《魔がない世界で魔を使って世界最強》師の娘は無雙する

彌一が飛び去った後、セナは別空間から裝備を取り出して準備を始める。エルは【へカート】を仕舞い終わると暗や魔導の點検を始め、傍でユノがサニアと戯れている。

そして準備が終わると、セナは未だ唖然としる大地たちに向き直る。

「貴方達はここから避難して、あの古城の中にでも立て篭ってて。他の人達も同じように」

「え、えっと貴方達は一・・・?」

避難を促すセナの言葉に智花が言う。セナはし考えた後言葉を発する。

「私はセナ・アイヤード。第十階梯の冒険者で、日伊月彌一の妻です。夫がお世話になってます」

「「「ああ、これはどうもご丁寧に・・・ん?」」」

セナの自己紹介に智花を始めとしてその場の全員が頭を下げ、同時に「ん?」と言葉をらす。名前は問題ない、第十階梯の冒険者も心強い助っ人で頼もしい、奧さんと言うのも、まぁありえーーーー

「「「ーーーるわけないだろぉおお!?」」」

全員が絶する。

クラスメイトが行方不明になって戻ってきたら嫁ができている。それなんてエロゲ?

しばらく絶した後、揺を抑えながら智花は今度はエルに話しかける。

「え、えーっとそっちの貴方は?」

「私ですか?私はエルネウィア。第九階梯の冒険者で彌一様の従者です」

エルの自己紹介に一同「お、おお?」と首を傾げる。従者という言葉に引っかかりを覚えたが、先ほどのセナの嫁発言に比べたら全然普通である。

以外と普通の自己紹介に一同安心する。しかし、次はそうはいかない。次はいよいよ最後はパパと言って彌一に抱き付いていたユノである。

「そ、その、あなたは?」

智花はしゃがんでユノの目線に合わせて聞く。そしてユノは太のような明るい笑顔で言う。

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「ユノです!パパとママの娘です!!」

「何があったの!?この數ヶ月間日伊月くんに何があったのぉおおおおおおおっ!?」

普段の口調も忘れ智花は絶する。他の生徒も「どういうことだ!?」「嫁と人メイドに加えの娘だと!?」「きゃー!!」「ヒイヅキユルスマジ・・・」と各々絶が飛びう。子の黃い歓聲や男子の嫉妬と怨嗟に狂ったび聲などとカオスと化していた。

そしてこのカオスを生み出した本人達はと言うと

「それでどうしようか?」

「私が西側、セナ様が東側でよろしいのでは?」

「じゃあそれでいこう」

「ママ!ユノもたたかう!」

「うーん、じゃあエルのお手伝いしてくれる?」

「うん!」

と、カオスと化した生徒達を放っておいて作戦會議をしていた。

そして作戦會議の結果、東側はセナが、西側はエルとユノが擔當することになった。

「それじゃあ、行こう」

セナは西側に、エルとユノは東側に走り出す。

先に宣言しよう。これから始まるのは戦闘ではない、

"躙"だ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

戦場を二つの影が疾走する。一つは大型の狼にと、もう一つは黒塗りの二るメイドだ。

魔力駆型二【ヴァイツァー】。これは地下施設の格納庫に殘っていたのを彌一が改造したものだ。【へカート】と同じく魔力でくこの機は、魔力タンクに神聖結晶を使用しているため、大気中に魔力が存在する場所では燃料を気にする事はない。

