《魔がない世界で魔を使って世界最強》【ハロウィン特別ストーリー】トリックオアトリート

夢のマイホームから二週間経過した頃の王宮でのある日。

「パパ〜」

「やいち〜」

「ん〜?二人ともどうした?」

「いらっしゃい二人とも」

健の部屋で健と二人で寛いでいた彌一のところへユノとメイが訪ねてきた。その後ろにはサニアもいる。

ユノとメイは歳が同じくらいとあって、出會ってすぐに仲良くなり、王宮に來るたびに二人でよく遊んだりする。今日も二人で遊んでいた。

二人は部屋にると、彌一の膝の上に用に座る。そしてユノがこんなことを訪ねてきた。

「パパ、ハロウィンってなに?」

「え?ハロウィンか?」

地球では十月三十一日に行われる仮裝なんかをしてみんなで盛り上がるイベント。

なぜこの世界でハロウィンが?と思っていると、健が「あぁ、」と事を察したような聲をらす。

「健、何か知ってるのか?」

「隨分前になるんだけどな、この世界とあっちの世界の文化流って事で、いろんなイベントとかを紹介してたんだけどな。そんときハロウィンのことを言うと、意外とけが良くてな。仮裝して練り歩くだけだから簡単だろうって事で、異文化流の一環で、ハロウィンを王都全でやろうっていう話になってたんだ」

「へぇ〜」

勇者達の世界の文化と聞けば、人々はどんなものかと興味を持つ、しかもつい二ヶ月程前に魔王軍六屬による大規模進行があった為、暗い雰囲気を吹き飛ばすという事で、ハロウィンを試験的に王都全でやることが決まっているのだ。

「確か來週だっけな。みんな楽しみにしてるぞ」

「なるほどな。確かにそれは楽しみだ」

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「ねーパパ、ハロウィンは?」

「あーすまんすまん。そうだな、簡単に説明すれば、人々がいろんな怪とかなんかに仮裝して、お菓子をもらって回るイベントだな」

「おかしもらえるの!?」

「やいち!ほんとに!?」

お菓子を貰えるというところに目をキラッキラッさせるユノとメイ。そんな二人の頭をでつつ、説明を続ける。

「仮裝して『トリック・オア・トリート』って言うんだ。『お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ』って言う意味でな」

「「とりっく・おあ・とりーと?」」

「そうそう」

らしく首をかしげながら二人は言う。サニアも『わっふ?わふ?』とふたりに合わせて首をかしげる。健と彌一はそんな二人を見て微笑ましい気持ちになる。

「もっとも、最近じゃあ本來の目的が薄れて、ただの仮裝イベントと化してるけどな」

「え?あの仮裝に意味なんかあったのか?」

「お前はハロウィンをなんだと思ってたんだ?」

「仮裝してふざけまくるイベント」

「ちげぇーよ!」

今度は健が可らしくもなく首をかしげながら彌一に質問する。

彌一はため息をつきつつも、改めてハロウィンを説明する。

「ハロウィンってのはアングロ・サクソン系民族の祭日で収穫祭のことだ。10月31日のこの日は、死の世界と現世が繋がって、死者や悪霊があちらの世界から溢れ出してくるんだ。そして死者は現世の人々を攫っていく。その為人々は、死者や悪霊の仮裝をする事によって、仲間のふりをして、攫われないようにしていたんだ。それが時代が経つにつれ、本來の意味が薄れ、今では仮裝を楽しむ行事になってるってことだ」

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「へぇ〜、ハロウィンの仮裝にそんな意味があったんだな」

ハロウィン、古くはケルト人の祝日で、ケルト暦の大みそかにあたり、この夜悪霊や魔師達が戸外を駆け巡って次の年の予報を聲高にび歩いたという。

ちなみにハロウィンで使われるカボチャのランタン、あれは生と死の境界に君臨せし大悪魔ジャックオーランタンの事だ。

「大変なんだぞ、魔師にとってハロウィンは。死の世界との門が一気に開いて死の世界がこちらの世界に干渉してくるから、一晩中駆り出されるし、大魔で一気に仏させようにも、一般人に気づかれないようにしなきゃいけないから使えない。はぁ〜、大変だったな・・・」

彌一が疲れた顔で何処か遠い目で明後日の方向を向く。魔師達にとってハロウィンは年間を通して一位二位を爭うほどの忙しさなのだ。

「それで毎年ハロウィンパーティーにお前だけ來れなかったんだな」

「あぁ、・・・。でも!それならせっかくの人生初の楽しいだけのハロウィンだ、存分に楽しんでやる!!」

「「おー!」」

「・・・苦労してたんだなお前」

彌一の聲にユノとメイが腕を振り上げて聲を上げる。その際、健の眼差しが妙に生暖かったのが印象に殘っていた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

