《魔がない世界で魔を使って世界最強》いざ集落へ
カネーシアとカーネを助けてから3日後、彌一たちは銀狼族の集落に向かっていた。銀狼族の集落には銀狼族にしかわからないルートを進まなければ辿り著かないようになっているらしい。
そんなわけで現在彌一たちはフレクシードの森にやってきている。コーネリア國から北に進んだところにあるフレクシードの森は、強力な魔が住み著き普段は滅多に人が寄り付かないらしい。その為生まれつき戦闘能力の高い銀狼族の集落を作るうえで最適なのだとか。
「それで、ここから山にるの?道なんてないけど」
セナがきょろきょろとあたりを見回す。人が寄り付かないせいで草や木は荒れ放題、とても人が通れるような道は存在しない。
「そこの木の橫からりますね。そこから山を登って集落まで行きます。」
「よし、じゃあ全員荷を持って行くぞー」
腰に蒼羽を差し黒コートの側のホルスターにはレルバーホークをれて、魔と遭遇した時の戦闘準備萬全にして歩き出す。他のメンバーもそれぞれ準備してカネーシアの案の後に続く。
腰まで屆くほど無差別に生えた植をかき分けて道なき道を進んでいく。足場は整備されていないため非常に悪く、力を消費する。カネーシアとカーネは流石銀狼族というべきか迷いのない足どりで軽々と山道を進む。
彌一・ユノ・エルはそれに続き順調に進んでいく。しかし雄也・健・彩・凜緒・セナは悪い足場の山道を登るのは大変なようで思ったように進むことができない。
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雄也たちの方が力があるとはいえ、いくら力があろうとこのような場合は力より覚の方が重要だ。山に登ることに慣れていない者にとってこの山道はつらいのだ。
「てゆーか、ユノちゃんとエルさんは分かるとしてなんで彌一はそんな平気なんだ?」
「剣聖の爺さんにさんざん山に放り込まれてしごかれたからな。山を飛ぶように逃げる爺さんを捕まえるために丸1日走り回ったこともあってか、慣れてるんだよ」
地球では、一振りで山を斬り裂く剣聖の爺さんから力づくりの一環としてよく山に連れていかれたものだ。問答無用で谷底に突き落とされたり、崖から突き落とされたりと散々な目にあったことを思い出す。
遠い目で明後日の方を見つめる彌一に、何となく察したのか全員から同の視線が混じる。それでもそのしごきが今の自分につながっているので良しとしよう。
「皆さん大丈夫ですか?」
「大丈夫だろう。直に慣れるさ」
その言葉通り時間がたつにつれてしずつ全の速度も上がっていった。
そして順調に進んでいると、茂みがガサガサと揺れて魔が飛び出してきた。
魔は大型の熊の魔でその數は3匹。。にはのように赤い紋様が浮かんでいることからこいつらはフェーズⅡ、災害級だ。
『オオオオオオオオオオオオオーーーーーー!!』
魔が飛び出してくると同時に、全員が即座にき出していた。まず1匹目に向かって雄也が地を使って懐にり込み、下からルナ・エルームを振り上げる。
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「フッ!!」
『グォオオオオ!!』
熊は咄嗟に避けたが完全には避けきれず表が淺く斬られしぶきが舞う。それで怒った熊は雄也をつぶそうと巨大な爪を叩きつけてくる。雄也はその攻撃を避けるのではなく、剣でけ止め角度をつけてけ流す。
熊の爪は雄也にけ流されたことによって爪が深々と地面に突き刺さり抜けなくなる。
「健!」
「おうよ!」
雄也が爪をけ流した瞬間、飛び出した健が熊の腕を伝い熊の顔面までたどり著く。
「オラァアア!!」
【強化】と【筋力強化】の拳を流れるように顔面にぶち込む。全力の一撃を喰らった熊は顔面を陥沒させ吹き飛び、出てきた林に戻っていった。
そして続けて同じように吹き飛んで戻っていった熊が。飛んできた方向を見ると、ユノが氷の拳を突き出している。
「パパ終わったよー!」
「おう、こっちも終わらせる」
熊の爪をけ止めていた彌一がそう言うと、力を込めて爪を押し返す。そして押し返されてバランスが崩れた熊の腹めがけてヤクザキックをぶちかます。腹に蹴りを喰らいひゅ~とまたしても熊が林に消えていった。
