴などの報は各冒険者組合で共有されている。そしてもちろんこの付嬢も全員は無理でも第十階梯の冒険者の報はすべて頭にっている。
だが彌一とセナ、エルはここ最近冒険者になってしかも最初から第十階梯と第九階梯になったので、報がまだいきわたっていなかったので付嬢は彌一たちのことを知らなかったのだ。
付嬢は焦った様子で依頼用紙をけ取、頭を下げる。
「も、申し訳ありません!!はい!大丈夫です!!お気をつけてください!!」
付嬢の言葉をけ取って彌一たちは冒険者組合を出る。それからしばらくは冒険者組合の中で妙な靜寂が流れていた。
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 「シッ!」
一呼吸とともに腕を振るい、銀線を奔らせる。銀線は緑の大きな角の生えた鬼、オーガの首に奔ると次の瞬間、オーガの頭がごとりっと音を立て地面に落ちる。遅れて綺麗に切斷された斷面からが滝のように噴き出る。
彌一はの一切付いていない蒼羽を軽く二度振るうと、満足したように腰の鞘にパチンっと鍔鳴りをして収める。
「いい切れ味だな。やっぱり整備前とは比べにならないな、しかし擬似空間切斷を発しなくてもこれだけ切れるように刃を整備できるグウラさんの腕ってすげーな」
彌一はそんな事を言いながら、背後から襲いかかってきたもう一のオーガに後ろを向かず、脇の下からレルバーホークを向けて発砲。弾丸は寸分違わず、オーガの眉間を貫き、絶命させた。
「意外と弱いな」と言いながらオーガの角を回収していく。討伐の確認の為だ。
オーガはモンスターの中でも強力で、大型の魔も殺してしまうほどだ。オーガの討伐はパーティー単位で行うもので、しかも一に集中してだ。二以上と遭遇した場合は直ぐに退避するのが一般常識なのだが、あいにくここにはその一般常識が通用する者はいない。
彌一はオーガの角を回収し終わると、し離れた所で同じくオーガと戦っている三人と一匹を見る。オーガの數は七。普通の冒険者から見たら悪夢以外の何でもないだろう。
「【風炎砲】!!」
セナがお得意のミサイルを放つ。濃された三本の風の矢とそれに纏う炎は三のオーガ目掛けて殺到する。
一のオーガは矢を撃ち落そうとして、その手に持った大きな棒を振り下ろす。しかし近距離でミサイルを撃ち落とせばどうなるか。ミサイルと棒が衝突した瞬間、風の力によって威力が増した炎がぜ、炎と衝撃波がオーガのを吹き飛ばし、飛び散った片を炭に変える。
『『グルゥアアアアアアア!!』』
殘りの二の魔はその発で吹き飛ばされ、矢を躱す。オーガはすぐさま起き上がりセナに向かって走ってきた。
「まだ!」
走ってくるオーガを見據えそうび腕を振るう。オーガが棒を振り上げる。その巨から繰り出される一撃は小さな人間など簡単に潰せる。しかしその兇悪な一撃を前にしてもセナは怯むこともなく、勝利を確信した目でオーガを見る。
そして振り降ろされる寸前、オーガの背後で炎がぜた。
オーガ達は一何が起きたか理解する事なく、その命を終えた。
その正はオーガが躱した矢だ。セナは飛んで行った矢を風でり方向を曲げて、背後からオーガを強襲したのだ。
この矢に風を纏わせ矢を自在にる技はビルファから盜んだ技。【疾風加速ゲイルアクセラレイション】を完全にマスターしたセナにとって、矢を風でる事など容易いことだ。
オーガは発で上半が吹き飛び、辺りに片とを飛び散らせるが、セナは自分の周りに風の壁を作ることで、片とがかかるのを防ぐ。
そんなセナを見て彌一は心する。やはり屬魔法に関してはセナは天才だ。特に風の魔法はそれが顕著に現れる。六大屬の中でもセナは風に大きな適があるようだ。
彌一はセナから視線を外し今度はユノを見る。
ユノはサニアを召喚して二のオーガを相手している。心配になるが、しかしそれは必要ないようだ。
「サニア!十萬ボ○ト!!」
「なんでそのネタ知ってんだ!?」
『グルゥアウ!!』
ユノが意気揚々とサニアに命令を出す。気分はポ○モントレーナーだ!