そんな訳で一週間後。王都全が待ちに待ったイベントに活気付く。王都の住人がハロウィンという新しいものに興味津々だったらしく、街の至る所では皆思い思いの仮裝をして楽しんでいた。

彌一そのうちの一人で、このイベントを楽しみにしていた。

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「すごい盛り上がりだな」

「そうだな」

彌一と健は王都の中心街にいた。彌一はバンパイアの仮裝で、健は狼男の仮裝だ。二人とも完度は高い。

そしてその二人の他にもう一人。

「これだけの人が僕たちの世界のイベントで盛り上がってくれるのは嬉しいね」

そう言ったのはクラスのイケメン、雄也だ。雄也も楽しんでいるらしく、その格好は意外にもゾンビの仮裝だった。

三人は今、待ち合わせをしている。しばらく待っていると、遠くから約束の相手がやってくる。

「パパ〜!!」

「やいち〜!!」

「おっと、おお!二人ともよく似合ってるぞ」

に飛び込んできた二人をけ止め、それぞれ片腕で抱っこする。

メイはウサギの仮裝なのか、頭にウサギの耳を付けている。活発な格と似合っている。そしてユノだが、これまたリアルな狼の耳と尾だ。というか、

「ユノ、これ本じゃないか?もしかしてサニアを降霊させてるのか?」

「うん!でもサニアもいるよ!」

これは仮裝なのか?と思うが、耳をピコピコかし、尾をぱたぱたと揺らす姿はとても可らしいので、まぁいいかと思う。そして彌一の足元にはサニアが。サニアは頭に小さな魔の帽子を乗っけている。

「サニアも似合ってるぞ」

『わっふ!』

彌一に褒められて嬉しそうに尾を振るサニア。するとメイとユノが彌一から降りて、彌一と健と雄也の三人に向けて「せーの」と息を合わせていう。

「「とりっく・おあ・とりーと!!」」

らしい満面の笑みで、両手を差し出してくるウサギと狼。そんならしい二人に勝てるはずも無く、彌一は寫真を激寫しながら、二人にお菓子を渡す。

「二人とも可いぞ!!」

「・・・彌一がただの親バカな父親にしかみえねぇ」

「ハハ、気持ちはわからなくもないけど」

寫真を撮りまくる彌一に、健と雄也は呆れ混れの苦笑いをして、ユノとメイにお菓子を渡す。

ユノとメイはけ取ったお菓子を嬉しそうに袋にしまう。するとようやく約束の人達が集まってきた。

やってきたのは、エル、彩、ヘンリの三人。それぞれ、貓、フランケンシュタイン、ウサギの仮裝だ。

「エル、セナと凜緒は?」

「えっと、お二人でしたら・・・」

と気まずそうな顔をして、言葉を濁した次の瞬間、ズドォオオオーーーンッ!!という発音と共に巨大な土煙が舞う。

「な、なんだ!?」

咄嗟に構え、発の方向を見ると、土煙の中から二つの影が。

「いやぁあああああああーーーっ!!」

「てぇああああああああーーーっ!!」

聲を出してびながら現れたのは、セナと凜緒だった。

セナが凜緒に向けて無數の火球を放つ。全面を覆い盡くす火球を、凜緒は氷の槍と化した杖を握り、自分に當たるだけを切り払っていく。

「くっ!しつこい・・・っ!!」

「そっちこそ・・・っ!!」

凜緒が一気にセナに詰め寄り、迅速の三段突きを放つ。セナは凜緒との間に風の発を起こし、間一髪で槍を回避すると、そのまま【疾風加速ゲイル・アクセラレイション】を発して、一気に距離を取って、お返しとばかりに魔法を放つ。

