《魔がない世界で魔を使って世界最強》戦場に立つ魔

雄也たちが前線でコルトアと戦っている時、後方の古城付近でも激しい戦闘が行われていた。側面から回り込んだ魔は思いのほか多く、災害級の魔も複數現れたため苦戦を強いられている。さらには魔以外にも強力なモンスターも複數混じっている。

『ブフォオオオオオオオオーーー!!!』

長二メートルはあろうかというほどの豬の魔が、その大きな牙で貫くべく迫ってくる。豬の質量からは想像できないようなスピードで、一歩踏み出すたびに地面に足跡が殘る。そんな強力な一撃が迫る新路上に、クラスメイトの佐野海斗さのかいとが飛び出す。その手には大きなが丸ごと隠れるほどの巨大な盾が掲げられている。そして海斗はその盾を掲げ、腰を落として構える。

「ふんっ!」

構えた盾と豬の突進が激突する。衝突した瞬間辺りに衝撃が奔り、地面には亀裂が奔る。そしてしの拮抗の後、海斗は豬の突撃を完全にけ止め、押し返す。

「今だ大地!」

「シッ!」

押し返されて豬が怯んだその瞬間、海斗の後方で待機していた大地が飛び出し豬の橫を駆け抜ける。駆け抜けた剎那、豬に銀の一線が奔り次の瞬間にはと首が切斷された。

「大地後ろ!」

「なに!?うおっ!」

大地が後ろを振り返るとそこには骸骨が手に持った錆びついた剣を振り下ろしているところだった。咄嗟に橫に転がり振り下ろされた剣を回避する。

「な、なんだあいつ!?骨がいてる!?」

人男ほどの骸骨が『ケカカカ』と笑いながら、振り下ろした剣を肩に擔いで大地を見る。その目は暗く深淵のような深い闇で、その中に赤いが宿っている。

「気をつけろ!そいつはスケルトンだ!斬撃系の攻撃はあまり効果がないぞ!」

「そんな!?うおっ!誰かヘルプ!!」

斬撃系が効かないスケルトンは、剣師の大地にとっては天敵だ。大地は意外と速いスケルトンの斬撃を刀で捌き、回避しながらひたすら防に回る。

「どっせい!!」

大地がスケルトンの剣を捌いていると、橫から重格闘家の磯部大輔いそべだいすけがをスケルトンに全力の肩タックルをかまし吹き飛ばす。

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「大丈夫か大地?」

「助かったぜ、サンキュー大輔」

「それよりあいつまだ起き上がるぞ。骨だが意外と耐久力あるんだな」

重格闘家の攻撃をくらっても立ち上がるスケルトンに大輔は再び構えを取る。

「そんじゃ、あとよろしく!」

「は!?おい!ちょっと待て、くっ!大地覚えてろぉおおおおーーー!!」

スケルトンの相手を大輔に任せて大地は戦略的撤退を図る。その際大輔がなにかぼうとするが、スケルトンが斬りかかってきて悪態をつきながら対峙する。

大地はそんな大輔に謝しながらその場を離し、別の戦いに參戦しに行く。

「大地!!」

「智花!無事か!?」

「うん、ケガはないよ」

途中で智花と合流する。智花は土などで服が汚れてはいるが目立った外傷はないようだ。

「他のみんなは?」

「中島くんと勇があっちで戦ってる」

そういって智花が指を指した方向を見るとそこでは、巨大な蟻の魔を相手に二人で挑んでいる中島健斗と近藤勇がいた。

健斗の職業は槍師、その手には二メートルほどの巨大な槍を巧みに振り回しながら蟻の注意を引き付けている。そして勇は軽戦士特有の軽な作で、蟻の周囲を素早くき回り、蟻を短剣出切り刻んでいく。

