《魔がない世界で魔を使って世界最強》ジャックポット

一言で言えば寶庫。

グーデンタームの中心にあるカジノ區のカジノ會場はそう表現するほどのものだった。

會場は恐ろしいほど広く、2階、3階と上にも続いている。その広い會場にはいたる所からギャンブルに勤しむ者たちの歓聲や悲鳴が響き、金のやりとりがされている。

天井からは巨大なシャンデリアがぶら下がり、そのが卓上の金、ではなくメダルに反し、それが様々な場所で起こっているので會場全が明るい。

そんな金と渦巻く魔境の世界に、口で佇む彌一たち。

「すげぇ、これが世界最大のカジノ.........」

「どこ見ても金ピカ」

「パパ!キラッキラッ!いーっぱいキラキラしてる!」

予想以上の豪華さに一同しの間息を呑む。ユノはカジノの煌びやかさにはしゃいでいたが。

しばらくその景を眺めていると、いくつか視線をじる。それもそうだろう。後ろには華やかな陣がいるのだから。

しかし等の本人たちは注目されていることに興味を示さず、カジノを珍しそうに見ているだけ。

すると、無駄に爽やかな笑顔を振りまきながら1人の男が近づいてくる。

「やぁ、しきレディたち。君たちのようにしいレディに會えて僕は運命をじるよ。どうだい、よかったらあそこのバーで語り合わないかい?」

なんともキザったいというかまるで演劇のようなセリフで男が近づいて手を差し出してきた。ルックスは十分にイケメンの類にるので、普通ならもときめくのだろう。

しかしセナたちはきょとんとした表の後、逆に気持ち悪いものを見るような目で嫌そうに腕をり、セナと凜緒、エルは彌一の後ろに、彩は健の後ろに隠れる。

途端、男がピシッ!と手を差し出した狀態で固まる!

大方男は今までにこのような扱いをされたことなどないだろう。故に彼は自分が話しかけさえすれば簡単に落ちると思っていたのだが、あいにくここにはそんなに軽いはいない。

そんな今までにないショックをけ手を差し出して固まる不恰好な男に彌一が近づく。

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男は彌一が近づいてくるとハッ!と気をとりなおし、睨みつける。

「なんだよお前。僕は彼たちに用があるんだ。わかったらとっとと引っ込んでろ!」

「アァ”?」

隨分と勝手な言いように彌一は殺気のおまけ付きで睨み返すと、途端に「ヒッ!?」とけない聲を上げて男がすくみ上る。

彌一は取り敢えず殺気をもう一度強めにプレゼンフォーユーすると、男はグリンっと白目を剝いてその場に倒れてしまった。

「ちっ、面倒くさいなこのゴミ」

嫁に手を出そうとするものにはつくづく容赦しない彌一。自分がやっておいてあんまりな言葉を吐くと、どうしたものか、と視線を投げる。

するとスキンヘッドにサングラスの黒スーツといういかにもヤバそうな格好の警備員の大男たちがやってくると、こういうことは多いのか手慣れた手つきで男を連れ去って行った。

「彌一、気絶はやり過ぎ」

「俺のセナに手を出そうしたんだから當然だ。ましては今はこんなにも綺麗なんだから尚更だ」

「もう、彌一ったら」

口ではそう言いつつもセナは頬を染め嬉しそうに彌一の腕に腕を絡めて顔を覗き込む。

いつもよりも綺麗な妻の姿に彌一はもう何度目になるかわからないの高鳴りに襲われる。

思わず人差し指の上にセナの顎を乗せて顔を上げさせると顔を近づけようとして、

「彌一くぅううんん???」

「................」

視界の端にハリセンを持った彩が迫力のある笑みでこちらに微笑んでいる。

彌一は無言で手を下げた。

そのせいで途中でやめてしまった彌一にセナはむくれた表を作り見つめる。

「むぅ.......さっきはあんなに激しかったのに」

「わ、悪かった。セナが綺麗すぎて理が飛んでたんだ」

するとセナが手をの前でもじもじさせ、

「なら、その.........あ、あとでさっきみたいに、してくれる.......?」

し恥ずかしそうに頬を染め、上目遣いで覗き込むセナに、彌一は再び理が飛び掛ける。しかしそこはグッと堪え、細いセナの腰に手を回して引き寄せて、耳元で囁く。

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「ああ。......今までなんか比べにならないくらいに、な」

