《魔がない世界で魔を使って世界最強》【クリスマス特別ストーリー】王様だーれだ!!

冬のある夜。外ではシンシンと雪が降る中、彌一宅のリビングでは活気のある笑い聲や掛け聲が響き渡る。

『メリークリスマース!!』

そんな掛け聲と共に、リビングで一斉にポンポン!と小さな破裂音が響く。それと同時に取り取りの紙テープが舞う。

音の正はエル手作りの小さなクラッカー。それをその場の全員が一斉に発したのだ。

この場にいるのは彌一・セナ・ユノ・エルの彌一一家と、凜緒・彩・健・のいつもの三人に加え、クラスメイトの山崎大地・江藤智花・木村奈、そしてメイとヘンリだ。

さて、なぜこれだけのメンバーが揃っているかというと、先程の掛け聲の通りクリスマスパーティーだからだ。

季節はすでに冬。外はシンシンと雪が降り積もり、地球の流れではクリスマスの時期だ。

この世界にもクリスマスのような"冬夜の祈り"という行事があるらしく、その年で初めて雪が降り積もり日は、ろくに獲も捕れないので、狩りには行かず、今年の恵みへの謝と來年への謝を込めた會を開くというものらしい。

今年はそこにハロウィンの時と同様で地球の文化であるクリスマスを取りれたのだ。

今回はクラスの中でも特に仲の良いメンバーを集めた。王宮の方でも同様に貴族などを集めたパーティーなどがあるらしく、他のクラスメイトはそちらへ參加だ。雄也も呼ぼうとしたのだが、貴族との顔合わせに"英雄"である雄也がいないと々と問題があるらしい。

そんなわけで彌一宅のリビングには十二人のメンバーが集まっている。十二人でも充分な広さがあり、楽しそうに談笑する者や、ちょっとしたゲームで盛り上がる者もいる。

彌一と健はソファに座ってその景を眺めている。

「まさか今年のクリスマスは異世界で過ごすことになるとは思わなかったぜ」

「確かにそうだな。でもまぁ今年のクリスマスは楽しいな。去年は々と寂しいクリスマスだったし.......」

「何かあったの?」

健と彌一の會話にセナがってくる。寄り添うようにピタリと彌一の橫に座る。そんなセナに彌一は何処か遠い眼差しで答える。

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「去年のクリスマスはクラス全員でやるはずが、ほとんどがインフルエンザで來れなくなって、男だけの虛しいクリスマスになったし。途中で結社から北海道に行ってカルト教団との闘いに參加するよう言われるし...........クリスマスって一なんだよ........」

「ほんとな.........ていうかお前あの後北海道まで行ってたのか。ハロウィンの時と同じで大変だな」

「......ああ、鹿がカッコよかったのは覚えてる」

ズゥウウーーンと彌一の表が沈む。ハロウィンやクリスマスといい、こういった行事には必ず何か起こると決まっているのが魔の世界なのである。

そんな沈む彌一の背に手が添えられた。包み込むような優しい微笑みでセナが彌一の顔を覗き込む。

「じゃあ今年のクリスマスは一杯楽しも?私、彌一と一緒にクリスマスパーティーできて嬉しい」

「セナ.......!!」

優しく包み込む妻の微笑みに、彌一は涙の涙を流しセナを抱き寄せる。そう、今年は去年とは違う。今年のクリスマスは最人、いや妻と過ごせるのだから!

お互いに周りのことなど知ったことか!と熱く見つめ合い、辺りの空気を片っ端から砂糖にしていく。とんだイチャイチャテロだ。

「俺も嬉しいよ。こんな可いくて人な妻と過ごせるんだからな。俺は幸せ者だ」

「もう、恥ずかしい......」

「そうやって恥ずかしがる表も魅力的だ。大好きだセナ」

「うん......私も」

セナのほんのりと染まった頬に手を當てた後、おとがいをクイッと上げ、ゆっくりと顔を近づける。セナもその意味を理解して目を瞑る。そのまま二人のが重なる、といったところで鋭い一喝がる。

