《悪魔の証明 R2》第146話 087 アカギ・エフ・セイレイ(1)
一時的という約束ながらクレアスを引き止めることができたのはつい先程、アルフレッドと一悶著を経た後のことだった。
用を足したいから私設警察の彼に手洗いまでついてきてしいという申し出を咄嗟に思いついたのだが、理由が理由だったせいかその場にいる全員が難を示した。
特にアルフレッドに自分ではなぜ駄目なのかと問いつめられ、彼だけではいざ襲われたときに頼りないからと言い訳したのだが、アルフレッドはエリシナから手渡されたシャノンの拳銃――サイレンサー38式をちらつかせて、これがあれば大丈夫と食い下がってきた。
彼の態度は、そのサイレンサー38式で僕に何かするつもりであろうことを匂わせた。
の危険をじた僕はそこで諦めることはせず、素人のアルフレッドだけでは不安だと強に主張し続けた。
自分の命が懸かっているのだから、當然誰に諭されようとも折れるつもりはなかった。
結局、僕の気迫に押されたせいか、アルフレッドは渋々ながらこの提案をけれた。
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そういった経緯があり、僕は現在偽の目的地である手洗いの前にいる。
仕切りからちょこりと顔を出し、通路の先を見やった。
すぐに、クレアスとアルフレッドがこちらに背中を向けて待機している姿が視界にった。
彼らがそこにいるのは、手洗いの前まで行って僕を監視するのもかわいそうだからという配慮からだ。
また、通路にはエリシナの姿はなかった。
「の私が、用を足す場にいたら出るものもでないでしょ」
という理由で、彼はルーム六の中に殘った。
その際、車両の外でするのは危険だから、車で用を足すように言われた。
アルフレッドから距離が取れるのであれば問題ないことから、僕はそれを斷ることなく了承した。
數分前の出來事を思い返し、安堵の吐息をついてから顔を引っ込めた。
それと時を同じくして、
「ちょっと、失禮じゃない。レディをこんなことに付き合わせるなんて」
クロミサの不機嫌そうな聲が隣から聞こえてくる。
「いや、そういうつもりじゃない」
両手を前に差し出しながら、そう言葉を返した。
だが、クロミサは心中穏やかではないようで、
「まったく、男として恥を知ってよね。こんなところでの子に下を見せようなんてあなた変態だったの?」
と言って、強い鼻息を僕の顔に吹きかけてきた。
ルーム六を去る間際、必死に目配せをして、何とかクロミサをここに連れてくることへ功した。
無論、その目的はクロミサの言う種類のものではない。
々と言って宥められたが、その後も、クロミサは小言を延々続ける。僕の言い分を聞くつもりは頭ないようだ。
一連の臺詞が終わった後、
「あのなあ」
と聲をかけてから、僕は頭を軽く振った。
「何よ」
まだおさまらないのか、クロミサは聲を荒げる。
「……トイレなんて噓に決まっているだろ。現狀の把握をしたいんだ――まず、君が知っていることをすべて教えてくれ」
目的を告げながら、質問した。
「知っていること?」
そう訊き返してきたかと思うと、クロミサはすぐに怪訝そうに眉を顰める。
「そうだ」
深く頷きながら、答える。
「まあ、それくらいだったらいいけれど……」
ようやく聞く耳を持ったのか、クロミサはそう聲をらした。
「初めに確認するけど、君があのふたりを殺したってわけではないんだな」
念押しする意味を込めて、言った。
「心外なことをきくわね。理由もないのに人を殺すわけないでしょ」
鼻息を強くらしながら、クロミサが言葉を返してくる。
「ドアとか壁をすり抜けて、なんてこともないよな」
僕は続けて確認した。
幽霊――殘存思念が無機質なものはすり抜けられないというアンフェアなルールが、さらにアンフェアな噓だとすれば、殘存思念による他殺の疑いが出てきてしまう。
「だから、そんなところ通れないって言ってるでしょ。昨日の話を聞いてなかったの?」
クロミサが言う。
「そうだろうね。そうでないと、むちゃくちゃだ」
僕はそう相槌を打った。
この化けがスピキオさんやあのふたりを殺したテロリストというのであれば、今現在、僕たちが息をしているわけがない。
「――では、まずアルフレッドの件をきかせてくれ。さっき君が言ったことを耳にして、アルフレッドがテロリストであることはまず間違いない。なくとも僕はそう思っている」
「ふんふん」
「エリシナさんの話を聞かずとも、おそらくシャノンさんはテロリストの一味だとも思った。となると、スピキオさんが殺されたときアルフレッドが後ろを向いてその狀況を見ていなかったという彼の証言は、限りなく噓に近いはずだ。この見解は合っているか?」
と、確認した。
「合っているというか、すべて真実」
クロミサは即答した。
ツインテールの片方をかきあげながら、
「私はアルフレッドが銃を撃ちまくり始めたときから、彼の行をずっと観察してたから、それは確かよ」
と、付け加える。
それを聞いた僕は、
「君はすべてを目撃していた――だったら、何で出會ったときに言ってくれないんだ。もっと早く教えてくれていれば、このような狀況に陥ることはなかったのに」
すぐに文句をつけた。
「だって、訊かれなかったんだもん」
と言って、クロミサは悪びれもせずに口を尖らせる。
まるでこちらの方が悪いと言わんばかりの振る舞いだった。
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