《魔がない世界で魔を使って世界最強》戦闘系スキル【料理】

日が昇る王宮前。そこに彌一たちは集まっていた。クラスメイトの他にもヴィディルやアーリア、ヘンリ、メイなども集まっている。

なぜ集まっているかというと、いよいよ彌一たちが旅立つため見送りに來たのだ。

「さて、いよいよ旅立つんだね彌一君」

「はい。といっても大迷宮を攻略したら戻ってくるんですけどね」

「戻るときは知らせてくれ。祝杯の準備をして待っておくよ」

「ありがとうございます」

彌一とヴィディルはそういって握手をわす。最近家族ぐるみで付き合いがあるため、二人の仲はいい。

「あらあら、あなた。本當に彌一さんと仲がいいですね」

そうしてヴィディルの後ろから出てきたのはふんわりとした金髪が特徴的な人だ。聖母を思わせるような微笑みは相手を優しく包み込む。先ほどのセリフから分かる通り、ヴィディルの妻であるフレーネ・バース・アーセラムである。

「彌一、全員荷運び終えたよ」

「それじゃあ、そろそろ行くか」

セナが呼びに來て、それに続いて健たちもやってくる。

「それでは陛下行ってまいります」

「雄也君も気をつけてな。英雄としてのレベルアップを楽しみにしているよ」

「はい。必ず力をつけて戻ってまいります」

ぺこりと挨拶する雄也に続き、健たちも挨拶を済ませると彌一はヘカートを呼び出す。そしてヘカートを呼び出した後、続けてさらにとあるものを呼び出す。

呼び出したのは黒いトラックの荷臺のようなもの。それをヘカートと接続し、トレーラーのような形になった。

「やいくんなにこれ?」

「ヘカートは5人乗りで乗れないから、全員乗れるようにキャンピングカーの荷臺を作たんだ。中は空間魔を使ってスペースを拡張してるから見た目以上の広さがあるんだぞ!」

得意げな顔で自信満々に答える彌一。荷臺を作る際、最初は人が乗るだけの荷臺にするつもりだったのだが、作ってる最中に『これあったら便利だな』と次々と機能を足していき、結果キャンピングカーになってしまったのだ。

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「すげーな、これ作るの大変だったろ?」

「俺は快適を得るために努力を惜しまない人間だ」

「目の下に隈ができた狀態で言われてもしまらねぇな」

々足していった結果、ここ數日彌一は寢不足だ。トレーラーそのものはエルと合同で作ったが、機能は彌一一人で手掛けたからだ。

「さて、そろそろ出発しようぜ」

「そうだな。次の町まではだいぶ距離があるし、早めに向かわないと」

彌一の言葉に全員が乗り込む。健、彩、雄也は後ろのトレーラーのほうに乗り込み、彌一一家と凜緒はヘカートのほうに乗り込む。席でセナと凜緒で一悶著あったがじゃんけんで決めた結果、エルと凜緒は運転席と補助席に、彌一とセナとユノは後部座席に乗り込む。

全員が乗り込むと、人混みから西村が進みでる。

「教師として生徒を危険に曬すことはできないんだが、今の俺にはお前たちを引き留めるほど力がない。だから、こうして快く見送ることしかできないが......全員、気をつけて帰ってこい。そして納得した自分になってこい!」

『はい!』

西村の激勵に彌一たちは覇気のある聲で清々しく答える。セナとエルも流れに乗って元気よく答え、ユノは元気よく手を挙げて答えた。

激勵を終えて戻っていく西村の背を見ながら、彌一が「それじゃあ行くぞ!」と號令を掛けると、エルはアクセルを踏みトレーラーを引きながらヘカートが進みだす。

こうして新たなメンバーを加えて彌一たちは旅立った。

何もない平原を黒い車とトレーラーが土煙をあげながら進む。いつまで代わり映えしない窓からの景を眺めながら、彩はソファで寛ぐ。

「すごい。....というかすごすぎて呆れるほどに、ね」

「ああ。馬車は腰が痛くてしょうがなかったけど、だからって次は車でソファとかびっくりわ」

「すごいよ二人とも、冷蔵庫があった」

「.....なんでもありか」

あまりのトレーナーの快適さに驚きを通り越して呆れる三人。そしてそのトレーラーの前の車では.....

