《魔がない世界で魔を使って世界最強》【節分特別ストーリー】豆まき大會
『これより!第一回王宮豆まき大會を開催いたしまーーーすっ!!』
拡聲を持った木村奈がそう言い放つと會場に集まっていたクラスメイトや王宮関係者が盛大に聲を上げる。
會場が熱気に包まれやる気に満ち溢れるなか、彌一は辺りの熱気に反して呆れたような聲で隣の健を見る。
「おい健説明しやがれ。なんだこれは」
「え〜お前知らないのか〜?豆まきを」
「そこじゃねぇよ!この騒ぎはなんだって聞いてるんだ!!」
小馬鹿にするような健にイラッとしながら彌一は問い詰める。そして健に代わって彩が答える。
「ほら、ハロウィンとかと同じよ、異文化流。今回は節分の豆まきをゲームとして行おうってこと」
豆まきは節分に行われる行事の一つで、豆をまくことで邪気や悪鬼を追い払うというものだ。それを今回は王宮全で行おうというのである。
彩が簡潔に説明すると壇上の奈がゲームの説明を始め出した。
『それではルール説明です!皆さんはこれから二時間、この王宮全を使って逃げ回り、互いに豆を投げ合ってもらいます。豆が當たると當てられた人は當てた人にバンドを渡してもらいます。これがポイントとして加算されまして、の方は男との力差などを考慮し一つのバンドにつき2ポイントとします。そしてゲーム終了時に一番ポイントが高かった人が優勝です!』
隨分と慣れた様子で奈が説明を終えると闘いの前の高揚からか、會場中から喝采が上がる。王宮関係者や騎士からも興した聲が上がる。みんなイベントと聞いてワクワクしているのだろう。意外とノリが良い。
「楽しみですね彌一さん」
「うおっ!?いつからいたんだヘンリ?」
「ふっふっふー、いつからでしょう?」
いつの間にか彌一の近くにやってきていたヘンリはそう怪しく笑う。彼も楽しみなのか普段よりテンションが高い。
『それでは開催にあたりヴィディル・バース・アーセラム國王陛下から一言お願い致します』
ヴィディルは全員が膝を著こうとするのをスッと手を振って制し壇上に上がると、會場をぐるっと見回す。きやすそうな服裝で腕にはバンドを付けているからして、どうやら參加する気満々のようだ。
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「皆の者今回は勇者たちの世界の文化を験する大會だ。全員畏まらず大いに大會を楽しんで流してしい。今回は私も參加する。遠慮はいらん。存分に掛かってくるがいい。誰が私を倒せるか楽しみだ、ハハハ!」
『(いえ、できるわけありません!!)』
楽しみで仕方ないといった表のヴィディルは子供のようだ。そして反対に會場の心の聲は一致していた。いくら本人が掛かってこいと言っているが相手は國王だ。國王に豆を投げつけるなどできるわけが無い。
もっとも、若干何名かは遠慮なく行く気のようだが。
『それではこれより十分後に開始したいと思います。皆さん散ってください!』
會場の三つの大扉が開きまずは、その次に男が會場を後にして散らばる。
「う〜ん、さてどこに逃げるとするかな?」
王宮の廊下を歩きながら逃走ルートを考える。最初は隠れて全の狀況を見渡す作戦だ。
「よう!日伊月!お前も隠れる作戦か?」
後ろから聲を掛けられ振り向くとそこにはクラスメイトの中島健人がいた。
「おう、そういう中島も同じだな?」
「最初からぶつかったんじゃ後々消耗するだけだしな。無駄な戦闘は避けるべきだ。よかったら最初は一緒に行しないか?」
「ああ、いいぜ。味方はいた方が囲まれるリスクが減るしな」
「.....。おうそうかありがとな!」
一瞬黙った健人だがすぐに戻る。彌一は特に気にすることもなく、健人の提案で二階の蔵書室に隠れることにした。