両者、共に攻め切れない激しい攻防が繰り広げられる。しばらくフリーズする彌一たち。

「・・・何やってんだ・・・?」

「実はですね・・・」

エルが経緯を説明し始める。なんでも、セナが彌一をしようと派手な貓又の裝で仮裝しようとしていた所で、凜緒が止めにり、そのまま言い爭いになった結果、今に至るという。

「取り敢えず止めないとまずくないか!?」

健がんだと同じ時にして、凜緒とセナが構える。まるで騎士と騎士の決闘のように。

「「ハァアアアアアアアアアーーーっ!!」」

お互いの魔力を全力解放し、一気に駆け出す。そしてお互いの魔力が大気をうねり、激突しーーーー

「やめろ、って」

彌一が足を踏み鳴らすと、激突寸前の二人の間に黃金の魔陣が現れ、そこから黃金の鎖が飛び出し、二人を捕縛する。

「わっ!」

「きゃっ!」

手足やに黃金の鎖が絡み付き、完全にきが出來なくなった二人は、大人しくなる。彌一はそれを確認すると、鎖を解く。

「まったく、なに考えてんだ二人とも」

「だ、だって凜緒が・・・」

「だ、だってセナが・・・」

「だってじゃない」

「「はい・・・」」

彌一に一喝されると、二人は借りてきた貓のように靜かになる。 彌一はため息をらすと、二人に手を貸して立ち上がらせる。

「ほら、早く著替えてこい。みんな待ってるぞ」

「うん!」

「わかった!」

許されたことに表を輝かせ、二人はすぐさま近くの服屋に駆け込む。彌一はその間に、「すみませんねぇ〜」と周りに謝りながら、ちちゃっと錬で地面や建を修復していく。

「彌一さんも大変ですね」

「まったくだ。セナはわからんでもないが、なんで凜緒もあんなになるのやら・・・」

するとヘンリが言う。

「本當は気付いていらしてるのでは?」

かされてそうなヘンリの聲音に、彌一は手を止める。

「・・・さぁ、どうだろうな・・・」

ヘンリに言われ一瞬彌一は手を止めるが、とぼけたように答えるとすぐに手をかし始める。ヘンリはその様子を黙って見ていた。

それから程なくして二人が戻って來た。凜緒は犬耳と犬尾で犬の仮裝、セナは

の仮裝だ。

「どうやいくん?」

「似合ってるぞ。犬耳が何処となく凜緒にピッタリだ、忠犬っぽくて」

「どういう意味!?」

ぐるるる!と今にも噛み付いてきそうな勢いの凜緒に、彌一は笑って「冗談だ冗談」と言って宥めると、橫から裾を引っ張られた。

「私はどう?」

セナは魔の帽子に、黒いローブとミニスカという格好だ。魔というより何処か魔法っぽさがあるが、意外にもマッチしている。

「可いいな、綺麗な蒼髪が映えてとても似合ってる」

そう言って褒めると、人目もはばからず、キスをする。その景を見て彩たちは、顔を赤らめ気まづそうに視線を逸らす。エルとユノはいつもの景なので特に恥ずかしがることもなく、ユノは逆に「パパ〜!ユノも〜!」と両手を広げておねだりしてくる。

セナは仮裝を似合ってると言われキスをされて、頬を染めてイヤンイヤンする。彌一は可らしくおねだりしてくるユノを抱き上げて、らかい頬にキスをする。ユノは尾をぱたぱた振りながら、彌一に抱きつく。

突如として発生した甘い砂糖の空間に、どうしていいのかわからないといった表のメンバー。その中でも凜緒はわなわなと震えている。

「わ、私と反応が違う・・・!」

「そりゃぁ、・・・夫婦だからな」

彌一はなんともないように答え、凜緒はプルプルと涙目で震える。

そんな凜緒を見たセナは、得意げに言う。

「これが格の差」

「ーーーーーー。」

凜緒が俯く。その表は暗くてよくわからないが、凜緒の周囲に魔力が漂い、剣吞な空気が流れる。そして凜緒の手にはいつの間にか杖が。

「やっぱり、今日ここで、決著をつける・・・」

「・・・けて立つ」

向き合う二人。その瞬間二人から莫大な魔力の奔流が吹き出し、中間で嵐を創り出す。

セナが腕を振るうと背後に様々な魔法が生まれる。數々の魔法を背に悠々と佇むセナは、まるで何処かの英雄王。

凜緒が杖を構えれば、先端に氷気が集まり、氷の刃を創り出す。たった一本の槍で數々の魔法に立ち向かう凜緒は、まるで何処かの正義の味方。

向かう正義の味方は、槍を構え靜かに言う。

「行くよセナ、魔法の貯蔵は十分か!」

「・・・ふんっ、思い上がったな泥棒貓」

激突する両者。撃ち出される魔法を凜緒が斬り払い、突き出される槍を魔法で防ぐ。

攻守攻防がれ替わり、お互いに一歩も譲らない戦いに発展する。

「てっ、やめんかぁ!!ここはフェ◯トじゃないんだぞ!!てかなんでセナまでそのネタ知ってんだ!?」

周りへ被害が及ばぬよう、即座に結界を展開し、彌一が慌てて止めにった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

なんやかんや有りつつ、ようやく全員集合したので、改めて全員で街を見て回る。(ちなみに全員には認識を誤魔化す魔を掛けてあるため、人がわかることはない)

