《魔がない世界で魔を使って世界最強》婚約者(仮)

ケーティア救出作戦の翌朝。グーデンタームから移して森の中で夜を過ごした彌一一行は、テントの中で泥のように眠っている。

そんな早朝の中いつもの癖で早く起きた彌一は、り口の前で大きないびきをかいて眠る健を踏み越えて外に出る。

「んんっーーー..........。はぁ〜、霧が濃いな」

早朝の森がし薄暗く、森の中に濃い霧が生まれている。

早く起きたし素振りでもするか、とパチンと指を鳴らし蒼羽を取り出して刀を抜く。

し離れたところに行くと一通り素振りをする。

フォンフォンと規則的な風を切る音がしばらくの間森に響く。濃霧の向こうから小鳥のさえずりが耳に心地よい。

しばらく無言で振っていると、彌一の方にむかって足音が聞こえて來る。

「彌一、起きてたのかい?」

「なんだ雄也か。早いんだな?」

「彌一に言われたくないけどね。素振り?」

「おう。魔以外も日頃の鍛錬を欠かさないようにしないとな」

そう言って最後の一振りで「ハッ!」と素早く刀を振る。その際振り下ろした風圧が辺りを走り、雄也の髪をなでる。

「ふぅ、よし終わり」

「凄い剣技だね彌一。その技も地球で習ったの?」

「ああ。剣聖って呼ばれるじいさんの元で修行してな。もっと俺なんかまだまだだ。本の剣を極めた剣士なら刀を振る時の音なんか聞こえない。俺は剣を習った魔師、半人前もいいとこさ」

の剣豪など音が立つという『無駄』なことはしない。極限まで研ぎ澄まされた剣の領域は、振った痕跡など殘さず自分が斬られていることにすら気がつかない。

「雄也はよく眠れたか?」

「んー微妙だね。ちょっとあれだけのことがあったからか眠れなくて」

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「あの『ハハハハハッ!』って言ってたチェスか」

「..........傷を抉らないでくれ、あれは僕も無意識なんだ。チェスをやるときは集中したくってついおじいちゃんみたいになってしまうんだ.........」

まだ日が登らない遠い東の空を見る雄也。

あの完璧イケメンにこんな意外な弱點があることに驚く彌一だった。

「まぁいいや、彌一、気晴らしに相手がしてくれないかい?」

「おっ、いいけどステータス差があり過ぎだけど大丈夫か?」

「戦場で相手が強いからって手加減してもらえるわけないからね」

「いいぜ。その試合けて立つ」

そうして二人は木剣を持ってテントから離れた拓けた場所に出る。その中心で二人は相対する。

雄也は王國騎士団流の剣を顔の橫上段に構えで、彌一は左足を下げ腰を深く落とし、剣を橫で構える。

「.......いつでもかかってこい」

「それじゃあ......遠慮なく!!」

先に仕掛けたのは雄也。開幕速攻【地】を使った全力で彌一との距離を詰める。

彌一とのステータスの差は圧倒的。

なら出し惜しみはしない、最初から全力で挑むのみ!

