《魔がない世界で魔を使って世界最強》奴隷の親子

20メートル先の視界の確保すら困難な猛吹雪が吹いている。その吹雪の中をヘカートが進んでいく。

「すごい吹雪だな。この吹雪でこれ以上進むのは危険か......よし、今日はここで止まって吹雪が止んだら進もう」

「うん、それがいいと思う。なにかあったら大変だから」

吹雪のの中でも難なく進んでいくヘカートだが、このあたりの地形は崖などが多いため、視界が確保できないのに進むのは危険を伴う。

後部座席に座ったシートをたたんでトレーラーの扉を開けてトレーラーにっていく。シートをたためば車からトレーラーの方に移できるようになっているのだ。

暖房のきいたトレーラーの方ではすでに夕食の準備が始まっている。エルが食材を切って彩が鍋に野菜とをぶち込んでいく。どうやら今日は鍋のようだ。

「あ、おかえりーやいくん」

二人がってきてのんびりとした聲で聲を掛けたのは凜緒だ。炬燵の魔にやられており、ぐでぇ~と沈んでいる。セナも炬燵にって凜緒と同じようにぐでぇ~としてしまった。

奧の方では健と雄也がチェスをしている。健の顔がしかめっ面なあたり優勢なのは雄也なのだろう。

彌一も混ざろうとしたが集中しているようなので炬燵の方に行く。空いたスペースに座ろうとすると、炬燵の布がもぞもぞとき、

「ばあ!!」

『オン!!』

「うおっ!?」

「きゃ!!」

掛け聲とともに飛び出してきたのはユノとサニアだった。突然の出現に彌一とセナは驚きの聲を上げる。ユノは彌一とセナの驚き様に満足げな笑みをつくる。

「おどろいた!?」

「ああ、びっくりした。まったくユノとサニアは悪い子だな」

「えへへ、ごめんなさ~い」

『わふ!わっふ!!』

彌一は笑って叱りつつユノを膝に乗っけて炬燵にる。セナもサニアを抱きかかえて彌一の隣にる。った瞬間に広がる炬燵の心地よさに三人と一匹もぐでぇ~となった。

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「セナ~やいくんと近いよ~」

「いいでしょ~別に~」

「まぁ~いいか~」

凜緒とセナはいつものごとく小競り合いを始めるが、二人とも炬燵の魔力に呑まれて喧嘩に勢いがない。ましてや凜緒はまぁいいかと許してしまうほど。しばらく炬燵の周りではぐでぇ~とした雰囲気が流れる。

「はい、鍋できましたよー」

「だぁあああああ!!!負けたぁああああ!!」

「健、あそこでキングをかすのは取ってくれと言ってるようなもんだよ」

「二人ともー早くこっちへいらっしゃーい!」

炬燵の上に魔導コンロを置き熱々の鍋を置く。鍋は豬鍋のようで8人用とあって大量だ。

炬燵は全員で囲んで座れるほど大きく、全員が座ると『いただきます』と聲をそろえて合掌し食べ始める。

は適度な歯応えがありつつもらかい。豬獨特の臭みもなく、普通の豚なんかよりもおいしい。サニアの方は皿山盛りの豬をガツガツと尾を振りながら食べあさっている。

「やっぱりこんな寒い日は鍋に限るな」

「出が濃くてうまい!はぁ~、米がしくなるぜ」

「米はもう在庫が盡きてるからな、また今度グリノア大迷宮の地下に行って米を栽培してこないと。この世界にも米はあるらしいけど、港の貿易が盛んなところじゃないとないらしいからな」

米は今までグリノア大迷宮の地下栽培所で栽培していたものだ。作が早く長するような栽培場で育ててるとはいえ、流石に量が足りない。この世界にも米はあるらしく一刻も早く大量に仕れたいと思っている。

「これから向かう國にあったりしないかな?」

「微妙だな、コーネリア國は技大國だからな。食文化よりも技の方が発展してるだろうし。あ、でも調理道なんかの方は発展してるかもな」

「!!それなら新しいフライパンがしい!」

「じゃあ國してから一緒に街を見て回るか。俺もいくつか補充しなきゃいけない機材とかあるしな」

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「うん!久しぶりのデート!」

熱々の鍋以上に熱々な二人は周囲の目も憚らずイチャイチャをし続ける。他のメンバーもこの旅で二人のやり取りに慣れてきたのか鍋の方に集中してスルー。しかし凜緒はぷくーっと膨れているが。

