《魔がない世界で魔を使って世界最強》【バレンタイン特別ストーリー】チョコっとした幸せ

とある晝下がり。セナは王都の商店エリアを歩いていた。だいぶ早いが今晩の獻立を考えながら々と見て回る。

「う〜ん、今日はおにしようかな?昨日は彌一の釣ってきた魚だったし.....」

などと言いながら店を見て回る。この時期はガル豚が安い。エルネで食べたガル豚包みの味を思い出してガル豚を買うことにし、屋のおじさんに代金を払う。

よく來るお店で、おじさんとも知り合いなので値段をしまけてもらった。

「後はニンジンにレタス、あっ、彌一から頼まれてたものも買っとかないと」

ゴソゴソとポケットからメモを取り出す。

「えーっと.......『新鮮なニワトリの』......」

どこで買えと言うのだろう。

 おそらく魔か何かに使うのだろうと予想できるが、あいにくセナは新鮮なニワトリのを売っているところなど知らない。

これは諦めてもらおう。

ポケットにメモを仕舞って再び歩き出す。

街は流石王都と言うべき活気があり、商人の盛んな掛け聲やセナと同じように買いをしている主婦の笑い聲も聞こえる。

そして様々な店からんないい匂いも漂ってくる。

周りの活気に吊られて財布のヒモも緩みそうになるが、そこはしっかりとしないといけない。確かに一家の収は冒険者組合の報酬などでかなりの額がたまっているが無駄遣いはいけない。

そんなすっかり主婦のような考えを持ちながら、セナは通りを見て回る。

と、その時隣の店から嗅いだことのない甘い匂いがする。

主婦たる前にセナも立派な年頃の。甘い匂いもには逆らえず、ふら〜っと寄ってみると元気なお兄さんが話しかけて來る。

「いらっしゃいませ!って彌一さんの奧さんじゃないですか」

「こんにちはカドモンさん。カドモンさんいつから店なんて?」

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「いや〜軽く息抜きみたいなもんですよ。店の方は今日は休みにしてこっちの店の方で珍しい食べなんかを売ってるんですよ」

そう言って頭を掻くカドモンと呼ばれた青年は、よく彌一が行くお店の店主だ。

路地裏にある小さなお店だが、扱う商品は珍しい鉱石やなどで知る人ぞ知る隠れ名店だ。

カドモンは彌一に連れられて店で何度か顔を合わせている。

「それで奧さんどうです?今日は珍しい食材を仕れてきたんですが」

そういって見せてきたのは冷凍機能付きの箱にった黒い板狀の。一見食べには見えないが甘い香りが漂ってくる。

「それは?」

セナが珍しそうに箱の中を覗き込むと、カドモンは言う。

「チョコレートです」

王宮の調理場では凜緒、彩、智花、奈の四人が調理臺に向かっていた。

「ゆっくりね」

「う、うん」

彩の言葉に頷くが、智花の視線は手元に固定されている。

智花は手に持つボウルをそぉ〜っと傾けて、中のドロッとした黒いを型に流し込む。それだけで調理場に甘い香りが広がる。

「ふぅ〜。できたー」

「お疲れ様。後はこれを冷蔵庫にれるだけね」

いくつもの型に流し込まれたを冷蔵庫に移して彩は後ろを向く。

「そっちはどう、.........」

そして後ろを向けばーーーー

「きゃああああーーー!!燃えてる!ボウルが燃えてるよ!」

「どうしていつのまにか燃えてるんですか!?水!早く水!!」

後ろをむけば、ファイヤーしているボウルを前にあたふたしている凜緒と奈がいた。

「どうなってるの!?」

どうやらまた凜緒の【料理】スキルが発したようだ。発しないあたりまだましと言うべきか......