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『セナ!ちょっと近づきすぎない!?』

『そんなことない。後ろは狹いから必然的に近くなるだけ』

『噓つくな!ユノちゃんはやいくんの膝の上に座ってるからスペースあるでしょ!!』

『ちょ....!!凜緒乗り出してこないで!!』

『お二人とも?運転中ですのでお靜かに』

『『ごめんなさい』』

『パ、パパ....!エルおねぇちゃんこわい....!』

『よーしよし』

「.......何やってんのよ凜緒は...」

連結した部分から聞こえてくる騒ぎに彩は頭を押さえため息をつく。王宮ですでに見慣れた騒ぎに慣れつつある自分がいる。

「いいかげん素直になればいいのに」

「確かにな。ただ、そう簡単にはいかないだろ。彌一にはセナさんもいるし」

「そこがね~」

親友のを知っている以上それは葉ってほしいと思う。

地球にいたときは彩は凜緒彌一と彌一連れまわしてそれとなくサポートしていた。しかし結局凜緒の願いは葉うことなく、異世界に來てしまった。それでも異世界で結ばれるような小説はよくあるので、もしかすれば葉うかも、と期待はした。しかしそんなことはなく、彌一は凜緒を庇って行方不明になってしまった。

凜緒が現実をけ止めきれず倒れた時は心配した。親友として親友の落ち込む姿は見ていられなかったのだ。

でも、凜緒は前に進みだした。

誰かのためにける人間は彩はすごく応援したくなる。そして好きな人のために必死に前に進む凜緒は、とても眩しかった。そしてそんな凜緒の努力が実ったのか、再び彌一と出會った。しかしそれは凜緒にとっては最悪の結果でだ。

人ならまだしもと結婚して帰ってきたのだ。「それなんてそれエロゲ!?」とびそうになった。

そしてさらに怒濤の娘と人従者の登場である。

彩は考えることを放棄した。

正直なところ彩はし彌一に怒っていた。凜緒の気持ちを思うと報われないからだ。

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ところが彩が想像とは裏腹に、凜緒は元気になった。それどころか地球にいたころよりも彌一に積極的で生き生きとしている、とじるほどだ。セナという圧倒的存在が表れたからだろう。

毎晩凜緒が彩の部屋でセナとの喧嘩や彌一と嬉しかったことなど生き生きと楽しそうにしゃべっているのを見ると、いつの間にか彌一に対する憤りも消えていた。そして好きな人のために必死にき、好きな人を思い焦がれる凜緒はとても輝かしく、憧れた。自分にはそんな風に思える誰かがいないからだ。

「(誰かを好きになるってどんな気持ちなのかな......)」

ぼんやりと考えてふと顔を上げる。顔を上げた先には健がいて、思わず目が合う。

「うん?どうした?」

「え?....あ、うん、別に何でも」

「??」

なぜか真っ先に健の顔が浮かんだのかわからない。小さいころから一緒にいる男子が健だったので、咄嗟に思ってしまったのだろうと勝手に納得し、言い訳のように誰にというわけでもなく言い聞かせる。

しかし彩の心臓は本人が気づかないがしだけ早くなっていた。

「さて、そろそろ野営の準備するか」

日が沈む前に森のり口で野営の準備を始める。彌一が手元のリモコンに魔力を流すと、トレーラーの橫の屋びで野営用のテントができた。

『何でもありか!?』

一同ツッコミに走る。やるとなったらどこまでも突き進むのが彌一のポリシーだ。

「さて、各自野営の準備をするか」

「パパ!ユノはしょくざいあつめでいい?」

「え?食材集め?」

「うん!」

元気よく答えると、ユノはサニアを戻し青い魔陣を生み出す。青い魔陣かられ、ユノの姿が15歳くらいのへと長する。もちろんその腰と頭には尾と耳付きで。

「じゃあ行ってきます!」

そう言い殘してユノはの筋に魔力を通すと、ググッと踏み込み、走り出す。

ズバンッ!と地面を放線狀に砕き森に突っ込むと、無造作に生えている気を華麗に避け、時には木々の枝を使って跳躍しながらもの凄い勢いで進んでいく。気が付けばあっという間にいなくなった。