そんなじで全員でおいしく鍋をいただいていると、

「......エル」

「はい、マスター。數は二人。ここから900メートルの場所です」

そういってエルと彌一は立ち上がり武をとる。突如立ち上がり武をとった二人を見て他のメンバーも質問する前に立ち上がり各々武をとる。

「襲撃か?」

「いや、まだわからない。索敵結界に反応があった。ただ、一つだけし反応が小さい....子供か?」

索敵に引っかかったのは二つの魔力反応。二つとも反応が弱く、一つは子供くらいの反応だ。

「この吹雪の中でか?てことは襲撃者ではなさそうだな」

「わからない。とにかく行ってみるしかないな」

手早くコートを著込み腰に刀を差す。そしてレルバーホークの弾倉を確認しスライドをスライドさせる。弾丸は念の為実弾だ。

「念の為確認に行ってくる。みんなはもしものために戦闘の準備をしておいてくれ。インカムと映像は繋いでおく」

彌一が壁の金庫を開けて取り出したのはインカムだ。インカムの電源をれて耳につけると、壁に備え付けてあったモニターに映像が映る。それはインカムからの見る彌一視點の映像だ。

このインカムは聲だけでなく蔵された小型カメラからの映像のけ渡しもできる彌一の特別製だ。これがあればお互いの見ているものが確認できる。

「パパ!ユノもいく!この吹雪の中ならユノの方が得意!」

とドアを開けようとするとユノが呼び止める。いつの間にか変をしており、耳をぴょこぴょこかしている。確かにこの猛吹雪の中なら野の嗅覚や覚に一番秀でているユノがいたほうがいいだろう。

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「わかった。ただし逸れたりしたらだめだからな」

「わかった!」

「二人とも気を付けててね」

ユノにきやすいコートを著せて二人は外に出る。外は真っ暗なうえに猛烈な吹雪が容赦なく視界と溫っを奪っていく。

しかし二人が來ているコートは自溫調節機能付きなので吹雪の寒さなど問題なしだ。

「ユノ、気づかれないように行くぞ」

「うん!」

ユノにも暗視の魔を付與し、二人そろって一気に駆け出す。二人は森の木々のしなりを利用して枝から枝へと無音で移していく。高速できながら複雑に生えている木々の枝の配置を瞬時に理解し判斷して次の枝へと移る。

ユノは彌一と同じように、いや彌一以上の踏破速度だ。アクロバティックなきをえて森の木々という名の迷宮を踏破していく。やはりユノは野覚においては彌一をも凌駕するらしい。

ユノの踏破速度についていくために、彌一も全速力で移していく。

そして800メートルという距離を1分も掛からず踏破し目的の場所についた。

そこには銀髪の二人のが倒れていた。

「おい!大丈夫か!」

萬が一罠のことも考えて警戒は続けたまま近づく。

倒れていたのは9歳くらいのと20代後半の。二人の服裝はボロボロの布切れで必要な部分しか隠されていない服で決して猛吹雪の山を登るような服裝ではない。そしてそのは酷く痩せていて打撲なのどの跡があり、靴すら履いてなく、足で歩いてきたのか傷だらけで指先は軽い凍傷になっている。