「と、とにかく水を!!」

「----【凍風】」

とそんな時、どこからともなく詠唱が聞こえると冷たい冷気が吹き抜け、ファイヤーしていたボウルが瞬時に凍り炎が掻き消える。

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「.....なにやってるの」

呆れた聲がすると調理場のり口にセナがいた。

「つまりチョコレートを作っていたらまた凜緒がやらかした、と?」

「や、やらかしてないもん!ちょっと燃えただけだし!」

「ちょっと.....?」

燃えてチョコレートのように溶けかかっているボウルを見せるとサッと眼を逸らす。

はぁ、とため息をつきつつセナは彩に向き直る。

「それでなんでみんなはチョコレートを作ってるの?」

「街を見て回ってたらチョコレートを見つけたからよ。私たちの世界には子が意中の男の人にチョコレートを贈る、バレンタインっていう習慣があるの。もっとも意中の人以外にもお世話になった人や仲のいい人に義理チョコを送ったりもするけどね」

2月14日にあるバレンタインデー。日本ではが男にチョコレートを贈るのが一般的だが、海外で男からもに花束などを送ったりする。

もともとバレンタインデーはバレンタイン司祭の死を悼む宗教的行事だったが、そのうち若い人たちがの告白をしたり、2月は春の訪れをじるの告白にふさわしい季節であることから、この日をプロポーズの贈りをする日になったという。

「それで、せっかくチョコレートが手にったんだから。チョコを作って送りたいって凜緒と智花が言うもんだからみんなで作ってるの」

「あ、彩ちゃん!」

「そこまで言わなくていいの!」

真っ赤にして怒る凜緒と智花。智花は大地に、凜緒は彌一に渡したいらしい。

「それでセナはどうしてここに?」

「私もみんなと同じ理由」

そうして空間魔付與のカバンからさきほど買ったチョコレートの箱を取り出す。

「セナもチョコレート買ったの?」

「うん。それでこの間凜緒がチョコレートのこと喋ってたの思い出して、作り方を教えてもらおうと思って來たの」

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「それじゃあセナも一緒に作る?凜緒のが失敗しちゃったからまた作らないといけないから」