「流石ユノだな。野的な覚は群を抜いてるな。じゃあ!俺も行くとするか!エル!後のことは任せた!!」

冷靜沈著に事を対処できるエルにこの場を任せ、彌一も地面を踏み込んで森にっていった。

『えーー......』

無邪気に森に飛び込んでいった似たもの親子に一同呆れるしかない。

しばらくしてこの場を任されたエルがき出した。

「さて、皆さんきますか」

『はーい』

のんきに答えながら各々き出す。そして話し合いの結果、料理や火の番は子が擔當することになった。

「俺たちは何をする?」

「適當に釣りでもする?ちょうどし離れたところに綺麗な川があったのをさっき見たし」

そういってこれまたトレーナーにあった釣竿を取り出し、健と雄也は近くの川に向かう。

二人があるくと歩いてすぐのところにそこそこの深さのある川があった。意外と深さがあるのに川の底が見えるほどき通って綺麗だ。川には魚が流れているのが見える。

「さて、どうせ彌一とユノちゃんはばっかとってくるだろうから、魚をいくから取っておくか!とりすぎても彌一がどうにかするだろ」

健は慣れた手つきで針に餌をつけていく。健は中學時代は釣りに嵌っていた時期があり、高校でも暇を見つけてはよく釣りに行くのだ。

そんな健の橫で雄也が釣竿を珍しそうに見つめている。

「僕、釣りってやったことないんだけど」

「え?そうなのか?」

績優秀・スポーツ萬能と完璧な雄也のイメージからして趣味も多彩なのだろうと勝手に思っていた健は、ニヤリと悪い笑みを浮かべる。釣りでなら雄也に勝てるかもしれない。

「なら勝負しようぜ。俺の釣りスキル見せてやる!!」

ーーー20分後ーーーー

「わっ!.....っと、大きいな。ねぇ健、バケツがもういっぱいなんだけど何かない?」

「............」

ビチビチと生き生きと跳ねる大きな魚を抱えながらが雄也が健に振り向く。そんな足元では大きなバケツから尾やら頭やらが飛び出した狀態で魚がぎっしり。

健は無言で膝をついた!

「くそっ...!これがイケメン特か.....!!」

得意げに勝負を吹っかけておいて大敗をするという何とも間抜けなテンプレ展開。倒れる健は何とも哀れだ。

「なにやってんだ健」

「おっ?彌一か?どこだー」

「ここだ、ここ」

シュタッ!と気の上から忍者のように現れたのは彌一とユノ。その手には巨大な鹿と豬が。

「でかいな!?俺だけ!?食材が取れてないの俺だけか!?」

左を向けばバケツいっぱいの魚と巨大魚をもつ雄也。右向けば巨大な鹿と豬を持つ彌一とユノ。子供のユノにすら勝てない健は何とも哀愁を漂わせる沈みようだ。

すると沈む健にユノが進み出て、その肩にポンポンと手を乗せる。

「けん!げんきだして!」

「うぅ...ユノちゃんはほんと可いな」

天使の笑顔に救済されたような賢人のような顔でユノを見上げる。その瞬間、後頭部にゴリッというと猛烈な鋭い殺気。

「嫁にはやらんぞ」

「わかってる。だから銃を下ろせ」

死神を前にすぐさま手を挙げてフリーズの態勢。首には死神の鎌がかかった狀態だ。パパは娘に近づくものに容赦しない!

