《魔がない世界で魔を使って世界最強》対するは星の生命

「さぁ、俺とお前のゴーレム、どちらが強いか勝負といこう」

畫面に映し出された銀の巨人を見ながら、彌一は手元の左右のレバーを握る。

至るところに配線が巡り、椅子の左右にはレバーとキーボードが配置されている。その景は誰もが一度は憧れるガ◯ダムのコックピットのよう、いやコックピットそのものである!

そんな夢溢れるコックピットで彌一が縦しているのは、フェルセン大迷宮の最下層に存在した、あのプラズマの魔導人形である。

元々これは自く魔導人形で、人が中にって作する様にはなっていないのだが、彌一はこれを人が中にって縦できる様にしたのだ。

なぜかって?

それはロボットは男のロマンだからさ!!

「セルフチェック開始。魔力変換爐、正常値を確認。メインカメラ、異常なし。報伝達回路、異常なし。殘量魔力、97パーセント」

モニターに表示される報を確認しながら、順々に魔導人形の作を確かめていく。

「システムオールグリーン。さぁ行くぞ、【インドラ】!!」

【インドラ】。自然現象である雷を擬人化し、アーリア人戦士の理想的武勇神とされるインドのベータ神話の最高神の事で、この機名である。

「ーーッ!やってしまえ!ミスリルゴーレム!!」

ゴーレムが冗談のようには吹き飛ばされたことに暫し沈黙していたコルトアだが、【インドラ】がき出すのを見て慌ててミスリルゴーレムをかす。

ゴーレムは拳を握り【インドラ】に毆りかかる。

【インドラ】は迫り來る拳を逃げようとしない。迫り來る拳は先ほどの雄也たちのときの攻撃とは比較にならない威力をめている、が

「遅い!!」

ブースターで加速しゴーレムの懐に潛り込んだ【インドラ】は、加速の勢いを殺さず拳に乗せて放つ。

「なにっ!?」

ゴーレムは腹部が大きくへこみ吹き飛ばされる。ズガガガガガガガガ!!と地面に巨大な二本線を引きながら數メートル吹き飛ばされると、ゴーレムのにヒビがる。

「そんな馬鹿な!?ミスリルをに使ったゴーレムだぞ!?一あれはなんなんだ!?」

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「すごい・・・」

誰もが目の前の非常識な景に息を呑む。最初は怒り心頭だったコルトアも、今では信じられないとばかりの表で、飛ばされたゴーレムをみる。

それとは対照的に彌一は【インドラ】

かして呟く。

し伝達のタイムラグがあるな。ここはもう一度プログラムを修正だな」

元々自立稼働だった魔導人形を、手作するように改造したため、伝達系の部分でどうしてもまだタイムラグが存在する。それでもそのタイムラグはごく僅かなだ。

「まぁ、さっさと片付けるとするか」

手をくいっと曲げて挑発する。それを見たコルトアはガッ!と地面を蹴る。

「調子にのるなよ人間が!!ミスリルゴーレム!あの巨人を切り飛ばせ!!」

するとゴーレムの腕がうねっと変化し、腕が巨大な剣となる。

「へぇ、ならこちらも剣をだそうか」

を出したゴーレムに対抗するべく、彌一も武を取り出す。

腰に裝備した剣の柄のようなデバイスを抜くとデバイスからコードがび、腕を接続。そしてコックピットのキーボードを作して、力爐からエネルギーを供給する。

供給されたエネルギーはプラズマのを散らし、デバイスからプラズマでできた刃が現れる。

「なっ!?」とコルトアは何度目になるか驚愕を示し、逆に健たちは「ビー◯サーベル!?もう完全にガ◯ダムじゃねぇか!!すげぇ!!」「彌一くんいつからガ◯ダムマイスターになったのよ・・・」と別の意味で驚愕だ。