「ーーー!!」

熱く囁かれたセナはビクッとを震わせけた顔でおしい旦那を見つめる。

アイスに黒と砂糖をふんだんにかけた吐きそうなくらい甘ったるい空気に、健たちは焼けで腹いっぱいだ。

取り敢えず固有魔【二人の世界】を作り出した彌一をハリセンでしばき正気を取り戻させると、「ゴッホンッ!」とわざとらしく健が咳き込む。

「ところで彌一。ここで稼ぎまくることは理解できたけど、そんなに都合よく行くもんか?」

ギャンブルは勝負であって必ず勝てるという保証はない。ましてやそれがあと二日までにとなると相當だ。

「それなんだが、全員にこれを渡しとく」

そう言って彌一が取り出したのは小さな寶石に紐を通した數珠のようなもの。

それを赤、青、緑ととりどりの腕を全員分取り出し、彌一は自信満々に掲げ、

「これは『幸運の腕』だ。これをつけてるだけで運気がアップ!」

胡散臭さ満載である。

まるで新聞の広告に載っている胡散臭い商品のようなものを掲げる彌一に全員疑いの眼差しを向ける。どう見てもただの石をつけた紐だ。

「.........お前ら全く信じてないだろ?」

『うん』

「まぁ、俺も言ってて若干胡散臭くじるよ......。でもこれは本だ。この寶石に魔的処理を施してる。これのおで人の運に干渉して運を本當に多だが一時的に上げることができる。ちょっとしたお守りだと思えばいい」

パッとみは只の寶石だが、実はこれ純度の高い魔石で、その魔石に概念系魔の刻印を刻む事で一時的に運を上げることが出來るというものだ。

だが運という概念に干渉するのでいくら純度が高いとはいえ三時間程度が限界なのだが、今回はこれで十分である。

それを聞いた健たちは鳩が豆鉄砲をくらったよな顔で腕を眺ていた。

「なんでもありだな......」

「本當はこういうのはどうかと思うが、今回は時間がないからな」

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「まぁ、確かにな。よし!なら人助けのために稼ぎまくってやる!」