そしてその二人には耳と尾が生えていた。

「エル、彼たちは」

『はい、銀狼族という種族ですね。亜人族の中でも高い能力と戦闘能力を有し、種族での結束がとても強いことで有名な種族です』

エルの聲を聞きつつユノはの方を抱き上げて彌一はの方を抱き上げる。抱き上げたがとても軽く、彌一は顔をしかめつつ狀態を確認していく。そしてーーーーー

『彌一、それ.....』

「.....ああ」

セナも気が付いたのかし悲痛な聲で話しかける。彌一はセナの聲に頷きつつ視線をの首元に持っていく。

そこには武骨で太い金屬でできた首が嵌められていた。首の真ん中には赤い寶石が埋め込まれていてかすかに赤くっている。

ボロボロななりにやせ細った、そして首にはめられた首。実際に見たことなくとも知識でわかる。

たちは、

「奴隷だ」

「栄養失調の癥狀が出ていますが、脈拍や心拍に問題はないですねだいぶ安定してます」

「二人とも回復魔法をかけておいたから時機に目を覚ますと思うよ」

「そうか。セナ、悪いけど胃に優しい食事を用意してくれ」

「もう作り出してる。野菜のスープにらかく煮込んだおでいい?」

「グッジョブ」

あれから彌一とユノは倒れていた二人を回収しトレーラーに運び込んだ。二人を著替えさせを拭いた後治療を施し、今はベットに寢かせている。

現在、健と雄也とユノの三人は外の雪山を走り周り周囲の警戒を行っている。二人の追ってが來た場合に備えてだ。

「さて、この二人だが....やっぱり奴隷で間違いないんだな?エル」

「はい、奴隷の首を嵌めているので。ただ、寶石が赤なので契約前の奴隷でしょう。おそらくこの二人は奴隷として輸送中に逃げ出したのかと」

この世界には奴隷が存在する。奴隷は奴隷商會というところで購することができ、奴隷というものはこの世界では一般に浸している労働力でもある。

そして奴隷には奴隷の首という魔道がつけられ、奴隷が命令を無視した場合契約者が命ずれば奴隷に激痛が走るようになっている。さらには首に嵌められた寶石は発信機のようなもので、信機に場所がわかるようになっている。

契約者がいる場合は寶石は青になり、未契約の場合は赤になる。赤というのは契約する前の狀態ということなので、おそらく親子と思えるこのは奴隷として捕まって輸送中だったのだろう。

この世界では一般な労働力である奴隷だが、地球の倫理観で生きてきた彌一にとって奴隷というものは納得できない部分がある。凜緒や健も同じような表だった。

「なら、この首は外しても問題ないな」

「ですが理的に無理やり壊そうとすると裝著者の命を奪います」

「なら魔的に外すだけだ」

そういって彌一は解析を取り出して首式解析を始める。式は確かに複雑だが地球の魔師の手に掛かればどうということはない。

あっという間に解析を済ませるとの首れ魔力を流し、現在位置を特定する式と激痛を與える式の破壊を済ませると、寶石のが失われた。

が失われたのを確認すると、首を錬金で錬し首を壊し、次にの方の首も破壊する。

「よしできた。これで追手がかかることないだろう」

「彌一、ご飯できたけどどうする?」

手にお玉を持ってエプロン姿のセナがやってくる。キッチン部分からはおいしそうなにおいが漂うってきた。

「そろそろ目を覚ますと思うんだけどな。外傷は癒えたし」

『こちらアルファ。聞こえるかい?』

とその時モニターにアルファと名乗った雄也から著信がる。雄也がアルファと言っているのは盜聴や通信れのための対処で、地球では機の通信などでは名前を名乗らずアルファやベーター名乗って発言者がばれないようにしている。もっともこの世界で通信傍などできるものなどいないと思うが、そこは雰囲気である。

「こちらマスター。どうしたアルファ?」

『山道に近い巖の近くに5臺の馬車を見つけた。商人らしき人が一人に盜賊風の人間が複數」

雄也から送られてくる映像を見ると、確かに吹雪の中巖場の近くで馬車が隠れているのがわかる。吹雪が強く一度避難しているのか、巖場の近くでは焚火がいくつかある。

さらに映像を拡大してみると馬車の荷臺の中がし覗くことができた。馬車の荷臺には食料のった箱や

水などのありきたりなものしかないが、なかに一つだけ鉄格子の箱が積まれているものがあった。

「アルファあたりだ」

『え?』

「そいつらがおそらくこの二人を捕まえて奴隷にしたやつらだ」

『なに!?』

この見たじからしておそらくというか確実に奴らが二人を拉致した奴隷商人と雇われた山賊だろう。その証拠に鉄格子の壁には奴隷の首がぶら下がっている。

『こちらガンマ。現場についたぞ。どうするマスター?俺の方が距離的に近いから強襲できるぞ』

『こちらユ...ベーター。ベーターもけ....ガンマと同じところにいる!』

ガンマ:健とベーター:ユノが通信してくる。ユノの方は名前を言いそうになるがギリギリ言えたようだ。

モニターの映像はスマホでも確認ができ、健とユノは雄也の映像を見て馬車の方に回り込んだ。健の方からは下の方に馬車の集団が見えるのがわかる。その気になれば誰にも気づかれず馬車に接近することも可能だ。

「いや、やめといたほうがいいな。が捕まったんならまだしも、俺たちに関係のない馬車を襲ったとなればこっちが犯罪者にされかねん。それに奴隷の首は外すことができたから、あっちから攻撃してこない限り無視していい」