彌一の驚きを余所にサニアは十萬どころではない紫電を放つ。紫電の槍は瞬く間にオーガとの距離を吹く飛ばし、心臓部を撃ち抜いた。アバババ!どころでは済まなかったらしい・・・
ユノはえらいえらい、とサニアの頭をで、サニアは気持ち良さそうに鳴いた後ゴロンと寢転ぶ。もう完全にペットと化していた。
々な意味で逞ましく育っている娘にこれまた々と戦慄していると、ズドンッ!ズドンッ!と重い発砲音が響く。
何事かと思ってその方向を見ると、そこにはに巨大なを開け地面に倒れている二のオーガと、【グレール】を構えたエルがいた。
強靭なを持つオーガも、戦車の裝甲をも貫く弾丸の前には無力だったらしい。
「パパ!」
「おっと、お疲れユノ」
「えへへへ」
オーガを倒し終わったユノが背中に飛び乗って來て頬ずりをしてくる。彌一が頭をでて労うとユノは嬉しそうにする。
「終わったよ彌一」
「一気に七倒せて手間が省けて良かったです」
「お疲れ二人とも。確かにまとめて倒せたのは良かったな。この調子で出てきてくれれば助かるんだがな」
エルとセナも角の回収が終わり集まってくる。彌一はユノが倒したオーガの角を回収しながら二人も労う。
オーガの集団など悪夢以外の何でもないのだが彌一たちにとってはいいカモだ。
彌一は【探査魔】を発させ、周囲の狀況把握を行う。するとここから350メートル離れた所と500メートル離れた所にオーガと同じ反応があった。
「おっ!ラッキー!エル、ユノ。二人はここから東に350メートルの所にいる三のオーガを任せてもいいか?俺とセナは西に500メートルの所にいる十二のオーガの群れを殲滅する」
彌一が見つけたのはオーガの住処だった。これを殲滅すれば余裕で二十討伐は達だ。エルとユノに三のオーガを頼んだのは、オーガを余分に倒せばその分の追加報酬がもらえるからだ。
エルとユノは頷き、サニアは『ワン!』と元気よく吠える。
「わかりました、それではユノ様行きましょう」
「いってきまーす!」
「気をつけてな。エル、ユノを頼む」
「頑張ってね二人とも。ユノちゃん、エルに迷かけないようにね?」
「うん!」
彌一とセナが送り出すと、エルに続くようにしてサニアに乗ったユノが追う。オーガ三程度ならエルとユノ、サニアが負けることはない。何かあったとしても、サニアが神獣化すれば問題ない。今のユノならサニアが神獣化しても問題はないだろう。
二人が森に消える。するとセナが腕を絡めて嬉しそうに微笑む。その顔には隠しきれない嬉しさと興が現れていた。
「ふふっ、デート。久しぶり」
「今から行くのはモンスター狩りなんだが」
上目遣いで見上げてくるセナに彌一は視線を逸らす。
「二人っきりになるためにエルとユノちゃんにあっちのモンスターを頼んだんでしょ?」
「・・・ばれてたか。セナには敵わないな」
セナの指摘に彌一は苦笑いを浮かべ「全く敵わないな」と思う。最近は二人っきりになる機會がなかったので折角ならオーガを倒しに行くついでにちょっとしたお散歩デートでも、と思ったのだが、どうやらセナには全てお見通しのようだ。
「彌一のことならなんでもわかる。・・・だって夫婦だもん。大好き、彌一」
「俺もだ。大好きだ、セナ」
お互いに至近距離で熱い視線を絡ませる。
突如森に発生した熱々の空間に誰も止める者はいない。周りの空気がどんどん砂糖になっていく。二人はここがモンスターの発生する危険區域だということを忘れ、ただただ見つめ合う。