「こら!二人とも何してるの!!」

「...........邪魔者め」

「何か言ったセナ!!」

「別に何も言ってない」

二人の激甘空間をブレイクしたのは凜緒だった。キスをしようとする二人を見て止めにる。

セナはせっかくのいいところで邪魔がったことに、不満げに頬を膨らませ彌一の腕にぎゅっと抱きつく。

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「て、何してるの!!二人とも近い!!」

「凜緒には関係ない。夫婦の営みを邪魔しないで」

「い、営み.........!!」

その言葉に凜緒がたじろぐ。それをチャンスと見たセナが素早く彌一に口づけをする。

「〜〜〜っ!!」

顔をリンゴのように赤く染めて凜緒が震える。しばらくそのままだったセナは、を離すと、余裕の笑みで凜緒を見る。"これが妻の力だ!"とでも言うべきドヤ顔で、それはもうドヤ顔で。

「セナのスケベ!」

「ふっ、何とでも言うがいい」

「このエロキス魔!」

「え、エロくない!!」

まるで小學生の喧嘩のように言い爭う二人。そのまま言い爭いはデットヒートしていき、二人のから魔力がれ出す。そして二人が向き合い、魔法が発するといったところで。

「やめんかっ」

「ひゃう!」

「あうっ!」

本気で魔法を発させようとした瞬間、彌一が渾のチョップで二人の脳天を打つ。

涙目で揃って頭を押さえる二人を一瞥し、彌一はため息をつく。

「まったく子供か。魔法を発させようとするなんて何考えてるんだ。しは反省しろ」

「「はい.......」」

「.......この狀況だと俺はどういった行をすれば正解だったんだ?」

隣で夫婦のイチャイチャを直で見せつけられた健が気まずそうにぼやく。一番の被害者は健かもしれない。

「何をしているんですか?」

「目下絶賛反省中だ」

「........なるほど」

騒ぎを聞きつけてきたエルと奈がやってきて、うずくまる二人を見て狀況を理解した。

エルと奈はお揃いのカメラを使って寫真を撮っている最中だったらしい。二人は魔襲撃以降、意気投合し、最近は二人で出かけることもあるほど仲がいい。

するとそんな奈が「じゃあ」と話を切り出してくる。

「皆さんゲームなんてどうです?」

「おっ!いいな、何するんだ?」

「ふっふっふー、そうですね〜これだけの人數がいますから、『王様ゲーム』なんてどうです?」

「「おうさまげぇーむ?」」

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『王様ゲーム』を知らないセナとエルが聞いてくる。それを見て奈は意気揚々と王様ゲームの説明を始める。

「ルールは簡単です。まず參加人數分の棒か紙を用意して番號を振り分けます、このとき一つに目印をつけるんです。そしてそれを全員が一斉に一つ手に取り、目印が付いているを引き當てた人が王様になれます。その王様は番號で人を指名して命令をすることが出來ます!そして王様の命令は絶対なのです!!」

「面白そう!彌一やろ!」

奈の説明を聞いてセナが興したように彌一の顔を見る。そんな子供っぽい笑顔に彌一はそうだな、と答える。

「じゃあいっちょやるか!」

「マスター準備は出來ております」

「早っ!?」

こうして王様ゲームが始まった。

「さてそれじゃあ全員準備はいいな?」

コクリと全員が頷き、それぞれテーブルの箱にある棒を摑む。全員が持ったのを確認すると彌一が聲を上げる。

「せーの!」

『王様だーれだ!!』

バッ!と一斉に棒を抜き取る。各自自分の棒とにらめっこし、

「あ、私だ」

そう言って手を挙げたのは彩だった。王様が分かった途端、「ああ〜」と悔しそうな聲が上がり笑い出す。彩は「そうね.....」とし考え、

「..........じゃあ、二番が最近あった恥ずかしい事を話す」

「げっ!」

命令が出された途端、そんな聲が上がる。その聲を辿ると、テーブルに突っ伏した大地の姿が。

「くそっ....!しょっぱなじゃねぇかよ〜〜」

「ハハハ!殘念だったな大地大人しく諦めて言えって、なにせ王様の命令はーーー」

『絶対!』

「くっ....!」

全員で合唱すれば、大地は観念し話し出す。

「...........この前晝寢のときに智花に膝枕してもらったことだ」

言い終わると顔を赤くして再び機に突っ伏す大地。同じように顔を赤くした智花も、「いやぁあ〜〜!!」と手を顔で覆う。それを見て全員が『おおーー』と心したような聲をかける。