「それじゃあ教えてもらっていい?」

「ええ。セナも彌一君にチョコ渡すの?」

「今の話を聞いたら渡さない道理がない」

「ぐっ!し、しまったぁ.....」

セナも參加するとわかって凜緒が頭を抱える。料理の腕ではセナには敵わないとわかっているから緒で作っていたのにこれでは意味がない。

「はいはい落ち込まない。さ、凜緒ももう一度作り直しましょう。セナと一緒にね」

「わかった。私のチョコレート冷蔵庫にれておくね」

「うぅう~~~!こうなったらセナには負けないもん!」

「......ボンバーしないでね?」

「むきぃいいいいいーーー!!」

顔を真っ赤にして地団太を踏む凜緒。「ふふふっ」と不敵に笑うセナは、サッとカバンから手早くエプロンを著て髪を後ろで一つにまとめる。

ふわっとまう蒼髪がしくエプロン姿がとても似合っている。まさに若奧様といった風だ。

そんなセナの格好に彩たちは思わず息を呑む。同年代の子としてはエプロン姿が似合うというのは羨ましい。

「それで、どうやって作るの?」

「そうね、基本はチョコレートを溶かして型に流し込んでトッピングしたりするだけ」

「溶かせばいいの?」

そういうとセナはフライパンにチョコをれて炎の魔法を使う。

「って違う!チョコは直火にあてちゃダメ!」

「え?違うの?.....っ!チョコが!」

最初は順調に溶けていたチョコだが、徐々にボソボソと固まりだした。これでは型に流し込めない。

「チョコはこうやって湯煎して溶かすの」

「ゆせん?」

彩はチョコレートを包丁で細かく切るとそれをボウルにれる。そして今度は別のボウルを用意し水をれて火にかける。

ある程度溫まってくると、彩はチョコがったボウルをお湯につける。

するとチョコが狀に溶けだし、先ほどのセナのように固まることなくトロトロに溶けてきた。

「こうやってお湯を使ってゆっくり溶かすの。お湯も熱すぎると油分が分離するから注意してね」

「へぇ~。なるほど、こうやって溶かすんだ」

「ふっふっふっ、セナ~知らなかったの~?」

珍しく料理で失敗したセナに、凜緒はそれはもう嬉しそうな顔で聞いてくる。

カチンッときたセナはとりあえず凜緒のお湯にこっそりと【凍風】をして水をキンキンに冷やしておく。

「これならセナに勝てるかも......って、あ、あれ?急に溶けなくなった?あ、あれれ??」

突然溶けなくなったチョコに凜緒が困の表を浮かべる。セナは知らん顔をして鼻歌を歌いながら順調にチョコを溶かしていった。

だいぶ溶けてくるとボウルをお湯から出す。

「そして、今度はそれを型に流して冷やして固めるだけ」

ボウルを傾けて型にチョコを流し込む。そして智花と同じように冷凍庫にれて終了。

「簡単だね。でもこれじゃあただチョコの形を変えただけじゃない?」

「うん、その通り。だから今度はちょっと手を加えて作るわよ。幸いチョコレートはたくさんあるから試してみましょ」

「よろしくお願いします彩先生」

ぺこりと頭を下げてお願いすると二人で調理臺に向き直る。智花と奈も同じように隣に立つと、ボウルを持った凜緒が聲を上げる。

「セ~ナ~~~~~~!!魔法で私の水冷やしたでしょ!?」

「なんのことだか知らない」

「うううううううううーーー!!」

「いひゃい!?むひゅ~!!りおのあほぉ~!!」

「ふきゅ!みひゅ~!セナのばかぁ~!!」

お互いにほっぺをつねってばして爭う凜緒とセナ。その姿は姉妹の喧嘩のようだ。

そんな二人に三人は呆れたようにため息をらし苦笑いを浮かべる。そろそろ止めようか、と思った時、調理室のり口に人が現れる。

「なにやらいい匂いがしますね?」

「甘い匂い!」

「姉さん、メイ、待ってください」

り口に現れたのは、アーリア、メイ、ヘンリの三人だ。

「こんにちはアーリア、ヘンリ、メイちゃん」

「こんにちは彩。...ところで皆さん何をなさっているのですか?」

「チョコレートを作ってるの」

そういってセナにした説明をもう一度する彩。すると三人も興味深そうに聞く。

「でしたら私たちも參加しても?」

「ええ、一緒に作りましょ」

「あ、でもエプロンがないですね。とってきます」

「そう思って用意してございます!」

どこからともなく元気な聲が聞こえると、いつの間にかアーリアたちの背後にいたアーシアが手に持ったエプロンを掲げている。ちゃんと三人のサイズぴったりのものだ。

「アーシアちゃん!?いったいどこから」

「え?普通にやってきましたけど?」

當たり前のような顔で答えるアーシア。しかしこの場のだれもが聲を掛けられるまで気づかないというのはびっくりだ。こういうこともあるのかもしれない。

「じゃあそのアーシアが持ってるエプロンは?」

「メイドたるものいついかなる時も主が必要としているものを用意するのは當然です!と師匠からいろいろなことを教わりました!ほかにも足運びとか気配の斷ち方なんかも教わりました」

どうやらアーシアに気が付かなかったのは偶然ではないらしい。

よく見ればアーシアの足運びや呼吸法、作などが出會った頃とは比べにならないくらいにとても錬されている。

彩やアーリアたちは知らないが、実は王宮に仕える執事やメイドはエルの『メイド・執事研修』、もとい魔改造をけていた。

メイドや執事の質の向上はもちろん、メイドや執事として主に気を使わせない気配の斷ち方や、主を守るための荒事や暗殺に対処する方法や戦闘技を叩き込まれており、メイドや執事一人一人が王宮騎士団レベルの技に著けていたりする。そのレベルは參加したメイドや執事すべてが【気配遮斷】や【】などのスキルを習得するほど。