「健斗!いくぞ!外すんじゃねぇぞ!!」

「うっせー!わかってらぁ!!」

が【加速】スキルを使って高速でき回り、蟻の足を一斉に切斷する。

『グギャヤヤヤヤヤヤヤヤヤ!!』

「オラァア!!」

蟻が足を切られたことでその場からけなくなった瞬間健斗が鋭い槍の一撃を眉間に突き刺す。脳を貫かれた蟻はしの間、痙攣をおこした後絶命する。

「お疲れお二人さん」

「おお、健か。どうだったそっちは?」

「こっちはスケルトンが出てきたんで大輔に任せてきた。今頃スケルトンと仲良く楽しく遊んでるだろうよ」

「ハハハ、ひでー奴」

「うるせ」

二人が話していると、奧から勇が戻ってくる。勇の方は腕をし痛めたようだが、智花が治療してなんともないようだ。

「みなさん無事みたいですね」

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「うお!?出た!!」

「誰が出たですか!?」

「って木村さんか、脅かさないでくれ」

そういって突然背後からの聲に振り向くとそこには全黒ずくめの裝をに纏った奈が、木にぶら下がって逆さの狀態でいた。

大地は【気配知】のスキルを持っており、さらには剣道で辻かった気配の読みで気配には敏で、気配知の能力では英雄の相川と並ぶ実力を持っているのだが、なぜか奈の気配はいつも読めない。

地球のころから神出鬼沒で、壁に耳あり障子に目あり背後に木村あり、と言われていた奈はこっちに來てからさらにレベルアップしていた。

そんな奈はよっ、と軽い聲とともにくるりと著地すると四人に話しかけてくる。

「木村さん、無事ってのは?」

「他のところでは災害級が出現し、數人のケガ人が出ています。すぐに向かいましょう」

「マジか・・・ならいそごう」

災害級魔の報告に大地は焦る。生徒たちでは災害級は1パーティーで対応は可能だ、それでも被害が出ているということはそれなりの數の災害級が出ているのだろう。

そして、大地たちはしの休憩のあとすぐ他のパーティーの助けにろうとしたその時、橫の林から虎の魔が飛び出してくる。表には赤い線、災害級のお出ましだ。

『グォオオオオオオーーーーーーー!!!』

「っ!ここでか。來るぞ!!」

虎の魔が大きく吠え、ビリビリと空気が震える。大地たちがすぐさま武を構えると、虎は駆けだす。

「健斗!俺とお前で虎の注意を引き付ける。近藤さんと木村さんはその間に攻撃を!智花はアンデット呼び出して支援を!!」

「「「「了解!!」」」」

健斗と大地が駆けだす。健斗は槍を構えて正面からぶつかりに行き、大地は健斗の橫を並走する。

『グワァオ!!』

「ハッ!!」

虎が近づく二人に向けて腕を振り下ろす。大地は一歩先に前に出ると、刀を振り上げ兇悪な爪と拮抗する。

「セアッ!!」

その隙に健斗は鋭く槍を突き出す。突き出した槍の先端は虎のに突き刺さり、辺りにを撒き散らす。

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『グォオオオオーーー!!』

虎は痛みに暴れ、無差別に辺りに攻撃した後健斗と大地に向けて憤怒の眼差しを向ける。その瞳には健斗と大地以外映っていない、ゆえに背後からの攻撃に気付けなかった。

「よっと!!」

奈が虎の後ろ腳の腱を斷ち切る。右足の腱が斬られて後、今度はすぐに左足の方も切斷される。両前足を切斷されたことで虎は倒れるが、最後の足掻きとでもいうように暴れる。

とそこへ、數匹の狼の魔が現れる。狼は低くしゃがみ唸るとーーーーー虎に飛び掛かる。

この狼の魔は智花が魔の死を使ってっているものだ。智花の職業である死霊師は、死に魂をれて復活させることができる。もちろんすべての死ることはできず、ることができるのは死んだ直後の死だけだ。しかもることのできるものにも限界があり、普通は知能の低い魔やモンスターなどしかれず、しかもれるのは大2,3だけだ。

しかしチートな死霊師である智花は、ある程度の強力な魔を複數ることができ、時間を掛ければ災害級もることができる。

降霊によってられた魔は虎のけない虎を囲み、一斉に群がりを喰らう。最初は災害級の魔らしく地面に倒れながらも狼を迎撃していたが、次々と襲い掛かる狼に徐々に抵抗が弱くなり最後はのどを噛みちぎられて絶命した。