やる気満々の健に釣られユノも「おー!」と可らしく拳を上げ、腕を小さな手に括り付ける。

すると寶石に刻まれて刻印が一瞬小さくるとすぐに消える。魔の方は問題なく発したようだ。

全員がそれぞれ腕をつけ終わると、いよいよ彌一たちはき出す。

「ロイヤルストレートフラッシュ」

そう言って彌一は手札のカードを臺の上に投げる。

カードは10・J・Q・K・Aの五枚。確率649740分の1のポーカーにおいて最強の組み合わせだ。

盤上に現れた最強に彌一の行方を見守っていた観客が湧き上がり、対戦相手は「バカな!!」とカードと言葉を吐いて椅子から立ち上がる。

彌一が今やっているのは賭けポーカー。対戦相手はつい今しがたまで連戦に連戦を重ねていた中年のおっさん。

実はこのおっさん、巧妙なイカサマで無雙をし続けていたので、彌一は金を巻き上げる相手をこのおっさんに決めた。

勝負中は解析眼によるイカサマ看破で、相手がイカサマを出來ないように牽制しつつ勝負を決めた。

そして試合前に散々挑発しておいたので賭けられた金額はかなりのもの。たった數回の試合ですでに彌一の所持金額は最初の10倍近くにまで膨れ上がっていた。

ちなみにメダルの換金は、1ネクトでメダル1枚で、メダルは100枚で銀メダル1枚に、銀メダル10枚で金メダル1枚の換算だ。

ジャラジャラと音を立てて手元にやってくるメダルを回収していると、対戦相手のおっさんが憤怒の表

こちらを指差す。

「ふざけるな!イカサマだ、イカサマに決まってる!だから今の試合は無効だ!」

「酷い言い掛かりだな。イカサマなんてするわけないだろ?」

「ええいっ!黙れ!この私が負けるなどありえん!イカサマに決まっている!」

なんとも傲慢なおっさんに面倒になってきた彌一。一発殺気をお見舞いしてやろうかと思ったその時、

「おいおいそこまでにしないか?楽しいギャンブルに喧嘩なんて無粋なことするもんじゃねぇーよ。な?旦那」

そう言っておっさんの肩に手が置かれ、一人の男が現れる。

だらしなく著崩したスーツに、ナイフで適當に切ったような髪の30代くらいの男。口に咥えたタバコのようなものが、ワイルドなじを醸し出し意外と男にはまっている。

そんな男はおっさんの顔に近づくと、彌一とおっさんにしか聞こえない聲で言う。

「それに、イカサマっつーのはあんたが裾に仕込んだカードのことじゃねぇか?」

「ーーッ!!な、なんのことだかサッパリ........」

男の言葉におっさんは明らかに揺した表になり、不自然に裾を後ろに隠す。そう、おっさんのイカサマとはカード換だ。勝負中に右手のコインで音を立てて、自然に右手に意識を集めその隙に左の裾に仕込んだカードをれ替えるというもの。

意識を集め大膽に、それがこのおっさんのイカサマの手口。手口がわかればなんてことないが人間というのは不思議なもの、全員騙されていた。彌一と、あとこの男以外はだが。

彌一はそれがわかっていたからそれをさせないように左側に人を集めるように仕向けつつ、左手をかせないよう牽制していた。

あとはおっさんの表をよく観察し、こちらにいいカードが揃うのを待って勝負を仕掛けるだけ。まぁ、まさかロイヤルストレートフラッシュが出るとは彌一自思わなかったが。

その後、男がいくつかおっさんに耳打ちすると、おっさんは「ちっ」と舌打ちして去っていく。

「ありがとうございました」

「いいってことよ。ここではこういったいざこざは日常茶飯事だからな。お互いに助け合っていこうぜ」

「それでもありがとうございました。俺はヤイチ・ヒイヅキ、冒険者です」

そう言って彌一が手を差し出すと男はし驚いたような顔を作る。

「ああ、いや悪い。冒険者ってのはどいつも荒い格の奴らが多くてお前みたいな禮儀正しい奴は珍しいなと思ってな。俺はマルク・ジェイト、ただの賭博師さ。よろしくなヤイチ、俺のことはマルクでいい。あと敬語は無しだ」

「よろしくマルク」

お互いに手を握って握手をわす。するとまたしてもマルクは息をらし

「へぇ、その歳でなかなかの剣の使い手だな。ただ、これは剣がメインっつーわけじゃなくて剣も使える、そうだな....魔法師か?」

「ッ!?どうして!?」

「おっ、あたりだな?」

たった數秒でマルクは彌一の戦闘スタイルと言い當てた。その事実に彌一は驚愕の表でマルクを見る。

マルクはニヤリと得意げに笑うとタバコを指で挾み口を開く。

「手のでな。さ、、傷、手の形。手っていうのはそいつがどういう風に生きてきたかを教えてくれる。剣士のタコなんかな」

「すごいな、まさか手でそこまでわかるとは思わなかった」

「はははっ!これでも俺は賭博師だからな。ギャンブルってのは手先の用さ、観察力が重要だからな。もっとも、俺はそんなに強い賭博師っていうわけじゃないが」

なんでもないように言うマルクだが、いくら手にその人の特徴が現れるとはいえ普通あの一瞬でそこまでわかるものではない。自分でそこまで強いわけではないというマルクだが、その察力は只者ではない。

と、その時黒服の警備員が二人の元にやってくると、マルクに話しかける。

「ジェイト様、お時間です」

「もうそんな時間か、すまんヤイチ俺は用事がある。また會おうぜ」

「わかった。こっちこそまたな」

ニッと歯を見せて笑うとそのままマルクは警備員と共に行ってしまった。

「さて、次は何をするか」

増えたメダルを金メダルに換金してもらい腰のメダルホルダーにれて辺りをブラブラと歩く。カジノは小さい頃、結社の仲間に連れられてラスベガスのカジノに行ったくらいなので久々だ。