多くの人が徘徊しているため気配が多いが、扉さえ注意していれば問題無いだろう。
と、拡聲に乗って王宮中に奈の聲が屆く。
『それでは間も無く開始いたします!5、4、3、2、1、ーーーゼロッ!!』
「「「死ね日伊月ぃいいいいいーーーーーー!!」」」
「なにぃいいいい!?」
開幕の合図と同時に蔵書室に置かれていた箱から三人の男子クラスメイトが現れた!そして彌一へ手に持った豆を無造作に全力で投げてくる。いくら豆とはいえチートの勇者が投げればそれなりの威力はある。當たれば普通に痛い。
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「危ねッ!!」
咄嗟の條件反で飛び退き、置かれた機のに隠れる。健人の方も同じく機のに隠れる。
「待ち伏せかくそっ!まさか潛伏場所が被るなんて。中島、逃げるぞ」
「.........いや、その必要は無い」
「へ?」
ガシッ
「今だ!全員かかれぇえええーーー!!」
「ちょっとおおおおおおーーー!?」
後ろから羽締めにされ三人のクラスメイトの前に突き出される。狀況が理解できない彌一だが一つだけわかることがある。
「嵌めやがったな中島!!てめぇどういうつもりだ!?」
「........許せねぇんだよ」
「はい?」
噛み殺した聲で答える健人。何かしてしまったのだろうかっとと考える彌一に健人は言葉を続ける。
「許せねぇんだよ.......お前がセナさんっていうと結婚してイチャイチャしてるのが、許せねぇんだよぉおおおおーーーー!!」
「知るかボケーーーーーーーッ!!」
聲を上げでさらに締め付ける力を強くする健人に彌一は思わず吠える。
「うるせぇ!持たざる者の気持ちなど、貴様には理解できまい!お前にはここで退場してもらう。豆でボコボコにした後にな!!いけお前ら!!」
「「「持たざる者の力!!死に曬せ日伊月ぃいいいいいーーーーーー!!」」」
ビュン!と豆が恐ろし速度で飛んでくる。豆が広範囲に広がっているので回避は不可能だ。
「死んでたまるかっ!!」
回避できないと判斷すると、腰を折りを前に倒す。すると後ろから羽締めしていた健人もつられるように前に倒れる。その瞬間を逃さず逆さまの健人を盾にして構えて豆を防ぐ。
結果、
ズバババババババババーーーーッ!!
「ぎゃぁああああああーーーー!!」
「「「健人ーーーーーーー!!」」」
背中に高速の豆を喰らい悲鳴を挙げて倒れる健人。何のためらいもなくクラスメイトを盾にした彌一を三人が外道を見るような目で見る。
「てめぇ、よくも健人をやりやがったな!」
「だが俺たちは、一生彼が出來るわけがないあいつの恨みをけ継ぐ!」
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「そうだ!一生持たざる者の健人の雪辱、ここで晴らしてくれる!」
「いや、これやったのお前らだろ」
仲間からもボロボロな言われようの健人を、彌一はボロ雑巾ように放り捨てる。
ポイッ
ゴガッ
「ぎゃああああーーー!!背中に角がぁあーーー!!」
放り捨てた先にあった機の角に背中をぶつけ再び悲鳴をあげて倒れる。
「「「健人ーーー!!」」」
三人が意識を健人に向けた瞬間豆を三つ弾いて飛ばす。
「「「ぐはっ!!」」」
ビスッビスッビスッ!!と三人の額に豆がクリーンヒットして気絶。
ドサリと倒れる三人を見て彌一はため息をらす。
「はぁ、なんだったんだこれ。もしかして全員そうなのか?」
なにはともあれ三人を撃破したのできっちりとバンドは貰っておくとしよう。
そうして四人のバンドを回収していると、扉の向こうから何やら迫りくる音が聞こえる。