ウォオオオオン!!とエンジンを蒸して疾走する。そして程なくして魔の集団が見えてくる。

はこちらを見ると吠えてこちらに向かってくる。數は一萬といったところか。

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「サニア!」

『オォオオオオオーーーーーン!!』

サニアが吼えると辺りに極寒の凍気が漂い、次の瞬間には氷柱が辺りに浮遊している。総勢百の氷柱、それが一斉に発される。

弾幕の如き氷柱は魔に避ける隙を與えず、全ての氷柱が魔を串刺しにし、剎那魔を霜が覆いその全てを凍り付くす。

まで一瞬で凍結させる圧倒的な死の凍気を前に、魔たちは本能的にサニアを強敵だと判斷し、今度はエルに向かってくる。

しかし、魔達はこの後すぐ自分たちが間違っていたのだと知る。それは、煙を噴きながら迫ってくる円筒狀のを前にして。

轟音。

の軍勢の中心で発が発生。灼熱の突風と衝撃波を浴びて辺りの魔が吹き飛ばされる。直撃をけた魔々に吹き飛ばされ、既に原型がわからない。

「全く相手にもなりませんね」

エルはそんな事を言いながら、肩に擔いだロケットランチャーを下ろし、再び走り出す。

右手を世話しなくかして魔を撃ち抜いていく。華麗なハンドル捌きで魔の集団を避けつつ、右手に握った拳銃で撃ち抜き、偶に炸裂手榴弾を投げ込んでいく。

「ユノ様、大丈夫ですか!」

「大丈夫!!」

ニコッと笑顔で答えるユノ。そこへ後ろから鷹の魔が上空から砲弾の様に加速し、ユノを強襲する。

エルは直ぐさま拳銃を構えて鷹を狙い撃とうとしたが、次の瞬間には必要なくなる。

鷹がユノにれる前に、サニアから放たれた紫電の一撃が鷹の魔を貫いたのだ。彌一の死角からの一撃をも防ぐその反応速度、たかが魔ごときが突破する事など不可能。

サニアがユノを狙う魔を紫電や氷柱で撃ち落としていく、しかし空には何百という飛行型の魔が存在する。いい加減面倒くさくなって來たサニアは、神獣化をする。

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が蔓延る戦場に、神話の魔が現る。

その圧倒的で暴力的な存在とプレッシャーに全ての魔きを止め、恐怖を抱く。

ーー自分達は手を出してはいけない相手に手を出したのだ、と

サニアは絶大なプレッシャーと共に自分の周りに氷結の礫を作り出し、それを頭上に渦の様に配置する。

『オォオオーーン!!!』

そして紫電を頭上に放つ。紫電は頭上の礫に當たりーーーーー次の瞬間、紫電が二つに割れる。

紫電が礫に當たり二つに割れた後、今度はまた別の礫に當たり、割れる。

これが繰り返され、最初に放った20の紫電が、最終的に飛行型の集団に直撃する時には総勢160。

上空に向かって雨の如く降り注ぐ。まさかの攻撃に魔は反応できず、次々と撃ち抜かれ落下してくる。

の雨が降る戦場に立つ一匹の王者。その景は神話の魔に相応しい恐怖を現していた。

しかしそんな死の戦場に明るい聲が響く。

「サニアすごい!すごい!かっこいい!!」

はしゃぐユノがサニアのふかふかな並みに埋れ首筋に抱きつく。比喩表現でもなんでもなくの雨が降る戦場で、銀の王者と同じ銀の髪のが、満面の笑みではしゃいでいる。

の雨が降る景を前にしても怖じしない。それもそうだろう。ユノはただのではない、魔師の娘である前にユノも、死の修羅場を潛ってきた歴とした"魔師"なのだから。

ユノはサニアに抱きつきながら戦場を駆け抜ける。サニアは大好きなご主人に褒められて嬉しそうに吼え、魔を蹴散らしていく。

「サニア!変わって!」

ある程度魔を蹴散らすとユノがそんな事を言う。たったその一言で糸を汲み取ったサニアは、ユノを下ろしたあと消える。

そしてユノは魔力を高め、魔を構築する。

「《氷雷の銀狼インサニア》!」

そう詠唱すると同時、ユノの背後に巨大な蒼の魔陣が浮かび上がる。魔陣の発生と共にユノのが青く発し、急速に長を始める。頭と腰の部分にラグが発生し、そして魔陣が消えるとそこには、頭と腰に耳と尾を生やし一五歳位まで長したユノがいた。