「ひゅーひゅー熱いなお二人さん」

「その時の狀況詳しく教えてもらっても?」

「〜〜〜〜っ!!い、言わないからね!!」

「智花素敵ですよ?」

「ヘンリまで言わないでぇえええーー!!」

全員にはやし立てられカップル二人は撃沈する。初手で2名の負傷兵が出てしまった。

「よし、次行くか」

「こ、今度こそは俺が王に...!」

「私も......!」

負傷兵2名が、負けるものかっ!!と凄まじい気配で箱に手をばす。殘りも棒を摑み、今度は大地が音頭をとる。

「行くぞ!!せぇええのっ!!」

『王様だーれだ!!』

..............................。

「しゃああああ!!俺だ!」

王の栄を勝ち取ったのは、大地でも智花でもなく、健だった。

「それじゃぁ、命令だ。そうだな......」

ニヤリと悪い笑みを浮かべて健が大地と彌一を見る。何か良からぬことを考えているのは明白だが、王様ゲームは番號で指名しなければ意味がない。そう思ってハハハッ!とわらーーー

「五番と」

「なにっ!?」

「九番が」

「バカなっ!?」

「西原先生に『今まで好きでした。俺と本気で付き合ってください』とラインを送れ」

「「貴様ぁああああアアアアアアアアアアアア!!!」」

あまりにも殘酷すぎる命令に大地と彌一は悲鳴を上げる。しかも片方は彼、片方は嫁と娘がいるのである。

「セナはそれでいいのか!?」

「そうだぞ智花!」

「.........確かにそうだね」

「その通り」

彌一と大地がセナと智花の方を向くと

「うんうん」と頷く二人。

「セナ.....!」

「智花.....!」

助かった!と涙の聲でそれぞれの最の人の名を呼ぶ二人。セナと智花はそんな二人に「でもね....」と優しく微笑み、

「「王様の命令は絶対だから」」

「「いやだぁああああああああーーー!!!」」

===========================

大地:先生、前から好きでした。俺と本気で付き合ってください

西原:からかっているのなら覚悟を決めておけ。

===========================

彌一:先生、前から好きでした。俺と本気で付き合ってください

西原:明日、山崎と一緒に俺の部屋まで出頭するように

===========================

「「..........................................」」

返信を見て無言で黙り込む二人。その景はさながら護送される囚人のようだ。

「くくくくっ、ハハハ!!!」

「だ、大丈夫?.......ぷっ、、、!!」

「私は信じてるよ彌一.......くす、、、!!」

腹を抱えて豪快に笑う健と、笑いを堪えきれない智花とセナが囚人二人をめる。他の全員も必死に笑いを堪えようとしているが堪えきれていない。

「で、では次に行きましょう.......ふふっ、、、!」

「えええい!!こうなれば意地でも王になってやる!」

「そうだ!行くぞ!せぇええのっ!!」

『王様だーれだ!!』