「.......え、冗談ですよね?」
扉をし開けれ外を見てみればーーー奧の通路からこちらに向かって全力疾走してくる男子が。
どうやら冗談ではないようだ。
「やっぱりかくそうッ!!」
恐らく四人の悲鳴を聞きつけてやってきたのだろう。既に手には豆を握っておりいつでも投げれる狀態だ。
扉からの逃走は不可能。なら殘るは窓からのみ。
窓を開けて外に飛び出し飛行魔で宙を舞い最上階の屋に乗る。
「なんとか巻けたな。それにしても全員敵に回るとは........」
屋に座り溜息をこぼす。嫉妬がここまで面倒だと思わなかった。
屋から城を見渡す。皆楽しそうに投げ合っていることからまぁこういうのもいいか、と思う彌一だった。
と何やら中庭の方が騒がしい。中庭に目を向ければ、そこでは二人の男が立ち會っていた。
「流石だなロジャーよ。あの一撃を回避するとは」
「陛下こそ。引退してなおそのき、服いたします」
「ハハハ!まだ若い者には負けんよ」
豪快に笑うヴィディルとそれに対するロジャー。二人とも手には豆を持ち一発の空気で相手の出方を伺う。
「お父様!落ち著いてください!」
「団長もです!相手は國王陛下ですよ!?」
剣呑な二人を止めようとアーリアと副団長が聲を上げるが二人は睨み合うのをやめない。
「娘よ、止めるでない。久し振りに遊べる......ではなく、騎士団長と流できるのだ。これは上に立つものとして立派な部下との流なのだぞ?」
「その通り。それに陛下からのありがたい申しれを斷るなどそれこそ失禮だろう?なれば全力で答えるのが騎士というもの。決して陛下と手合わせがしたいだけではないのだ、これは立派な流なのだぞ?」
「「結局遊びたいだけでしょうが!!」」
目くじらを立ててぶ二人。しかしヴィディルとロジャーはそんなもの知ったことか!!と無視して再び激突する。
「.......さて、ほかはどうだ?」
中庭から目を逸らし他を見てみる。
そして城壁の上では衛兵相手にユノとメイが無雙していた。
「サニアごー!」
『オンッ!!』
ユノとサニアを乗せたサニアがユノの命令で15人程度の衛兵の群れに突っ込んでいく。
「來たぞ!ユノちゃんとメイ様だ!各員配置につけ!油斷するなよ全力でぶつからなきゃ負けるぞ!それと二人に怪我の一つでもつけた奴は後でぶっ潰すからな!!」
『応!!』
油斷せず全力で、尚且つ怪我をさせないようしろという無茶苦茶な隊長の命令に、まるでそんなこと當たり前だというような返事で豆を構える衛兵。
実はユノが王宮に遊びに行くたびにメイと王宮を遊んで回るので、衛兵や王宮職員と仲がいいのだ。
分け隔てなく誰にでも無邪気な笑顔で接してくるユノとメイは兵士や王宮職員から絶大な人気を誇り、ファンクラブもあるほど。
そしてユノの事を知っているからこそ、彼らは油斷はしない。ユノとサニアが自分達よりも強いことを知っているからだ。
「いまだ!投擲!」
隊長の合図とともに衛兵が一斉に豆を投げる。
城壁の通路一面を塞ぐように豆が撒かれる。このまま直進すればいくらサニアでも避けきれない。
『ウォン!』
「わかった!メイちゃんつかまって!」
「うん!サニアいけー!」
ユノとメイがしっかり摑まった瞬間、サニアが大きく跳躍。飛び上がったサニア目掛けて豆が飛んでくるが、サニアは空中に氷塊を作ると蹴って空中で方向転換。氷塊を足場に空中を自在に駆ける。
『なにいいいいーーーーー!?』
空中を駆けるという常識外れな回避に衛兵は直し、その隙が運命を分けた。
ユノとメイが両手いっぱいの豆を頭上から投げつけようとしている。
「まずい!退避ー!!」
城壁という限られたスペースを前と後ろに広がり豆の効果範囲から逃れようとする。しかし、