これは過去の魔人襲撃の時のように再び魔人が襲撃してきた場合の保険として、彌一がエルに頼んでおいたものだ。

しかし彌一は、自分のは守れるくらいの技に著けさせればいいと思っていたのだが、気が付けばか炊事洗濯から戦闘までこなすスーパーメイド・執事集団が完しており、彌一をして「やりすぎだろ....」と言わせるほどだった。

しかしエルは語る。

『できれば弓や剣を持った兵士5人程度ならお盆で制圧できるくらいにしたいですね』

いったいエルは何を目指すつもりなのだろうか。

「.....そういえば最近コメットさんが気が付けば後ろにいることが増えたような」

「....確かに。西村先生も『最近ソフィアさんに背後を取られることがある』とか言ってた」

どうやら全員そういう経験があるのか怪訝そうな表を作る。

ちなみにコメットとソフィアは智花と西村の専屬メイドだ。

すると頬を腫らした凜緒が聞く。

「それで、師匠って誰?」

「エルさんです!」

「「「「...........あぁ、彌一くんか」」」」

「...........うちの旦那がごめんなさい」

全員すぐに黒幕まで行きついたらしい。セナが申し訳なさそうに謝る。

「まぁとにかく、エプロンがあるなら三人も作りましょ。アーシアも作る?」

「いいんですか!ありがとうございます!」

「アーシアも作ろ!」

「はい!メイ様も頑張りましょうね!」

ということで気を取り直し、四人も加えてチョコづくりが始まった。

「それじゃあ全員それぞれで作ってみようと思うけど、わからないことや作りたいものがあったら言ってね」

「彩はお菓子作りとか得意なの?」

「まぁそれなりにね。健によく作ってるから」

『ほほぉう~~』

さらりと暴した彩に全員興味津々の表で見つめる。全員の視線をけて、彩が自分の失言を理解し顔を赤らめる。

「ち、ちがっ....!健が家に來る時に茶けで出してただけだから!」

「さぁ、チョコ作りますか〜」

『はーい』

「って聞きなさいよ!!」

彩のび聲を聞かないふりして全員がチョコ作りに勤しむ。

彩も顔を赤くしつつ、自分のチョコを作り始める。せっかくだし義理チョコをクラスメイトの男子全員作ろうかなと考えて作ったが、一つだけ他のチョコより凝ったチョコが出來た。

彩自も一つだけ無意識に作ってしまったが、自然と渡す相手が決まっていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ただいま〜」