デバイスから現れたブレードを二度振るうと、切っ先をゴーレムに向ける。

「かかってきな」

【インドラ】から外に聞こえたその言葉は開戦の合図となり、ゴーレムが地面に跡を殘しながら突っ込んでくる。

二本の剣は闇夜でも銀のを反し、虛空に銀の線を引く。しかし、銀線が【インドラ】にれることはない。

左右から迫る銀線、【インドラ】はまず左から迫る銀線を屈んで回避、そして続けて右から襲い來る銀線目掛けて、プラズマのサーベルで斬りかかる。

バヂィイイ!!とミスリルの剣とプラズマの剣が火花を散らし、拮抗する両者を照らす。

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異世界の金屬と男のロマン、果たしてどちらが勝つのか。その結果はあっけなく表れた。

ミスリルの刀が赤く発すると、ジュゥッ!という音と共に融解し、次の瞬間、ミスリルの剣がプラズマのブレードによって斬られた。

さらに返す刃でもう一本の剣も斬り飛ばす。二本の剣を失い、ゴーレムは完全に攻撃手段を失った。

「終わりだ」

一線。戦うを失ったゴーレムの巨をサーベルが橫一文字に切斷し、ゴーレムを沈黙させた。

「核の位置は把握済みだ。このゴーレムはもうかねぇよ」

「馬鹿なっ、馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!この俺のゴーレムがこうも容易くやられるなど!!」

ガッ!ガッ!と地団駄を踏むコルトア。いくらゴーレムに命令しようとも反応がない。ゴーレムの核は完全に融解させられたのだ。

【インドラ】の部のハッチが開き彌一が姿を現わす。

「確かにこの世界の水準でそのミスリルゴーレムは破格の脅威だろう。だけどあいにく、俺たちの世界じゃあ通用しない。魔法のゴーレムと魔のゴーレムじゃあ本的に違うんだよ。さて、」

ハッチから飛び降りて著地すると、パチンッと指を鳴らし【インドラ】をフェルセン大迷宮の地下格納庫に転送する。

そしてもう一度指を鳴らすと、地面から無の魔陣が通り過ぎ、腰に刀【蒼羽】が転送された。

シャンッ!と抜刀すると、【蒼羽】の刀が月明かりに反し輝く。そして魔力を流すと、刀に刻み込まれた刻印が薄く蒼く発し、擬似空間切斷の魔が起する。

そして【蒼羽】の切っ先をコルトアに向ける。

「そろそろ決著といこうか」

「おのれぇえええええええーー!!!」

怒り心頭のコルトアは、地面を放線狀に砕き蹴り、目で追うのがやっとのスピードで飛び出す。しかし怒り心頭でもは冷靜なようで、上段から斬りかかる。

だが銃弾すら視認する魔師の目は、突撃してくるコルトアを正確に捉えていた。

上段からの剣にタイミングを合わせ、下から切り上げる。

ガキィイン!!と激しい金屬音と火花が散り、両者が拮抗する。初めのは拮抗していた剣同士だったが、次の瞬間、ミスリルの剣がズパンッ!と切斷される。

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そのまま彌一は制が崩れたコルトア目掛け鋭い回し蹴りを放つ。