「なっ!氷が!」
衛兵の退路を塞ぐように前後の通路に氷の壁がせり上がり、衛兵を閉じ込める。
逃げ場のない通路が自らに牙を剝いたのだ。
「「せーの、えい!」」
可い掛け聲とともに頭上から豆が降り注ぐ。退路を塞がれた衛兵たちに降り注ぐ豆に対処できる方法はあるはずもなく、衛兵は一人殘らず豆の餌食になった。
サニアが華麗に著地すると氷の壁が消える。豆をけた衛兵たちは気持ちの良い笑顔で豪快に笑う。
「ガハハハ!いやーまいったまいった。まさか通路が塞がれるなんて」
「本當ですね。サニアお前凄いな空を駆けるなんて」
『オン!』
「塞がれたの隊長の指示が遅かったからじゃないんですか〜?」
「そーだそーだ〜!」
「んだとぉ!」
ガハハハと愉快に笑う衛兵たちは全員がすっきりした笑顔だ。そんな衛兵にユノとメイは近づく。
「凄いなユノちゃんとメイ様は!一杯喰わされたぜ!」
「本當!?やったねユノちゃん!」
「うん!サニアありがとう!」
『ガッフ!』
楽しそうにハイタッチをするユノとメイに衛兵たちはまるで自分の娘を見るような優しい笑みで二人を見守る。
隊長が二人の前にしゃがむと15人分のバンドを差し出す。
「さ、二人とも勝者の商品だ。おじちゃんたちの分も頑張ってな!」
「うん!おじちゃんたちのぶんもがんばってゆうしょうする!」
「そうか!応援してるぞ!」
バンドをけ取り、隊長に頭をでられたあとユノとメイは再びサニアにがり、衛兵たちの聲援をけてサニアは城壁を飛び越えて地面に降りていった。
「これが子供の力か.....」
娘の意外な流の深さに驚かされた彌一だが、ユノがみんなにされていることがわかって微笑む。娘が褒められて嬉しくない親などいない。
「さて、娘が頑張ってるんだここは親としてしでも良いところを見せないとな」
そう言って屋の上で立ち上がり不敵な笑みを浮かべる。ようやく本気になった彌一は駆け出し屋の縁を蹴って宙にを踴らせる。
降りる場所は彌一を探し回るクラスメイトの中心。
ドンッ!!と地面を砕きアメリカの鉄人ヒーローのような狀態で著地する。
「なんだ!?」
突然現れた人影に全員が振り返る。土煙が姿を隠す中スクっと立ち上がると不自然な風の流れが土煙を払い、クラスメイトの前に彌一の姿を現す。
「出たな日伊月!」
「よくもノコノコと俺たちの前に姿を現せたな」
「この人數を前に逃げれると思うなよ!」
総勢十名の男子クラスメイトが各々豆を握りしめまるでチンピラのようなセリフを吐く。
四方をチート集団に完全に囲まれ逃げ場のない狀況。普通に考えれば絶絶命の狀況だが、彌一はふっと口元を吊りあげる。
「逃る?違うな。ーーーーすべて倒すんだよ!!」
「かかれぇーーー!!」
號令とともに全方向から豆が飛んでくる。逃げ場はない、いや、逃げ場などいらない!
パチンッと指を鳴らす。音が響くと同時に彌一の周りで風が巻き起こり、豆は彌一に屆くことなく巻き起こる風に囚われる。
ゴォオオオオオオオオオ!と速度を上げ回り続ける風と豆を前にこのあとなにが起こるかを察する。
「ーーーッ!!まずい全員防ーーー」
「ーーー遅いな」
一斉掃。
暴風から放たれた豆は辺りに無差別に撒き散らされる。そのあまりの速度に豆はぶつかった瞬間散するほどだ。
『ぐぁあああああああああああーーーーーーッ!!』
響き渡る豆の散音とクラスメイトの悲鳴。風が止むと死累々と転がるクラスメイトがそこにはいた。
何名かは障壁の展開が間に合った者もいるが、すでに壊滅狀態だ。
「げほっげほっ!やり過ぎだろ!?」
「いや、先にやってきたのお前らだろ」
障壁を展開した三人が彌一と対峙する。
お互いに豆を握り再び再開しようとしたところで、互いの中心地に人影が落ちてきた!