意外なほどあっけなく勝負がついたことにカネーシアとカーネは驚いているようだ。
「お兄ちゃんたちすごく強いね!びっくりだよ!」
「災害級をこうもあっさりと倒しいてしまうとは。これならこの後の道のりも大丈夫そうですね」
下ろした荷を背負いなおして再び歩き始める。だいぶ歩くのにも慣れたのか進行スピードは速くなり、晝頃には目的地までもうすぐのところまできた。
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「ここを登れば集落はもうすぐです」
「ここって......」
そこは反り立つ大きな崖だ。60メートルくらいの大きさのある崖は、ごつごつとした巖の出っ張りがあり、慣れていれば登るのは簡単だろうが、慣れていない者にとっては一苦労だ。
「ここを登るのは大変だな」
「そうか?簡単じゃないか。この上に行けばいいんだろ?」
「なにいってんだ、ってお前飛んでんじゃねぇか!!」
健の橫でふわりふわりと空中浮遊。飛行魔に掛かればこのような崖など障害にすらならない。先に凜緒・彩・雄也・エルに飛行魔を付與し崖の上にあげる。カネーシアとカーネとユノは崖をぴょんぴょんと軽快に上がっていく。そして彌一は降りてきてセナをお姫様抱っこで抱えると崖を上昇する。
「っておい彌一!俺は!?」
「重力を軽減しといたから自力で登ってこーい」
「くそがぁああああーーーー!!」
下から聞こえるび聲を無視して彌一はゆっくりと上昇していく。すでに崖を登っていた三人は登り終えているようだ。
「いいの彌一?健をほっておいて」
「大丈夫だろう。どうせ自力で上がってくるさ」
「ふふっ、彌一のイジワルさん」
「じゃあセナも自力で登るか?」
「い~や。だからしっかり捕まってる」
そういってぐっと首元に著する。お姫様抱っこで著すると自然と二人の顔の距離もまり、お互いの吐息がじられるほど。
やっておいて改めてし恥ずかしくなったのかセナの頬がほんのり桜に染まる。そして照れ隠しのつもりなのか彌一の頬に軽くキスをする。
「.....やっぱり外でお姫様抱っこはし恥ずかしいかな」
「じゃあこのまま集落まで行くか?」
「もう!」
どんな時でもどんな狀況でもイチャイチャを忘れない二人は崖をゆっくりと登りながらイチャイチャをし続ける。そして崖を登り終え、
「なぁあああ~~にしてるのかな~二人ともぉ~?」
上がると目の前に凜緒がいた。
どうやら二人のやり取りを上から見ていたらしくこめかみに青筋を浮かべてにっこりと微笑んでいる。どうやら大変怒っていらっしゃるらしい。
そんな凜緒に向かって大地に降り立ったセナはいたってどこかあざ笑うような表で、
「イチャイチャしてただけだけど?」
「《打ち據えよ水》!!」
「ふっ、甘い!」
凜緒が水流をセナにぶつけ、セナは水流に水流をぶつけて相殺する。
いつのも景を見つつため息をつく彌一。どうしたものかと思った次の瞬間、ガシッ!と足首が捕まれ、
「や〜い〜ちぃいーーーーーーー!!てめぇよくもおいて行きやがったなっ!!」
「お、意外と早かったな」
「くたばれぇえーーーーーーっ!!」
「甘いなっ!!」
繰り出された俊足の飛び膝蹴りを彌一は下から膝を押し上げることでエネルギーを上に流しけ止める。そのまま足首を摑むと豪快にフルスイングし健を再び崖に落とす。
「くたばるかぁあーーーー!!」
自分で言ったことに返す健。
投げ飛ばされた健だが空中で態勢を持ち直すと、ぐっと膝を曲げて溜め、一気に空中を蹴って飛ぶ。
これは健の瞬腳の派生スキル【空翔】といって、空を蹴って翔けることのできるスキルだ。まだスキルの練度は足りないが、空中を三歩まで跳ぶ事ができる。そして今はその三歩だけで十分だ。
三歩で崖の上に戻ってくると彌一を前に構える。
お互いにかない彌一と健。奧の方では凜緒とセナが対峙している。
まさに一発のこの狀況。そして全員が一歩踏み出した瞬間、銃聲四発。
それぞれ四人の額に命中する。どうやら銃弾はゴム弾らしく、殺傷力はないが衝撃はそのまま伝わる。
凜緒とセナは「はきゅ!?」と彌一と健は「ぶぼぁ!?」と悲鳴を挙げる。子二人は額を涙目で押さえて疼くまり、男子二人は額を押さえてブリッジ。