流石のグロテスクシーンに自分でやっておいて吐きそうになっている智花は、大地に背中をさすられて気分を落ち著ける。

「結構早く片付いたな。よし、他の助けに行くか」

「う、うん、あと途中で魔を増やしていこう。そうすればしでも助けになる」

「よし、できるだけ途中で魔を狩って智花の戦力を増やしながら行こう」

「おう!わかった!」

「負けないぜ!」

「いや、勝負じゃないですからね?」

どちらが魔を多く狩れるか勝負し始めた健斗と勇奈が呆れじりの聲を掛ける。そんな二人を頼り強く思いつつ、大地は先頭で駆けだす。

を狩りながら他のパーティーのところに來ると、そこでは大型の猿、亀、ゴリラの三の災害級と戦っていた。前線には西原が立ちながら生徒に的確な指示を出しつつ、ナイフや剣で皮らかいところを見つけ切り刻んでいく。

そうして大地が見ている間にも、魔は徐々に弱っていきついに最初に猿の魔が倒れた。猿の魔が倒れたあとすぐさま殘りの二に集中する。この調子でいけば倒せるのは時間の問題だろうと判斷すると、大地たちは早く終わらせるべく參戦する。

「「【地】!!」」

大地と健斗が同時に【地】を使い、大地はゴリラに健斗は亀にそれぞれ向かう。ゴリラの方では西原が相手をしていた。

『ウホッ!!』

「ふんっ!」

ゴリラが繰り出す拳を半でかわし、そのまま前に踏みだして腕の関節に拳をれる。しかし意外とダメージはなかったようで、ゴリラが腕で西原を薙ぎ払う。

そしてゴリラが腕を振り払うと、そこには西原はいなかった。吹き飛ばされたか!?、と息を呑んだその時、ゴリラの腕の関節からしぶきが舞う。そしてゴリラの腕の外側には西原がいた。

振り抜かれる寸前、西原はしゃがんで腕を回避しすれ違いざまに関節の筋を切斷したのだ。関節を切られたことで右腕がかなくなったゴリラが、今度は左腕を振る。

「セアッ!!」

大地が素早く飛び込み刀を振る。巨大な爪を刀が衝突し、ギギギギッと拮抗するが刀の角度をずらして刃でらせる。すぐ橫を爪が通り過ぎると同時に一歩踏み込んで腕を薙ぐ。

「先生無事ですか!?」

「山崎か、助かった」

『ゴァアアアアアアアア!!!』

「「--ッ!!」」

両腕からを撒き散らせながら使えない腕をぶんぶん振り回してやけくそ気味に暴れる。大地と西原は後ろに飛びずさる。

「くそっ!めちゃくちゃに暴れやがって!」

「山崎下手に近づくなよ!」

「でも!」

「《孤高にぶ怨嗟・灼熱なる炎で示し・すべてを呑み込む柱となれ》」

大地が抗議の聲を上げようとしたその瞬間靜かな詠唱が響く。するとゴリラの周囲に灼熱の燃え盛る炎の柱が複數出現し、炎が昇り頭上から炎が襲い掛かる。

炎がゴリラを燃やし、の端から炭に変えていく。大地は師を探して後ろを向くと、そこには右手に大きな本を持ち左手をゴリラに向けている後藤浩がいた。

がパタンと本を閉じる。そして炎が収まりそこには全が炭になったゴリラがいた。

「助かったぜ後藤さん」

「・・・別に大したことない」

「いいや、お前のおかげで倒せた、ありがとうな後藤」

「・・・いいえそれほどでも」

大地と西原の言葉に浩は淡々と返していく。あまりを表に出さない彼はいつものように淡々と靜かに話すと、魔力回復薬を飲む。

するとほどなくして近くの亀の魔も討伐されたのか歓聲が上がる。

「先生、これからどうしますか?」

「魔はまだ多くいる、今のうちに休憩して力を溫存しながら戦うんだ。援軍が來るまではまだ時間がかかるらしい。おそらく向かう途中で魔とでも遭遇してうまくこちらに著けないんだろう」

