《魔がない世界で魔を使って世界最強》揺れる心の覚
技大國というだけあって街並みは綺麗に整備されていた。
レンガの地面に立ち並ぶ街燈、そして家々まで。ありとあらゆるが統一的だ。
大雪が降ることを想定された家は屋の角度が急で、歩道の脇には近くの工房から流れ出たお湯が流れるがあり、雪が溶けるように作られている。
「すごい、この世界に來て一番近代的な街ね」
「ああ。街燈もそうだが、歩道のレンガも全部同じ形と大きさだ。王都より高い加工技があるんだな」
心した目を向けながら彌一たちは大通りを歩く。
至る所からカンカン!と鉄を打つ高い音が聞こえ、大通りにはマーケットのようなじで様々な武を販売している。
「賑わってるな」
「コーネリアにはいい武を求めて様々な冒険者やあるいは騎士がやってきますから」
「家族連れも多いね」
「そういう俺たちも家族連れだがな」
武を買い求めにくる冒険者は勿論、意外にも戦いとは全く無縁そうな者も多くいる。
まだ國してすぐの場所だが、ここは王都にも負けず劣らずな賑わいを見せていた。
「取り敢えず先に宿に行こう。その後街を散策ということにして.......」
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『おじさん!このナイフ下さい!』
『おっ!嬢ちゃんいい目を持ってるなぁ〜!こいつはこの中で一番の出來だ!まさか一目で見抜くとは恐れったぜ!』
『うん!それは刃の凄みと輝きを見ればわかるよ!あ!あと、コレとコレとコレも下さい!』
『はいよ!いっぱい買ってくれたオマケだ、コレもつけといてやる!』
『ありがとうございます!』
「って、待てぇええええええええいッ!!」
気がつけばいつの間にか店で買いをしていた凜緒に向かって走る。
「あっ、やいくん見て見て!このナイフすごくいいよ!やっぱり技大國だけあって凄いね!?」
「落ち著け落ち著け!わかったわかったから!」
ナイフか剣を目をキラキラさせながら眺めで興する子高生とは、と思う彌一。々な店を見て回る凜緒は止まる様子を知らず、気がつけばセナたちとはぐれていた。
このままでは拉致があかないと、彌一はし強引に凜緒の手を取って連れて行く。
「ほら、そろそろ行くぞ凜緒」
「あっ.........」
手を取る彌一に凜緒がポツリと聲をらしてその場を離れる。
未練たらたらの割には案外すんなり付いてきたなと思いつつ、彌一はそのまま溢れる人混みの中を凜緒の手を引いて前を歩く。
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凜緒はその後ろ姿を眺めながら、手にれるに頬を朱に染める。
自分より大きくゴツゴツした頼もしい手。手袋越しにも暖かい熱が伝わってくる。
こんなことなら手袋を外しておけばよかった、と後悔する凜緒。でも手袋をしていなければ上がる溫がバレてしまいそうで.......
「........ーーー緒。凜緒?」
「な、なにっ!?」
「なに、じゃねぇよ。聞いてたか?セナたち人が多いから先に宿屋に向かうってよ」
「う、うん!わかった!じゃあ、早く行かないとね!!」
「お、おう......?」
焦ってしまう凜緒に、彌一はし首を傾げるとなんでもないように再び歩き始める。
凜緒はほっとしつつ彌一に手を引かれて歩き出す。
本當は早く著きたくない、そう思いながら。
「.........やいくん」
「ん?どうした?」
「......うんん。やっぱりなんでもない」
「?まぁいいや。だいぶ離れたみたいだから早く合流しないと......」
そうして二人は人通りの多い表通りを回避し、し路地にる。すると、なにやら聲が聞こえてきた。
「やいくん。あそこ」
凜緒が指差す方向を見ると、1人の男の子が座り込んで泣いていた。
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「迷子みたい。やいくん」
「わかってる。セナ達には遅れるって連絡しとく」
「ありがとう!」
このような場面で放っておけるはずもなく、2人は男の子に歩み寄る。
「こんにちは。僕どうしたの?」
「ひっく..........おねぇちゃん、だれ?........」
「ただの旅人だよ。今日やってきたばかりなんだ〜。僕、お名前は?」
「...........レウ.........」
「レウくんか。レウくんはここでなにしてたの?」
「.........ママとパパとおかいものしてたら、いなくなってて........ぐすっ.......うええええええーーーんっ!!」
両親とはぐれたことを思い出し再び泣き始める。凜緒はレウをそっと抱き寄せると、鼻水と涙で服が汚れることも厭わず優しく抱きしめる。