後頭部からがなくなりホッとする。どうやら死神の鎌は収まったようだ。

「パパ、けんとゆうやはなにやってるの?」

「釣りだな。この糸の先についた針に餌をつけて魚を釣り上げるんだ。やってみるか?」

「やるー!」

「じゃあ、先に採ってきた食材を渡してくるからちょっと待っていてくれ」

採ってきた鹿と豬とついでに雄也の魚をもって森の中に消える。しすると彌一が帰ってきた。

「さてちゃちゃっと作るか」

手ごろな枝をへし折り糸をつける。そして糸の先に錬で作り上げた針をつければ即席の釣竿の完だ。

健の橫に腰を下ろし、釣竿を持ったユノを膝の上にのせて二人で釣りを始める。健も負けじと再び釣りをはじめ、雄也は飽きたのかサニアの遊び相手になる。

それからしばらくはのどかな時間が過ぎる。夕焼けに染まる空と沈む太しい。

どのくらいたってか、森の向こうからがさがさと音がして、森の中からエルが出てきた。

「マスターそろそろ準備ができますから戻ってきてください」

「へーい。ユノ、そろそろ終わるぞ」

「やー!まだつれてないもん!」

ぷくーっと頬を膨らませて駄々をこねるユノ。あれから初めてみたもののユノは一匹もつれていない。もちろん隣の健もである。健は完全に心が折れたのか無表で川を眺めている。頭には二匹の鳥がチュンチュンと鳴いている。

「ユノ様、帰りましょう?セナ様と凜緒様がご飯を作って待っていますよ」

「そうだぞユノ。ママと凜緒がご飯を.......ん?ちょっと待てエル。今なんて言った?」

「え?ご飯のことですか?」

「ああ、だれが作ってるって?」

「セナ様と凜緒様ですが....」

「なにぃいいいいい!?」

ガッ!と目を見開き中から嫌な汗を流しながら焦るように彌一が立ち上がる。いったい何に焦っているのか、その場の全員が理解不能といった表だ。

「やばい!今すぐ止めないと!!」

「い、いったいどうしたんですか?」

ただならぬ様子の彌一に全員構える。魔王軍六屬を圧倒する力を持つ彌一がこれほど焦るほどの危険が迫っているというのか。

全員の視線をけて彌一が重苦しく口を開く。

「......凜緒は、壊滅的に料理ができないんだ.....」

『.......は?』

重苦しい口から何が言い放たれるかと思いきやまさかのカミングアウトに一同ポカーンとした表で呆れる。こんなじで( ゜д゜)

「いや、もうできないというようなレベルじゃないな。なにせ.....」

その瞬間、ズドォオオオオオオオオンッ!!と森の方から発音が響く。何事!?と全員が振り向く中、彌一はどこか察したように疲れたような表になる。

「キッチンを破するレベルだからな」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

戻ってきてみればそこは大慘事だった。幸い外で調理していたのかトレーラーの方は無事だったが、それ以外は酷い有様だ。心地の部分の土は放線狀に黒焦げになり、その周りの木々は薙ぎ倒されて気がバキバキにへし折れている。

そして心地の橫では中灰だらけの凜緒が涙目で正座している。

「うわぁ....ひでぇ狀況だな.....」

「凜緒が料理が下手とは聞いてたけど.....まさかここまでとはおもわなかったわ.....」

健と凜緒と同じく灰を被った彩は慘狀を見て何とも言えない表で現場を眺めている。友人の知らない一面がまさかボンバーマンだとは思いもよらない二人だった。

「うぅ.....ごめんなさい」

「うん、誰にでも失敗はあると思う、よ......?」

しょんぼりと涙目で申し訳なさそうに謝る凜緒に流石のセナも同しているようだ。いつもの嫌味も言ってこない。

彌一のほうも後頭部に手を當てながら責任をじているように謝る。

「すまなかった。最初にみんなには伝えておくべきだったな。俺もすっかり忘れてた」

「お前地球でも凜緒はこうだったのか?」

「ああ、よくうちのキッチンが発した。父さんもどうしてこうなるのかわからないといってたな」

世界最高峰の魔師である彌一の父、甲明もどうして調理であれほどの発が起きるのかわからないと不思議がっていた。彌一は実際凜緒がどうやって破しているのかを確認すべく調理の様子を確認したことがあったのだが、なぜか気が付けば発していた。神れる魔師でもわからない料理はある種の魔法だろう。

