《「お前ごときが魔王に勝てると思うな」とガチ勢に勇者パーティを追放されたので、王都で気ままに暮らしたい》023 カウンターアタック
まだ數の上では圧倒的に不利だ。
普通に考えて、フラムの実力で教會騎士5人を相手にするのは楽なことじゃない。
けど不思議と――全く、負ける気がしなかった。
ガゴォンッ!
プラーナを込めた渾の一撃が、プレートアーマーの側部に叩き込まれる。
鋼鉄の鎧はベコンと凹み、側まで突き抜けた衝撃が騎士の臓を破壊、吹き飛ばされ、地面に倒れながら、彼は口からを吐き出した。
直後、右側から槍が側頭部を狙って突き出される。
フラムがのけぞると、穂先が鼻先を掠めた。
さらにそこに、姿勢が不安定な彼を狙って左側からも鋭い刺突が迫る。
取った――5人の騎士は同時にそう思考したが、フラムは魂喰いを消すと同時に地面を蹴り、後方宙返りで回避。
無茶な挙だが、力を消耗し、腳部にプラーナをつぎ込むことでそれを可能とする。
著地を狙った一撃もバックステップで躱かわすと、再び剣を抜いて「ふうぅっ」と息を吐いてプラーナを満たす。
一方ガディオは、懲りずに向かってくる冒険者と眼球目掛けて、虛空に剣を突き出した。
ゴガガガガガガガァッ!
込められた膨大な量のプラーナが荒ぶり、嵐となって眼前に存在する全てを駆逐する。
「刺突だ、一點に集中させ貫け!」
彼は強い口調で言った。
先ほどのは、おそらく手本だったのだろう。
その言葉をけて、フラムは騎士に向けて“突き”を繰り出し、その先端よりプラーナを凝させ放った。
――騎士剣キャバリエアーツ・気穿槍プラーナスティングである。
細く鋭い一撃は、分厚い鎧を貫通し騎士のを串刺しにする。
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部付近に開いた數cmほどの正円、彼はそこを手で抑えて塞ぐような仕草を見せながら、ガシャンと地面に倒れた。
殘り、3人。
騎士たちは揺を共有し、一時的に足を止める。
その隙に呼吸を整えるフラム。
「ふぅ……そういえばガディオさん、どうしてここに?」
「見ての通りだ」
ガディオが顎で指し示した先には――フラムを追っていた時よりさらに増えたように見える、眼球の姿があった。
「も、もしかして、あれに追われてたんですか?」
「そういうことになるな」
言って、彼は「ふっ」と自嘲ぎみに笑った。
よく見ると、その顔つきはどこか疲れているように見える。
數日前から追われていたのかもしれない。
そしてその間は、全く眠れていないのだろう。
それでも、疲労困憊の狀態で放ったひと薙ぎで、數人の冒険者を倒してしまうのだから、恐ろしい話だ。
まあ、再會するまでの詳しい経緯は後で聞くとして――気を取り直して、殘り3人と向き合う。
その後の戦闘は、ある種の“稽古”と呼ぶべきものであった。
ガディオが一振りで極大の剣気を地面に走らせると、フラムも同様の技を放ち、騎士を打ち倒す。
彼が剣を十字に振り、プラーナをその場で留め壁を作り出すと、彼も切っ先で十字を描き、盾を作り出し騎士の放った魔法を防ぐ。
さらにはプラーナ製のコツを聞くと、洗練された力が魂喰いに宿り、吹き飛ばすのが一杯だったプレートアーマーを見事両斷する。
「ラストォッ!」
1対1ならばもはや負ける要素は無い。
フラムは振り上げた漆黒の刃で、縦に真一文字を描く。
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最後の1人が、鎧もろとも左右に分斷され、2枚に分かれて地面に倒れる。
流れ出るや臓をせき止めるように、遅れて傷口が凍りついた。
剣を仕舞いガディオの方を振り向いた彼は――
「はあぁぁぁっ!」
気迫だけで近づく眼球を破砕し、敵をひるませ、
「ふんッ!」
一振りで男が々に砕け散る・・・・・・・、冗談のような景を見た。
ガディオの強さは十分理解していたつもりだが、対人間の戦いとなると余計に際立つ。
それでいて、役立たずだった自分を蔑ろにせず、面倒を見てくれるほど人格も真っ直ぐだと言うのだから――憧れずにはいられない。
「そちらも終わったようだな」
「はいっ、どうにか。助けてくださってありがとうございます、ガディオさんが來なかったらどうなってたことか」
「ふっ、俺の力だけではない」
ガディオは優しく微笑む。
「強くなったな、フラム」
そして、どこか暖かな聲でそう言った。
あの英雄から、認められた。
フラムは小躍りしたくなるほど喜んだが、すぐに“浮かれるな”と自戒する。
……まだまだ自分は弱い。
誰も救えていないのだから。
「今日まで々あったので……話したいことは沢山ありますけど、とりあえずは――」
「ああ、行くか」