このような狀況になれば、二人の距離がまるのは必然。セナは靜かに目を閉じ、小さくらかなを突き出してくる。彌一はセナの頬に手を添え、顔を近づける。
頬を上気させ、プルプルとまつを揺らしながらセナは靜かにその時を待つ。彌一はそのままらかなにを合わせーーーーーー
『『『グゥオオオオオオオオーーーー!!!』』』
「「・・・」」
がれる寸前で彌一とセナは固まる。
現れたのはオーガの集団。どうやらこれから倒しに行くオーガ達が巣から離れ、たまたま彌一達を見つけて襲いかかってきたようだ。
オーガは棒を天に掲げ、勇ましく聲を森に響かせる。そのオーガには額に大きな傷があり、周りの個より二倍近くでかい。どうやらこのオーガがオーガの集団のボスのようだ。
ボスオーガが聲を上げると、周りのオーガも同じように棒を掲げ、あらん限りの聲を上げる。
そんな景に彌一とセナは顔を俯かせる。前髪に隠れて表は伺えない。しかしその瞬間、二人のからは濃な殺気が漂う。
その殺気にれ、ようやくオーガ達は理解した。自分達はれてはいけない者のれてはいけない部分にれてしまったことを。
「「邪魔をするなぁあーーー!!」」
ーーチュドォオオオオオオオオン!!!
森に巨大な発と炎が発生する。発は森の一部を綺麗に放線狀に吹き飛ばし、森に巨大なクレーターを作り出した。
クレーターの中心には彌一とセナが立っている。周りには吹き飛ばした木々と、オーガだった片の塊が散らばっている。
周りでパチパチと燃える殘り火をセナと彌一が消化すると、辺りには靜寂が訪れた。
「あっ、しまった。ついやっちまった・・・」
「角まで溶けてる・・・でも、邪魔したあいつらが悪い」
「ああ」
炎のせいでオーガの角まで溶けてしまい、彌一とセナはやっちまった、といった表になる。しかし二人の辭書に反省という文字はない。せっかくのイチャイチャを邪魔された彌一たちにけと容赦はありえない。
彌一とセナは「よし、殘りも殲滅するか」「塵一つ殘さない」と反省した様子がない。その目には殺意が漲っている。この時點でオーガ達の未來は決まった。「「戦爭がおみか?良かろう。ならば戦爭だぁ!!」」と完全に殺るき満々だ。
それからしばらくした後、再び森に巨大なクレーターが出來たのは言うまでもない。
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「これで全部か。えーっと、十四だけだな」
「エル達が三で、さっきのが七だから二十四で、四分の追加報酬」
「嬉しい臨時報酬だな。これだけ余裕があれば市場で上質なミスリルが買る」
「珍しい香辛料や食材も買える。あっ、彌一、余裕があったら大き目の鍋もいい?」
「ああいいぞ、とゆうかセナの料理関係優先で買おう。ミスリルなら今すぐ必要ってわけでもないし。味いセナの料理が食べられるならそっちの方が重要だ」
「本當?ありがとう!」
追加報酬で手にるお金の使い道を検討しながら、二人はエルとユノがいる場所に向かう。エルと先程、端末で集合場所の確認をしたのでもんだいない。
端末とは要はスマホだ。地下施設にあった數個のスマホを彌一が魔力で充電が出來るように改造し、通信も魔力を使って通信が出來るようにした、電話機能やL○NEも使える異世界対応スマートフォンだ!