「ハッ!」

瞬間的加速の勢いを乗せ、裂帛の聲と共に上段から剣を振り下ろす。

常人の目からは瞬間移のように見えるこの一撃。だがそれを彌一は下段からの振り上げでけ止める。

バシィイイッ!!と響く木の音。二人の中間地點で剣は止まったが、それは一瞬の話。次の瞬間には雄也が推され彌一が剣を振り抜くと雄也が飛ばされる。

「まだっ!」

飛ばされた雄也だが、飛ばされた先にあった木を足場にして、今度は彌一の頭上に舞い上がる。

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「《拒み守れ》!ーー【聖壁】!」

雄也が一節で詠唱したのは下級魔法【聖壁】。大型の盾くらいの大きさの障壁を展開する魔法だ。

それを雄也は足場代わりにして、もう一度【地】で彌一の真上から襲撃する。

完全に死角からの一撃。それを彌一は前に飛び出すことで回避する。

「《縛れ》!」

回避と同時に跳び起き、左手を雄也に向けると、途端雄也の周辺に七つの魔陣が浮かび上がり、そこから黃金の鎖が飛び出す。

「うわっ!多い!!」

鎖に速度はそこまでではないが數が多く、雄也は逃げ回るので一杯。

「せあっ!フッ!ハッ!」

逃げ回るだけではじり貧だと悟った雄也は、覚悟を決めて立ち止まり、剣で鎖を弾く。

一つ、二つ、三つと続き、最後の鎖まで弾いた。

「やるじゃないか!だけど.........詰めが甘い!」

そう言って彌一がパチンと指を鳴らす。その直後雄也の足元に魔陣が浮かび上がり、雄也の足を土の手が摑んだ。

「なっ!いつのまに!?」

ガッチリ足を摑まれ簡単には抜け出せない。土の手はそのまま雄也を引きづり込み、完全に土の中に固定しようとする。

「くっ!《猛き炎よ・燃えぜろ》!ーー【炎】」

ステータスで強引に振り払えないと思った雄也は、地面に手をつき、炎の発を起こす。軽くがチリチリとするはあるが、発のおで土から足を救出することには功した。

「くそ、まさかあんなトラップに導されてたなんて」

「俺の本職は魔師。相手に防がれるを無意味に繰り出すわけないだろう?でも、今の魔法の判斷は良かったぞ」

「それは、どうもっ!」

彌一の賞賛に雄也はお禮を言いつつも、【地】を使って彌一に斬りかかる。だがそれを予測していた彌一は、剣を掲げて迎え撃ち、返す刀で雄也を狙う。

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こうして二人はお互いに攻防れ替わりながら立會いを続け、早朝の霧のかかった森に木剣のぶつかり合う音と、魔法と魔発音が響く。

「ぜぇ、はぁ......」

「ふぅ、だいぶ良くなったんじゃないか?もうなんかも組み合わせたらいいと思うぞ?」

「ぜぇ、それは、どうも........」

一時間もした頃には、雄也は地面に大の字にねっ転がり、息絶え絶えで返事をするだけ。その反対に彌一の方は澄まし顔で平気な表

「まったく、そのデタラメなステータスずるくない?」

「そんなこと言われてもな。こればっかりは俺もよくわからんし。でも地球じゃ今の俺でも苦戦する人は結構多いぞ?」

「.........地球って実はファンタジーだったんだね」

「魔がある時點で今更だろ?」

「そうだね」

実は自分たちが生きていた世界がこっちの世界よりもファンタジーなことに雄也は諦めたような顔で息を吐く。

二人が熱中して終わった頃にはすでに日が昇り始め、東の空が明るく輝いている。

「さて、そろそろ戻ろうぜ。汗もかいたし川にでも行ってから帰るとするか」

と、二人が歩き出した瞬間、

『いやぁああああああああああああーーーーー!!』

「「!!」」

森に悲鳴が響き渡る。その方角はテントがある方角。

すぐさま二人は駆け出す。二人のステータスでならすぐにテントが見える。

彌一と雄也が子が寢ているトレーラーの扉を開けると、中ではケーティアが頭を抱えて悲鳴をあげ泣いていた。

「セナ!何があった!」

「それが.......」

「!?雄也お兄ちゃん!雄也お兄ちゃん!」

セナが説明しようとする。するとケーティアが雄也を見つけ、泣きながら抱き著いてくる。

「ケーティアちゃん!?大丈夫、大丈夫だから。落ち著いて」

「...........うん」

いきなり飛びついて來たことに驚いた雄也だが、すぐにしゃがんでケーティアを抱きしめて背中をでてやると、し落ち著いたのか悲鳴をあげなくなった。

取り敢えずケーティアは雄也に任せるとして、彌一は向き直る。

「それで、一何があったんだ?」

「それが、寢ていたら突然ケーティアちゃんが悲鳴を上げて、起きてみれば『痛い痛い!怖いよ怖いよ!」って言いながら、そのあと『助けて、助けて』って雄也の名前を呼びながらうずくまってて。私たちもどうしたらいいかわからなくて、彌一と雄也が來てくれて助かった」