「てゆか凜緒って料理スキル持ってなかった?」

「そういえばそうだな。あのスキルもしかして生産系スキルじゃなくて戦闘系スキルじゃないのか?【料理(破)】っていう広範囲殲滅スキル」

「う、うぇええええええん!!彩ちゃーん!やいくんと健くんがいじめるぅ~!」

彌一と健に責められ號泣する凜緒は彩に抱き著く。

「はいはい。でもね凜緒......」

「ぐすんっ、なに?」

泣きつく凜緒の頭をでつつ、優しい笑みで微笑みかけ彩は言う。

「自業自得って言葉知ってる?」

「うぇええええええええええん!!」

親友からも責められ完全に凜緒の心は折れた。そのままトレーナーの方にこもってしまった。

「さて、とりあえず修復してさっさと飯を作るか」

「彌一君私が言うのもあれだけど、だいぶゲスいよ」

「凜緒は破という名のクッキングした後はいつもああやって籠るから心配するな。じき料理のにおいにわれて出てくるさ」

地球にいたころからのことで慣れた彌一はちゃちゃと錬であたりを修復すると、いつのまにかそっとセナが寄り添い、彌一が修復した端から料理を開始していく。気が付けばエルがすでに鹿と豬を解しており、解した端からセナが料理していく。

その連攜っぷりにしばし固まっていた健たちだが、自分たちにできることを始めていく。こうしてだいぶ遅くなったが何とか料理は完した。

「さて....おーい凜緒ー、ご飯できたぞー」

「..........ごはん」

ギィイイと扉が開くと目じりが赤くなった凜緒が弱々しく出てくる。仕方ないな、という表で彌一が頭をポンポンとすると、不機嫌そうな顔からくすぐったそうな嬉しそうな表でうつむく。

すると彌一の背後に控えていたセナがぼそりと呟く。

「.......クッキングボンバー」

「セナぁあああーー!!」

凜緒が近くにあった木の枝を持って切りかかり、セナの方も不敵にファイティングポーズをとって木の枝で切りかかる。

喧嘩を始めた二人だが、凜緒もいつもの調子に戻った。二人が聞いたら怒るだろうが、凜緒とセナは何だかんだで仲がいい。さっきのセナの発言もわざと凜緒を怒らせての行だ。もっとも、普通にポンポンへの嫉妬もあるとおもうが....

「パパぁ~おなかすいた」

彌一が戻るとおなかペコペコのユノが抱き著いてくる。抱き上げるとクーっと小さく可らしい音が聞こえてくる。お腹がなってし恥ずかしそうに頬を染めるユノの頭をなでなでしながら焚火の周りに座る。

焚き火のの周りにはすべに凜緒とセナ以外の全員が座り、巨大な鍋いっぱいの鹿シチューを取り分けている。

「よしじゃあ食べるか」

「うん!パパ!パパ!ユノがあーんしてあげる!」

「お!ありがとなユノ。はぁ~ユノは可いなぁ~」

「まったくですマスター」

「エルおねぇちゃんもあーんしてあげる!」

「ほんとですか?ありがとうございます」

「あやおねぇちゃんも!」

「え?いいの?ありがとうねユノちゃん。」

ユノの可さの虜になっている彌一とエルに加え、彩もユノの笑みに微笑む。するとそれを見た健が調子に乗り出す。

「ユノちゃーん、俺達には....」

「言い殘すことは?」

「すいません。だからその銃を下ろしてください」

本日二度目の突き刺さる殺気と兇に健は頭を地面につける。土が冷たくて気持ちいい。

健のDOGEZAに彌一はレルバーホークをしまう。その際誰も気づかなかったが、エルの腕がし反応していた。ちなみにその服の袖にはナイフが隠してある。.......エルも彌一に毒されてきたのかもしれない。