『了解。なら殘りの首だけでも回収しとくか?』

「そうだな。これから被害者が出るかもしれないし首だけ盜んでおこう。盜むだけなら犯人は分からないからな」

『じゃあユ....ベーターがとってくる!』

『気を付けてな』

健の映像の中でユノが木から飛び降りて馬車が隠れている巖の崖にしがみつく。そこから鉄格子の馬車の影に音もなく著地すると素早く馬車に飛び乗る。

しばらくするとユノが出てきた。手には木箱いっぱいの首を持っている。

『パ...マスター取ってきた』

「よし、三人とも撤収だ!萬が一に備えて各自別々のルートでトレーラーに合流するように!』

『『『了解!』』』

彌一が撤収命令を下すと三人が答え通信が切れる。

「......なんかやいくん組織の司令みたい」

「三人もノリノリだったものね。アルファとかで呼び合ったりして......」

彌一と三人のやり取りに陣はジト目で見つめる。その視線にしはしゃぎすぎたと恥ずかしくなった彌一は手早くインカムをしまう。

とするとベットの方からごそごそとじろぐ音がすると、銀狼族のの方が目を覚ました。

「.....ここは....」

「起きたか?」

「---っ!!」

彌一が聲を掛けるとは目に見えて怯え警戒しシーツをつかんで後ずさる。それも當然だろう。起きたら見知らぬところにいて知らない男が話しかけてくるのだから。

は周囲を見回すと隣で寢ているを見つける。

「....!カーネ!!」

は一目散にベットから飛び起きると隣のを抱きしめる。シーツごと抱き上げて涙ながらにの頭をまるで存在を確かめるようにゆっくりとでる。

「....んっ、お母さん...?」

「よかった.....本當によかった....」

目を覚ましたを見て母親のは涙をぬぐいをより強く抱きしめる。

しばらくするとは落ち著いてきたのか顔を上げる。若干警戒を殘してはいるが、落ち著いてくれただけ話がしやすいだろう。

の前にしゃがんで目を合わせてできるだけ優しく微笑みかけながら話しかける。

「もう大丈夫か?一応治療は施したんだが、どこか痛いところとか気分が悪いこととかないか?」

「え?.....そういえばがの傷がないですし、心なしかが軽いです....もしかしてこれはあなたが?」

そういって自分の手や顔にれては傷がないことに気が付く。ひとまず問題がないことを確認すると改めて彌一が話し出す。

「俺は日伊月彌一。君たちが雪山で倒れてたから連れてきたんだ。こっちは俺の仲間だ」

彩・凜緒・セナ・エルの順で話しかけると、同じということもあってかホッとしたような表をとって、慌てて母親のが話し出す。

「すみません!助けていただいたのに失禮な態度をとってしまって。私は銀狼族のテグロト・カネーシア。こっちは娘のカーネです。この度は私たちを助けていただいてありがとうございます」

「ありがとうございます!」

カネーシアとカーネが二人して頭を下げる。しかしカネーシアは助けられたことを本當に謝しているような表だが、どこか悲しい表をしている。

「どうかしたのか?」

「私たちは奴隷です。ですのですぐにでもここを離れなければあなたたちにも迷が....」

「それならもう大丈夫だぞ」

「「え?」」

何を言っているんだろうこの人は?という表をするカネーシアとカーネを前に、彌一は首元を指で指す。

指先につられるように自分の首元を見てみると、そこにあるはずの奴隷の首がなくなっている。二人は驚きの表で首を何度もる。そしてやがて現実を認識したのか、二人とも目じりに涙を浮かべる。

「こ、これはもしかしてあなたたちが.....?」

「これでも俺は魔師、あーえっと魔法師だからな。これくらいお手のだ」

「ありがとうございます.....!本當に、ありがとうございます......!!」

「お兄ちゃん!ありがとう!!」

再び涙を浮かべて極まる親子に陣が進みだしてめる。の相手はに任せるとして彌一は一歩引くと、ガチャリとドアが開く。

「ただいま~って、彌一また子泣かせてんのか?」

「ちげーよ!てかまたってなんだ!またって!!」

肩に積もった雪を払いながら「冗談だ冗談」と笑う健。すると遅れて今度は雄也とユノが帰ってきた。尾についた雪をプルプルとふるい落としながらってきたユノを見て、カネーシアとカーネは驚きの表を作る。

