《悪魔の証明 R2》第147話 087 アカギ・エフ・セイレイ(2)

この悪態にちっと舌打ちを返しながらも、再び會話を続けることにした。

「となると気になるのは、スピキオさんを撃ったあのサイレンサー38式だ」

私設警察の拳銃へと話題を移す。

今現在、もっとも重要なことを知る必要があった。

記憶を遡るためだろうか、クロミサが手洗いの天井に顔をやる。

すぐに正面に視線を戻したかと思うと、

「サイレンサー38式? ああ、あの音がしない変な形の銃ね」

と、確認してきた。

「そう、そのサイレンサー38式。あの時點で、アルフレッドは私設警察しか持っていない拳銃を手にれていた。ということはエリシナさんとアルフレッドは……」

途中で言葉を切って、クロミサにその先を促した。

「そうよ、エリシナって人とアルフレッドは通じているわ」

クロミサは、僕の思通りの臺詞を述べた。

それを聞いた僕は、

「やはり、そうか」

と、聲をらした。

エリシナとアルフレッドがグルだとすると、今まで彼らが発した奇妙な言にすべて説明がつく。

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「車両の外に私はいたからそれは確かよ。そこで目撃したのは……」

そう前置きをしてから、クロミサが再び口を開く。

「銃撃戦のとき、エリシナが最後に放った弾は、六號車側にいるアルフレッドの拳銃を撃ち抜いたの。拳銃が地面に落ちたのをエリシナは確認したんだけれど、なぜか手ぶらになったアルフレッドにとどめを刺そうとはせず、彼がいる場に近づいていったわ」

と、當時の狀況を説明してくる。

「クロミサ、二人はそれから何をたんだ?」

僕は尋ねた。

「ええっとね……エリシナはその場に到著するなり、アルフレッドに本當のルールを教えるとか聲をかけて彼と會話を始めたわ。し話をしたら、アルフレッドは納得したじになって、また地面に落ちた自分の拳銃を拾ったの。そのとき、エリシナは持っていたサイレンサー38式とその拳銃の換を申し出た。自分より、あなたの方が乗客を殺すチャンスは多いからって」

クロミサが訥々と答える。

「で、エリシナさんはそのまま立ち去っていったというわけか」

アルフレッドが皆より遅れて車両にってきたことを思い返しながら、僕はそう確認した。

「そう。その後、アルフレッドに殺された彼がきたの」

クロミサが、スピキオが撃たれた時點を示すような言葉を吐く。

「……そうか、そこでアルフレッドがスピキオさんを殺したのか。サイレンサー38式を使ったから銃聲は鳴らない。それで、彼がいる方向と誰もいなかった逆側、どちらからスピキオさんが撃たれたかわからない。これにより彼はアリバイを確保することができた」

「確かに、音で判別できないのだから、アルフレッドはやっていないと噓の証言をしても誰にも真実はわからないわね」

「そうなるな。となると、君と外で初めて會ったとき、アルフレッドが僕のところに來たのは、外にいる僕を殺すためだったと考えるべきだ。サイレンサー38式だと、車両の中にいる人たちに知られず僕を殺すことができるからね」

「まあ、私がいるから誰にも知られないってのはありえないけれどね」

「きみは誰にも見えないんだから、特殊事例だよ。いずれにしても、こんな狀況で僕が死んだとしても、それは外にいるとされている存在しないテロリストのせいになるだけだ」

「確かに、アルフレッドに疑いはかからないわね」

「けれど、このときは、フリッツさんがあの場に來てしまったから、彼は僕を殺すことを諦めるしかなかった。だから、僕を暗殺しようとはせず、その後フリッツさんとふたりで寢臺車の中へと消えていった」

そう告げはしたが、僕はすぐに目を細めた。

「……でも、それはおかしい。そうじゃない?」

僕の顔をうかがような素振りを見せながら、クロミサは尋ねてくる。

「そうだね。よく考えてみれば、これはおかしい」僕は語気を強めてそう宣言した。「アルフレッドは、フリッツさんもろとも僕をあの場で殺することができたのにもかかわらず、僕らを撃とうともしなかった。拳銃を持っているのだから、無防備なふたりを殺すことなど造作もないはずなのに。なぜかそれができなかった。どうせフリッツさんは殺すつもりだったのに」

「なぜなら、彼は知っていたからね」

クロミサは、にこりと笑って言った。

「その通りだ、クロミサ」

僕は頷きながら、相槌を打った。

「そなると、フリッツが……」

今度はクロミサが先を促すかのように、途中で言葉を切る。

「そう、実はフリッツさんも拳銃を持っていたんだ。それはもちろんサイレンサー38式じゃない。アルフレッドは、そのフリッツさんと銃撃戦になるのを恐れた。だから、僕とフリッツさんを見逃したんだ。そして、アルフレッドがフリッツさんの拳銃所持を知っていた理由は、フリッツさんが……」

僕がその先にある核心を言いかけた瞬間だった。

「おい、アカギ君。何をぶつぶつ一人で言っているんだ。そろそろ俺は行くぞ」

と、ドアの向こう側からクレアスの聲が聞こえてきた。

しまった、もうそんなに時間が経ってしまったのか。

まだ聞きたいことがたくさんあるのに。

渋々とクロミサから目を切りながら、僕はを後ろへと振り向けた。

そして、ドアノブに手をかけた次の瞬間、

「口惜しいが、今はクレアスさんを引き止めることの方が先決だ」

と、小聲で呟いた。

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