一階ではポーカーやブラックジャックなどのカードゲームが多くあり、二階はスロットなどのマシンゲームが多い。

車と風魔法でくエレベーターに乗って二階に上がると、一階以上の騒々しさだ。人々の歓聲の中にスロットマシンの機械音が混じっている。

「すげー.......てか、スロットマシンあるんだな........」

そんなどうでもいいことをいいながら次のゲームを探していると、『おおーー!!』と熱い歓聲が上がる場所があり、そこに目を向けると見知った顔、健がいた。

「おらぁあああッ!!」

拳を一発。地面を砕きかねない程の力強い踏み込みから放たれた拳は、一際大きな機會の一面に突き刺さる。

すると機械の上部で回っていた三つの數字のうち右の數字が『7』で止まる。

このスロットは回転速度はどうということはないのだが、ボタンは鋼鉄で作られており並みの力ではボタンを押すことさえできない。

しかし健は【強化】でボタンを毆る。

「もう一丁ッ!!」

続けて今度は一発目の隣の巨大なボタンらしきものを毆ると、真ん中の面が『7』の數字で止まる。

「これで.......ラストッ!!」

ズバァアアンッ!!と一層大きな衝撃が走り、拳が最後のボタンを毆って止まる。

そして上部の最後の數字は、『7』。

スリーセブン、大當たりジャックポットだ。

その途端機械、巨大スロットマシンが振すると、排出口からジャラジャラとメダルが排出される。

「よっしゃー!大當たりだ!」

「大當たりだ、じゃないわよ!!」

バシンッ!と健の頭を彩がしばく。

「誰が有り金全部賭けてんのよ!もし失敗したらどうする気だったのよ!」

「イテテテ........べ、別にいいじゃねぇか。結局五倍になったんだし」

「ええぇい!黙らっしゃい!!今後健のお金の管理は私がします!」

「え!?冗談だろ!?」

「何か!?」

「イエ、ナンデモゴザイマセン」

鬼の形相でハリセンを持って手を叩く彩に即座に正座の健。その姿は金にだらしない夫を叱っている妻の絵だ。

「まったく何やってんだか」

カジノのど真ん中で正座で説教の二人の姿に彌一はため息をつきつつ、奧の方へ向かう。

「パパ〜!」

ステテテーー!と走ってきたのはユノ。その手には大きな袋を持っており、ユノの後ろにいるセナも同じように大きな袋を持ってやってくれる。

「ねぇパパ!みてみて!」

ユノが満面の笑みで袋を掲げてくるので中を覗くと、そこには袋いっぱいの金メダルが。

「うお!?どうしたんだこれ!?」

ざっと見ただけでも袋には數萬枚枚近くある。さらに、セナの方の袋を見ると、こちらも數え切れないほどに。彌一の所持金額を余裕で超えている。一どうやって稼いだのだろうか。

「あれでユノちゃんが當ててね」

そう言ってセナが指した方には、他のマシンとは明らかに違うとわかるほどの豪華さのスロットマシンが。

「あのマシンはここの名らしくて、數學が回り出すと畫面が見えなくなるの。その狀態で十つの數字を揃えるらしいよ。難易度が高過ぎてほとんど運任せだから、賭けの倍率も他とは比べにならないんだって。

「それでユノは......」

「一回で全部『7』で、倍率は10000倍。しかもユノちゃん持ってたメダルの半分近くもれたから.......」

「ま、マジか.........」

セナが苦笑いで、彌一は引き攣った笑みを浮かべる。いくら腕の効果があるとはいえこれは異常だ。おそらく元からユノは運が凄く強いのだろう。

「ねぇパパ、ユノすごい?」

「あ、ああ、ユノはすごいな。俺なんかあっという間に抜かされたよ」

たった一回のゲームで億萬長者となった娘に、教育上大金を持たせるのはどうだろう?と 考えるが、當の本人はお金など興味ないようで、ただただ大好きなパパに褒めてもらいたいといった表だ。

でもユノのおで運営にも目をつけられただろうし、オークションの際のお金が増えたのは事実。彌一はユノの頭を優しくでるとユノは嬉しそうに笑って、ギュッと腰に抱きついてきた。

「そういえばエルはどうした?エルにセナとユノのこと任せたはずだけど?」

「あれ?そういえばどこに........?」

キョロキョロとあたりを見渡すが見當たらない。エルにはユノとセナの護衛を任せていたのだが、どこに言ったのだろう?

「ここですが?」

「うおっ!?」

突然後ろから聲をかけられ驚く彌一。

「一どこに行ってたんだ?」

「申し訳ありません。セナ様とユノ様に手を出そうとした不埒な輩がいたので」

と言って手をハンカチで拭うエル。その手に薄っすらと赤いものが見えた気がするが気にしない。

「なるほどわかった。そういえばちょうど実験のために新鮮なしいと思ってたんだ。エル、そのゴミどもはどこだ?」

顔は笑っているが目が笑っていない彌一さん。そのまま服の側にあるホルスターに手がびる!