眼球は止まらない、まだどこからともなく湧いてきて、2人を追い続ける。
フラムとガディオは、デインが逃げていった方角へと、事態を解決すべく走り出した。
◇◇◇
巨大な鎧を纏った男と、軽裝で小柄なというアンバランスな2人は、ひたすらに夜の町をさまよう。
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未だデインの姿は見つからない。
捜索を続けつつ、ガディオとフラムは互いに報換を行っていた。
「つまり、そのインクというが眼球を作り出しているわけだな」
「そういうことになります」
「螺旋の子供たちスパイラル・チルドレンのうちのひとりか」
「そのスパなんとかって、もしかして教會の研究ですか?」
「知っているということは、やはりフラムたちも教會を追っていたか。そうだ、生まれたばかりの子供に、心臓の代用品としてオリジンコアを埋め込む、イカれた実験だ」
「オリジンコア……それに、心臓の代わりって……」
つまり、コアを潰せば――インクも死ぬ。
しかしコアが殘っている限り、おそらく彼の能力である眼球は消えない。
いつまでも、教會に危害を加える恐れのある人間を追跡し続けるだろう。
「そのインクとは、どういう関係だ?」
「たまたま倒れている所を助けたんです。それから、何日間か一緒に暮らしていました」
「そうか。つまり、お前はその子を助けたいわけだな」
「……はい」
フラムの視線が下を向く。
できることなら、助けたい。
もし、オリジンコアだけを取り除く方法があるのならば。
だがそれが困難であることも、フラムは理解していた。
「すまんが俺にも方法は思いつかん。だが、デインに渡したままでは都合が悪いことはわかる」
「デインを知ってるんですね」
「俺も冒険者だからな、西區で好き放題する奴の話は聞いたことがある」
「あいつは教會に仲間と魂を売りました」
「救えんな……目先の利益に釣られて、最も尊重すべき資産を捨てるか」
ガディオはそう吐き捨てる。
目の前に丁字路が迫り――2人は勢いを緩めると、右に曲がった。
両側の建の屋上から、大量の眼球が落ちてくる。
夜の闇を二筋の軌跡が裂き、それらは空中に舞ったまま散った。
「そういえば、もしかしてですけど、うちの窓枠にナイフを投げつけたのってガディオさんですか?」
「そうだが、わかりにくかったか?」
フラムはがっくりと肩を落とす。
「わかりませんよぉ、名前も書いてなければ文字も汚いんですから」
「許せ、余裕が無かった」
眼球に追われながら、合間をって書いたメモだったのだろう。
そもそも、その最中ではフラムの居場所を摑むことだって難しかったはずだ。
「追われてたからって事がわかったからいいですけど、最初はデインたちのイタズラかと思いました」
「どのみち効果は無かったようだがな」
「外に出るなって言われても今さらです、私も當事者ですし」
「當事者?」
「どうやらオリジンとやらの狙いは私みたいなんで。考えてみれば、魔王討伐の旅に、弱っちい私が選ばれた時點からおかしかったんです、よっと」
フラムは足元から湧いてきた眼球を跳ねて避ける。
前方にはまた曲がり角。
今度はスピードを緩めず斜め左へと進む。
「理由はわかりませんけど。ひょっとして、私の屬を狙ってるんですかね」
「反転か」
「はい。その、ガディオさんがさっき言ってたオリジンコアっていうやつ、普通は壊せないものなんじゃないかと思うんです」
フラムは、研究所で出會ったネイガスの反応を思い出しながら言った。
「その通りだ、通常の手段では破壊できないらしい」
ガディオも追われる前、教會を調べていたのだ。
それぐらいの報は摑んでいる。
「でも私は、壊すことができた。あの時――実は一回、コアの力を使うモンスターと戦ったんですけどね」
「思ったより深い部分で巻き込まれているようだな」
「ええ、まあ。その時、私はとにかく必死で、プラーナとか、魔力とか、いろんなをコアに注ぎ込んだ気がするんです」
「その魔力が鍵だと?」
「もしオリジンが“螺旋”を力にしているのだとしたら、私の反転でその回転を逆にすることで、何かが起こるのかもしれない……」
「理屈はわからんが、実際に壊せたということはそういうことなんだろうな。もしプラーナが理由なのだとしたら、もっと以前に誰かがやっていたはずだ」
「私にしかできない。だから、私がインクを――」
フラムは自分の手のひらを眺めた。
救うことはできなくても、これ以上の悲劇を止めることはできる。
けれどそれで、本當にいいのだろうか。
「なにっ!?」
その時、ガディオが聲をあげた。
フラムと視線が合う。
彼は反的にぶ。
「止まるな、フラムッ!」
何が起きたのかはわからないが、フラムは必死に駆け抜けた。
ゴオォォォオオッ――ドォンッ!