落ちてきたのは二人。それは凜緒とセナだった。
「セナはここで、ーーー」
「凜緒はここで、ーーー」
周りが見えていないのか重々しい空気で二人が口を開く。
「ーーー倒す!!」
同時に豆を投げる。強化を施しているのか通常ではありえない速度で豆が飛ぶ。凜緒が投げた豆をセナが疾風加速ゲイル・アクセラレイションで回避する。
そして回避された豆がどこに行くかというと、ーーーそれは無にも三人のクラスメイトを襲撃した。
「「「あぎゃあああああああーーーーー!!」」」
「お、お前らぁああーー!!」
流石のこれには彌一も同する。巻き添えを喰らってやられる三人は何とも哀れだ。
しかしそんな巻き込まれた三人が眼中にない二人は、油斷なく構え向き合う。
「凜緒、私に魔法で敵うと?  本當の豆撒きを教えてあげる」
余裕の笑みで挑発するセナは言葉と共に魔力を滾らせ魔法を発。豆撒きとは一?  と思う彌一だが目の前の嫁は止まらない。
「ーー鬼は、外ッ!!」
右手に握りしめた豆をセナは全力でぶん投げる。だがコントロールが悪いのか、難なく凜緒は飛んでくる豆をサッと回避する。
危なげなく豆を回避した凜緒が今のうちの!  と駆け出そうとした瞬間、背後から豆が飛んできた。
「ひょわっ!?」
奇怪な悲鳴をあげて即座にしゃがむと、先程まで顔があった位置を豆が通り過ぎていく。そして通り過ぎたはずの豆が突如、まるで見えない壁に弾かれたように凜緒を奇襲する!
「なんで!?」
「ふっふっふっ、これが私流の豆撒き。ーーー【風檻】!  」
セナが発したのは風の上級魔法【風檻】。これは対象を風の壁で閉じ込める魔法だ。セナはそれの側で豆を反させる事で、凜緒を風の檻に閉じ込め豆から逃げられないようにしたのだ。
対象を閉じ込め確実に潰す戦法。
どちらが鬼らしいか見るまでもない。
「く、このままじゃ.......!!」
騎士団から教わった足捌きで襲いかかる豆をスレスレで回避しつつ、起死回生の糸口を探すが見當たらない。
反する度に徐々に豆の速度が上がっていく。いずれこのままでは回避が間に合わなくなることは目に見えている。
「だったら.....!!」
豆が反して頭上から襲ってくる。しかし凜緒は臆することなく、靜かに口を開く。
「《鋭く鋭利に・水は形をす》」
瞬間、水が凜緒の手の中で氷と化し氷の槍が生。凜緒はそれを頭上に向かって振るい豆を砕く。
風の檻が解ける。それと同時に凜緒は豆を投げる。
「お返し!!」
「ーーーッ!」
飛んでくる豆をセナは咄嗟に避けて反撃の豆攻撃。
凜緒が避けて投げる。
セナが避けて投げる。
お互いに一歩も譲らぬ戦いに中庭にいた人たちは固唾をのんで見守る。
「決著をーー」
「--つける」
セナは左手に持った袋に手をばし、ざっ、と豆を摑む。
凜緒は右手に豆、左手でゆっくりと槍を構える。
全員が息を呑む。
二人はバッ! と駆け出しーーーー
「凜緒!」
「セナ!」
一瞬の錯。
そのまま二人は立ち位置をれ替わって立ち止まり、靜寂が訪れる。
そして二人は同時に髪のをさっ、と払いーーーーお互い、相手が投げた豆が落ちる。
そう、引き分けだ。
「どうやら引き分けみたいだね」
「むぅ...私のほうがし早かった」
「あ!それなら私のほうが一瞬早かったもん!」
「私!」
「いーや、私!」
「「ぐぬぬぬぬぅう.......!!」」
ガシッ! と両手をつかみ合い睨みあう。
いつの間にか取っ組み合いを始めた二人に中庭の人たちは唖然とする。彌一は今のうちにとそっとその場を後にする。
「まったく、あの二人は何をやってるんだ....」
「そうですね」
「うおっ!?」
突如背後から聲がかかりすぐさま飛びのき距離を置く。「遅かったか!?」とに力をれ構えて、聲の主を見る。
そこにいたのはエルだった。
「なんだエルか」
「はい。ですからそんなに警戒しないでください」
「いや、突然後ろから聲がしたら驚くって」
「ふふふ、申し訳ございません」