化けじみた鋭く重い蹴りは、コルトアの左側に直撃。ベキバギッ!と骨が砕ける音が聞こえ、その狀態で冗談のように吹き飛ばされる。

地面を幾度もバウンドし、百メートル飛ばされると、やがてそこで巨大な巖にぶつかり、そのまま半分近くまでめり込む。

「ーーーーガッ!!ば、馬鹿な、なんだその力はっ!」

「おっ、意外としぶといな。この前の『闇』使いとは違うな」

「『闇』使い・・・まさか、『闇』のアルマダか!?數ヶ月前から連絡が無いと思えば、貴様がやったのかっ!!」

「ああ。なかなか面倒な事をしてくれたクソ野郎なら俺が倒したが?」

そう言って飄々と彌一は答える。その態度を見てコルトアは目を見開く。

「奴は魔法研究が専門で魔王軍六屬の中では最弱ではあったが、それでもたった一人の人間ごときが敵う相手ではない!貴様、一何者だ!!」

ぶコルトアに魔師はその名を名乗る。

「魔師日伊月彌一。いずれ最高父さんを越える魔師になる男だ」

風に煽られコートの裾が翻る。月を背に立つ魔師は不敵に笑う。

「魔師だと、一それはなんだ・・・!?」

「答える義務はないな」

トンッと踵で地面を蹴る。それと同時に彌一の背後に輝く大量の魔陣が生まれ、それぞれがコルトアを狙う。

「行け」

合図と共に魔陣が煌めき、幾つものレーザーがコルトア目掛け、一直線に闇夜を切り裂く。

「ーーーッ!!??」

迫る無數のに驚きつつも、即座に橫に跳ぶ。だがのレーザーは途中で、まるで反するように曲がると、コルトアの後を狙う。

「《大いなる大地の力・我が敵を防ぐ壁となれ》!!」

コルトアの前で大地が大きくせり上がり、レーザーと衝突する。激しい音と共に発と土煙が上がり、コルトアの姿を見失う。

やがてレーザーが止み土煙が晴れると、ボロボロにが開いた土壁と、その奧に

右腕がないコルトアが立っている。

「がはっ!なんだ、今の魔法・・・!詠唱も無しにあれだけの數の魔法を同時発だと・・・!?」

「無詠唱ってそんなに凄いもんかね?まぁ、確かにこっちの世界には魔回路がないから仕方ないんだけども。あとこれは魔法じゃねぇ、魔だ」

「魔、だと・・・?」

「ああ。さて、そろそろチェックメイトといこうか」

「くっ、!」

背後に魔陣を展開させ、【蒼羽】の切っ先をコルトアに向ける。

突き出される切っ先を前に、コルトアは敗北を味わう。

自分は右腕を失い、満創痍の狀態。それに比べ相手は、消耗一つなく無詠唱で凄まじい威力の魔法を複數発してくる。さらに能力もあちらが圧倒的に高い。

「ぐっ、ぐぐぐっ!!おのれ、おのれ・・・ッ!!!」

その絶的なまでの敗北に、コルトアは歯を噛み締めて唸る。

魔王軍最強の一人として周りから恐れられ、圧倒的強者として君臨していた自分が、格下の人間に圧倒的な大差を見せつけられて敗北する。その事実に怒りの炎を燃やす。

そしてその強者としてのプライドがこのまま終わらせるわけにはいかないとぶ。

「粋がるなよたかが人間如きの劣等生が!!このまま、このまま終わらせるものかぁああああああ!!!」

燃えるプライドをび、コルトアは地面を毆る。すると手のひらの中から激しい紫のれ、そのが地中に流れる。

そしてが地面に染み渡ると、巨大な魔法陣が生まれた。

「フハハハハ!!このままで終わると思うなよ人間!!人間に殺されるくらいなら、自らを糧とし、貴様らも道連れにしてくれる!!」

そう最後にんだ瞬間、コルトアの足元の地面がゴバッ!と盛り上がり、コルトアを呑み込んだ。

「なに!?しまった!」

慌てて彌一がぶが、もう遅い。

地面はコルトアを呑み込むと、急速に膨れ上がり、巨大な人間を形作っていく。その大きさはみるみる膨れ上がり、最終的には五十メートル近くまで大きくなった。

巨大な土塊の巨人。ゴーレムだ。

『オオオオオオオオオオオオーーーー!!!!』

「ちっ!あの野郎、自を核として取り込みやがった!」

ゴーレムのびが風に乗って戦場を舞う。彌一は毒付き、すぐさま指を鳴らして魔を放つ。

のレーザーは、ゴーレムとの距離を瞬時に消し飛ばし著弾する。ゴーレムのを貫き、を開ける。だが、次の瞬間にはが塞がっている。