「マスターご安心を。すでに私が処分.......いえOHANASIしてきましたので問題ないかと。これも飲ませておきましたし」

サッと手持ちポーチからエルが取り出したのは緑った小瓶。そう例の息子が機能しなくなるやつだ。

これは決して子が常日頃持ち歩いているものではない。しかし彌一はもしもの時のためにエルに持たせているのだ。

ユノとセナに手を出そうとすればドンドン息子を被害に遭う奴が増えていく!

「........それならいいか。全く、どこへ行ってもうちの嫁と天使に手を出そうとしやがる。認識阻害用の魔導を早急に作るか」

「その時はお手伝いいたします。あとマスターこの薬も改良しましょう。......一針で一生機能しなくなるくらいの強力なやつに」

ユノが可くてしょうがないエル。最近その過保護っぷりが彌一に似てきた気がする。

ブツブツ改良點を議論しあっている彌一とエルに、ユノはきょとんと首を傾げ、セナは苦笑いでユノを抱っこ。

とそんな時雄也がエレベーターから出てきた。そしてやはりというか複數のに絡まれている。雄也本人は困ったように苦笑いを浮かべているが、その表たちは頬を赤らめうっとりとした顔になる。

「彌一あれ」

「あー、助けた方が良さそうだな」

雄也だけではどうしようもないと判斷し、ササっと集団に近づくと、雄也に認識遮斷の魔を付與してたちの意識から雄也を外す。

「あれ?」

「相川様ーーー?」

急に雄也が見えなくりたちはあたりを見回す。その隙に雄也は人混みを抜けて彌一を合流を果たす。

「助かったよ彌一」

「いいってことよ。それにしても隨分な人數だったな?」

「休憩にと思ってバーみたいなところで飲み飲んでたらいつのまにか囲まれてて........」

そう言って肩を落とす雄也。イケメンも意外と苦労するんだな、と思う彌一だった。

「そういえば凜緒知らないか?他は見つけたんだけど」

「凜緒なら三階にいたよ」

「じゃあ行ってみるか」

セナ達とまだ説教をしていた彩と正座で足がプルプルしていた健を連れてエレベーターに乗る。

三階はルーレットが中心の階。雄也が飲んでいたバーらしきものもあった。

「えいっ!」

り口付近の一角から凜緒のものと思わしき聲が聞こえ、人集りを分けて進む。

そして目にったのは、不規則にくダーツの的に向かう凜緒の姿。

ちょうど投げ終えた後らしく、ダーツの矢が一本的のど真ん中で刺さっている。

「やっ!」

手首のスナップを聞かせてもう一投。矢はシュンッと音を立てて飛んでいき、まるで的からあたりにある來たようにど真ん中に命中。しかも、前の矢の矢に刺さった。

普通はありえないような奇跡にそれを見ていた観衆は大いに湧き上がる。まぐれだという聲が多いが、凜緒は気にすることなく、というかまるで聞こえていないのか、ただただ不規則にく的を凝視して矢を構える。

運命の第三投。

「ふっ!」

一瞬の呼吸とともにしいフォームで矢を投擲。それは一直線に突き進み的に、いや、矢に突き刺さった。

『おおおおおおおーーー!!』

湧き上がる観衆。二度目の奇跡、いや狙った奇跡に観衆の勢いは止まらない。

「わっ!?なになに!?」と等の本人凜緒本人は、ようやく周りに気づいたようでテンパっている。だが観衆は騒ぎ立て、凜緒が足元に置いていたメダルの袋に次々と金メダルが投げ込まれていく。