嫌なものを振り切るように、強引に次へ進める彌一と大地、そして次の王を選ぶべく全員が一斉に棒を抜く。

果たして結果はーーーー

「ユノなの!」

元気よく満面の笑みでユノが手を挙げる。その場でぴょんぴょん跳ねるユノは見ていてほっこりする。

「ユノちゃんいいな〜」

「メイも次當てれるよう頑張りましょう」

「うん!」

「さ、王様ご命令を」

「えっと........」

何を命令しようか考えるユノを、全員が微笑みながら待つ。そして思いついたのか「はい!」と手を挙げる。

さてどんな可らしい命令が來るのか、と全員が聞き耳を立て、

「パパ!おくちにちゅーしてほしいの!」

「ぐほっ!!!」

「うわーお、とんでもないのが來たな.........」

「マスター、ご愁傷様です」

花咲くような満面の笑みでとんでもないことを要求してくるユノ。「ユノ何て恐ろしい子!!」と娘に戦慄する夫婦は、じゅうから嫌な汗を流す。

「で、でもなユノ、番號で指名しなきゃ命令は無効なんだぞ?」

「じゃあ二ばん!」

「.........................」

手元の棒を見てもう何も言えなくなった。

「(どうする!?このままじゃ流石にやばい!)」

「(ユノちゃんの為にも初めてはまずいよ!...........それにいくらユノちゃんでも彌一は渡さない)」

「(どっちがセナの本心かよくわかったよ)」

完全に八方塞がりの彌一。ユノを見ればキラキラした目でこちらを見つめてくる。

この笑顔を前に斷れない。ならば説得しかない。果たしてどうなる。

「ユノ、聞いてくれ。ちゅーは本當に好きな人としかやっちゃいけないんだ。それこそ結婚するくらいに、な?」

「ユノはパパのことだいすきだよ?それにしょうらいはパパとけっこんするもん!」

「どうしようセナ!ウチの娘が可すぎる!」

クリティカルノックアウトであった。

天使な娘の笑顔に彌一は完全に撃沈。だがこのまま引き下がるわけにも行かない。「ごほん」と気をとり直しつつ言う。

「それでもダメなんだ。これはユノのためでもあるんだ」

「でも.......」

諭すように彌一が言うとユノが泣きそうな顔をする。泣きそうなユノの表に流石の彌一も慌てる。せっかくの楽しいクリスマスにユノに泣いてしくない。

「........じゃあ、ユノが大きくなって、その時もパパの事が好きだったらしてあげるよ」

「!!ほんとパパ!?」

の策としてため息混じりに彌一が言うとユノは泣きそうな顔から一転、上目遣いに期待の眼差しで見つめてくる。

彌一がこう言ったのは大人になればこの事を忘れて、いずれは本當に好きな人を見つけるだろうと考えての判斷だった。彌一もユノくらいの時の記憶などほとんどない。

「ああ、本當だ。大きくなってもパパの事が好きだったらな?」

「うん!!だいじょうぶ!ユノ、ずーっとパパのことだいすきだもん!!」

「ありがとうなユノ」

ギュッと抱きついてくるユノの頭をでてやるとユノは嬉しそうに目を細めて板に頬をすりすりしてくる。

そうして安心する彌一。しかしこれが後、彌一のに降りかかってこようとは、今は誰も知らない...........