セナにも同じようにスマホを渡している。スマホを渡した時のセナとエルの驚き様は面白かった。ユノの分は必要な鉱石が盡きた為まだ出來ていない、【都市ラッカン】で購する予定だ。
たまに出てくる小さなモンスターも狩りながら集合場所に向かうと、集合場所にはエルとエルの膝の上でサニアに包まっているユノがいた。そして、その後ろには巨大な熊の魔も一緒にいた。
「お疲れ様です。マスター、セナ様。ユノ様は疲れて寢てしまったようです」
「ああそれはいいんだが・・・どうした?そのフェーズⅡ」
そう倒れている熊の魔はこちらの世界では災害級と呼ばれる魔、フェーズⅡの魔なのだ。この森は確かに危険區域だがフェーズⅡの魔が出るほど危険でもない。
「先程待っている時、ユノ様が眠っていらっしゃるのに空気を読まなず襲ってきたのでこう、ビリッと」
そう言ってエルは未だ熊の魔の額に刺さっているナイフにワイヤーから電気を流す。既に死んでいる熊の魔はその電気でピクピクしている。
ピクピク、ビリビリ、ピクピク、ビリビリ。気持ち悪い。
エルは電気を流しては止めて、流しては止めてを繰り返す。電気を流すたびに白目を剝いてピクピクする熊は正直気持ち悪いのだが、エルは止めないらしい。ユノの睡眠を邪魔されそうになって怒っているようだ。最近エルもユノに対して過保護になっているところがある。
「ん、んにゅ・・・クー、クー・・・」
膝の上で寢ているユノが可い寢言と共に寢返りを打ち、エルの腰に抱き付いて再び規則正しい呼吸を繰り返す。
エルはしがみつくユノに嬉しそうに微笑んだ後、優しい手つきで頭をでる。セナはそんなエルを羨ましそうに見つつも、気持ちよさそうに眠るユノが可くて微笑みながらスマホでパシャリ。
彌一はその景をみながら、熊の魔の部位を削ぐ。災害級の魔が出たのだ、流石に報告しないとまずいだろう。
「よし、オーガの角も全部回収したし、魔のも回収したから帰るか」
「エル、ユノちゃんをお願い。サニアは私が」
「わかりました。んっ、ユノ様そこは・・・て、寢ているので聞こえませんか」
セナがサニアを抱きかかえ、エルがユノを抱きかかえると、ユノはエルのに顔をうずくめる。エルはそれがくすぐったくて、し艶かしい聲を発するが、當の本人はぐっすり眠っている。
彌一はへカートを呼び出し、三人はへカートに乗り込む。運転席には彌一、後部座席にはセナとエルだ。
「・・・パパぁ、ぎゅー・・・」
『く、くぅ〜ん・・・』
エルの膝の上で眠るユノが、隣のセナの膝の上で眠る獣サニアに彌一の名前を呼びながら、サニアの首元にギュッと抱きつく。サニアはし苦しいようでジタバタ足をかすが、ユノが抱きつく力を緩めると、ユノの顔に鼻を摺り寄せる。
三人は子狼と戯れる子の景を見て萌えて悶える。彌一は後部座席の寫真を撮ると、シートベルトを締めてへカートを発進させた。
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「え、えーっと、まず依頼報酬で二百萬ネクト。次に追加報酬で四十萬ネクト、さらに災害級魔討伐の報酬で百五十萬ネクト。全額、さ、三百九十萬ネクトになります」
「おお、そんなに」
冒険者組合で依頼達の報告を行い、今は報酬をけ取っている。
まさかたった數時間でオーガ討伐の依頼を完了してくるとは思わず、付嬢はもちろん周りで見ている冒険者達も唖然としている。さらには災害級魔も討伐して帰ったことにまたもや驚愕し、もう言葉も出てこない。
しかし彌一はそんなことは気にせず目の前の報酬額にホクホクだ。全員の要のを買っても全然余裕がある。
「えっと、書類と金額に間違えなければここにサインをお願いします」
「わかりました」
「はい、ありがとうございます。またの依頼をお待ちしております」
彌一は三百九十萬ネクトのった袋をコートのポケットにしまうと、テーブル席で待っている三人のテーブル席に座る。席に座るとユノがテテテと駆け寄り彌一の膝の上に座る。
「どうだった彌一?」
「聞いて驚け、全部で何と三百九十萬ネクトだ!」
