《魔がない世界で魔を使って世界最強》師の従者は無雙する

暗闇に奔る一條の銀線。銀線の先には針が付けられており、針は虎の魔の目に突き刺さる。

『ゴァアアアアアア!!』

針の痛みに悶絶する魔。しかしその瞬間、ワイヤーから電撃が伝わり脳髄に伝わると、魔はそのまま地に沈んだ。

エルはワイヤーを引き戻して、再びアクセルを回す。ウォオオオオン!!と音を立て走る黒いバイクは戦場を自由に駆け回り、魔を撹して周る。

「意外にも數が多いですね。武は足りるでしょうか?」

サブマシンガンを構え、走りながら弾丸を魔の集団に無差別に撒き散らす。中蜂の巣になった魔が次々と倒れていく。だが、弾丸が通ら無い魔も複數おり、そういった魔が追いかけてくる。

「《展開・撃》!!」

の寶石を背後に投げて、詠唱する。寶石がり、エルの背後に十五の小型魔陣が発生する。

そして次の瞬間、魔陣からのレーザーが無數に放たれ、背後から追いかけてくる魔の集団に著弾。地面を抉り、土煙が舞うと共に魔の悲鳴が聞こえる。

「寶石は、あと五つ。し厳しいかもしれませんね。元々、多數対一の戦いはあまり得意ではないですし」

エルの得意分野は暗殺や諜報で、多數対一の戦いは得意ではない。確かに現代兵は強力だが、弾丸などの制限がある。敵がその數を上回る數であった場合、こちらの武が無くなるのは時間の問題だ。

殘りの戦力を考えていると、背後の上空から、鷹の魔が襲い掛かる。直ぐさま接近を察知したエルは、振り向きざまに鋭く右腕を振るう。

その右腕の先から、しゅぱっ、と空気を裂いて飛ぶ無數のワイヤー。それが鷹に縦橫無盡に走りーーー

「焼けなさい」

エルの義手から、超高熱が発生しワイヤーを直ぐさま伝走る。

剎那ーー鷹の魔が、超高熱でバラバラに焼き切られる。

「全く、人が考え事をしている時に來るなんて無粋です」

はぁ、と溜息をつくエル。しかし、休憩する間も無く、次の魔が接近してくる。

『ゴァアアアアアア!!』

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エルの正面から巨大な亀の魔が走ってくる。その巨大な図に似合わず、移速度は意外と速い。

「鬱陶しいですね」

押し潰さんとばかりに迫ってくる亀を見て、エルは更にアクセルを蒸し加速する。そして両者が衝突する直前、

「ふっ!」

ヴァイツァーが地面の巖を乗り越え大きくバウンドする。それと同時にエルはヴァイツァーの前を上げて、亀の頭上に乗り上げ、そのまま甲羅の上を疾走する。

そして甲羅の頂點でジャンプ。空中でバックフリップの狀態で、エルは両手にサブマシンガンを構える。

世界が逆さまの中、エルは引き金を引く。

バババババババババババッ!!

夜闇を切り裂無數の線條は、辺り一帯魔を貫く。雨あられと降る銃弾に、魔は逃げる暇もなく躙され、辺り一帯が赤く染まる。

やがて世界が戻り、ヴァイツァーが二、三回バウンドすると、地面に跡をつけながら止まる。

自分を踏み臺にされた亀は、すぐさま振り向き、エルに突撃してくる。

「だから、鬱陶しいと言ったでしょう」

そういったエルは、手に取った寶石に魔力を注ぐ。

瞬間、亀の口が赤く発したかと思うと、頭部が発する。

炎に呑まれた頭部は、跡形も無くなり絶命した。

「やっと片付きました」

エルは亀の頭部を超える際に、亀の口発の魔が刻まれた刻印寶石を投げ込んでいて、遠隔で破したのだ。

辺り一帯に魔は無い。さっきまで空を埋め盡くさんだかりいた飛行型魔も、今では數えるほどしか確認できない。

はてどこに行った?、と思っていると、

『オォオオオオオオーーーンッ!!』

し遠くの方から狼の猛々しい遠吠えが聞こえる。その聲から分かる、力強さは普通の魔ではない。そして、その上空には無數の紫電が煌めいている。

「どうやら飛行型はユノ様とサニアが終わらせたようですね。では、私は取り零しを処理しますか」

エルは、【グレーク】を取り出し、弾倉を裝填する。

「【強化】は無くても良さそうですね」

レベルが上がった事で、グレークの反強化無しで、耐えることが出來ると判斷し、スコープを覗き込み、空高くを飛んでいる魔に標的を合わせる。

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ズドォン!と重低音な音とマズルフラッシュが炸裂。プラズマの一條の閃は、闇を切り裂き、魔の上部を吹き飛ばす。

