《魔がない世界で魔を使って世界最強》鬼神の英雄

「........ゆうにぃ、もう行っちゃうの.....?」

抱き著いてくるケーティアの涙に、雄也は「ぐっ......!」とを締め付けられる。

今はちょうど晝ごろ。彌一たちはいよいよ本來の目的地である、コーネリア國に向かうべく、旅立とうとしていたのである。

1週間程度の滯在だったが、集落の人々は優しく、全員後ろ髪を引かれる思いだった。だが、一番引かれているのはケーティアのようで、今こうして別れる寂しさの為、見送りで集まっている大勢の前で雄也に抱き著いているのだ。

そして雄也も雄也で、抱き著いて必死に涙を堪えながら、もうしいてほしいというケーティアの願いに頭を悩ませているところ。

「ごめんねケティ。でもそろそろ行かなきゃ。ほら、ケティにスマホ渡したでしょ?」

そう、ケーティアには彌一製のスマホを渡してある。もし集落に何かあった時のためということで渡してあるが、本當はケーティアと雄也の連絡のためだ。

魔王を討伐して迎えにくるとは行ったが、それがいつになるかわからない。いつかの日を待ち続け、ずっと會えないのは可哀想ということで、彌一が夜なべして作ったものだ。

「これがあればケティとお話出來るから」

「........いつでもケティとお話してくれる?」

「もちろん。毎日は流石に無理かもだけど、3日に一度とかならお話出來るから。だから、ね?」

「.........うん」

背中をポンポンと叩くと、そう言って頷くケーティア。雄也も安心したようで「ほっ」と息を吐く。

「絶対だよ?絶対だかね、ゆうにぃ」

「うん。それじゃあ、いつ電話するか決めようか?」

「うん!」

雄也との約束事にケーティアは嬉しそうに笑って、雄也もそんなケーティアにつられて嬉しそうに微笑む。

そんなまるで熱々カップルのような二人の姿を眺めながら、離れたとこから見ていた彌一たちはニヤニヤと含みのある笑みをこぼす。

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「ありゃもう惚れてるな」

「ああ。ケティの雄也を見る目がする乙のそれだ」

「うん。それに雄也がケティを見る目も前とし違う」

「雄也も案外素直じゃないところもあるから無自覚なのかもね」

「そうそう、ねぇ聞いてやいくん。ケティちゃん、雄也くんに綺麗な自分をみせたいからって言って、化粧教えてしいって言ってきたんだよ〜」

その言葉の通り、今日のケーティアは薄く化粧がされており、ちょっとの化粧にもかかわらず可さがぐんと引き立てられている。現に、今朝數名の男の子はケーティアを見て顔を真っ赤にし、雄也もし放心したほどだ。