口元に手を當ててほほ笑むエルに彌一は質問する。
「エルも逃げてる途中か?」
「ええ。ただ逃げ回るので一杯で.....よろしければマスターに同行してもよろしいですか?」
「ああ、別に構わないぞ」
「ありがとうございます。あっ、マスターかないでください。髪のにゴミが」
そういって手をばしてくるエルにを任せる。
エルの華奢な指先がびてーーーーその手に持った豆を當ててくる。
「---ッ!!」
即座に上を反らし豆を回避するとそのままバク転して回避する。
「流石に避けますか」
「どういうつもりだ」
「すみませんマスター。ですがこの勝負は負けるわけにはいかないのです」
「勝負?」
「ええ、ですからーーーーここでやられてください!」
言葉と同時にエルが素早く両手を振るうと、いくつもの呪符が投擲され、呪符が猛禽類の形をして彌一を奇襲する。
「ふっ!」
突撃してくる猛禽類を壁を使っての三角飛びで回避し、廊下の天井を蹴って再び地面に著地するとをひるがえして逃走する。しかしーー
「なに!?ワイヤーか!」
逃げようとした先で明なワイヤーに絡まれきが制限される。エルは式神に明なワイヤーをつけて攻撃と見せかけて罠を張っていたのだ。
左腕が拘束され、こうなれば力づくにとワイヤーを引きちぎろうが、びくともしない。さらには徐々に左腕から魔力が吸い取られた。
「無駄ですよマスター。それは拘束対象から魔力を吸い上げ度を増す魔導。いくらマスターでも簡単には逃げ出せません」
「どんだけ豆まきにガチなんだよ!?」
エルの無駄にすごい魔導と豆まきにかける熱意に彌一はつっこむ。なぜクラスメイトやセナたちといいこんなにも豆まきにガチなのだろうか?
「さぁ、マスター。----覚悟!!」
エルの指示に従って式神が一斉に彌一に殺到する。今度は確実に彌一を拘束する気のようだ。全を拘束されては彌一とて振り切れない。
「---いいや。覚悟するのはお前だ、エル」
パチンと指を鳴らす。その瞬間、彌一を襲おうとしていた式神たちがきを止め、同時にくるりと反転すると今度はエル目掛けて襲い掛かる。
「えっ!そんな!きゃっ!」
式神が突如自分の指揮下から離れたことに困し驚いている隙にエルの周囲を式神が駆け、エルの全を拘束する。
拘束されて膝をつくエルを見て、彌一は息を吐く。いつの間にか右腕を拘束していた式神も彌一のそばで飛び、手の中に呪符に戻る。
「いったい何を」
「式返しの応用だ。エルの式神は式神同士をリンスさせて命令一つで全部の式神がくようにしていたろ?まず、右手の拘束ワイヤーに魔力を吸われるときに魔力と一緒に呪祖を流しこんで右手の拘束をしている式神をに染させる。そしてそこからすべての式神にを染させて指揮権を奪い取ったのさ」
彌一は解析眼と解析をリンクさせその処理速度を使って、染した式神から式神へとまるでウイルスのようにを染させてエルの式神を乗っ取ったのだ。
すべての式神が獨立稼働していればできなかった方法だが、彌一は最初の攻撃の時に式神のきからエルが式神を個別でっていないことはわかっていた。
あっけらかんと言う彌一の答えにエルは思わず目を見開く。
一つの式神を乗っ取りそこからすべての式神を乗っ取るというのはできないことはない。だが異常なのはその速度だ。
拘束からの僅かな時間で10もの式神を乗っ取る、その規格外の魔処理にエルは戦慄と同時に尊敬を覚える。そして思う、やはり敵わないな、と。
「參りました。流石ですマスター」
「いやー俺も危なかった。エルこそ流石だったぞ?」
「お褒めいただきありがとうございます。と、ところでですねマスター。その.....そろそろこれ、解いてほしいんですが.....」
「え?」
頬を染めて俯くエルに彌一は聲をらし、エルのを見る。
式神が暴に拘束したそのせいでスカートがめくれて、スラリとしかしらかそうな太ももが見え、チラリと淡いグリーンのショーツが覗いている。さらに元にはワイヤーが強くくい込んで、エルのかなが殊更強調されてなんとも目のやり場に困る格好になっていた。