「なるほどな........」

どうやらケーティアは奴隷として捕まっていた時のことがトラウマになっているようだ。起きてみれば自分を助けてくれた雄也がいなくて軽くパニックになったようだ。

振り向けば未だ雄也の腕の中でケーティアが泣いている。人攫いの経験など子供には辛い経験だ。

その後だいぶ落ち著いたのかケーティアが顔を上げると、雄也が優しく微笑んでケーティアの頭をでる。

「もう大丈夫だから安心してケーティアちゃん」

「........ケティ」

「え?」

「ケティって呼んで。友達はみんなそう呼ぶから」

「わかったよ。これでいい?ケティ」

雄也にそう呼ばれて泣き腫らした顔に笑顔が戻る。

「うん!雄也お兄ちゃんもゆうにぃって呼んでいい?」

「いいよ。ケティが呼びやすい方でいい」

「ゆうにぃ、ゆうにぃ!」

そう言って子供らしく甘えるケーティアはとても可らしく、雄也は笑顔で飽きるまで頭をでる。

「取り敢えず朝食にしよう。もうみんな起きたしな」

「ご、ごめんなさい、ケティがんだせいで.......」

「気にするな。ここには君を怒るような奴はいない。それに何かあったらゆうにぃが助けてくれるからな?」

「うん!」

申し訳なさそうなケーティアの表にそう言って笑いかける。雄也という自分を助けてくれるヒーローがいるからか、ケーティアの狀態も安定して來た。

ただ若干雄也に依存しているようで、先程から雄也の服の裾をちょこんと握って離さない。

そんな小のようなケーティアが可く、雄也は妹がいたらこんなじかな?、と思う。

「とにかく朝食にするぞ!」

「その前にマスター。早く出て下さい」

先程まで寢ていたので全員寢巻き姿だ。しかもし著崩れているので目のやり場に困る。ユノなんかお揃いのナイトキャップを被ったサニアを抱っこしているから見えないが、上二つボタンが外れている。

「雄也こっちを見ずにすぐに目を閉じて歩け。うちの娘のを見やがったらドパンだ」

「理不盡過ぎない?まぁもう目は閉じてるけど」

「よし、じゃあ後はそのまま外に出てここ一時間の記憶を飛ばしてやる」

「そこまでするかい!?」

流石の理不盡に聲をあげる雄也。しかしシュッ!シュッ!と手刀の練習をする彌一。どうやら魔ではなく理で記憶を飛ばすようだ。

雄也が兎のごとく逃げ出す!彌一のステータスでは首まで飛びかねない!

その後なんとか記憶を飛ばすのは勘弁してもらい、すぐに朝食になる。

朝食が終わると、軽く整理を済ませていよいよ森から出発する。

目的地であるヴァリアス族の村まではここから1日半くらい何で、予定よく進めば明日の晝頃には辿り著ける。

「よし!それでは出発しんこーう!」

「「しんこーう!」」

運転席の彌一の合図を助手席のセナとユノも言って、へカートは大きなトレーラーを牽引しながら走り出す。

その後へカートは順調に進み、晝になり夜を迎え野営をし、次の日の朝にはすでに後半日のところまで來ることができた。

そしてそのまま進んでいき、晝前にようやくヴァリアス族の村があるフレクシードの森に到著した。

久しぶりに見る故郷の森に、ケーティアは目に涙を浮かべる。もう二度と戻って來ることができないと思っていた場所に帰って來ることができたのだ。

「さ、帰ろうケティ」

「うん......!」

待ちきれないと言った様子でケーティアが先頭で森にっていく。雄也たちもすでに森での歩き方を覚えたため、最初の頃に比べて楽々と森を登ることができた。

森最大の難所である崖も越え、ようやく村が見えてきた。

村のり口が見え、ケーティアが我慢できないと駆け出す。

「みんなただいま〜〜〜っ!!」

大きな聲で手を振りながら走って來るケーティアに、村の人たちは一度驚いた表を浮かべた後、皆一斉に涙を浮かべ集まって來る。どうやらケーティアが攫われたのは全員ジキルから聞いているようだ。