ユノが結局全員にあーんをして食べさせたあと、全員黙々と食べ進め、半分程度までになったところで足音がする。

「「た、ただいま......」」

とそんな時喧嘩を終えた二人が焚き火のところに帰ってくる。髪はボサボサになって葉っぱも付いていることから取っ組み合いに発展して行ったのだろうと予想がつく。

二人は空いているところに二人で座ると、何もいうことなく、セナは皿を二つ取りシチューを注ぐ。

「凜緒はどれくらい?」

「ん〜っとね、それくらいでいいよ。セナこっち向いて」

「ん」

セナが凜緒の分のシチューも注ぐ間、凜緒は自分とセナの顔と髪の汚れをタオルで拭いて行く。本人達にその自覚はないがそのやり取りはまるで姉妹である。

とても仲の良い姉妹のようなやり取りに一同顔を綻ばせる。何だかんだ言いつつ意外と仲の良い二人なのだ。

「ママ!はい!あーん!」

「あーん....んんっ〜味しい!ありがとユノちゃん」

「はい!りおおねぇちゃんも!あーん!」

「私もいいの!?あーん........うん!ありがとユノちゃん」

セナと凜緒にもあーんをして回るユノ。そんなユノの姿に、いつしか二人の間で笑顔が溢れる。

こうして心もも溫まるシチューを食べ終わると、寢床の確保だ。話し合いの結果、男子がローテで一人見張りをすることにして、男子は焚き火の近くで寢袋を使って寢て、子はトレーラーの中で寢ることとなった。

「それじゃあおやすみ」

「おやすみ」

人払いと認識阻害の結界を張った後、索敵用の魔陣を敷いて防犯を完璧にすると、子はトレーラーの中へって行った。男どもは寢袋を焚き火のところに持っていく。

外は寒いが森の為風が吹いて來ないことと、焚き火のおかげあって十分暖かい。さらにこの寢袋、彌一の手作りで、薄く見えるが裏地はとてもモコモコでらかく、さらには溫度調節機能と地面に寢ても腰なんかが痛くならないように、地面に接する部分の布を厚くする魔を付與している。その為、実際寢袋さえあればどこでも快適に寢ることができるのだ。

「さて、彌一。まだ特に眠くもないからなんか話しをしろ」

「はぁ?なんで急に」

々とあるだろ?お前が帰ってくるまでにどんなことしてたのかとか、セナさんやエルさん、ユノちゃんなんかに付いても」

「あ、それは僕も知りたいかも」

「たく、あんま面白い話なんてないぞ」

「いいからいいから。それにあっちの方でもおんなじような話になってるかもな」

はぁ、とため息を吐きつつ、彌一は行方不明になってからの経緯を話し始める。健と雄也はそれを興味深そうに頷きながら、彌一の話を聞いていった。

そして先ほどの健の言葉通り、子の方でも同じようなことが始まっていた。

「ねぇセナ。セナはどうして彌一と知り合ったの?王都にいた時には聞くの忘れてたけど」

ベットに転がりながら彩が聞く。機や椅子を畳むとトレーラー半分くらいの大きさのベットも作ることができ、今はその大きいベットに全員が寢ている狀態だ。5人が寢ても寢返りがうてるくらいに広いのは驚きだ。

「え?えーっと、話すとだいぶ長いよ?」

「大丈夫。時間はたっぷりあるから。ユノちゃんもママとパパのこと聞きたいよね?」

「ききたい!ママおはなしして!」

「えーっと、最初に彌一に出會ったのは迷宮の部屋で......」

しょうがないなというような表で話し始めたセナだが、話していくうちには嬉しそうに笑いがなら彌一との旅について話し出す。その顔は完全にする乙の顔で、聞いている彩たちも思わず頬を赤らめるほどだ。

「それで、なんで私を守ってくれるの?って聞いたら『大切』を失うのが怖いからだから守るんだって言った後、好きだって言ってくれたの。ふふふっ、それでそのあと彌一が私を押し倒してキスをして....きゃー!」

「~~~っ!!う、ぅうううう~~~~っ!!」

里での出來事を赤々に語りイヤンイヤンするセナ、それを凜緒は顔を真っ赤にしながら頬を膨らませ妬いている。彩とエルは途中から耳まで真っ赤にしてうつむいている。ユノは途中で舟をこぎ始め、セナの膝枕でスヤスヤと眠っている。

「....それで朝起きたら恥ずかしがって出てこない私にキスをしてきて....はぁ~彌一...」

「うがぁああああああああーー!!やいくんのあほぉおおおーーーーーー!!」

熱にうなされたようにうっとりとした表で頬に手を當てるセナに、恥ずかしさと嫉妬が限界突破した凜緒が枕をブンブン振り回す。彩とエルは真っ赤にした顔を枕に突っ伏してぐりぐり。ユノはスヤスヤ。

その夜、トレーラーの中では赤々に語るセナに、暴れる凜緒、枕にぐりぐりし続ける彩とエル、そしてそんな空間でもスヤスヤと眠るユノというカオスが繰り広げられていた。

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