「わ、悪い!」
彌一も顔を赤くしてすぐに拘束を解く。
拘束が解けるとすぐさまだしなみを整えるエル。しかしその耳は赤く染まっている。
お互いに向かい合うとしばらく居心地の悪い沈黙が続く。
そしてふと思い出したようにエルが腕のバンドを彌一に渡す。
「ど、どうぞマスター。私は完全に拘束されたので私の負けです」
「あ、あぁ、ありがとう。ふぅ、これで14個か」
「隨分と集まったのですね?」
「まぁな。勇気と無謀をはき違えたバカどもの人數だ」
倒したクラスメイト(バカども)を思い浮かべながらポケットにバンドを突っ込む。
「それではマスター私の分まで頑張ってください。応援しております」
「オーケー。それじゃあ殘り時間あとしだし、取りこぼしたバカどもを一狩りいくとするか」
「ご武運を」
エルがスカートを優雅につまんで軽く頭を下げると、彌一はニヤリと笑いかけて殘ったクラスメイト(バカども)を討伐しに廊下を走る。
それから時間終了まで、王宮にクラスメイト(バカども)の悲鳴と彌一の高笑いが響いていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『それではいよいよ結果発表!!栄えある第一回王宮豆撒き大會の優勝者はーーーーーーーーーユノちゃん・メイ様・サニアペアーーーーー!!』
壇上の奈の聲と共に會場中から拍手と喝さい、さらには花弁が舞い、臺に立つユノとメイを盛大に祝福する。
ユノとメイは両手でばんざーい! と手を挙げて、舞う花弁にも負けない満面の笑みで喜び、子狼のサニアもしっぽをブンブンと振り回し喜びを表す。
壇上で嬉しそうに笑う娘の姿を見ながら彌一も拍手と寫真を撮る。
結局あの後クラスメイト(バカども)をすべて狩り終えて合計21個のバンドを集めた彌一だが、順位は3位。2位はヴィディルで28個。
そして1位のユノ・メイ・サニアはなんと57個、つまり114點という驚愕の撃破數だ。どうやらあのあとも兵士相手に無雙を続けたらしい。
「あー、ひでぇ目にあった......」
と、彌一の橫では全から疲労困憊のオーラを滲み出す健がいた。
「どうした?」
「彩と一緒に逃げてたんだが、途中からなぜか男子どもに狙われてな。結局逃げきれずボコボコにされた。豆で」
「......あぁ、ご愁傷様」
どうやら彌一以外にも犠牲者がいたらしい。馴染という関係でも容赦なく制裁を與えるあたりクラスメイトの見境のなさが伺える。子と仲良くしていればそれだけで制裁の対象なのだろう。
こうして波にまみれた豆まき大會は幕を下ろした。
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豆撒き大會が終わって帰宅後。今日の主役であるユノとサニアと泊まりに來ていたメイを祝いながら夕食の恵方巻を食べ終え風呂に浸かると就寢の時間だ。
「さて、そろそろ子どもは寢る時間だぞ~」
「「は~い!」」
パジャマ姿のユノとメイが手を挙げると、トコトコと彌一のそばに寄ってきて裾を引っ張る。
「ねぇパパ!きょうは3にんでねよ?」
「メイも彌一といっしょに寢たい!」
「それは別にいいが.....いいのかセナ?」
セナの方を見ると「うん」と言って頷く。
「勝負に勝ったのは二人だからね。今日は二人のお願いを聞いてあげて?」
「ん?勝負って?」
「実はね.....」
どうやらセナの話では、今日の豆まき大會で優勝もしくは彌一を倒した人は彌一を一回獨占する権利を手にれる、という容の勝負をしていたらしい。
それで納得した。セナと凜緒が対決していたのはお互いに邪魔するためで、エルが狙ってきたのは彌一を倒すためだということが。
「俺の知らないところで勝手に賭け事に使われるって.....とゆうかもし俺を倒した人と優勝した人が別だったらどうする気だったんだ?」