「お邪魔しま〜す」

チョコ作りを終えて夕方。セナと凜緒が家の玄関を開ける。二人とも作るのに熱中して遅くなってしまった。

玄関で靴をいで廊下を歩く。するとなにやら甘い香りが漂ってきた。

そして甘い香りが漂ってくるのと同時にリビングの扉が開かれ、可らしいピンクのフリフリエプロンをきたユノがセナ目掛けて小走りに駆けて來る。

「ママおかえり〜!」

「ただいまユノちゃん」

「こんばんはユノちゃん」

「こんばんはりおおねぇちゃん!」

らしい娘の頭をセナはでていると、扉から彌一とエルが出てくる。

「おかえりセナ。いらっしゃい凜緒」

「おかえりなさいませセナ様。ようこそお越し下さいました凜緒様」

そうして出てくる二人。しかしセナと凜緒は彌一の姿を見た瞬間、「ぷっ....!!」と吹き出す。

なぜなら彌一は、ユノとお揃いのピンクのフリフリエプロンを著ていたからだ。

「.....っ!!や、彌一 、どうしたのその格好......ぷっ.....!!」

「くっ.....!!に、似合ってるよ....ぷっ....!!」

「笑ってんじゃねぇーよ!!」

愉快そうに腹を抱えて必死に笑いを堪える二人に彌一はぶ。

「はぁ、とにかく二人とも上がれ。今日は俺たちが晩飯作ったから」

「あ、ごめんね。帰るのが遅くなって」

「いいって。いつもセナに任せてばっかりだからたまには旦那がやらないとな」

「ふふっ、ありがと。あ・な・た」

そう言って彌一の口にを重ねて『ただいまのキス』と『ありがとうのキス』をする。

まぁ、全員がいるところですると當然不満が上がるわけで。

「ママずるい!ユノもパパにちゅーしたい!」

「むううううううう〜〜!!」

同じように頬を膨らませるユノと凜緒に苦笑いしながら、リビングにる。

リビングのテーブルにはカレーとサラダがズラッと並んでおり、凜緒の分も用意されていた。

「なんとなくくる予がしてな」

「ありがと。じゃあこっちで食べてから帰ろうかな」

凜緒を加えて五人で席に著くと、いただきますの言葉で食べ始める。

ユノが彌一に『あーん』をしたせいで、セナと凜緒がどちらが『あーん』をするかでめて、エルにドパンッ!されるという事件は起きたが溫かい食事の景だ。

「.....ん?なんだか深い味わい」

「本當だ。コクがあるというか」

額を真っ赤にしたセナと凜緒が揃って首をかしげる。彌一が作ったカレーはセナの作るカレーと比べてし深い味わいだ。

「おっ、うまいか?」

「うん、すっごく味しい。でもなにをれたの?」

「ん〜?緒だ」

セナに頼まれても彌一は珍しく答えない。むっ、と頬を膨らませ問い詰めようとするとすかさずユノが口を挾む。

「パパ、パパ!このかれーすっごくおいしい!おかわり!」

「それならよかった。よし!じゃあいっぱいたべるユノにはを多めにやろう!」

「おにくー!」

子供用の皿に多めのカレーを載せてあげると、キラッキラッした目でカレーを見つめぱくっといく。

カレーを味しそうに食べる可い娘の姿にセナは出かけて言葉を引っ込めて、ユノの口の周りを拭いてあげる。

凜緒とエルもその景を微笑ましく眺めながらカレーを口に運んでいく。

そして全員が一回はおかわりをしたせいで、多めに作ったカレーがすっからかんになってしまった。

『ごちそうさまでした』

全員で合唱すると「食った〜」と彌一が背もたれにかかる。

「パパ、あれ」

「そうだな。よし、セナと凜緒はちょっと待っててくれ。エル」

「はいマスター」

「「??」」

なにがなんだかわからない二人を置いて三人が奧のキッチンに消える。

しばらく待っていると三人が戻ってきた。ユノは後ろで手を隠している。

「ママにプレゼントがあるの!」

そう言ってセナの前に來るとユノがとびっきりの笑顔とともに、

「はいママ!はっぴーばれんたいん!」

そう言って赤いリボンで裝飾された小さな箱を手渡す。

それはバレンタインチョコだ。

「これユノちゃんが作ったの?」

「うん!ユノ、ママだいすきだから!」

「ユノちゃん.....!ママも大好きだよ!」

らしすぎる娘の姿に辛抱堪らなくなったママはぎゅっと抱き締める。存分になでなでした後彌一に説明の視線を送る。

「昨日カドモンさんの店にユノと行ったらチョコレートを貰ってな。バレンタインは家族や友人にも送ったりするから、ユノがセナにチョコを贈りたいって言い出して、セナに緒で今日作ってたんだ」