「私のところには料理を教えてしいって來た。雄也が迎えに來た時に、一番に味しいご飯を食べさせたいんだって。」

「ほぉ〜う、もう完全に惚れたな」

自分のいない間に次々とを暴されていくケーティア。仲良く隣り合って座るケーティアと雄也は、お似合いだった。

「マスター。そろそろ出発しなければ、今晩中に山を越えられません」

「それもそうだな。ケティは可哀想だが仕方ないな。雄也〜!そろそろ出発だ〜!」

楽しそうに話す二人に忍びない気持ちで聲をかける。ケーティアも寂しそうな顔をするが、でも連絡をできるとわかってすぐに笑う。

「それじゃあケティ。しの間お別れだけど、連絡は欠かさないから。それに近くに來るときは寄るから」

「ほんと!?」

「うん。だからまたね」

一度ケーティアの頭をでて立ち上がると、彌一たちのところへ向かう。

「それではジキルさん。お世話になりました」

「なんのなんの。孫娘やカネーシアとカーネを救っていただいた恩人方じゃ。いくらでもいていただいても構わんのですぞ?」

「そういうわけにはいきませんよ。ここは居心地よくてもうしいたいけどそろそろ行かないと」

「ホッホッホ、冗談じゃ冗談。でも、本當にみなさんには謝しておる。ありがとう」

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「本當にありがとうございます。皆さん」

「あの時はすまなかった。いきなり襲いかかったりして。今は謝しかない」

ジキルに続いてカネーシアとグレバスもお禮を言ってきた。そして3人と同じくして集落の人も一様に「ありがとう!」や「またいつでも來てくれ!」といった聲が上がる。

そんな言葉を気恥ずかしくじつつ、彌一たちはいよいよ旅立つ。

「待ってゆうにぃ!」

「ケティ?」

と、歩き出した雄也の裾を握ってケーティアが止める。ケーティアと目線を合わせる。

「どうしたの?」

「え、えっと........あのね.......」

だがケーティアは雄也と目を合わせようとせず、赤い顔でモジモジと指を合わせる。

だが意を決したのか、雄也に一歩近づき、

ちゅっ

頬に小さなを軽く押し當てた。

「............っ!?」

突然のキスに雄也は顔を赤くし、頬をでる。

キスをしたケーティアも、まるでれたリンゴのように顔を真っ赤にする。

でも目を逸らすことなく、雄也の目を見て、この場の誰よりも綺麗な笑顔で言った。

「いってらっしゃい!」

「おーい、雄也〜」

「.........はっ。ごめんごめん」

集落を出て數時間後。一行はへカートで山を越えているところ。

健と雄也は暇つぶしでチェスをやっていたのだが、雄也はこのように先程からほうける事があった。

理由は言わずもがな。

「良かったなゆうにぃ?あんなに可い嫁が出來て」

「うるさい。.......チェックメイト」

「え!?あっ!噓だろ!?」

おちょくる健に、若干頬を赤くしながらもしっかりチェックメイトをかける。惚けることはあっても決めるところはしっかり決めてくるスーパーグランドマスターである。

「..........ロリコン」

「今なんて言った健!僕はロリコンじゃない!負けたからって見苦しいぞ!」

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「うるせぇ!この、にキスされて顔赤くして惚けるロリコンめ!知ってんだぞ!お前のスマホのホームがケティちゃんとのツーショットの畫像なことを!こうなったらこの事実裁判所に送りつけてやる!」

「卑怯者!!そんなことになったら死刑どころじゃ済まされないぞ!?それにホームはケティにお願いされたからで自分でやったわけじゃない!!........って、どうして知ってるんだ!?」