「さて気をとり直してやるか。せーのっ!」

『王様だーれだ!』

.................................。

「あ、私」

そうして手を挙げたのはセナだった。その事に 彌一は安心する。セナが命令する以上最悪悪い事にはならない。

「むっ.....セナ」

「おめでとうママ!」

「ささ、王様命令を」

凜緒は若干警戒したような目でセナを見る。未だ彌一に抱き付いているユノは祝福するように手を叩く。

セナは若干照れくさそうに頬を染め、その後なぜか彌一を見る。

「............」

「ん?どうした?」

「.........ううん、なんでもないよ」

「??」

當てる気だったのだろうか?と思いつつ手元の棒を見る。そこには三番の番號。先程から當たってばかりだが、流石に連続ではこないーーーー

「じゃあ命令。三番が私を抱き締めて」

「なに!?」

予想とは裏腹にセナは彌一を當ててきた。手元の棒を見て彌一は目を見張る。

「どうしたの彌一?」

「い、いや、なんでもない。まさか連続で當たるとは思わなくてな」

「そういう時もある。さ、彌一、王様の命令だよ?」

「はいはい、わかりましたよ王様」

諦めたように手を振ると立ち上がり、反対側のセナの背後に立つと、しゃがんで後ろからそっと抱き締める。

「むーっ........」

「はわ〜〜っ........!!」

「........っ!」

ごく自然に抱き締めた彌一を見て、凜緒は頬を膨らませ、智花と彩は顔を赤くする。

周りがし気まずそうな空気で全員が注目するが、當の本人たちは二人だけの世界にって一切気にしない。

「........セナはいい匂いがするな。ずーっとこうしていたい」

「彌一もとっても溫かい。包まれてるじですごく安心できる。もっと強く抱き締めて」

「こうか?」

「うん」

腕に込める力を強めより一層著し、肩に顔を乗せて、顔を合わせ微笑む。

と、しばらくそうしているとユノがこちらを羨ましそうに見ているのに気がつく。自分も行きたいが、セナが王様なので我慢しているのだろう。

よくできた娘の様子に彌一とセナは目を合わせて頷くと、セナが手を広げてユノを手招きした。

「ユノちゃんおいで」

「........!いいの!?」

「うん」

「ありがとうママ!」

満面の笑みを浮かべて小走りで近づくと、セナがユノを抱き締める。抱き合う二人を彌一はそっと抱きしめれば、家族三人嬉しそうに笑う。

家族揃って抱き合う景に、全員がほっこりと溫かい気持ちになる。

「おねぇちゃん、メイもギュッてして」

「あらら、ふふ、メイも甘えたくなったの?ほら、おいで」

ユノに発されてか、メイもヘンリにおねだりしている。妹の可らしい甘えにヘンリは顔を綻ばせ、メイを優しく包みこむ。

しばらくそんなほっこりとした空気が流れ、そろそろ戻るか、と彌一が立ち上がる。

「(ん?あれは........)」

そしてその瞬間、奧の壁にあった鏡を見る。

家を購した時からあった大き目の鏡で、エルがピカピカに磨いているため、指紋一つない。しかし、彌一が気になったのはそんなことではない。

気になったのは場所だ。セナの向かい側の壁、そして先程までそこに座っていた人のこと。

「(........まさか!全員、俺の番號が見えてたのか!?)」

そう、彌一は背後にある鏡に気づかず、番號を全員に曬していたのだ。そのため、先程から全て彌一が當たっていたのである。

なんてことだ!、と自分の不注意さに頭を痛める。さっきセナが見ていたのは彌一ではなく、その後ろに映された彌一の番號だったのだ。

「(なるほど、そういうことなら)」

鏡に気付いた事を悟られないよう、表を正しながら席に戻る。

「ゴホゴホッ」

「彌一?」

「なんでもない。しむせただけだ」

「水飲む?」

「ああ、ありがと」

セナからけ取った水をごくっと飲み干し、コップを機に置く。

「さて、時間もそろそろだし、後一回で終わりかな?」

「そうだな」

時間はもうすぐ九時になろうとしている。王宮に変える事を考えたらもう後一回で終わりだろう。「えー」と聲も上がるが、彌一はそれを宥めつつ、箱に棒をれる。

「さ、ラスト行くぞ!せーのっ!!」

『王様だーれだ!!』

..............................。

「おっ!最後は俺だ!」

そうして名乗りを上げたのは大地だった。

「そうだなー、どんな命令にするか...........」

わざとらしくそう呟きながら顎に拳を當てて考える。その時、チラリと彌一の背後の鏡を確認する。

「(よし、彌一の番號は一番か。なら.......)」

の端を吊り上げてニヤリと悪い顔で大地は笑うと、彌一に向かって言い放つ。

「それじゃあ命令だ。.......一番が今までで恥ずかしかった事ベスト10を話す!!」

「なにっ!?」

大地が言い放ったと同時に驚愕の聲が上がる。しかし、その聲は前の彌一から聞こえてきたのではなく、橫から聞こえてきた。

大地が「は?」と言いながら聲の主を見る。そこには、目を見張る健の姿と、握り締められた『1』と書かれた棒が。

「なにっ!?そんなはずは!?」

慌てて彌一を見る大地。

「ん?どうしたんだ大地?」

何事も無いように聞いてくる彌一。しかしその顔には含みのある笑みが張り付いていた。

「(こいつなにかやりやがったな...!!。いったいなにを....)」

悔しそうに歯切りする健と大地。二人とも彌一が何かしたのは分かっているが、それを表立って言ってしまえば自分たちが彌一の棒を見ていたことがばれてしまい、そのため言おうにも言えないのだ。そしてそれを鼻から計算にれている彌一はあざ笑うように鼻で笑う。それはもう悪い顔で。