「ママびっくりした?」

「うん、すっごく!ありがとねユノちゃん」

「エルおねぇちゃん!やったね!」

「ええ。ユノ様大勝利!ですね。それで、セナ様私からも」

ユノに続いてエルも同じく赤いリボンで裝飾された小箱をセナに渡す。セナはそれを大事そうにけ取る。

「ありがとうエル!嬉しいよ!」

二人のチョコをテーブルに置き、ユノを抱きかかえて抱き締める。

ユノは嬉しそうに抱きしめられた後、セナから離れ、今度は凜緒に向かう。

「りおおねぇちゃんにも!はい!はっぴーばれんたいん!」

「私にもあるの!?うれしー!ありがというね?ユノちゃん!」

「りおおねぇちゃんもだいすきだから!」

「もう、可い!やいくん!ユノちゃん貰っていい!?」

「ダメに決まってんだろ!」

「ユノちゃんはうちの子よ!」

「ダメです!」

彌一・セナが聲を上げて卻下する。普段は靜かな口調のエルも聲を上げる。こればかりは見過ごせないらしい。

しばらくユノの可さに悶えていると、エルもセナと同じようにチョコを凜緒に渡し、凜緒は微笑む。

「ありがとねエルさん。部屋に帰って大事に食べるね?」

「こちらこそ。喜んでいただいて何よりです」

セナと凜緒は二つのチョコを前にして嬉しそうに微笑む貰えるものとは思ってもみなかったので、喜びが激しい。

そして、二人はその喜びの表のまま、本命へと向きなおる。

視線をじ取った彌一は、ポケットから二つの箱を出す。

「ハッピーバレンタイン、二人とも。俺からも二人にバレンタインチョコだ。....地球では貰う側だったからなんか変な気分だな」

二人は差し出されたチョコをまるでガラスの寶石のように大切にけ取る。その二人の表は、一目で心の底から嬉しいとわかるものだった。

「嬉しい。....本當に嬉しい。ありがとう、彌一.....!」

「ありがとう、やいくん.....!大切に保管するね!」

「いや食べてくれよ?」

ツッコむ彌一だが、二人は聞こえてないのか、それはそれは嬉しそうな表で、男構わず魅了してしまうほどの表を作っている。

そこからしばらく大事そうな目で見た後、二人は目を合わせて同時に苦笑いを浮かべてしまう。

「まさか先に仕掛けられるとはね?」

「失敗だった」

二人だけでの會話に彌一たちはついていけないが、二人はカバンから箱を取り出しーーー

「「ハッピーバレンタイン」」

そうして彌一たちと同じようにチョコを差し出してきた。

「セナと凜緒も作ったのか!?」

「ママも!?」

「そうだよ〜。ユノちゃんに先越されちゃったけどね?はい、これユノちゃんの」

「ほんとう!?わーっ!ママありがとー!」

セナも同じことを考えていたことに心底驚いたようなユノだったが、すぐにチョコと聞いて喜びをわにする。大好きなママが同じことを考えていたことがユノにとって一番嬉しいのだ。

凜緒もし恥ずかしいそうにしつつも、ユノとエルにプレゼントを渡す。

セナもエルに渡し終えると、二人は彌一に向き直り、

「「ハッピーバレンタイン!」」

と再び笑顔で彌一にチョコを渡す。凜緒は張しているのか、足がプルプルしている。

「ありがう二人とも、スゲー嬉しいよ」

「そ、その、私のは上手くできたかわからなくて.....地球では結局市販チョコだったし...」

凜緒がし落ち込んだ様子で彌一の表をうかがう。

地球ではバレンタインは凜緒もチョコを作ろうとしたが、結局は破してしまって市販のチョコになっていた。

そんな料理をしようとすると破してしまう凜緒がチョコとはいえ自分の手で作ったのだ、どのような出來でも嬉しい。セナもチラッと視線を送ってくることからセナも凜緒を手伝ったのだろう。

そう思うと彌一は凜緒から貰ったチョコの包裝を丁寧に剝がし、箱を開ける。

凜緒のチョコは、一口サイズの可らしいチョコが五つっていた。一つ一つの形は不格好でお世辭にも綺麗に出來てるとはいえない。それでも、このチョコからは作り手の相手に対する気持ちがしっかりとじられる。