「驚異的なスピードだな。おそらく々に消しとばしてもあっという間に再生するだろうな」

うへぇー、と彌一は嫌そうな表を浮かべる。

どうしたもんかと悩んでいると、満創痍と言っても大袈裟ではなさそうな雄也たちがやってきた。

「彌一!お前無事だったのか!?」

「おお、健!數ヶ月ぶりだな。だけど悪い、その話は後にしてくれ。今はあのゴーレムをなんとかしなきゃならない。・・・くるぞ!」

そう言って顔を上げ天を仰ぐ。すると五十メートルのゴーレムが、巨大過ぎる拳を振り下ろしてきた。

五十メートルという巨に見合わぬ速度で繰り出された拳は、ゴウッッ!!!と空気の唸りと共に、彌一たちの頭上に落ちてくる。

全員一斉にその場から飛び去る。それによってゴーレムの拳は何も無い大地を打ち、ゴバァアアン!!とクレーターを作る。

「あぶねぇえ!!どうする彌一!あんなの喰らったらひとたまりもねぇ!さっきのロボでどうにかなんねぇのか!?」

「【インドラ】はまだ試作段階だから、これ以上の稼働は出來ないんだよ!」

「ならこれなら!!」

聖剣ルナ・エルームに炎を纏わせ雄也はゴーレムの足を狙う。聖剣の重く鋭い一撃はゴーレムの足に衝撃と炎を與え、大木ほどの足の一部を吹き飛ばす。

しかし次の瞬間には、大地から地面が盛り上がり足を完全に修復する。

「そんな!?早過ぎる!!」」

「離れろ相川!!」

驚異の再生スピードに驚く雄也目掛け、ゴーレムが作り出した巨大な棒が振り下ろされる。

「《縛れ》!!」

一節の権言と共に黃金の魔陣がゴーレムの足元に浮かび上がる。発生した黃金の鎖が幾重にも絡まり、ゴーレムを拘束する。ゴーレムのきが止まった隙に雄也がその場から離れる。

「《練り上がれ怨嗟の赤・その赤は怨嗟に燃える呪いの炎・なれば我が前に赤き運命を》!」

周囲に赤の魔力が走り、魔陣が描かれ彌一の足元に魔陣が展開する。魔陣の二重の外周円がそれぞれが反対方向に高速回転すると、地面をどこまでも赤い炎が包む。

炎は地を這い発するように駆けると、黃金に縛られたゴーレムに纏わりつく。激しい炎がゴーレムの全を薙ぎ、その巨を瞬時に呑み込む。

『ゴオオオオオオオオオオオオーーーー!!』

「凄い・・・!何あの魔法」

「魔法の炎じゃねぇよ、魔の炎だ。それも『死』の運命を持った呪いのな」

魔法の威力に驚く彩に彌一は答える。

彌一が放った炎はただの炎ではない。生けるものに『死』の運命を突きつける呪いの炎だ。これを喰らったが最後、死ぬまで炎が消えることはない。

ゴーレムに這う炎はゴーレムの隅から燃やしていく。ゴーレムは必死に再生しようとするが炎が燃やす方が早い。やがて目に見えてゴーレムが苦しみだす。

「よし、これならーーーっ!?」

留めとばかりに魔力を滾らせようとしたその瞬間、赤い炎の中でゴーレムのが薄く発する。

剎那、ゴーレムから莫大な魔力が吹き荒れ、赤き魔の炎が吹き飛んだ。

「んだと!?バカな、呪いの炎だぞ!?それになんだこの魔力はっ!」

溢れ出す上質な魔力の奔流が吹き荒れ、発の後に起こるような強烈な衝撃波によって、あらゆるものが吹き飛んだ。

「なんだこの上質な魔力、しかも量が半端ない。こいつはいったい・・・」

「ねぇ彌一君!あれ!」

彩が何かを見つけたのかゴーレムの足元を指さす。そこには先ほどまで普通の大地だった部分が、砂になっている。

まるで大地が枯れたように。

「大地が、死んでる・・・まさか、あいつ『星の生命』に繋がってるのか!?」

「やいくん、『星の生命』って?」

「『星の生命』文字道理、星がもつ命のことだ」

、植、それぞれには必ず命という壽命がある。それはもちろん星にもだ。

様々な命の中でも星の命は無限にも等しく莫大であり、星にずく命に恵みとして命を與えるほどだ。

つまり、そんな莫大な命と繋がっているということは、

「あのゴーレムは『星の生命』と繋がり、星から命を吸い上げてそれを再生に使っているんだ。そして呪の炎が効かなかったのは、『死の運命』を『星の生命』で打ち消したから。それくらい『星の生命』は莫大なんだ。くそっ!」