人外の能力を持つ彌一とセナにもダメージを與えられることから二人のは特別製なのだろう。全く嬉しくない特別だ。
しばらく四人仲良く悶えていると拳銃を構えニッコリ笑顔のエルが歩み出る。笑っているのに目が全く笑っていない。
「皆さん?はしゃぐのはその辺にしましょうね??」
「「「「は、はい.......!!」」」」
「あやおねぇちゃん、エルおねぇちゃんがこわいの....!!」
「お母さん....!!」
エルが放つ無言の圧力と綺麗な笑顔にユノとカーネが怯えてしまっている。サニアも彩の後ろで丸くなっている。
それから足がプルプル痺れるまでお説教を喰らった四人は心底反省したようだった。
エルは一切怒鳴ったりせず、見惚れるような微笑みで淡々と言ってくる。それが逆に不気味さを煽って恐ろしいものに見えた。
このメンバーの中では一番怒らせてはいけない相手だと理解した彌一たちだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そろそろ日が沈みかけるという時間でようやく目的地が近づいてきたようだ。
「皆さん、もう直ぐつきますよ」
カネーシアの言葉に疲労一杯の聲で全員が反応する。
「うぅ〜もう足がパンパンだよ〜。お風呂りたい......」
「うん、確かに。僕も慣れない山道で足の裏が痛いよ」
「私も......きゃっ!」
彩は「足が痛い」と続けようとしただが、足を踏み外してこけそうになる。そこを素早く健が腕でけ止める。
「おっと、大丈夫か彩?足痛めたか?」
「あ、ありがと。うん、し痛いだけだから大丈夫」
「無理すんなよ、彌一!回復魔かけてもらえるか?」
健に言われて彌一はし考える。すると悪い笑みを作り次にはもとの表に戻ると言う。
「それは慣れないことをして普段使わない足の筋を使ったせいだな。実はそういった疲労は魔じゃよく治せないんだ」
「え?そうだったのか」
もちろん噓である。結局は普段使わない筋が軽い炎癥を起こしているだけなので治癒魔で治すことができる。
ではなぜ彌一は噓をついたのか。ニヤリと口元に笑みを浮かべると「だからさーー」と言葉を続ける。
「集落までもう直ぐなんだし彩を擔いてやれよ」
「えっ、.......!?」
「それもそうだな。ほら彩後ろ乗れよ」
予想外の言葉に固まる彩。しかし健は全く気にした様子はなく何の疑問にも思わず頷く。
顔を赤くしてわなわなする彩の前で健が背を向けてしゃがむ。
「で、でも....」
「なにしてんだ、早く乗れって。ほら」
「う、うん.......」
恥で顔を真っ赤に染めつつも健におぶられる。
「お、重い?」
「ん?いや全然。むしろ軽いくらいだちゃんと食べてんのか?」
「た、食べてるわよ!」
ひょいっと重さをじさせない作で健が立ち上がると、全員歩き始める。全員からの生暖かいニヤニヤした視線をけて健の背中に顔を埋める彩は見ていて面白かった。
そして健の歩行スピードに合わせてゆっくり進んでいき、し霧が深い森にったところで。
「フッ!」
彌一が一気に前に飛び出し抜刀。キンッ!という金屬音が響き、斬られて縦に真っ二つになった矢が左右に落ちる。
突然の攻撃に一瞬直した一同だが、すぐさまカネーシアとカーネを守るように円狀に固まりお互いの死角をカバーする。
「敵か!?」
「數は八。霧の向こうからこちらを狙ってきた!全員気を付けろ!」
そう説明する間も矢が四方から飛んできた。矢の狙いは正確で守りにくいところを的確に狙ってくる。
「彌一!ここは一旦撤退を、ーー
ッ!」
突如霧の向こうから雄也目掛けて外套を被った何者かが突撃してくる。咄嗟にルナ・エルームの腹を使って繰り出された拳を防ぐ。
「雄也!うおっ!」
加勢しようとした健目掛けてまたしても飛び出した別の何者かが、手にした棒を振るって來る。健はそれを間一髪右手の籠手で防ぐ。
襲撃者は防がれた後直ぐさま次の作に繋げ、雄也と健を相手取る。巧みな無駄のないきと軽いフットワークの攻撃に雄也と健は苦戦を強いられる。
まだまだ戦闘経験が薄い健と雄也だが、仮にも勇者と英雄だ。普通の冒険者程度では相手にならないくらいの力はある。そんな二人を追いつめるとは相當の手練れだ。