「ま、マジか。なら今のに休憩しとかねぇと、さすがに疲れた」

「・・・私も。魔力切れでがだるい」

「なら二人は休むといい。ここは俺が周りを見ておいてやる」

お言葉に甘えて大地と浩は近くの巖場にを預け、しばし休憩をする。一方西原は徹夜であれだけの戦闘をしていながらも疲労のは見えない。さすがとしか言いようのない。

し休憩をしているとほどなく健斗や智花、勇などのクラスメイトも集まってきた。ケガ人はなく全員無事だったが、全員の顔には疲労が滲み出ている。

そうして全員で休憩を取る。連続の激しい戦闘で張り詰めた張の糸が、休憩をすることで緩んだのかホッとため息をつく。

そうしてしばらく安息な時間が続く。しかしそれは長く続かなかった。

「ッ!?全員構えろ!!」

「「「!?」」」

現れた大きな気配に西原が即座に戦闘態勢を取り、それに続き全員武を構える。

「気配が無くなったと思ったらお前らの仕業か。まさかこんな簡単に俺の魔がやられるなんてな。まぁ、試作品だったからいいんだが」

そう言って現れたのは頭部には角、背中には羽を生やした男。魔人だ。

「さっきの三の災害級はお前の仕業か」

「ああ、そうさ。どうだったよ?なかなかだろ?」

そういうと魔人は愉快に笑う。しかし大地たちは笑えない。何故ここに魔人がいるのか。

「ちっ、よく考えれば予想できたな。この魔の奇襲部隊はお前がっているわけか」

「半分正解だ。この奇襲部隊は俺が預かってるが、ってるのはコルトア様だ。俺は俺が作った災害級を見に來たのさ」

西原と魔人の會話で大地たちもその可能に気付いた。

「さてそれじゃあ最後の試験と行くか。出てこい!エレクマガラ!!こいつらを躙しろ!!」

魔人がんだ瞬間地面が大きく揺れたあと隆起し、そこから大き魔が現れる。

長は六メートル程で四足歩行の亀の様な生きだ。背中には巖石や鉱石が混じった甲羅をに付け、そして顔には鋭く大きな牙が並んでいる。まるで竜のように。

「これが俺の魔、エレクマガラだ!」

エレクマガラの兇悪な姿に大地たちは震え上がる。今までの災害級がとは雰囲気が違う。いや同じ災害級だが何かが違うのだ。それはおそらく素となる生きの違い。

「亀・・・?いや、竜・・・?」

「そうだ、これは竜種の亜種である地竜を素に使った災害級だ。大変だったぜ、竜を従えるのは」

「竜・・・」

こちらの世界に竜がいる事は知っていた。いつか見て見たいと思ってはいた、しかし今はただこの場から逃げたいと思った。でもが思うようにかない、兇悪な敵を前にかないのだ。

「行け」

「ッ!全員ここから逃げろ!!」

魔人がエレクマガラをかす。西原はけない生徒に大聲で怒鳴る。西原の一括で正気を取り戻した大地たちは、即座に駆け出す。

「逃すかよ!!」

魔人がエレクマガラと共に後を追う。

地竜というだけあってそのスピードは巨からは想像できないほど速く、このままではいずれ追いつかれてしまう。そう判斷すると、西原は立ち止まりエレクマガラの前に躍り出る。

「先生!?」

「早く行け!ここは俺が時間を稼ぐ、その間にお前たちは逃げろ!!」

「先生一人じゃ無理だろ!!」

「それでも誰かが殘らないよりかはマシだ!早くしろ!!」

必死な西原の姿に大地はどうするべきか考える。このまま逃げてもいずれ追いつかれてしまう。しかしここに西原が殘った場合、自分たちは助かるかもしれないが西原はどうなるかわからない。

大地は必死にどうするべきか考え、そして、刀を取る。

「先生、俺も戦います!みんなはその間に殘りの人達に知らせて援軍を呼んでくれ!」

「山崎!?早く逃げろと言っただろう!!」

「逃げません!どのみちこのままなら捕まってしまいます。それなら殘る人數を多くして援軍を待つ方が良い。それにですね・・・彼の前で男が無様に逃げ出すわけにはいかないでしょうが!」