「彌一に頼んでちょちょいっ、と」

「彌一ぃいいいいいいいいいいいいいいいーー!!」

離れてユノと遊んでいた彌一に向かって雄也がんだ。

當の彌一はすでに眠っているユノに膝枕していて「しーっ」と指をに當てている。ちゃっかりユノに遮音の結界を張って。

「仕方ない。そんな哀れな雄也にはこれをプレゼントしよう」

そう言ってポチポチとスマホを作すると、雄也のスマホに著信がる。開いてみるとそれは一枚の寫真だった。

ケティが雄也の頬にキスをしているシーンの

「あ、間違えた。すまんすまん」

「待てーーーッ!!なにこの寫真!いつの間に撮ったの!?」

「ほんとはこっち」

「おい!!」

慌てふためく雄也など構い無しに、またしても雄也のスマホに著信がる。恐る恐るそれを開くと、またしても一枚の寫真だった。

健と彩が夜の広場で座ってお互いに頭を預けているシーンの

「待てーーーッ!!なんだこの寫真!!いつの間に撮りやがった!?」

「セナと散歩してたら偶然見かけたからついパシャリと」

「パシャリとじゃねぇよ!?雄也今すぐそれを消せ!!」

「え〜、どうしよっかな〜」

「くっ!わかった、裁判所へ報告するのは取り下げる。だから大人しくその寫真を消すんだっ!」

そんなやりとりをしていると、突然車が停止する。

「どうしたエル?」

『前方に罠の魔法が設置されているのを確認しました。それにどうやら複數の敵が森に紛れているようです』

エルの言葉で探索魔を使うと、たしかに複數の人が森に潛んでいる。しかも中には周りの人間より魔力が高いものが數十人いる。おそらく魔法師だろう。

全部で合計100近く。これほどの人數で森に潛んでいるとなると

「山賊か。はぁ〜、またなのか?」

「なんか私たちが旅立とうとすると事あるごとに山賊が出てくるね?」

そう言って霊の里を出たときを思い出す。他にもこの間の銀狼族の集落から出てきたときといい、山賊と何かしらの因縁でもあるのかと思うセナだった。

「おい!大人しくその馬車から出て來い!」

そんな中、外から山賊の聲が聞こえてきた。

『どうしますかマスター?』

「俺たちで出るからエルは中で待機しててくれ。いざとなったら振り切れ」

『了解』

ユノをベットに寢かせて、彌一、セナ、凜緒、雄也、健、彩、の6人だけが外に出る。外に出ると道のど真ん中に20人ほどが出ていている。殘りは隠れている。

「うひょー!頭!極上のでっせ!」

「なんだよ、変な馬車に乗ってるから警戒してみれば、たった6人じゃねぇかよ!」

「これなら楽勝だぜ!」

セナたちが出てくるなり、男共が汚い目でセナたちを見てくる。その舐るような視線にセナたちは腕をさすって彌一たちの後ろに隠れる。

そんなセナたちを見て「あぁ?」と殺気を発させようとする彌一。それを「待て!落ち著け!」となだめる健と雄也。

「チッ.......それで、一なんのようだ」

「はぁ?今のこの狀況が理解できてねぇのかテメェ?お前たちはこれから殺されるんだよ!!!俺たち新生バファリン山賊団になぁ!!」

『え!?』

「ぎゃはははは!!俺たちの名前を聞いて恐れおののいたか!!でももう遅いんだよ!!」

聞いたことのある名前に思わず聲を出して驚く彌一たち。それを恐怖で聲を上げたと勘違いした様子のバファリン山賊団は笑い聲をあげる。

「なぁ、彌一。確かあの半分は優しさで出來てる山賊達ってこの間リーダーを拘束したんじゃなかったっけ?」

「ああ。けど、どうやら殘ってたメンバーで新たにリーダーを選んで新生バファリン山賊団として始し始めたんだろうよ。だけど」

「うん。運が悪いね」

「おい!お前ら何コソコソと話してやがんだ!!」

コソコソ話す彌一達に怒鳴る新生バファリン山賊団のリーダー。森に味方が潛んでいるからなのか含みのある笑みを浮かべる。

「にしても俺たちも運がいいぜ。これから銀狼族を攫いに行くってときにこんな上玉に出くわすなんて」

「そうだな!!」

その言葉に一瞬彌一達は直する。どうやらこの連中、この間のケティやカーネ、カネーシアの拐現場から、銀狼族の集落の目星をつけ、これから集落を襲う予定だったらしい。

さらに山賊の會話は続く。

「そういやぁお頭。この前偶然森で捕まえたあの銀狼族のガキもなかなかのもんでしたぜ」

「そういやぁそうだな。けど俺はガキには興味ねぇよ。もうし大人だったら相手してやらねぇでもないが」

「でも、あんなガキみたいになかなかのがいるんじゃありません?」

「そうだな。こりゃ張り切らねぇとなぁ!」

余裕の狀況で口が軽くなったのか、聞いていないことまでベラベラと喋り出す山賊たち。

だがそれが山賊達の運命を決めた。

「ーーーいま、なんて言った?」

その靜かな言葉の直後、溢れる魔力が周囲を走った。その魔力を発していたのは雄也だった。

「な、何だこいつ........っ!」

「いまなんて言ったって聞いてるんだ」

山賊達に一歩踏み出す雄也。その表は前髪に遮られ伺えないが、中から溢れる闘気がその心語っている。

溢れ出る神聖をイメージさせる黃金の魔力は、今や禍々しく、れればそれだけで命を持っていかれそうな危うい印象を與える。

彌一やセナほどではないにしろ、雄也も余裕で一般の魔法師の魔力容量を超える魔力を持っている。その魔力を発させて雄也は続ける。

「そうか、お前達がケティを攫った実行犯か。そして一度だけでは飽き足らず、二度もケティを攫おう、と」