「【風鎚】!」
「《散る炎・集まりとなりて我を護れ》!」
「くらえ!」
健と雄也以外にも子組の方にも集団で襲い掛かる。しかし今の所どうやら拮抗しているようだ。
と次の瞬間、彌一の方にも一回り大きい格の何者かが現れ、その籠手にるクローを振るう。
抜刀狀態の蒼羽を掲げクローをけ止める。どうやらクローはミスリルで出來ているらしく、蒼羽と激突しても刃こぼれ一切しない。
「なにもんだ!お前ら!」
「ふん、何者だだと?白々しいぞ人間が!」
「は?」
何のことかわからない彌一はし間の抜けた聲を上げる。それを挑発とけ取ったのか男は外套をぐ。
そしてわになったのは、銀の髪をした鋭い目付きと額の傷が特徴的な厳つい男。そして彼の頭には銀の狼耳と腰には尾が付いていた。
彌一はその耳と尾に見覚えがある。後ろを振り向けばそこには同じ耳と尾を付けたカネーシアとカーネが。
「汚らしい人間が!よくも俺の妻と娘を連れ去ったなっ!!」
「はい.....?いやいやいや!誤解だ!!」
どうやら彌一たちはカネーシアとカーネを攫った犯人と勘違いされているらしい。必死に手を橫に振る彌一だが、相手はようやく見つけた妻と娘を見て完全に聞く耳を持たない。どうやらカネーシアの夫らしい。
「ええい!問答無用!人間の言葉など信用できるかっ!!」
「あなた!」
「お父さん!」
「待ってろカネーシア、カーネ!今直ぐ助けてやる!」
的な親子のやりとりだ。こうなると彌一は悪くないのに悪者の立場になってしまう。
「死ね人間!!」
「ちょっとぉ!?」
問答無用で鋭い突きを放つ。込められた殺気は本で、突きものきがスムーズで一切の無駄がない。間違いなく歴戦の戦士のそれだろう。しかし、
「(でも、リカードさんほどではない!)」
霊の里でのリカードとの対決を思い出す。確かにこの男の腕は歴戦の戦士そのもの、それこそ強者の部類だろう。だが、リカードのきはもっと鋭く、もっと重く、この男の數段上をいく。
あの時のリカードとの戦いに比べればどうということはない。
「ふっ!!」
「ぬっ!?」
繰り出されたクローを下から斬り上げる。同時に蒼羽の疑似分解切斷魔を発。クローの刃をスパッとバターのように斬る。
 
「なに!?」
「いい加減し落ち著け!」
「ぬぉおおっ!?」
勢が崩れたところを狙って踵で地面を踏む。すると男の足元に黃金の魔陣が浮かび上がり、陣から黃金の鎖が飛び出し男を拘束する。
「グレバスさん!ーーッ!」
「なんだこの鎖は!」
他の襲撃者も同じように地面からの鎖で拘束されけなくなった。
グレバスと呼ばれた男は全力で逃げようとするが、いくら力を込めようとも
鎖は全くビクともしない。
「こうなれば、フィーア!コーサ!魔法だ!」
逃げることは無理だと判斷したグレバスは森の奧に向かって聲を投げかける。どうやら森には魔法師が隠れているようだ。もっともそんなことはなから分かっている。
グレバスが言葉を投げ掛けたがいくら経っても魔法は飛んでこない。代わりに出てきたのはエルだった。
「フィーアとコーサというのはこのお二人ですか?」
「なっ.....!」
そう言ってドサリッとエルが引きずってきた若い男を前に放す。二人は気絶しているらしく、外套から銀髪を曬して倒れる。
「さてどうします?この狀況でまだ闘いますか?」
「ぐっ....!それでも、!妻と娘のために諦めるわけにはいかない!!」
中に魔力を漲らせまだ抵抗しようとするグレバス。そのせいか魔力が高まるにつれ鎖がギシギシと音を立てる。
と、その瞬間彌一の後ろから聲が響く。
「あなた落ち著いて!」
「そうだよお父さん!この人達は私達を助けてくれたの!!」
「..........なに?」
グレバスは妻と娘の言葉に間抜けな表で答える。他の襲撃者も同じような顔でカネーシアとカーネを見る。
取り敢えず落ち著いてくれた事を確認すると彌一が言う。
「取り敢えず、話聞いてくれます?」
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8 152ダンジョン・ザ・チョイス
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