集まってきた全員が涙ながらにケーティアを抱きしめて、ケーティアもそんなみんなの涙につられて涙を零す。

人が人を呼び気がつけば村の全員が集まっていた。そしてその中に人混みが避けて一人の老人が歩み寄る。ジキルだ。

ジキルを見つけたケーティアはすぐさま走る。

「おじいちゃん〜〜!!」

「おおっ、ケーティア.........!!」

飛び込んんできたケーティアをきっちりけ止め抱きしめる。

もう會えないと思っていた孫娘が帰って來た嬉しさと謝が一堂に押し寄せ、ジキルは嗚咽をらしながら涙を流す。殘された唯一の家族との再會に、ジキルはただただケーティアの頭をおしくでる。

そのままずーっと抱きしめていたが、彌一たちがやって來ると立ち上がり頭を下げる。

「皆さん本っ當にありがとうございます.........!!うちの孫娘を取り戻してくださって。本當に謝しても仕切れません」

「よして下さいジキルさん。それに直接ケーティアを救い出したのは雄也ですし」

「相川殿、本當にありがとうございます」

「い、いえ、僕もケティを助けることができてよかったです」

「ゆうにぃありがと!」

お禮を言われてむずそうにしている雄也に、ケーティアが駆け寄って抱きつく。そのお笑顔はとても晴れやかで、雄也は改めてケーティアを救えて良かったと思う。

ちなみにその際、ケーティアと雄也が親しげな稱で呼び合い、ケーティアが嬉しそうに雄也に抱きついているのを見て、周りで見ていたケーティアと歳が近い何名かの男の子たちが『がはっ』と崩れ去った。

どうやらケーティアはモテるらしい。

実際ケーティアの容姿も子供らしいらしさと、將來人になるであろうしさを持ち合わせており、確かにこれなら相當モテること間違いなしだ。

しかし等の本人はそんなことなど見えておらず、未だ雄也に抱きついたまま嬉しそうな笑顔を浮かべている。

「さて、立ち話もなんです、家の方へ」

ジキルに案されジキルの自宅にお邪魔する。居間に通され、全員でテーブルを囲む。ユノは彌一の膝、ケーティアは雄也の膝に座って。

すると玄関が開き居間にって來たのは、グレバスとカネーシア、カーネだ。

「ケティちゃん!」

「カーネちゃん!」

二人はお互いに駆けてギュッとお互いに抱き合う。同い年の仲のいいらしい二人はとても嬉しそうにはしゃいいる。

「まさか本當に連れ戻すなんて.......」

「本當に謝します」

グレバスは驚いた表で、カネーシアは涙ぐんでお禮を言う。

「さて、全員揃ったところで改めて、皆さん今回は本當にありがとうございます。うちの孫娘を救っていただいて」

「それに俺の妻と娘も救っていただいて謝する」

「本當にありがとうございます」

ジキルとグレバス、カネーシアの大の大人が揃って頭を下げる。

「頭をあげて下さい皆さん。乗りかかった舟です、あのまま知らないふりをしていたら僕たちも気分良く旅できなかったですから」

雄也がそう答えると全員顔を上げる。

「それで、これはないですが、村の全員で出し合った報酬です。どうぞもらって下さい」

そうしてジキルが出したのは、お金が詰まった袋に、食料や雑貨など、誠心誠意集めた心のこもった報酬だ。

「いや、報酬なんていいですよ。報酬目的でやったわけじゃないですし。.......それに僕もケティのおで救われましたから。僕にも人を救うことのできる力があるんだ、って」