「そこは二人分彌一に頑張ってもらうということで」
「おい」
賭け事に利用されるのはあまりいい気持もしないが、まぁユノとメイの願いならよしとしよう。それに一緒に寢る程度の願いなら権利がなくてもお願いされたらかなえてやりたい。
「わかった、そういうことなら一緒に寢るか?」
「「やったー!」」
「サニアもこい。お前も優勝者だもんな?」
『わっふ!』
そういうわけで二人と一匹を抱え普段よりし早いが寢ることに。ベットにるとユノとメイが抱き著いてきて、サニアは腹の上で丸くなる。子供特有の高い溫が心地よく、サニアのモフモフしたが腹から伝わりすぐに睡魔が襲ってくる。今日はさんざんき回ったせいか全員ふわ~っとあくびをらす。
睡魔にを委ねようとすると、ユノがクイクイと服を摑んでくる。
「パパ、おやすみのちゅー」
「ああ、おやすみユノ」
チュッと軽いおやすみのキスをユノの額に落とすと、今度は反対から引っ張られる。
「彌一、彌一。メイもしてほしいの!」
「メイもか?」
「だめ....?」
上目遣いで聞いてくるメイに斷れるはずもなく、ユノと同じように額におやすみのキスをする。
「おやすみメイ」
「えへへへ~おやすみ.....」
軽く髪をでてやるとメイは嬉しそうに目を細め、そのまま規則正しい寢息を立てて眠ってしまった。
と、今度はまた服が引っ張られる。
「パパ、ユノ、も....パパは、ユノの....パパなのぉ......」
寢ぼけまなこのユノが可らしくおねだりしてくる。彌一はそんならしい娘の髪をほほ笑みながらでていく。
二人が眠った後もしばらく二人の頭をでながら彌一はそっと目を閉じた。
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8 93男子が女子生徒として高校に入りハーレムを狙っている件(仮)
表紙は主人公の見た目イメージです。お気に入り設定とコメントして下さった作者様の小説読みに行きます。花間夏樹という男子高生が高校に女子として入り、男の子に告白されたり、女の子と一緒に旅行にいったりする話です。宜しければお気に入り設定と コメントお願いします。
8 198グンマー2100~群像の精器(マギウス)
2100年のグンマーは、半知成體ビーストとの戦いの最前線。 群馬で最高の権力と知能、精神力を持つ少年少女達の生徒會。 名は、群馬最高司令部、通稱GHQ(Gunma・Head・Quarters)。 此れは、グンマー人によるグンマー物語であるかもしれない。 ★は挿絵等有り 人類の敵、ビースト。 OTONA(國連)や首都圏首席との政治的対立。 首都圏、栃木・茨城・千葉連合との武力衝突。 色んな事が起こる予定。 アルファポリス様にも投稿
8 77異世界で最弱の職についた僕は、最強を目指しました。
異世界に転生した主人公がはちゃめちゃな展開を乗り越え最弱から最強へ成長していく殘念系異世界ファンタジーです。
8 1303人の勇者と俺の物語
ある世界で倒されかけた魔神、勇者の最後の一撃が次元を砕き別世界への扉を開いてしまう。 魔神が逃げ込んだ別世界へ勇者も追うが時空の狹間でピンチが訪れてしまう。 それを救うのが一ノ瀬(イチノセ) 渉(ワタル)、3人の少女と出會い、仲間を得て、 魔神を倒す旅へ出る。 2作目の投稿となります。よろしくお願いします!
8 71俺の小説家人生がこんなラブコメ展開だと予想できるはずがない。
プロの作家となりかけの作家、イラストレーター。三人で小説を生み出していく軽快意味深ラブコメディ。高校を入學すると同時に小説家デビューを果たした曲谷孔と、同じ高校に入學した天才編集者、水無月桜、イラストレーター神無月茜の三人が織りなす、クリエイターならではのひねくれた純情な戀愛物語。 ※タイトル変更しました
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