命中した弾丸の威力に、魔の腹部が引き千切られ、聲を発すること無く絶命を向かえる。

「次っ」

スコープの倍率を下げ、広範囲を視認し、次のターゲットに狙いを定め、一條の閃を放つ。

「次っ」

が貫き、魔の部位を吹き飛ばす。頭がぜ、腹部が引き千切られ、上部が消し飛ぶ。

「次っ!」

空薬莢を排出し、直ぐさま次弾を裝填、そして、放つ。しばらく戦場には、炸裂音と空薬莢の音だけが響く。

エルの周りには、空薬莢が散らばり、排出され宙を舞った空薬莢が、月明かりに照らされ輝く。

空薬莢の數は、撃ち落とした魔の數。エルは遙か上空の魔を一発も外すこと無く、撃ち落としているのだ。

時間が経つにつれ空薬莢の數が、十、二十、と増えていく。

「これで最後です」

エルはスコープ越しに最後のターゲットを視認する。倍率を上げ、狙いを定めると、引き金を引いた。

最後の魔が撃ち落とされ、空に魔がいなくなった。

エルは周囲を探査する。所々に魔はいるが、數は數だ。これくらいなら問題無く対処出來るだろう。

「取り敢えずユノ様と合流して、周囲の殘黨を殲滅。その後セナ様のところに合流ですね」

ヴァイツァーにがり、ユノに合流しようとしたその瞬間、【気配探知】に急速に接近してくる反応が出現した。

「ーーーッ!速い!!」

反応はこちらに凄い勢いで近づいてくる。エルは即座にヴァイツァーを走らせると、先程いた地點に巨大な何かが墜落してくる。

土煙が上がり、エルは拳銃を油斷無く土煙に向けて構える。

迫した空気の中、土煙が晴れ、姿が見える。

「な!これは!」

驚くエルの前に現れたのは、長五メートル程の生。上半が鷲、下半が獅子。そう、グリフォンだった。

「まさかこんなところで、珍しい幻獣種に出會えるとは。しかし、厄介な事になりましたね」

グリフォンは綺麗な山脈の山頂などで、極稀に見ることのできる幻獣種と呼ばれるモンスターだ。

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グリフォンの気は普段は溫厚なのだが、繁期にったグリフォンは、栄養を蓄える為に、山脈を降り、目につく生きを片っ端から食いつくす。

能力が低く、個數がない為、グリフォンによる被害は數年に一度なのだが、その度の被害は甚大だ。普通は騎士団や冒険者などの師団単位で対処するモンスターである。

『キュァアアアアアアアアーーー!!』

グリフォンは天高く鳴くと、兇悪な鷹の爪を振り下ろしてくる。エルはヴァイツァーを走らせ、その場から離する。

「ふっ!」

爪を回避すると同時に、鋭く右腕を振り、ワイヤー付きナイフを投擲する。しかしグリフォンは、その一撃を後ろに飛んで回避する。

その隙にエルはヴァイツァーを走らせる。グリフォンは、もう一度鳴いた後エルを追うべく駆け出す。そしてそのまま走りーーー空を駆ける・・・・・

足で空を踏み締め、駆ける。空を飛ぶのでは無く、まるで地面の上を走るように駆けてエルを追う。

グリフォンは、空を飛ぶのでは無く、空を踏み締めて駆けるモンスターだ。翼は風やバランスなどを調整するで、たとえ羽を切斷されても、空を駆けることが出來る。

そのスピードは最高で、時速三百キロ。新幹線以上のスピードで、空を自在にくことが出來るのだ。

「くっ!」

グリフォンはすぐにエルに追いつき、爪を振り下ろしてくる。エルはヴァイツァーをり、次々と振り下ろされる爪をくちばしを回避する。

「流石にこのままじゃもたないですね」

そういうとエルはハンドルから手を離し、座席に立って後ろを向く。そして、肩に擔いだ箱をグリフォンに向ける。

『キュァアアアアアアアア!!』

グリフォンはチャンスだと判斷し、突撃してくる。エルは慌てること無く、箱についたスコープを覗き、グリップの引き金を引く。

バシュゥウウウウウーー!!