「健、いっぱい店があるのね」

「ほんとだな、日本とは違うが、やっぱりハロウィンだ」

「懐かしいな・・・」

「やっぱりそう思うよな」

「うん。まだ半年くらいしか経ってないけど、大分昔のことのようにじるよ。やっぱりこっちでも出來事が濃すぎたからかな」

その言葉で三人はこれまであったことを振り返る。勇者召喚、襲撃事件、訓練、こっちの世界の文化、人々、最近では魔王軍最強戦力との衝突と、々なことがあった。

それと同時に、地球での生活や家族のことが頭を掠める。

雲行きが怪しくなってきた空気を健は、吹き飛ばす。

「・・・來年のハロウィンは、あっちで楽しもうぜ!」

「ええ、必ず」

「そうだね」

立ち並ぶ店の數と、すれ違う人々の仮裝に健と彩、雄也は懐かしく思う。懐かしく思うとは反対に、隣ではこんな會話も。

「パパ!パパ!あれおもしろそう!」

「彌一!メイもやりたい!」

「的當てか。賞品はかぼちゃのケーキ、うまそうだな。よし!やるか!」

ユノとメイに左右の袖を引っ張られ、店に連れてかれる。その店は、10個あるボールを的に何個當てられるかというゲームをしている店だ。見事パーフェクト達ならかぼちゃのケーキが貰えるらしい。

「すみません、うちの妹が」

「全然構わないさ。ユノにも同世代のの子友達がしかっただろうし、メイがユノの友達になってくれて良かったよ」

「本當にありがとう、ヘンリ」

「それを言えばこちらもですよ。王族の第三皇という立場上、私以外メイと遊べる人はいませんから、メイが毎晩ユノちゃんの話を楽しそうに話すので、家族皆喜んでました。・・・でもちょっと寂しい気もしますけどね」

「「それはわかる」」

ヘンリの言葉にうんうんと頷く彌一とセナの二人。同世代の友達が出來るのは嬉しいが、一緒に遊ぶ時間がなくなるのはし寂しくもじる。親心はそういうものなのだろう。

今度、五人で何処かピクニックにでも行こうかと話を弾ませる保護者たちと、仲良く遊ぶ子供達。

そんな隣では、凜緒とエルが二人でいた。

「・・・あの空気にり込めない」

「・・・私もいつもそう思います」

「・・・苦労してますね、エルさん」

「・・・凜緒様も」

何故か不思議なところで意気投合する二人。しばらく、二人でブツブツと愚癡を言い合った後、凜緒は我慢の限界を迎え、彌一とセナの間に突撃する。

彌一とのラブラブ空間を邪魔されたセナは、邪険な雰囲気をに纏い、魔法の嵐を無差別にぶつけ、凜緒も魔法と槍の嵐をぶつけ、第3ラウンドが始まってしまった。

それからは、それぞれが思い思いのハロウィンを過ごしていった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ん、ぱぱぁ・・・スースー・・・」

「よっぽど疲れたみたいだな」

「そうだね」

夕食を食べ終わり、リビングのソファで今日撮った寫真を全員で鑑賞していると、彌一の膝の上に座っていたユノが、コクコクと船を漕いで寢てしまった。

元の服を小さな手でギュッと握り眠る娘の頭を優しくでながら、三人で微笑ましく笑う。

「もう十時ですからね。今日はメイ様と沢山遊んでいらしたようですから」

し早いがもう寢るとするか」

「そうだね」

そうして三人はリビングを出て二階に上がる。

「では、お二人ともお休みなさいませ」

「え?エルも一緒に寢ないの?」

廊下で別れようとするエルを、セナが引き止める。エルも「え?」というような表だったが、すぐに首を振る。

晝のハロウィンの時、エルと凜緒の話を聞いて、偶には四人で寢てみようと思ったのだ。

「いえ、お三人の時間を邪魔するわけにはいきませんので」

「別に気にしないよ、今日はせっかくのハロウィンだったんだから。彌一もいいよね?」

「ああ、たまには家族四人でどうだ?」

「ですが・・・」

従者としての立場からか、頑なに斷ろうとするエルに、セナは「こうなれば力盡くにでも」と捕まえようとしたその時、

「まま・・・えるおねぇちゃん・・・」

い寢言で、ユノがセナとエルの名前を呼ぶ。それを見て彌一が笑い、「な?」とエルに言う。エルは困ったようにでも何処か嬉しそうにはにかむ。

「・・・そうですね、ユノ様にまで言われては斷れません」

「エルもユノに甘いな」

「ええ、こんなにも可い私たちのお姫様ですからね」

流石のエルも日伊月家のお姫様には勝てないようだ。

それで改めて四人でベットにる。金を消費するために高級なベットを買った為、四人で寢ることができる。

左から彌一、セナ、ユノ、エルで寢っ転がる。四人で寢ると心地よい狹さをじる。それは人としての溫もりが集まるからだろうか。

「おやすみ二人とも」

「おやすみ」

「おやすみなさいませ」

瞳を閉じれば、ベットの中の人の溫もりを鋭敏にじる。今日一日楽しんだせいか、その溫もりと共に微睡みが支配する。

しばらくすると、二人の規則正しい呼吸が聞こえ、彌一も意識を微睡みに手放す。

普段は二人で使う広いベットは、この時ばかり心地よい狹さだった。

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