吹き荒れる莫大な魔力と驚異的なゴーレムの再生スピードの正に、彌一は地面を蹴って毒づく。『星の命』と繋がるということは、その星そのものになるということ。地球では創造人間ホムンクルスと同じで、星に関與する魔は最大の忌とされている。

「それじゃあ、まさか・・・!」

「ああ、このまま奴を放置しておけば奴は完全に星と同化しちまう。そうなったらもうどうしようもない。奴を倒しきることは不可能になる」

「そんなっ!!」

彌一の説明に凜緒は息を呑む。それは凜緒だけでなく、他の人間も同じ。

的な狀況に重い空気が流れる。

そんな中ふと、傍で魔力の流れる。魔力の源を見るとそこには不敵に口元をゆがめる彌一の姿。その魔力は小さいながらも高濃度に濃されており、それはまるで、抑えきれない水が勢いよくれ出すように。

「星と繋がったゴーレム、流石は魔王軍最強なだけはあるな。バケモノだ、でも、」

そう區切って彌一が八重歯を向いた途端、周囲が不自然に揺れ始める。

彌一の周囲にバチバチと迷走電流のように深い蒼の魔力の稲妻が明滅。すると地面が揺れだし、稲妻の明滅と共に周囲の塵や土が浮き上がる。

凜緒たちが揺れで地面に手を付き、突如発生した不思議な現象に目を見開く。そしてその現象を生み出した原因は、靜かに口を開く。

「だからこそ、倒しがいがある・・・!」

直後、彌一から発的な魔力の奔流が溢れ出す。生み出した衝撃波がすべてを薙ぎ倒し、彌一は瞬間的に空へと舞う。

ゴーレムはその彌一から溢れ出す膨大な魔力に気づき、脅威と認識すると両手から石の槍を無數に放つ。

迫る數の暴力に対し、彌一は金剛障壁を展開して防ぐ。

「半端な攻撃じゃあ俺は倒せねぇよ!!」

障壁の裏側から幾多の魔弾を放ち、魔弾に紛れてレルバーホークをフルブレット。

と金屬の弾丸は迫る石の槍を破壊しながら闇夜を切り裂き、ゴーレムは咄嗟に腕を掲げる。

弾丸はゴーレムの腕に著弾し、腕を吹き飛ばす。しかし、次に瞬間には切斷部から土が盛り上がり腕が再生している。

「半端な攻撃じゃあ倒せないのはそっちも同じか」

ゴーレムは腕を再生させると、腕を彌一目掛けて薙ぎ払う。その速度は以前の攻撃より速く、重い。

ゴーレムの腕を彌一は【蒼羽】でける。伝わる重い衝撃を後ろに飛ぶ事でけ流し、地面に著地すると【蒼羽】を地面に突き立てる。

そしてそのまま彌一は駆け出す。地面に一本の線を引きながらゴーレムの周囲を疾風のごとく駆け抜ける。

『オォオオオオオオオオーーーー!!!』

ゴーレムが吼える。すると砂漠の大地が広がり、ゴーレムから莫大な魔力が吹き荒れる。

「あのやろう何する気だ」

駆けながらゴーレムを観察すると、次の瞬間、ゴーレムのに木のが生えて纏わり付く。

そして木のと一化したゴーレムは、彌一を一睨みする。

直後、地面が大きく揺らぎ、地面を破って木のが彌一に殺到する。

「思ったより同一化が早いな!」

【蒼羽】を地面に突き立てたまま振り返り、火の魔で焼き払う。

炎は木のを炭一つ殘さず燃やし盡くす。だが、燃やした端から次々と木のが生えてきて彌一を強襲する。

「厄介だなっ!」

いちいち火の魔で焼き払っていては、時間が足りない。こうしている今もゴーレムは『星の生命』と同一化しようとしている。急いで手を打たなければ取り返しがつかなくなる。

とその時、上空から炎の矢と風の魔法が木の目掛けて飛んでくる。

木のに著弾した炎の矢は、木のを伝い炎が広がる。そして風の魔法が広がった炎をさらに拡散させ、木のを燃やして行く。

そしてそこに二つの影が落ちてくる。健と雄也だ。

「彌一!こいつは俺たちが引きける。そのうちにあいつを止めてくれ!」