塗られた戦場に突如現れた銀のは、何処か幻想的でしい。

ユノは降霊化を終えた後、指をパチンッと鳴らす。足元に明な魔陣が発生して上昇しユノを呑み込む。

陣が通り過ぎると、先程とは違った服裝のユノが佇んでいる。肩までしかないコートに下はホットパンツといったき易そうな格好だ。

戦闘服にを包んだユノが両腕を振るうと、腕に凍気が集まり、肘まで覆う籠手型の大きな氷の爪が現れる。

更には足元にも凍気が集まり、膝まで覆う氷の防が完した。

「よし!」

し大人びた聲と共に、防と籠手のを確かめるとユノは地面に手を添え、地を這う様にしゃがむ。そしてググッとめ、迫る魔の集団を見據え、足に力をれる。

剎那、地面が大きくぜユノが疾駆する。

銀の紫電が地を這い奔るかの如く、ユノが魔の集団に突っ込む。魔はユノの姿を視認することすらできず、ユノの接近を許す。

ユノが魔の集団を剎那のに突っ切る。そして突っ切るとズザァアアーーー!と音を立て、地面に二本線を引いて止まる。

からしたらユノが突然背後に現れた様に見えただろう。しかし、ユノは通り過ぎ去るその剎那にやる事を済ませていた。

大地が赤く染まる。

全ての魔が首を刎ねられ、を切られ、吹き出すが大地を濡らし、魔の集団全てがの海に沈む。ユノは通り過ぎ去る間に全ての魔を切り裂いていたのだ。

ユノが立ち上がると、今度は橫から災害級のサイの魔が突進してくる。巨から繰り出される威力は脅威だ。

だが、ユノは回避せずサイに突撃する。

サイとユノがぶつかる瞬間にユノは跳躍し、サイの背に乗る。

サイは背中に乗ったユノを振り落とそうと暴れるが、天才的なユノのバランスのせいで落ちない。

「ふっ!」

ユノが拳を振り下ろす。衝撃は頭蓋を通り脳髄を通過して、頭を地面に埋め込む。

サイは走っていた狀態で頭を突如毆りつけられたせいで、ユノが前に投げ出される。ユノはそのタイミングでサイの背を蹴り、飛ぶ。

砲弾の様に加速したユノは空高く上がると、空にいた飛行型の魔を切り裂く。そのまま流れる様に、今度は飛行型の集団に左手を向け、極太の稲妻を放つ。

上空を飛んでいた飛行型が、極太の稲妻に呑まれ、骨一つ、塵一つ殘さず消滅させる。

「きゃ〜!」

聲を上げてはしゃぎながらユノが落下していく。落下地點には魔が集まり、下からユノを見上げる。

「どいて!」

ユノが右腕を振るうと、足元に巨大な氷の杭が複數出現する。そして手を向けると、杭が出される。

重力と出時による加速が相まって、杭は凄い勢いで魔を串刺しにし、魔を地面に固定する。

邪魔者を排除し著地のスペースを確保すると、のバネを利用し華麗に著地。

「次はどこ!」

ユノが周りの魔ぶと、魔が躊躇って一歩下がる。圧倒的な力を見せつけられて、魔も本能の赴くままに突撃出來ない。行けば死ぬと本能で理解したのだから。

「じゃあユノからいく!」

そういうと両手に電撃を纏わせ、それを足元に打ち込む。

線狀に砕ける地面。地面には電撃が奔り後に続いて衝撃波が奔る。周囲の魔はその電撃に焼かれ、衝撃波で吹き飛ばされる。

両腕で地面を毆る。たったそれだけの事で辺りの魔が消し飛ぶ。その力は神話の魔の力に相応しい。むしろ、力が制されている為、通常のインサニアよりも、"最小限の消費魔力で効率的かつ大威力"が出せるのだ。

プスプスと焼け焦げた魔が周囲に無造作に死累々と転がっている。その中央では銀のが悠然と立っている。夜の帳の中でもしく風に揺れる銀の髪は、そのしさと王者としての風格を醸し出している。