「「「おおー!」」」
ちょっとした大金に全員が聲を揃えて驚く。個人にそれぞれ十萬ネクト分けて殘りは全員の共同管理だ。ユノのおこずかいは彌一が預かり、しいものがあればその度に渡すようにしている。
「もう夕方だからし早いけど外食に行くか?近くに王宮用達の料亭があるらしい。なんでもが凄くらかくでジューシーだとか」
「いくー!おにくー!」
「じゃあ一度著替えないとね。みんなし汚れてるし、そんな料亭に行くならそれ相応の格好にしないと」
「よし!それじゃあ一度戻って行くか!」
今日の夕食が決まったという事で彌一達は一度宿に戻ることにした。行くならこの際そういった場所に相応しい服とか買っておくべきか?、などと考えながら冒険者組合を出ようとした、その時。
「急依頼!急依頼です!!今この場にいる第八階梯以上の冒険者の皆様は至急大會議室に集合してください!!」
カウンターの奧から凄い勢いで組合の職員が駆け出して來る。そして職員はホールに響く大きな聲でそうぶと、ホールにいた冒険者達が騒がしくなる。
急依頼とは各都市や王國が冒険者に急で依頼すること。都市や王國だけではどうにもならないと判斷された場合に、近くの冒険者組合に依頼するもの。
そして対象は第八階梯以上の高ランク冒険者となると、第八階梯以下では対処できない案件。つまりそれほどの脅威がすぐ近くで起きているということ。
職員はホールをぐるりと見渡すと、丁度出て行こうとした彌一達を見つけ、凄い形相で迫ってくる。
「第十階梯のヤイチ・ヒイヅキ様とセナ・アイヤード様、第九階梯のエルネウィア様ですね!?直ぐにお越し下さい!」
「一何が?」
「説明は大會議室で行います!急いで!」
職員の剣幕に押され、ユノとサニアを付嬢に預けた後彌一とセナ、エルは大會議室に連れて行かれた。
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案されると中には、二十四人の冒険者達がいた。第十階梯の冒険者は彌一とセナだけだが、誰も彼も纏う雰囲気が強者の者である。
彌一達が著席してしばらくすると、組合長と思われる六十代のおじさんと、貓の獣人の書がってきた。二人とも顔に張が現れている。そして組合長は會議室を見渡すと、重々しく口を開く。
「冒険者組合ラッカン支部組合長コーネルです。忙しいなか及び立ててしまい申し訳ない。しかし、これは一刻の猶予もないのです」
組合長はそう言うと、一度深呼吸し、再度口を開く。
「つい先程冒険者組合同士の連絡石から、ここから馬車で十時間進んだところにある【都市メイカイ】近くの平原で、魔とモンスターの混合の大軍による襲撃との報告がりました。その數およそ二十五萬」
その言葉に會場は騒然となる。魔とモンスター、どちらも相當厄介なのにましてやその數が二十五萬などという馬鹿げた數字。會場中から様々な聲が上がる。
そんな中、彌一は嫌な予に駆り立てられる。そして彌一のその予は的中してしまった。
「その平原は昨日から勇者一同が訓練を行っていた場所です。いま現在は魔の進行を勇者の方々が食い止めていますが、それも時間の問題です。王國からは
この事態に対し各冒険者組合から応援要請が掛かっています」
その言葉に彌一は息を呑む。組合長がまだ何か言っているが、耳にってこない。
脳裏には親友の健や彩、クラスメイトの姿。そしていつもい頃から側にいた、凜緒の姿が浮かぶ。
「彌一・・・」
「マスター・・・」
セナとエルが心配して彌一に聲をかける。彌一はハッ、と意識を戻すと、顔を覗き込んでくる二人を見て「大丈夫だ」と一言言うと、一度深呼吸し、立ち上がる。
「セナ、エル、行くぞ。俺たちで殲滅する」
「うん、行こう・・・!」
「了解いたしましたマスター・・・!」
彌一の言葉にセナとエルも立ち上がる。彌一は頷くと、もうすでに暗くなった東の空を見る。
(もう失うもんか、絶対に。俺の魔はそのためのものだ・・・!)
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