そんな音と共に箱から出てきたのは、煙の尾を引くミサイル。グリフォンは危険だと判斷し、橫に避けるが、ミサイルもグリフォンの後を追う。

エルが発した追尾ミサイルは、ジグザグと避けるグリフォンの後を追う。しかし引き離せないミサイルに、グリフォンはくるっと反転し、火の玉を放つ。

火の玉はミサイルに命中し、ミサイルを撃墜する。そのまま二発目、三発目と撃ち落としていく。

「固有魔法持ちでしたか」

モンスターや魔の中の一部には、固有の魔法を持つものが存在する。このグリフォンはその固有魔法持ちのグリフォンだったのだ。

ただでさえ厄介なグリフォンが固有魔法持ちと分かって、嫌気が指すエルは、ヴァイツァーを止める。

「でしたらそろそろ本気を出しましょう」

突然止まったエルに、グリフォンは突っ込む。しかし、エルはグリフォン目掛けて裂の寶石を投げ、至近距離で発させる。

ぜる紅蓮にグリフォンは一度距離を取る。その隙にエルは首元から、チェーンに繋がった一つのドックタグのようなを取り出す。

そしてそれを摑み、唱える。

「起。攻魔武裝、【世界樹ユグドラシル】!!」

摑んだ手から翠と銀の輝きの糸が溢れ出し、エルを包む。

それはまるで、自然が包み込むように。

が一際輝きを増し、が晴れるとそこには、今までの裝いとは違うエルが佇んでいた。

を包むのは翠と銀で構された、近未來的な騎士のような外裝。手足の人工皮は無くなり、黒い義手義足に翠と銀の籠手と膝當てが裝著されている。

背には、バックパックにはスラスターと翠の機械の葉のようなものが付いており、そして一メートル位の長方形型の盾が付いている。

攻魔武裝【世界樹ユグドラシル】。これはかつて甲明が開発した、エル専用の最終兵外裝。

「裝著完了」

エルは手を開けて閉じてを繰り返して、を確かめると、上空を旋回しているグリフォンを見つめて、口を開く。

「さぁ、戦闘開始と行きましょう」

そういうとエルはししゃがみ、次の瞬間、エルが空へと飛んだ。

緑の粒子に包まれたエルは、一條の線となってグリフォンのすぐ橫を通り過ぎる。

『ギュア!』

先程まで地上にいたエルが、次の瞬間にはもの凄いスピードで自分の橫を通り過ぎ、最速の空の王者たる自分と互角のスピードに驚愕する。

グリフォンは慌てて後ろを向くと、そこには、月明かりを背景に、緑に包まれたエルが、右手に緑の片刃のブレードを持ち、悠然と微笑んで佇んでいた。それはまるで、"お前など相手にならない"と言っているようで。

『ギュァアアアアアアア!!!』

その姿を見たグリフォンは怒りを覚え、天高く鳴く。通り過ぎる際に右手のブレードを振るっていれば、今頃決著は付いていたのだ。なにせあの時、自分は反応出來ていなかったのだから。