ゆらりゆらりと近づいていく。その重圧と魔力に山賊達が慄き、一歩後ずさる。

「なんだお前!!止まれ!止まれって言ってんだよ!!くそっ!魔法師!魔法を放て!!」

頭がそうんだ後、四方の森から様々な屬の魔法が雄也目掛け飛んでくる。

「おいおい、無粋な真似すんじゃねぇよ」

パチンッとフィンガースナップ。瞬く間に黃金の障壁が雄也を守るように四方に展開。魔法と障壁が衝突した。

結果はもちろん無傷。砂煙が晴れ、そこには眩いを放つ聖剣を持った雄也が佇んでいる。

「ありがとう彌一」

払いは任せな。お前は目の前に集中してろ」

「ああ」

振り向くことなく雄也は頭に向かって歩き出す。

「集落の人達を.......ケティを、攫うだって?ーーーふざけるな外道共」

前髪から覗いたギンッと鋭い眼が頭を抜く。その眼には烈火の如き怒りが垣間見え、一目で雄也がブチ切れているのがわかる。

溢れる魔力に乗って殺気も漂ってきて、山賊達は恐怖に震える。

「い、行け!お前ら!あいつをぶっ殺せ!!數じゃあこっちが上だ!囲んで始末しろ!!」

恐怖でどうにかなった頭が部下にそう命令すると、一瞬の迷いがあったが、「あああああああああああ!!!!」と唸り聲をあげて突撃してくる。

「.........お前たちみたいな汚い手で、僕のケティにれるなッ!!!!」

ぜるように駆け出した雄也。既にルナ・エルームに炎を纏っている。

「「「おらぁああああ!!!」」」

向かってきた雄也目掛け、複數の山賊が一斉に武を振り下ろす。しかし雄也はすべての攻撃をルナ・エルームだけでけ止める。

ギリギリと拮抗するが、次の瞬間雄也は一歩下がると武の衝突地點をずらす。そうして前のめりに崩れた山賊にぜた炎が直撃。

地!!」

『ぐわぁああああああああああーーっ!!!』

炎に包めれた山賊に目もくれず、地を使って今度は別の集団に突撃して剣を振るう。その剣筋に迷いはなく、今の雄也に慈悲という言葉はない。

矢が飛んでくれば斬り飛ばし、発地點に向けてお返しとばかりに魔法を撃ち込む。

果敢にも斬りかかってくれば、時にいなし、時に正面から力でねじ伏せる。

一振りで數人もの山賊を屠っていく。そのきはまるで鬼神の如くどこまでも暴力的。

「かかってこい外道。ケティはもう、誰にも渡さない」

【限界突破】と【強化】を使って能力をさらに底上げする。それによりさらに存在が増し、放出する魔力量も桁違いになった。

再び駆け出す雄也。その勢いは衰えることなく、次々と山賊を吹き飛ばしていく。

そんな景を彌一たちはし離れたところから見ていた。

「すげぇ勢いだな。てか雄也でもブチ切れるんだな」

「當たり前だろ。とゆうか雄也がやらなかったら俺がやってるところだ。俺の嫁に汚い目を向けやがって」

「それにしてもすごいわね。前の大戦とき並みじゃないかしら?」

「てゆうかさっき雄也くん「僕のケティに〜」って言ってたよね?」

「うん。雄也もどうやらケティに惚れてるみたい」

「素直じゃねぇな〜。いや、雄也の場合無自覚なだけか」

前で鬼神の闘を見せる雄也を眺めながら、そんなのんびりとした會話している。

ちなみに彌一は解析眼で先ほどから録畫していたりする。もちろん雄也が「僕のケティにれるな!」と啖呵切ったシーンも録畫されていたりする。

これはケティにだけ送るかな、と考えながら雄也を無視してこちらにやってきた山賊たちの両足をレルバーホークで撃ち抜いていく。

「セナ。あの辺とあの辺とあの辺によろしく」

「うん。任せて。【プチ・風炎砲・散】!!」

炎を纏った風の矢を頭上に撃ち出す。すると矢は分裂し別々の位置に著弾。激しい炎がぜる。

『ぎゃああああああああああああああーーーーっ!?』

この風炎砲、実は見た目こそ派手だが、殺傷能力は大したことないレベルに設定されている、広範囲制圧魔法だ。だからプチなのである。山賊たちも軽い火傷程度で、発の衝撃で気絶したこと以外は特に外傷はない。

「さて、魔法師の方はあらかた片付いたかな?」

「はい。森の敵も數ですし、雄也様の妨げにはならないかとーーー」

「お前らくんじゃねぇ!!!」

一喝する頭の方を見ると、拳サイズの赤い寶石を頭上に掲げていた。

「こいつは魔法石だ!!これ以上くんならこいつに込められた【炎破】の魔法を発させるぞ!!」

「エル。魔法石って?」

「最上級火魔法の【炎破】が込められた寶石です」

エルの言う通り、山賊の頭が掲げているのは最上級魔法が込められた寶石だ。寶石は魔法石と呼ばれ、魔法を込めることができる貴重な石だ。中でも最上級魔法が込められた魔法石はとても貴重で、戦場ではそれ一つで戦況を変えることもあるほどの威力を誇る。

「おまけに寶石そのものに魔法干渉を阻害する効果があるので、解するには一流の火魔法師と解師が複數必要です」

「その通りだ。へっへっへっ、こんなところでこいつを使うのは惜しいが、これでそこのどもと銀狼族が手にるなら充分......ーーー」

「《霧散せよ。解呪ディスペル》」

パキンッと寶石にヒビがった。

「え、ええええええええええええーーーっ!?!?バカな!?こいつは一流の魔法師が複數揃ってやっと解できるもんだぞ!?」

「ディスペルに対する式を組んでない魔法なんか壊すのは簡単だ。式をや巻スクロールに刻む際にアンチ・ディスペルの式を組んでないと、簡単に干渉されて分解されるか反されるのがオチだ。それと、いつまでもそれを持ってていいのか?」