「あっ!やいくん!ねぇこの狀況なに!?」

「凜緒のせいだな。ていうかお前ダーツそんなにうまかったんだな?」

「いや?ダーツなんて子供の頃におもちゃでやったことあるだけだよ?」

なんと凜緒、ちゃんとしたダーツはこれが最初だという。腕の効果では三つ連なるほどの奇跡など起こせない。これはちゃんとした凜緒の技だろう。

「........そういえばちょっと前に凜緒、町の投擲師の人と勝負して泣かせてたわね。本職よりも強いなんて......って」

「槍もだもんな。中島がしょげてたぞ」

なにかと戦闘に特化した才能をもっている凜緒。なぜ職業が解呪師なのか疑問に思う一同だった。

「さて、全員揃ったところで取り敢えず現狀確認といくか」

近くの食べ屋にり個室にると、メダルがった袋をテーブルの上に並べる。

全員袋がぎっしりだが、ユノは特に多かった。トップはユノだろう。

「パパほめて!ほめて!」

「偉いぞユノ〜。よく頑張ったな〜」

「えへへへ〜」

ユノを膝に乗せて頭をでる。子貓みたいに目を細めてにへらと笑うユノはとても可らしい。

と、メダルの計算を終えたエルが顔を上げる。

「マスター集計終わりました。なんと.......二十五萬金メダル。現金換算で2億5千萬です」

『に、2億5千萬っ!?』

とんでもない金額に皆驚きの聲を上げて、ハッとあたりを見回すが、ここは個室だ。

彩と健は信じられないと言った表で顔を引攣らせ、彌一は「またかここのじ........」と冒険者組合でのことを思い出す。

彌一達がカジノにいた時間はせいぜい二時間程度。二時間で2億儲けたとなるとまじめに働くのが馬鹿らしくなる。ギャンブル中毒になる人の気持ちがしわかった気がして怖い。

「それともう一つご報告です。私たちがカジノで目立ったため、運営も目をつけて來ました。見張りがいたので間違いないかと」

「なら目標第一段階は功だな」

初日から運営が目をつけて來たのは行幸。裏カジノに行くためにも最低でも明日までには運営と接したい。

「それじゃ今日はこれくらいで帰るか。この調子なら明日にでも接できるはずだし、今日はもう帰ってゆっくりしよう」

気がつけばもう夜の十一時近く。カジノにはしゃいでいつもより遅く起きていたユノはそろそろ限界が來たようで、目をゴシゴシとって眠そうだ。

セナがユノを抱き上げて髪を優しくでるとユノはそのままセナの腕の中で寢てしまった。著飾ったユノの眠り姿はまるで話の眠り姫のようでらしく、やいちは思わずスマホをパシャリ。エルはカメラをカシャシャシャシャーー!!

メダルを近くのカジノの銀行に預け、全員はカジノを後にする。

そしてカジノからでて仕立て屋で服を著替えてし歩いたところで、彌一は小聲で全員に警告を促す。

「........付けられてる。カジノの運営の手の者だろう。人混みにったら認識阻害の魔を掛ける。そしたら全員バラバラに宿屋を目指せ」

『........了解』

チラリと後ろを向けば、行きう様々な人々がいるだけ。だがその中に歩きながら楽しそうに雑談する男二人組がいる。一見ただの通行人に見えるが、二人の視線のみはこちらをはっきり捉えている。

道を右に曲がり、夜中でも店が騒がしく開いている道に出ると、人混みにったところで全員に認識阻害のを掛ける。そして彌一がハンドサインを出し、全員一斉に走り出す。

彌一はセナを橫に抱えると、小道にって壁を蹴って登り、通りが見渡せる場所に上がる。

すると真下ではさっきの男二人が慌てて人通りを探っている。しかし既にそこには誰もおらず、全員小道を使ったり、健と彩は彌一達と同じように屋の上を跳んで宿に向かっているのが見える。

「どうやら上手く巻けたようだな」

「うん。あの二人だいぶ焦ってるみたい。あ、帰って行ってた」

セナの言う通りに、男二人組はすぐに走ってカジノの方へ走り出した。見失ったことを報告しに行くのだろう。

「さて、それじゃあ俺たちも帰るか」

「ん。私たちの眠り姫起こさないようにね?」

「眠り姫って起こすもんなんだけどな」

はは、と笑ってユノを抱いたセナを橫抱きにしてタタッ!と屋を蹴って通りの向こうの家の屋に飛ぶ。

ここから宿屋までは數百メートルといったところ。キラキラと街の燈りが煌めく上空を走り、ちょっとした空のお散歩。

彌一とセナはお互いに微笑むと、しい街の夜景を目に焼き付け、その景に酔いしれる。

宿屋までのしの空の散歩は、意外にも長くじられた。

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