彌一がやったのはの屈折を魔り、鏡に映る棒の番號を健のとすり替えるというシンプルなものだ。そしてそれが怪しまれないように、咳に紛れて暗示の呪文を掛けたのだ。

「さぁ、健、キリキリと吐いてもらおうか。もちろん逃れることは許さない。なにせーーー」

邪悪な魔王のような雰囲気でニヤリと笑うと健を見る。最初の健の命令をに持っていた彌一にけという言葉ない。

魔王に目を向けられた健は生まれたての小鹿のように震え、魔王は高らかに言い放った。

「--王様の命令は絶対だからな....!!!」

それからしばらく、彌一家から健の悲鳴が響き渡った.....

「終わったな......」

「だね....」

全員が帰宅した後、彌一、セナ、エルは片づけをしている。ユノははしゃぎ疲れてソファでぐっすり眠っている。

「はぁ、なんかどっと疲れた」

「でも楽しかった。こういうのも悪くないねエル」

「はい。私も楽しかったですよ」

「まぁユノも楽しそうだったしいいか」

テーブルの皿なんかを片付け、クリスマツリーの位置を調節する。リビングの中央を飾り付けされたツリーはで暖爐のに反して幻想的だ。

「さて、それじゃあ寢るか」

眠るユノを抱き上げて二階に上がる。二階のユノの部屋のベットに寢かせ、おでこにお休みのキスをすると、くすぐったそうな嬉しそうな表じろぎ、またスースーと規則正しい息遣いが聞こえてくる。

「エリークリスマス、ユノ」

耳元でそう言い殘してそっと扉を閉める。廊下ではセナとエルがニコニコしながらユノを見ていた。

「さ、俺たちも寢よう」

「ええ、それではお二人ともお休みなさいませ」

「「おやすみ」」

そういって二人は得ると別れ寢室にる。部屋は冬の寒さで冷えていたが、人がってくるのを知すると、部屋の壁や床に暖房が回りあっという間に心地よい気溫になる。

「今日は楽しかったね彌一。また別の遊びしてあそぼ?」

「そうだな。他にもいろんなゲームあるし。あ、セナとポッキーゲームしたいな」

「ぽっきぃーげぇーむ?ってなに?」

「俺たちの世界にあるポッキーっていう棒狀のお菓子の両端を二人が咥えて、お互いにどこまで進めるかを競うんだ。もちろん俺は最後まで食うけどな」

「~~っ!!....彌一のエッチ」

どういったゲームなのか理解して、セナは頬を染めてぼそりと呟く。そんなセナを笑いながら彌一が近づき、「でも、」と言いながら壁際までセナを追い込む。顔の橫に手をつき、逃げ道をふさいで顔を近づける。

「直接いただいたほうが早いけどな」

「あ、.....んっ」

赤らめるセナのを奪い、しばしそのままの狀態で口づけをわす。

「......ぷはぁっ、やいちぃ....」

息ができなかったせいかもあってか顔が赤いセナは、熱く甘えた聲で彌一を呼びしなだれかかる。

「.....ねぇ、ベットいこ....」

「ああ、よっと」

セナをお姫様抱っこでベットに運び押し倒す。せっかく著た服をがし、彌一も服をぐとセナのを奪う。

「んんっ....あっ、んん!....んちゅ、あんっ.....んっ!んんっ~....」

熱く熱的に口づけをわし、舌を濃厚に絡め、二人の間で靡な水音が響く。

月明かりが照らす部屋で、そのまま二人の影はそっと重なる。

==========================

「....ん?やべっ、寢ちまった」

深夜。彌一は目を覚まし服を著ると橫で眠るセナの頭をなでて部屋を出る。

そ~っと足音を殺し、彌一たちの寢室から近いエルの部屋の前にたどり著く。そして自に隠形を掛けてドアをそっと開けて中にる。

エルの部屋はとても整っている。というか必要なもの以外ないといったじの部屋で、整っているというよりもないから整える必要がないといったところ。

そんな中で奧のベットではエルが安らいだ寢顔で眠っている。整った顔立ちのエルフである彼の寢顔は妖のような幻想さがある。

彌一はそ~っとそ~っとエルのベットまでやってくる。決して夜這いではない!