辺りに魔がいなくなるとユノは「ふー」と一息つく。そしてまた別の所に移しようとした瞬間、影が覆う。

背後を見るとそこには月明かりを背に、拳を振り上げている一つ目の巨人がいた。

『オォオオオオオオオオオ!!!』

長六メートルはあろうかというこの一つ目の巨人はサイクロプスと呼ばれるモンスター。その巨から繰り出される一撃は強力で、人が喰らえば一撃で全々に砕ける。

サイクロプスはその振り上げた拳をユノに向かって振り下ろす。ゴウッ!と空気が唸り迫る拳。巨に見合わない速度で迫るそれにユノはギリギリ跳躍する事で回避する。

「わ、わっ!」

サイクロプスの拳が地面を抉り土片が舞う。ユノはし離れた所に著地すると、サイクロプスが拳を振り下ろしたタイミングを狙って突撃する。

地面がユノの踏み込みでぜ、砲弾となったユノはそのまま振り下ろしたサイクロプスの腕に爪を振るう。

「っ!斬れない!」

振るった爪はサイクロプスの表をし傷付けただけで、大したダメージは與えられない。

「これなら!」

爪による斬撃が効かないと判斷すると、サイクロプスの腕に手を當て電撃を流す。紫電がユノの腕から伝わると、サイクロプスが鬱陶しそうに腕を払う。腕を足場に跳躍し、改めて距離をとる。

「爪が効かないの、どうすれば・・・」

何か有効な手段が無いか考える。爪による攻撃は効果が無い。電撃は通るが大したダメージは與えられない。どうしたものかと考え、ユノは腕を突き出す。

「いけ!」

手の平から紫電を放つ。腕や足、腹部などランダムに撃っていく。サイクロプスは避ける事なく全ての攻撃をける。その余裕からもわかる様に紫電の攻撃は効いていない。

しかしユノは撃ち続ける。何処かに存在する筈の弱點を探す様に。

そして紫電の一発が一つ目に向かう。サイクロプスは突如慌てた様に紫電を腕でガードする。それはまるで弱點を守る様に。

「見つけた!」

腕で目を守る作で弱點を見つけ出したユノは、紫電を目に集中して撃つ。しかしサイクロプスは両腕でキッチリ目をガードしていて攻撃が通らない。

「だったら!」

ユノは氷の爪に紫電を纏わせ、全力で踏み込む。目を守る事に必死のサイクロプスはユノの接近を許す。

一呼吸で九つの斬撃を放つ。斬撃は表の薄皮を斬り刻み、飛沫を撒き散らす。さらに爪に纏わせた紫電が切り傷を焼き、電撃を流す。

『グォオオオオオオオオオオ!!』

小さな切り傷と電撃がサイクロプスの注意を引き、鬱陶しいサイクロプスは足元に拳を放つ。だが、そこにはもうユノはいない。

「はっ!!」

背後からの掛け聲と同時に背中に痛みが奔る。振り向きざまに腕を振るうが、そこにはやはり誰もいない。

『オォオオオオオオオオオ!!!』

を細かな痛みが奔る。サイクロプスの周りを疾風の如き速さでき回り、様々な部分を斬り刻む。銀の風となったユノの姿をサイクロプスは見失う。

空中に氷の足場を作り出し空中で更に加速する。そして、最後にユノの姿を見失ったサイクロプスの目の前に現れる。そう、目の前に。

サイクロプスは慌てて拳を突き出そうとするが、時既に遅し。

「ユノの方が、速いの!」

鋭い一突き。それはサイクロプスの目に突き刺さり、ようやく初めて攻撃が通る。

『グゴォオオオオオオオオオ!!』

「もう、おしまい!!」

突き刺した氷の爪から最大出力で電撃を放つ。電撃は目から伝わり、脳髄を焼き切る。いくら表がくても、側から脳髄を焼かれればどうしようもない。

脳髄を焼き切られサイクロプスの瞳からが消える。そして、糸が切れた人形の様に地面に倒れ伏し、そのまま何も言わぬ骸と化した。

ユノは骸と化したサイクロプスを見た後、辺りを見渡すが辺りに魔はいない。それを確認してユノは氷の爪を解除する。

砕け散る氷の爪の音を聞きながら、ユノは満足そうに呟く。

「パパに褒めてもらえるかな〜!」

楽しそうにニコニコと笑みを浮かべる。

戦場に現れた銀のは、パパに褒めてもらえるかを想像しながら、明るい太の様な笑顔を浮かべていた。

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