力があると思ってた、しかし結局誰も救う力はなかった。

でも、救う力は一つではないと知り、そしてケーティアを救うことができた。

そのことに雄也は救われた。自分にも人を救うことができるということに。

「だから、報酬はいりません。こうしてケティを救えたことが一番の報酬です」

そう言って膝の上のケーティアの頭を優しくでる。膝の上のケーティアは頬を赤く染め雄也の手のきにくすぐったそうに目を細めている。

そんな孫娘の姿にジキルは優しい笑みを浮かべて、ふと顎に手を當てし考えると、「でしたら」と続け、

「うちの孫娘を嫁にやるというのはどうです?」

『..............はぃいいいいっ!?』

あまりの突拍子のないジキルの言葉に、彌一たちは一瞬の直の後聲を上げ、雄也も思わずでる手を止めて固まってしまった。

そしてそれはケーティアも同じで、目をパチクリと見開き、「ひゃいっ!?」と奇妙な聲を上げて赤くなる。

「どうですかな?ケティも雄也殿に大変懐いているようですし、それに先程雄也殿も言っていたではないですか、『ケティを救えたことが一番の報酬だ』と」

「いやいやいやいや!!確かに言いましたけど!」

いきなりの展開に流石の雄也も焦る。そして救いを求めるように膝の上のケティに問う。

「ケティもいきなり結婚相手を決まられるのは嫌だよね!?」

「ひゃいっ!?え、えっと..........」

雄也に聞かれてケーティアが目を白黒させ、回らない頭で考え出す。

ここでケーティアが嫌だといえば、この話は無しになる。雄也もそれを見越しての発言だ。

だが、雄也は選択を誤っていた。

自分が売られそうになって暴力を振るわれそうになった時、颯爽と駆けつけ、鮮やかに敵を倒しケーティアを助けた雄也に、年頃の夢見るの子であるケーティアはおとぎ話の王子様を重ね、結果、それがただの子供の好きではなくなっていたことに。

ケーティアが意を決したようにたどたどしく口を開く。

「ケ、ケティは、......ゆうにぃのこと、す、すき.......」

「...........んんんんんんんっ!?!?!?」

「だ、だから......ゆうにぃの、お、お、お嫁さんに、なっても、いい、よ.......?」

「んんんんんんんんんっ!?!?!?!?」

予期せぬケティの告白に雄也はもう「ん」しか言えなくなった。ケティのその表は間違いなくする乙のそれで、ここまで來て流石にわからないほど雄也は鈍系ラノベ主人公ではない。

「そ、そうだ!!第一ケティはまだ9歳でしょう!?未年の子供と結婚は流石に不味いんじゃ.......!」

「銀狼族では集落ごとに多違いはありますが、10歳以降から人扱いですから問題もないかと。実際10歳から早めに結婚する者もいますし。それともうちの孫娘は嫁にもらいたくない、と?」

笑顔のままのジキルだが、その顔にはどこか凄みがあり、笑顔のプレッシャーが押し寄せる。

そしてケーティアは雄也を見上げる。

「そうなの........?ゆうにぃ......ケティは、嫌い.........?」

「うっ......!!」

嫁にもらいたくないというジキルの質問に、涙目で上目遣いでケーティアがそう問う。雄也に嫌われているのではと不安にかられているのだ。

そんなケーティアに雄也は口を紡ぐ。

「(ちくしょう!逃げ道が完全に塞がれた!?)」

心の中で頭を抱える雄也。チェスの時以上の集中力で思考を巡らせるが、どうやってもケティを傷つけてしまう。

結局、そんなケーティアに雄也が斷るということもできるわけもなく、

「........わかりました。ただし!僕は英雄としての使命があるので、全てが終わって、その時もケティが好きでいてくれたのなら、その時は責任を持ってケティをお嫁さんにもらいます。でも、それまでにケティが別の誰かを好きになったのなら、この話は無しということでいいですか?」

不斷なラノベ主人公みたいに、苦の策としてそう提案する雄也に、彌一たちはいいたげな目を送るが、雄也は完全に無視。見ないようにする。

そしてその提案をジキルは頷いて了承した。

「ええ、それで結構です。ケティもそれでいいか?」

「うん.....!大丈夫だもん。だって.......ケティ、ずーっとゆうにぃのこと好きでいるもん!」

そんな健気なケティの笑顔に、雄也は不覚にもドキッとし、顔をし赤くする。

「(僕はロリコンじゃない僕はロリコンじゃない僕はロリコンじゃない僕はロリコンじゃない......っ!!)」

そう頭の中で唱えながら。

そんな焦る雄也と抱きつくケーティアを見ながら、彌一がボソリと

「...........婚約者(仮)、と言ったところか」

そう言ったのだった。

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