そう言うと彌一は人差し指と親指をくっつけて、頭に向ける。

「解放リリース」

パチンッとフィンガースナップ。

その瞬間、握っていた寶石が眩い赤いを放ち、大量の魔力を発させた。

「ぐぬぉおおおおおおおおおーーーっ!?」

大きな魔力の瞬間的な発は一時的に周囲の魔法則、理法則をし、それが衝撃波となって周囲を駆ける。

その魔力衝撃波をすぐそばでけた、頭は吹き飛び木に衝突する。

「な、なんだ今のは........ッ!!」

「寶石に包されていた魔力を解放しただけだ。式を破壊しただけで魔力は霧散させてないしな」

通常の解式をしずつ解いて行きながら、同時に魔力もしずつ外に放出して抜いて行くものだ。魔力を一気に放出してしまうと式が暴走してしまうので、しずつ抜いて行く必要があるため、解に時間がかかるのである。

だが彌一は魔力を制する式だけを殘し、さらにそれを強化する式を新たに加えた為、一度に素早く解することができたのだ。

もちろんこれは現代魔理論を知っていなければできないので、この世界で再現することはできない。

そして今の発はその制していた式を壊し、包されていた魔力を一気に解放したのだ。

頭はそれを聞いて理解はできていないが、彌一がとんでもない技を扱う魔師だとは理解したようで、「そ、そんなバカな......」と戦意消失している。

雄也の方を見るも、未だ鬼神の如き戦闘を繰り広げる姿を見て、絶的な顔をした。

「さて、面倒なもんは潰したし、あとは雄也に任せて先に戻るか。お〜い雄也〜先戻ってるぞ〜」

「はぁああああああああああーーッ!!」

『ぎぃいいいいやああああああああああああああああああーーーーッ!?』

「うん。聞こえてないな」

大空を舞う山賊に目もくれず彌一たちはそくさとトレーラーの中に戻る。戻っても相変わらず外から発音と山賊の悲鳴が聞こえる。

「彌一晩飯はどうする?外で作る?」

「う〜ん。いや、雄也が山賊片付けたら止まらずに進む。エル、すまんが今日は代で運転してもらえるか?」

「はい、お任せを。ですが仮眠の際はユノ様と添い寢の権利を」

「任せろ」

「じゃあ簡単に食べれるものにするね?」

「あ、セナ私も手伝うわよ」

「じゃあ私も......」

『ダメ』

「み、みんなして..........」

全員からの制止にいじける凜緒をセナが宥める。

外から聞こえてくる発音と悲鳴をBGMに、今日の晩ご飯に話を巡らせて行く平和な空間。

そうして待つこと15分。

気がつけば外から発音も山賊の悲鳴も聞こえなくなった。

終わったかな?と外に出てみると、案の定戦闘は終わったようで、山賊がまるでボロ雑巾のように一箇所に山積みにされていた。

「お疲れ雄也」

「あぁ、彌一。お疲れ。払いありがとう」

「別に気にすんな。それよりこいつらどうする?魔で自力で抜け出せないように縛っておこうか?」

「うん。もちろんそうするんだけど、........彌一例の薬まだある?ごめんけどそれくれる?」

例の薬とはあの息子が機能しなくな〜る薬のことである。もちろん大量にある上に、今はさらにバージョンアップして、針一刺しで息子には致命的だ。

それを雄也が凄い爽やかな笑顔で要求してくる。それはもう、不気味なくらい爽やかに。その笑みに流石の彌一も引き攣り顔で、あるだけの薬を渡す。

「あ、それと彌一。し待っててくれる?どうやらこの近くにこいつらのアジトがあるみたいなんだ。ついでだからちょっと行って潰してくる」

「お、おう。気をつけてなぁ〜」

クルッと回って、気絶していない山賊に向かう。回って背を向けた際、チラリと見えた橫顔は相変わらず爽やかな笑顔だったが、目だけがどこまでも冷徹で笑っていなかった。

アジトへの案役になってしまった哀れな山賊は『いやだ!いやだぁあああああ!!助けてくれ!助けてくださいお願いしますぅううううううう!!!ぎゃああああああああ!!』と彌一に手をばして必死に許しをこうが、雄也は構い無しに引きずって行ってしまった。

「なんつーか........悲しい事件だったな.......」

雄也が消えていった方を眺めし呆然とする。取り敢えず山賊をどうにかするべく、彌一は一人山賊をまとめて木にぶら下げるのだった。

それから數日後。

吹雪の中、真っ白な世界を抜けて、ようやく目的地が見えてきた。

高い城壁があっても見える山の上に立つ巨大な城。山の斜面に沿うようにも民家が立ち並ぶのが遠くからでも見える。そして城と一緒に目立つ煙突の數。

「ようやくついたな」

【技大國コーネリア】銀世界に突如現れた機械の國である。

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