大地はそう言って腹から聲を出し震えるを無理やり沈める。西原はそんな大地を怒鳴ろうとしたが、大地の一歩も譲らないという覚悟の瞳を見て何も言えなくなる。

西原は、「はぁ〜」とため息をつくと、何も言わず剣を構える。大地はそれを了承と判斷し、刀を構えて西原の橫に立つ。

すると今度はその橫に健斗と智花が並ぶ。

「大地が殘んなら俺もだな。槍師の本気を見せてやるさ」

「彼氏のカッコイイ姿ちゃんと見屆けなとだしね」

二人が並ぶと殘りの全員が並ぶ。そして勇も並ぼうとすると、健斗が止める。

「勇がこの中で一番速い、頼む、勇は援軍を呼んで來てくれねぇか」

「・・・死んだら承知しねぇからな」

「アホか、俺が死ぬわけないだろ」

悪態を付き合うと勇は【加速】を使い全力で駆け出す。その景を大地はニヤニヤと見ている。

「・・・なんだよ」

「いいや、別に〜」

ニヤニヤした視線を向けられ健斗は獨りごちるが、そうこうもしていられない。すぐ目の前にはエレクマガラが迫って來ている。

「行くぞ!!」

「「「おおおおお!!!!」」」

迫るエレクマガラを正眼に定め、西原が合図を掛ける。大地たちも腹から聲を上げ、各々武を手に駆け出す。

「來るがいい勇者ども!!」

果敢に立ち向かう大地たちを見て魔人は両手を掲げ、聲を張り上げる。

そして両者が衝突しーーーーー

ーーー剎那、轟音とが支配する。

連続する裂。大地たちの目の前で眩いと大量の火花が弾け飛び、その裂で地面が揺れる。

目の前で突如発生した景に大地たちは何も出來ずただただ立ち盡くし、裂の衝撃でそのまま餅をついて倒れる。そうしている間にも裂は続き、やがて裂が止まる。

弾による撃のような裂が止まり、ストロボの點滅の如きの発が晴れると、そこにはエレクマガラだったもの・・・・・があった。

エレクマガラは全が引き千切られて々の狀態で、焼けた片が散らばっており僅かに殘った大の形がこの片がエレクマガラと判斷出來る唯一の材料だ。裂の跡は激しく、エレクマガラ周辺の地盤は激しく陥沒し焼け焦げている。

「い、一何が起こった・・・!?」

驚愕の聲の方を見ると、裂に巻き込まれたせいでか右腕がない魔人が立っていた。あの裂をギリギリのところで回避したらしい。

大地たちはまだ魔人が生きていた事に、驚愕から立ち直り直ぐさま武を構える。

と、そこへ殺伐とした戦場に似合わない呑気な聲が聞こえてきた。

「え?ウソだろ?竜、ドラゴンの種族だからと思ってし警戒したが・・・所詮は亜種、純粋種には屆かないって事か・・・はぁ〜竜種だからどれ位のものかと期待したのに、ハズレじゃねぇか」

頭上からし不満気な聲が聞こえてきて、その場の全員が上を向く。

そこには小さなの輝く魔陣の大群を背に、銀の刺繍のった黒を纏った男が空に浮かんでいた。

の男はまるで地面に立つように空に浮かんでおり、後ろに並ぶ魔陣の數はゆうに五十は越える。一つ一つの魔陣に込められた魔力と式は強力で、差し詰めそれは砲臺。五十を越える砲臺を背に悠々と空から見下ろす男は一人軍隊ワン・アーミーと言ったところか。

そしてその黒の男を見て大地たちは驚愕の眼差しを向ける。その男は數ヶ月前に行方不明になったクラスメイト。

「日伊月か!?」

「おう、久し振りだな山崎」

空に浮かぶ男ーーー日伊月彌一はそう言うと手を挙げる。大地はまさかの再會に驚き他の面々も男の正が彌一だとわかると「日伊月くん!?」「え!?あの日伊月か!?」と驚きを隠せない。

そして々と問いただそうとした瞬間、彌一の付近でび聲が響く。

「人間如きが、俺を見下ろすんじゃねぇえええええええ!!」

先程の攻撃から立ち直った魔人が空を飛んで彌一の背後から奇襲したのだ。

「日伊月!逃げろ!そいつは強いーーーー」

と大地が彌一に注意を促そうとした瞬間、あり得ない景を目の當たりにする。

「よっと」

気の抜けた掛け聲と共に彌一は魔人の頭部に踵落としをれる。木を割る斧のような力強い一撃は魔人の頭部の骨を砕き、魔人を地面に叩き落とす。

砲丸のように加速して落ちてきた魔人。けた威力の激しさを表すように、魔人がけた威力が越しに伝わり、地面に放線狀のヒビをれ陥沒させる。

「がっ!ハッ!!」

魔人が口から大量のを撒き散らしそのままけなくなる。

その暴力的なまでの圧倒的な力を目の當たりにし今度こそ大地たちは衝撃を通り越して沈黙する。巨大な地竜の魔々にミンチし、襲い來る魔人を一撃で沈める。自分達が屆かない強さを大地たちはじる。