「大丈夫だよ。お姉ちゃんとお兄ちゃんが探してあげるから。それにこのお兄ちゃん人探しのプロなんだよ?」
「ひっぐ...........ほんとう.......?」
「うん!なんたってやいくんは正義の魔法つ使いだからね!」
「俺はそんな大層なもんじゃないけどな」
「そんなことないよ!困った人達の為に魔を使うんだから、立派な正義の魔法使いだよ!」
明るい笑顔で自分のことではないのに誇らしげに語る凜緒。レウもそんな凜緒の笑顔に落ち著きを取り戻してきた。
「さ、レウくん。一緒にお母さんとお父さんを探そっか?」
「うん!」
明るい格の凜緒に心を許したのか、レウは素直に頷いて凜緒に手を引かれて立ち上がる。
「まずどこを探すかな。取り敢えず逸れたところに行ってみるか」
「レウくん。パパとママとはどこではぐれたの?」
「えっとね、大きな看板のあるお店の前」
「大きな看板.......」
取り敢えず大通りに出たが、ざっと見渡しただけでも大きな看板の店は多々ある。參考にはなりそうにない。
「他には?」
「カンカン!って大きな音がなってたの!あ、あと、みどりいろの服をきたおんなの人がお店のまえでたってた!」
カンカンという事は鍛冶屋だろうか。の人というのは売り子かもしれない。
「よし、じゃあその店を探してみよう」
パッと見てみるが付近にそのような店はない。
2人はレウを挾むようにして手を繋ぎ大通りを歩く。
レウは凜緒に心許したようで、楽しそうに凜緒にこの街について話す。凜緒も笑顔でレウの話に耳を傾けている。
「お、あそこじゃないか?」
彌一の視線の先には大きな看板の鍛冶屋があった。店の前では緑の作業服を著たが箱を積み上げて荷整理をしている。
レウに確認すると「うん!あそこ!」と言うので間違いない。
「それで、パパとママの格好ってどんな格好だ?」
「パパはくろの服をきてて、ママはあかいコートとボクがあげた花の髪かざりをつけてた」
「髪飾りか.......ちょっとまってな」
そう言って彌一は脇道の人目のつかないところに行くと、右の壁を蹴って跳んだあと左の壁を蹴って三角飛びの要領で屋に上がる。
「すごーい!」と下からレウの聲が聞こえてくる。彌一は周囲でそれなりに高い建の上に上がると、上から人混みを眺める。
人混みの一人一人を解析眼で認識しながら、該當條件に合う人を探していく。
多くの人が大通りを歩いているが、解析眼はすべての人の顔を完璧に検出して探し出す。
やがてレウと凜緒のいる通りの反対側の通りに該當條件に一致する人を解析眼が捉えた。
赤いコートに、レウと同じの髪に月の髪飾りをつけた。橫には黒い服を著たより長の高い大柄の男がいる。
二人はなにかを探すように周囲を見渡し、時々なにかんでいる。口元をアップすると「レウどこー!」と口をかしている。
「お、當たりだな」
距離はそこまで離れていないのですぐにでも追いつく。
彌一は屋から飛び降りてレウと凜緒のところに著地する。
「見つけたぞ」
「え!?ほんとう!?」
「ああ。この通りの反対側の通りにいたぞ。レウって呼びながら探してた」
「よかったね、レウくん!」
「うん!すごい!お兄ちゃんカッコいい!」
「ははっ、どうも。さっ、早く行ってパパとママを安心させてやんな」
レウを連れて彌一は小走りに通りの路地を走る。上から確認した最短ルートを通って反対の通りに出ると、レウは一発で両親を見つけ「パパー!ママー!」と駆けて行った。
二人もレウの聲に気がついたようで、安心した表を浮かべて、走ってくるレウに駆け寄る。
「レウ!」
「よかった!心配したのよ!」
「うん!ごめんなさい!」
母親の腕の中で甘えるレウに二人も仕方がないと苦笑いを浮かべて安心したようにをで下ろす。
し経ったあと、歩いてきた彌一と凜緒に二人はお禮を述べた。
「この度はありがとうございます!」
「大変ご迷をお掛けしました」
「いえいえ、私もやいくんも別に迷だなんて思ってませんから。ね?」
「ええ。見つかってよかったです」
彌一と凜緒の言葉にレウの両親は「なんとお禮をしたらいいか」と食事でもとってくる。だがこれから連れと合流して宿を探さねばいけない、という旨を伝えると、レウの母親は「でしたら」と言葉をつなげる。
「うちに泊まって行かれませんか?私たち家族で宿屋を営んでいるんです」
「え?そうなんですか?」
「はい。ですから、是非お禮としてサービスさせてください」
これは願ってもいないチャンス。事前の調査なしに街にやってきたので宿の報など彌一たちは一切知らない。正直なところ宿屋があるかどうか不安だったのでこれは本當にありがたい申し出だ。
「男が三人でが五人なんですけど、大丈夫ですか?」
「あなた、部屋はまだ空いていたわよね?」
「確か最上階の大部屋がちょうど二つ空いているはずだ」