彌一は一番形が不格好なチョコを取り出すとそのまま口に運ぶ。

「おぉ!うまいぞ!」

「ほ、ほんとう?」

「ああ!凜緒、ありがとうな?」

彌一の心からそう思っているのをじ取った凜緒は、パァアア!と表が明るくなり嬉しそうに涙を浮かべる。

「うん!」

頷く凜緒は子供のように無邪気な笑顔で溢れていた。

凜緒が帰った後、寢室のソファでくつろいでいると、セナがティーセットを持ってやってくる。

「ユノは寢たか?」

「うん。ぐっすり。よっぽど今日のチョコ作りがんばったんだね」

「ああ、セナのために張り切って作ってたぞ」

「ふふっ、嬉しいなぁ〜」

テーブルにティーセットを置くとセナは彌一の隣に座り、ユノから貰ったチョコをあける。

ユノのチョコは可型のチョコで、狼がし多い。そこからユノらしさをじて、思わず笑みがこぼれる。

「うん!味しい」

「それはよかった。ユノも頑張った甲斐があったな」

「ねぇ、彌一もチョコ開けてみて。想がしい」

セナに懇願されて、彌一はセナから貰ったチョコを開ける。

は凜緒と同じ一口サイズのチョコだが、別のチョコでトッピングしたのか、チョコにも一つ一つ違いがある。

一つ取り出して口に運ぶと、チョコの甘い香りと味が広がる。

そしてそのあと、ほんのりとビターな苦みが広がっていく。

「これは、........コーヒーか?」

「正解。甘いだけじゃ飽きると思ったし、彌一甘すぎるのあんまり好きじゃないでしょ?」

「よく知ってたな?」

「私は彌一の奧さんだもん」

えっへんとを張るセナの頭をでる。

「めちゃくちゃ味いよ。ありがとうセナ、してる」

ちゅっと軽いキスを口にすると、セナが頬を染めて恥ずかしそうに可憐にはにかむ。

恥ずかしいのを誤魔化すようにセナはチョコの一つをとって彌一の口元に持っていく。

「食べさせてあげる。はい、あーん」

「あーん......」

セナに食べさせてもらうとそれだけで味しくじられる。ココアパウダーのかかったチョコは甘さに深みがある。

「もう一個いる?」

「もらおう」

「じゃあ.......ふぁい、」

「ッ!?」

なにお思ったのかセナがチョコを口元に持ってきて軽く噛むと、その狀態で彌一に顔を突き出してくる。

俗に言う口移しだ。

目を閉じて彌一を待っているセナに、ゴクリっと唾を飲み込み、張しつつも肩を摑んで顔を近づける。

「んっ......あむっ.....はむっ.....んんっ.....」

を重ねるとチョコが押し出され彌一の口の中に転がり込む。それと同時にセナの舌もってきて、二人はお互いに舌でチョコを奪い合うように絡ませる。

「んっ、んっ.......はんっ.....んちゅ.......んあっ、んっ......やいひ...あまい.....おいしい......」

「俺もだ。世界で一番甘いよ......んっ」

「んんっ....チョコが、こっひに.....んっ.....やいち......もっと、きて.......んっ!」

甘く囁くおねだりといつもと違うキスに彌一は理の限界。

セナを抱き締めそのままソファに押し倒す。

「んあっ....はぁ、はぁ....チョコでベトベト」

「本當だな。というかいつもよりセナがエロすぎて理が限界だ」

「え、エロくないもん」

「噓つけ。こんなことしてくる奴がなにを言うか」

セナが反論しようとするが、彌一はセナの口にチョコをれて黙らせる。

するとセナはチョコを口に含んだまま、

「食べたいの.....?」

「.....ああ、スゲー食べたい」

そう言うとセナは微笑んで手を広げて、

「じゃあ.......私を、食べて」

プツリと彌一の理が切れると、荒々しくセナのを奪い、とは反対にを優しくむ。

それから一晩中二人はお互いにいつもより激しく熱的にし合った。

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