なのに、ブレードを振るわなかった。それは、挑発以外の何者でもない。

そう判斷してからのグリフォンのきは速かった。空を思いっきり踏み締め、一気に飛び出す。それと同時に、エルに向かって火球を放つ。

連続して発する火球。合計二十にも及ぶ火球の紅蓮がエルを呑み込む。

炎で見えなくなったエルに向かって、グリフォンは両爪を振り下ろす。あれ程の火球を喰らったあとに、グリフォンの鋭い一撃を防ぐことは無理だ。だが、

「この程度ですか」

ガキンッと音が響き、グリフォンの爪が止まる。風のない中、不自然に煙が晴れるとそこには、二つの盾がエルの前に存在していた。

バックパックからアームがび、盾がエルを守るように展開している。表面には一切の傷はなく、グリフォンの爪を完全に防いでいる。

「【世界樹の盾ユグドラシル・シールド】」

そして盾がグリフォンの爪を押し返すと、盾に守られていたエルが前に出てブレードを振るう。

グリフォンは咄嗟に後ろに飛んで、ブレードを間一髪で防ぐ。

後ろに飛んだグリフォンはそのまま逃走を図ろうとする。だがしかし、それを許すエルではない。

盾からガシュッと音がすると、盾が変化する。盾の先から二つの突起が出てき、そこから銃弾が発される。

一つの盾から二つの銃弾、計四発の銃弾がグリフォンに殺到する。グリフォンは空を蹴って橫に回避したが、避けられなかった一発の銃弾がグリフォンの羽を貫く。

『グェッ!!』

羽からを流し、グリフォンは苦痛をび、空を制する王者としての野生の本能が、痛みに悶えながらもその場から離れる事を優先させる。

死に狂いで、初で二百キロ近くのスピードを叩き出し、その場から離れる。

しかしーーー

「ここまでしておいて今更逃すと思いますか?」

バックパックのスラスターを展開し、エルはグリフォンに追走する。グリフォンはまさか、自分の速度に追い付くなんて思ってもみなかったようで、グリフォンは驚愕する。

グリフォンはさらに加速して、エルを振り切ろうとするが、エルは更に加速して後に続く。

夜の闇を、グリフォンとエルが飛び回る。グリフォンは火球を放つが、そのことごとくを盾が防ぐ。

「このままじゃ、らちがあきませんね。一気に畳み掛けるとしましょう」

長くこう著狀態のこの狀況に、エルは嫌気が差すと、一気に畳み掛ける。

「【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】展開!」

バックパックに付いてた六枚の機械の葉のようなものが、分離パージされ、空中に投げ出される。しかしその直後、葉に緑の紋様が現れ、葉が浮遊しまるで生きのように素早くくと、エルの周囲を並走する。

「行きなさい!」

そう命令すると、六枚の葉は俊敏にき、グリフォンの周囲を囲む。そして葉の先が、一斉にグリフォンの方を向く。

「【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】全機『レーザーモード』、放て!」

エルの號令と共に、葉の先からのレーザーが発される。グリフォンは上に跳んで逃げるが、その後を葉が追い、次々とレーザーを放つ。

く葉の正。それは【世界樹ユグドラシル】の兵裝の一つ、自立稼働ユニット【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】だ。【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】は、合計六枚の葉からなり、様々な攻撃・防手段として使える。例えば、今の様にレーザーを放つなどだ。

『グェエエエエエエエエッ!!』

避けきる事の出來なかったレーザーが、グリフォンのを貫く。グリフォンは足を貫かれ上手く跳ぶことが出來ず、地面に落下していく。

落下の衝撃で、グリフォンのの骨がバラバラになり、グリフォンは苦しそうに蠢めく。

「チェックメイトですね」

グリフォンのそばに降り立ったエルが、ブレードの先をグリフォンの眉間に構える。周囲には【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】が展開しており、グリフォンに勝ち目は無くなった。

『ギュァアアアアアアーーー!!!!!』

グリフォンが最後の力を振り絞って聲を上げる。それはまるで最後の足掻きだと言わんばかりに聲を上げ、力盡きた。

「一何を・・・」

すると突如、遠くの方から魔の唸り聲が響き、地面が揺れる。

「ーーッ!面倒になりましたね」

【世界樹ユグドラシル】によって拡張された【気配探知】が、ここに近ずく気配を察知する。その數、300。

「まさか、最後の足掻きに周囲の魔を呼び寄せるとは」

グリフォンが最後の力を使って魔を呼び寄せたことに、エルは頭を悩ませる。魔との接まで、あと一分。

「限界稼働時間は・・・あと五分ですか」

強力な兵外裝である【世界樹ユグドラシル】は【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】を使った狀態だと限界稼働時間が設けられている。その時間は僅か二十分。それ以上の使用は、【世界樹ユグドラシル】自の損傷に繋がってしまうのだ。

エルは殘りの限界稼働時間を確認すると

、もう既に目視でも確認できる位まで接近した魔の集団を見つめる。四方八方から土煙が迫って來る。

そんな狀況の中、エルは悠然と笑みを浮かべて言う。

「そちらから集まって來るとはありがたい。・・・おで探す手間が省けます」

エルが演奏者の様に手を薙ぐと、周囲に【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】がエルを守る様に回転しながら浮遊するl。そして葉の先は魔の集団を向いている。

そしてエルは、挙げた手を振り下ろす。

「全機一斉掃!!」

無數の線條が走る。

【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】から放たれたレーザーは、迫る魔の集団に著弾し、魔を貫く。

次々と襲い來るレーザーに前線の魔の海に沈む。魔はその景を見て進行を止めると、レーザーの雨が止む。

「とりあえず150近くですね。ということは殘り150。余裕ですね」

敵の損害狀況を見て、今度は二つ目の外裝を起する。

「【世界樹の剣ユグドラシル・ソード】展開」

展開を宣言した瞬間、二つの盾がガシュッと変形し、三角柱のような形の剣になる。そしてその剣が両腕のところまで來ると、義手と剣が接続され、剣の刃の部分が緑のブレードに変化する。

【世界樹ユグドラシル】兵裝の一つ、近接外部兵裝【世界樹の剣ユグドラシル・ソード】は盾と剣が一化した武裝。あらゆる攻撃を防ぎ、あらゆる防を斬り裂く、攻防一の兵裝だ。