「じゃあ決まりね!是非泊まって行ってください」
「それじゃよろしくお願いします」
「お姉ちゃんたちとまっていくの!?」
「うん。お世話になるね?」
「うん!まかせて!」
ドンッとを張るレウに全員笑う。まさかこんな巡り合わせがあるとはな、と彌一は思いながら、レウの案で宿屋へ向かう。
話の中でレウの母親レーシと父親ウルシは元冒険者でレウを産んでから冒険者向けの宿屋を営むようになったらしい。一階には安くて量の多い飯を出すことから、街でも人気の宿屋なのでとか。
街についてや彌一たちの旅話をしていううちに目的の宿屋が見えてきた。大きめの宿屋の前では何やら男たちの人混みができている。
「やいくん。あれ絶対セナたちだよね?」
「よし一丁野次馬を吹き飛ばしてくるか!」
「平和的解決は!?」
どこに行っても目立つ容姿のメンバーなので仕方ないのだが、いい加減どうにかしなければと思いながら、「取り敢えず一発!」と拳を握って近づこうとすると。
『ぎゃああああああああーーーッ!?』
暴風が吹き荒れ、ポンポンポーンッ!!と男たちが宙を舞う。
「........鬱陶しい」
案の定風の正はセナで、セナの後ろでは靜かにエルが縄でで男たちを吊るし上げている。よほどいがしつこかったのだろう。
「おつかれ二人とも」
「ごめんね私のせいで」
「別にいいよ。こっちのし買いして來たから」
凜緒が彌一と二人っきりなら一言二言言いそうなところだが、いの鬱陶しさが上回って特に気にしていないらしい。
「パパ、おなかすいた」
「あー、まだ晝にはし早いけど朝飯早かったしな。チェックイン済ませたらし食べに行こうか?」
すると彌一とユノのやり取りを聞いていたレーシが街の地図を差し出してくる。
「でしたら、この地図をどうぞ。街の名所やオススメの屋臺を書いてるので。うちではお晝はまだ準備ができてないですけど、夕食は楽しみにしていて下さい」
「ありがとうございます」
地図をけ取ってチェックインを済ませる。彌一たちは3階建ての最上階の大部屋二つを借りる。
部屋は男子三人でも十分な広さがある。子の方も同様に広いようだ。
全員荷を置くと一階の食堂に集まる。
「さて、俺とユノはし食べて回るけどどうする?」
「私もし見て回るわ。荷持ちよろしくね健?」
「えっ!?俺も食べ歩きしたいんだけど!?」
「僕はし部屋で休んでから行くよ。ケティに街についたら連絡してしいって言われてるんだ」
「じゃあそこ三人は別行だな。セナたちはどうする?」
「私は食材の買い出し行きたいから別行で」
「あ、なら私もセナと一緒に行くよ」
「私は特に用事はないのでマスターたちと一緒に食べ歩きでもいいですか?」
「おう。じゃあ各自別行でな。夕食までには帰ってこいよー」
こうして雄也以外の全員が街へ繰り出す。
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街を歩きながら凜緒は出店を見て回る。橫にはセナもいて、二人で仲良く買いをする。
「見て見て凜緒。これ綺麗じゃない?」
「うわぁ!すごい!」
セナの手にはガラスの玉がはまったブローチ。ガラス玉の中には綺麗な青い砂がっている。
「綺麗だね」
「うん。それにこの砂の彌一の魔力みたい」
そう言ってブローチを見つめるセナの橫顔はする乙のそれ。同の凜緒から見ても思わずドキッとするほど可憐だ。
「(本當に、セナはやいくんのことが大好きなんだから)」
セナが彌一の事を話す時、言葉の端々から彌一への「好き」という想いがありありと伝わってくる。セナは本當に心の底から彌一をしているのだと。
そして彌一もセナをしているのだと、セナの左薬指にはめられた一つの指が示す。
「(っ.........)」
彌一が作ってはめたというその指を見るたび、の奧が締め付けられるような覚に襲われる。
ーーその覚を抱きたくない。
そういくら思ってもこの覚はなくならない。
「ーー......緒、凜緒?」
セナが顔を覗き込んできて、ようやく凜緒はハッと我を取り戻す。
「あ、ごめんねちょっとぼーっとしてて」
「し休む?」
「うんん。平気平気。さ!次のお店に行こう!」
「.......うん。わかった」
し様子がおかしい凜緒に違和を覚えたセナだが、普段通りの元気に先に進む凜緒の後をついていく。
「次はどこに行く?私甘いもの食べたいなぁ」
「だったらあのお店とかどう?なんだか甘い匂いがする」
「いいね!行こ!」
買い袋を抱いて一直線に何やら甘い菓子を提供しているお店に突撃する凜緒。それを「待って!」と追いかけるセナ。
普段通りの仲の良い姉妹のような二人のやり取り。
ーーーけれど、凜緒の心はし揺れていた。
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