「グボッ、ガッ!クソ、てめぇ、一、何もんだ・・・」

「答える義理はないな」

一つの発砲音

一條のが大気を切り裂き魔人へと吸い込まれ、魔人は骸むくろと化す。

余りの呆気なさに大地たちはしばらくフリーズし、やがて正気に戻る。それを見計らって彌一は空から降りてきて大地たちに尋ねる。

「山崎、一何が起こってる」

「え?あ、ああ、それが魔王軍六屬っていう魔人が大量の魔を引き連れて襲って來たんだ」

「魔王軍六屬?・・・ああ!そう言えばセナの故郷を支配していたクソ野郎がそんな事言ってたな。そうか、あいつらが魔王軍六屬なのか・・・ちっ、どこまでも面倒な奴らだ」

「知ってたのか!?」

「ついこの間ブチのめした奴がそんな事言ってた」

「ぶ、ブチのめしたって・・・」

もう何度目になるかわからない驚愕に大地たちは呆れるしかない。先程魔人を一撃で沈めた事に加え、魔王軍最強戦力のの一人を既に倒したと、まるで何事も無いようにいうのだから。

その巨大な力に確かな恐怖を覚える。しかしそれでも今は、その力が途轍もなく頼りにじる。

「それで、そのクソ野郎二號はどこにいる?」

「多分、ここからし離れた所にある本隊の所にいるんじゃないかと思う。俺たちは最初は前線の方にいたんだが、途中でここを襲撃されて戻ったんだ。今は前線には雄也と健、波さんと綾乃さん、それとロジャーさんたちが戦っている」

「・・・そうか、わかった」

前線に殘ったメンバーに彌一は「やっぱりか」と言うような気持ちになる。家族のような馴染の姿を思い浮かべ、彌一は靜かに拳を握る。

するとその時戦場にこの世界には存在しない音が響く。それはまるでエンジンのような音。

音のする方を向くと暗くてよく見えないが、土煙を上げながら何か大きなが近づいて來るのが見え、「魔か!?」と警戒する。しかし次の瞬間には(もう何度目になるか考えるのが面倒くさい)驚愕の表になる。

ギュワァアアアアーーー!!!

と音を立ててスピンしながら彌一の橫に止まったのは黒い大きな箱型のーーー車だ。

黒い大型の軍用車のような車だ。大地たちが警戒する中、車のドアが勢いよく開き、中から飛び出してくる。

「パパー!」

「おっと、ユノ、戦場でいきなり出てきたら危ないだろ?」

「ごめんなさ〜い」

「わかったならよろしい。ユノは偉いな〜」

そう言うと彌一は抱えた銀髪のの頭を優しくでる。ユノと呼ばれた銀髪は彌一に褒められて嬉しそうに目を細め彌一のに顔を埋める。

突如発生した心溫まる景を見せられて大地たちは唖然とする。突然車が現れて、綺麗な銀髪のが彌一に抱きついて、彌一に褒められて嬉しそうにしている。という景だけでも十分大地たちの処理は追いついていないのだが、それを遙かに越える衝撃の言葉を聞いてしまった。

あの銀髪は出てきた時、なんと言って彌一に抱き付いた?パパ?それはあれだろうか、アダ名や何かだろうか?あるいは名前の省略だろうか?

大地たちの中で様々な憶測が馳け廻る。しかしこれではまだ終わらない!

「彌一、大丈夫だった?」

「ああ、魔人と魔が思いの外弱くてな。竜種だからし期待したんだがな」

「お疲れ様ですマスター」

「エルも運転お疲れ」

車から出て來たのは今度は二人のだ。一人目は風になびく綺麗な蒼髪と深い蒼の瞳を持つ、思わず息を呑むほどの、二人目は薄い緑の髪と瞳に、長い耳とメイド服が特徴な人。

突然絶世の人の登場に、もう処理が追いついている者は居ない。

そんな大地たちを放って彌一たちは作戦會議を始める。

「セナとエルはここにいる魔の掃討を頼む。數は・・・三萬ってとこだな、報告の時より増えてるな」

「わかった。それで彌一は?」

三萬という途方もない數を聞いてもセナとエルは揺することもなく承諾する。そして質問された彌一は遠くに見える魔の軍勢をみながら、不敵な笑みを浮かべる。

「約束を守りに行く」

何時ぞやの"守る"という約束を果たしに、魔師がそのを翻す。

「さぁ、魔師の本気を見せてやる」

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