「あなた、銀狼族!?まさかこんなところで同族に會うことができるとは思わなかったわ」

「?」

どうやら銀尾と狼の耳をみてユノを銀狼族と勘違いしたらしい。ユノは何のことかわからないといった表で頭をかしげる。

「ユノ憑依化を解いてやれ」

「うん!」

蒼の魔陣がユノの足元に現れるとユノのが発し、子供のユノに戻る。ユノの橫には子狼のインサニアが現れる。りだしたと思ったら5歳くらいのと子狼が現れ、カネーシアとカーネは目を見開いて驚く。

「この子は俺とセナの娘ユノ」

「こんにちわ!ユノはユノっていうの!」

「私はカーネ、よろしくねユノちゃん!」

明るいユノの正確にカーネもすぐに慣れたのか、すぐに意気投合する二人。カネーシアも微笑みながら娘どうしのやり取りを微笑ましく見つめる。

「それでこっちがユノに憑依している狼のサニアだ」

『わふっ!』

「「え.....!!」」

彌一の足元でサニアが吠える。とその瞬間カネーシアとカーネが驚きの表になる。

「えっと、どうかしたのか?」

『わふ?』

二人がなにに驚いているのかわからない彌一とサニアは同時に首をかしげる。すると躊躇いがちにカネーシアが聞いてくる。

「そのお方はもしかして.....神獣、インサニア様ではありませんか?」

「どうしてそれを!?」

カネーシアの言葉に今度はこちらが驚く番だ。今までの會話で一度もサニアを2000年前に存在した伝説の魔インサニアとは言っていない。ましては今や伝説の面影もないただの可らしい子狼の姿である。なぜ気づけたのだろうか。

「何となくですかね。インサニア様は銀狼族からすれば、ありがたい存在で神様のようなものですからね。自然と溢れ出す雰囲気で本能的に理解できます。でもまさかインサニアさまとこのような場所でお會いできるとは....」

「インサニア様!ありがとうございます!」

『わ、わふっ?』

彌一たちからは分からないが、銀狼族ならではの理解できるものがあるのだろうか?カネーシアとカーネはサニアの前で膝をつきありがたや~と祈りをささげて極まっている。そんな二人を困ったようにサニアは見つめる。

「サニアがかみさま?」

『わふっ!がふっ』

「え?インサニア様ではなくサニアと呼ぶようにですか?今はもうインサニアではなくサニアだから。わかりましたではサニア様とお呼びします」

『わ、わふ.....』

わかってないと言いたげな表でサニアが吠える。カネーシアとカーネにかしこまられて居心地悪そうなサニアを健たちは笑わないように必死にこらえている。

「そのへんにして二人は食事をとったほうがいい。今日はよく食べてよく寢て、明日二人の集落に向かおう」

「よろしいのですか?我々を集落まで連れて行ってくださって。皆さんはコーネリアに向かうのではないのですか?」

「コーネリアにはあとでも十分だしな。それにこんな狀態で二人を返すのは危険だ。また狙われるかもしれないし」

「本當に、何から何までありがとうございます皆さん.....!!」

「ありがとうございます!」

溫かいスープとををセナが持ってきて二人に差し出す。數日ぶりの食事だったらしく、二人はスープをとてもおいしそうに食べていく。するとそんな二人に発されてか健のお腹が鳴る。

「う~、さっき外を走ったから腹減った...。セナさん、なにかないか?」

「ユノもおなかすいたー!」

「そういわれれば僕もし小腹がすいてきたかも」

「そう思って用意してあります!」

バーンというような効果音が聞こえてきそうなじでセナが豬のサンドイッチを出してくる。豬の香ばしい香りに充てられ彌一もお腹がすいてきた。

「彌一も食べる?」

「そうするかな」

「はい、あーん」

甲斐甲斐しくセナがサンドイッチを一つ差し出してくる。サンドイッチを一口食べると、レタスのシャキシャキに豬の歯ごたえのある、マスタードが混ざり合っていくらでもいけそうだ。

「彌一、私も食べたい」

「ほら、あーん」

「あーん....うん!おいしい。もっとちょうだい」

食べかけのサンドイッチを差し出して間接キス。裾をクイクイと引っ張りもっともっととあーんを要求してくるセナはエサを要求する小鳥のようだと思った。

「あらら、お二人ともお熱いですね。久しぶりに夫に甘えたくなってきました」

「こっちとしてはし自重してほしいですけどね」

「むぅうううう~~~!!セナぁああ~~~~!!」

凍えるほどの猛吹雪のなか、トレーラーの中ではイチャイチャの熱い空間が形されていた。

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