「日伊月!ここま任せてくれ!【霊付與】!!」

炎を纏った聖剣ルナ・エルームを握る雄也と、雄也の【霊付與】によって炎を纏った籠手を掲げる健。二人は炎の海の中、うねる木のを見據え、それぞれが構える。

「・・・わかった。二人とも、頼む!!」

二人の覚悟に、彌一は安心して背を預け、再び【蒼羽】で地面に線を引きながら駆け出す。

遠くでは彩と凜緒も、矢や魔法を放って健と雄也のサポートをしている。たかがならあの四人にかかれば大丈夫と、考えた結果だ。

走る、ひたすらに彌一は地面に傷をつけながら走る。ガガガッと地面を削り、線を引いて行く。その形はまるで巨大な魔陣。

「これで、どうだっ!!」

キンッという音と共に【蒼羽】を引き抜き、地面に手を付く。そしてバチバチと蒼い魔力を迸らせ、描き上げた図形、魔陣に魔力を流し込む。

蒼い魔力が線を伝わり、巨大な魔陣の魔が発する。

「【斷絶結界】これでもうお前は終わりだ」

直後、ゴーレムから溢れていた潤沢な魔力が消える。更にはゴーレムを覆っていた木のがボロボロと枯れていきなくなる。そう、『星の生命』との接続が切れ

たのだ。

大規模儀式魔【斷絶結界】。対象を理的、魔的など、対象にあらゆる干渉を強制的に斷絶する儀式魔

完全に『星の生命』と繋がっていなければ切斷できる。彌一はこれを直接大地に魔陣を刻む事で、ゴーレムと『星の生命』との接続を斷ち切ったのだ。

「正直、キツかった。あとし遅かったら【斷絶結界】でも斷ち切れなかったからな。さて、」

【蒼羽】を滯納し、ゴーレムを見上げる。

ゴーレムは、今完全に『星の生命』との接続を絶たれ再生ができない狀態。しかし、再生が無くともゴーレム自も十分脅威。

『ゴォオオオオオオオオオオオ!!!!!』

憤慨するようにゴーレムが雄びをあげる。空気をビリビリと揺らし、その手に持った棒を振り上げる。それは「まだ終わらない」と言っているようで。

「いいや、もうお前は終わりだよ!!」

振り上げるゴーレムを前に、彌一は詠う詠唱をする。

「《空に流れる數多の煌めき。かつてその輝きは天に昇り、天に落とされ巡り巡った。靜かにそよぐ夜の帳を飾る幾千幾多の輝きに呑まれ、輝きの礎となれ》」

白い魔力のの柱が天に昇り、天空を埋め盡くす巨大な白の魔陣が形される。大小様々な魔陣が集まり作り出した巨大魔陣はまるで、夜の星々を表すよう。

詠う黒年は、最後に靜かに呟いた。

「《輝き、大地の盤上に還れ》」

告げられた詠唱に、空の魔陣は答え、闇を猛烈に照らす。の柱は逆さまに魔陣からゴーレム目掛けて落ちてくる。次々と絶え間無くは落ち、辺りを雷のような轟音とで塗りつぶす。

その景はまるで流星が落ちるように。

落ちる流星の名は大魔【落ちる輝き】。彌一の持つ大魔の一つである。

やがて流星が止む。後に殘されたのは半徑五十メートル近くが大きく陥沒した大地。至る所が大きく陥沒していて、無事なところは彌一が立っているところと、健たちがいるところだ。健たちの所には集中強化した金剛障壁を展開したうえで、【落ちる輝き】が落ちないように調節していた。

世紀末のような慘狀のなか、最も陥沒が激しいところがある。そこには々に消し飛んだゴーレムの殘骸が殘っていた。

「あんたのゴーレム、ひとりの魔師として尊敬するよ。だけど、相手が悪かったな」

消えた敵に対して魔師として賞賛を述べる。

史上類を見ない戦いはこうして終結を迎えた。

闇夜の戦場にが差す。東を見れば真っ赤な朝日が昇っている。

戦爭は新しい日の始まりと共に終わりを迎えたのだった。

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