「【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】一番機から三番機、『ソードモード』」

【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】の葉の部分が鋭く変化し、短剣のようになる。

準備が完了したエルは、周囲で警戒する魔を見據えて、構える。

「これより殲滅を開始します!」

スラスターを點火し、魔の集団に一直線に突っ込む。

「ふっ!」

の橫を通り過ぎる際に、両腕を振るえば魔の首が二つ飛ぶ。

両腕を魔に向ければ、ドパン!という音と共に魔の頭がぜる。

『キシャアアアアアア!!』

蜘蛛の魔が鋭い足を振り上げエルを突き刺そうとする。

しかしその時には、足を振り下ろす先に『ソードモード』の【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】が現われ、足をけ止める。

爪と【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】が拮抗するがその時、別の【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】が蜘蛛の魔に突き刺さり、そのままを引き裂く。

「はっ!」

倒れた蜘蛛の方を見ることなく、別の魔に斬りかかる。固有魔法による攻撃を、腕を掲げ【世界樹の剣ユグドラシル・ソード】で防ぎ、【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】がレーザーを放つ。

「その程度では、止まりませんよ!」

エルが【世界樹の剣ユグドラシル・ソード】でXに斬り裂き、『ソードモード』の【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】が離れた魔を斬り裂き、『ソードモード』の【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】がレーザーで魔をまとめて貫く。

たった一人の相手に150の魔が、もなくやられて行く。その時間、僅か三分。

「ふぅ、終わりましたか」

最後の魔を倒し息を吐くと、辺りは靜寂に包まれていた。

あれ程の數の魔が、今では全ての海に沈み、くことはない。

「三分ですか。意外と掛かってしまいましたね。久し振りに使ったので、こんなものでしょうか」

と、エルが【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】を解除しようとした瞬間、エルの背後から何かが襲い掛かる。

エルはスラスターで橫に避けると、そこには塗れのグリフォンが、走った目でこちらを見ていた。

『ギュァアアアアアアア!!』

「まさかまだ生きていたとは。流石幻獣種なだけはありますね」

心しているエルに対して、跳ぶことの出來ないグリフォンは、刺し違えてでもという勢いで突撃してくる。

振り下ろされる爪の舞を、スラスターでホバリングのようにらかに危なげなく回避する。右へ左へとを半に捻り、回避出來ない攻撃は、【世界樹の剣ユグドラシル・ソード】でけ止める。

『グルゥアアアアアア!!』

攻撃が當たらない事に業を煮やしたグリフォンは、最後の大技を放つ。

打ち出された風の刃の嵐は、地面を抉りながらエルに向かい、エルを呑み込む。

強力な幻獣種であるグリフォンの風のまは、さながら臺風の如き威力。加え風の部では、鋭い風の刃がエルを襲う。これだけの大威力。死は明確だ。しかしーーー

嵐の風が徐々におさまる。巻き上げられた土やほこりが晴れると、そこにはグリフォンにとって信じられない事が起きていた。

「【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】『シールドモード』」

エルの周囲に【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】が浮遊し、緑に輝くシールドがエルを守るように円形狀に広がっている。

【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】の機能の一つである、『シールドモード』は【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】同士で結界を作り出す機能だ。

シールドが解除されると、限界稼働時間を迎えた【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】がバックパックに収まった。

「【世界樹の剣ユグドラシル・ソード】解除」

義手と【世界樹の剣ユグドラシル・ソード】の接続が解除され、剣が盾の形に変形し、元に戻る。

兵裝を解除したエルは、腰からブレードを引き抜くと、既に立つことも出來ないグリフォンの眉間に切っ先を向け、再び最後の言葉を突き付ける。

「チェックメイト」

取っ手の引き金を引く。すると、ブレードの先から電磁加速した弾丸が発され、グリフォンの眉間を撃ち抜いた。

グリフォンを倒し、【世界樹ユグドラシル】を使って【気配探知】を行うと、遠くの方にユノの反応はあるが、魔の反応はない。

「終わりましたね。すぐにユノ様と合流して、セナ様の所に行くとしましょう。と言っても、セナ様なら問題ないと思いますが」

そんな事を言いながら、【世界樹ユグドラシル】を解除すると、エルの周囲を銀と翠の線が包み、眩くると、元のメイド服のエルがいる。

ドックタグに戻った【世界樹ユグドラシル】を仕舞い、ヴァイツァーを呼び出すと、サドルにまたがりエンジンを蒸し、ユノの元へ向かう。

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