「え~っとエルはこれだな」

彌一は手に持った袋から一つの箱を取り出し、エルの枕元に置く。それは赤いリボンで裝飾されている。

そう、クリスマスプレゼントだ。

「よし、撤退」

そくさと部屋から出ていく。エルは探査系の能力に秀でているので、隠形を掛けているといっても安心できない。即退散に限る。

続いてやってきたのはユノの部屋。ベットではいつの間にかサニアもいて、ユノがサニアを抱きかかえて寢ている。一枚の蕓のような景を目に焼き付けつつ、袋からプレゼントを取り出す。

「あとこれはサニアの分だな」

ユノのプレゼンとの橫にサニアの分のプレゼントを置き、明日の朝どんな反応をするか楽しみにしながら彌一は寢室に帰ってくる。

寢室に戻ると、最後の一つであるセナのプレゼントを枕元に置く。

「よし、これでオーケーだな」

明日の朝を楽しみにしつつ、彌一は眠りについた。

「たいへんなの!パパ!!たいへんなの!!」

そんな聲とともにドアがバンッ!と開かれる。それで目を覚ましたセナと彌一は眠たげな眼をこすりながら娘を見る。

ユノは興したような顔で彌一の元まで來ると、手に持ったオオカミの人形を見せつける。

「あさおきたらはこのなかにあったの!パパ!これってまえいってたさんたさん!?」

「そうだぞ。ユノがいい子だからサンタさんがプレゼントをくれたんだ」

「やったー!!」

オオカミの人形を大事そうに抱えてはしゃぐユノ。足元では新しい首環をつけたサニアがブンブンと尾をふって走り回る。

「あの、マスター....」

次に部屋にってきたのはエルだ。その手には緑のネックレスがが。

「おっ。エルのところにもサンタが來たのか?」

「えっ、.....あっ、ふふふ、はい。そのようです」

とぼける彌一に言葉の途中で意味を理解したエルが微笑んで嬉しそうに頷く。

「えるおねぇちゃんにもぷれぜんと!?」

「ええ、ユノ様はなにをもらったんです?」

「これ!」

ユノは自分のプレゼントを見せて、エルも自分のプレゼントを見せる。そんな二人をほほえましく見つめていると、ユノがこちらを向く。

「ねぇパパとママは!」

「えーっと....あっ、あったよ。ママとパパの分」

「え?」

そういって枕元から二つの箱を取り出す。片方は昨夜彌一が用意したものだが、もう片方は見覚えがない。

「(おいおい、本か.....?)」

そんなことを思いつつ、彌一側の方の大き目のプレゼントを開ける。そこには手編みのマフラーがっていた。

「マフラーだ」

「わっ!こっちはペンダントだ。中が開いてるから寫真でもれようかな?」

二人も自分のプレゼントを見て驚く。セナは銀と小さな蒼い寶石が嵌ったペンダントをつけて嬉しそうに顔をほころばせる。しかし彌一のほうはそうではない。なぜ用意していないプレゼントがあるのか、まさか本のサンタ!?馬鹿な!この家の結界が破られた痕跡はないし、ましてやそれを俺が気付かないはずは!!と大変揺していらっしゃる。

と、マフラーを見ていると、マフラーからいい香りがする。心安らぐようなその香りは、彌一が一番よく知る香り。

「(もしかして....)」

「ん?なに彌一?」

「.......いいや、何でもない」

そういって笑う。セナも何となく察したのか、にっこりと微笑む。

クリスマスのサンタからのプレゼントは、心溫まる家族の笑顔だった。

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