轟音が、靜まり返った町に轟く。
「っぐ……ぬおぉお……!」
ガディオは――2人を潰そうと両側から迫る壁を、腕でけ止めていた。
漆黒のガントレットが、石壁にめり込む。
両腕は震え、彼の剛力を持ってしても維持は困難であることは一目瞭然である。
しかも、足元からは眼球が近づいている。
この狀況で再び離れ離れになることは避けたかったが――
彼は合流を諦めたのか、腕から力を抜き、フラムから見て逆の方向に出した。
すると、壁は完全に隙間なく閉じ、2人は分斷されてしまう。
「ガディオさんっ!?」
「大丈夫だ、だがこれ以上は一緒に行けそうにない」
ガディオの前には、10歳にも満たないであろう年が立っている。
纏っているのは、インクが最初に著ていたのととても良く似た、白い服。
――敵だ。
おそらくは、螺旋の子供たちスパイラル・チルドレンの一員だろう。
相手が子供だろうと容赦なく、ガディオは剣を向ける。
「ああそうだフラム、ひとつ伝え忘れていたことがある。お前の知り合いからの伝言だ」
壁越しに彼の聲が聞こえてくる。
「誰からですか!?」
聲に焦りが混じっている。
フラムにも眼球が迫っていた、これ以上、この場に留まるのは難しい。
その伝言とやらを聞いたら、すぐに走り出すつもりだった。
「セーラというからだ、自分は無事だと伝えてしい、と」
しかし――それを聞いて、フラムが歓喜しないはずもなく。
「セーラちゃん……!」
瞳に涙が浮かび、視界が滲む。
ガディオとの再會に、セーラの生存。
全て失われてしまったと思いこんでいた希が、湧き上がってくる。
「生きて、たんだ。そっか、そっかぁ……!」
彼が生きているのなら、ミルキットとエターナだって無事なはず。
希がフラムの心に再び炎を燈し、瞳は完全にを取り戻す。
「ありがとうございます、ガディオさん!」
大きな聲でそれだけ言うと、フラムはそこから走り出した。
じっと自分を見つめ追跡してくる眼球の隙間をって、疲れも忘れて今日一番のスピードで駆け抜ける。
ガディオは壁を背に、彼の明るい聲を聞いて「ふっ」と微笑んだ。
「笑ってる余裕あるの、おじさん」
「ああ、あるさ」
即答され、骨に不機嫌になる年。
彼は耳を隠す程度にびたサラサラの青い髪を、右手でかき上げると、冷たい目をしてガディオを品定めする。
「それに追われてるってことは、ボクが螺旋の子供ってことはわかってるんだよね?」
明らかに年上であるガディオに対しても、年は偉そうな口調を崩さない。
「察しはついている」
「ネクト・リンケイジ、それがボクの名前さ。螺旋の子供たちスパイラル・チルドレンの第二世代・・・・であり、そして、オリジン様から與えられた力は――」
冷徹な笑みを浮かべたネクトは、手のひらを上に向けて、腕を前に突き出す。
その顔はぐにゃりと次第に歪んでいき、あの化となったインク同様に、赤い螺旋と化した。
ガディオは警戒し、剣を握り、一歩前へと前進する。
ネクトは完全に人外となったその狀態で、開かれた手を閉じ、拳を握った。
「接続コネクション、さ」
を震わせ、顔のどこからかそう告げたネクトの姿は、聲と同時に消える。
英雄の目でも捉えられないほどの高速移。
いや――そんなもの、あるわけがない・・・・・・・。
移ではなく、転移したのだ。
背後に何者かの気配をじたガディオは、振り向くと同時に剣を振るう。
「おっと、接続《コネクション》」
再び消えるネクト。
今度は先ほどの場所に戻ったらしい。
そして三度手のひらを握る。
「そおら、繋がれえぇコネクションッ!」
聲に力が籠もり、の渦が脈し、大きな力が大気を震わす。
するとガディオの両側にある家同士が接続され・・・・、彼を押しつぶすように壁が迫る。
さらには別の場所と接続され、転移してきた石造りの住宅が、上から・・・落ちてこようとしていた。
「あっはは、あっけないなぁ、英雄ってやつも!」
ネクトは勝利を確信する。
だが――
「我意・騎士剣キャバリエアーツ・エクスパンション――」
絶絶命の危機。
しかしガディオは冷靜沈著に、自分の呼吸をさず、己の技で立ち向かう。
用いるのはプラーナだけではない。
彼の屬は土。
腕を通じて大剣に魔力が満ち、刃が巖で包まれていく。
人一人分ほどの長さのある剣が、さらに2倍3倍と巨大化していく。
それはプラーナで補助しなければ、ガディオの腕力を持ってしても握れないほどの重量となる。
さらに、天高くそそり立つ剣そのものにもプラーナを満たし、その狀態で技を放つ。
それは彼が生み出した、彼のためだけの騎士剣キャバリエアーツ。
「巖刃縋崩斬《タイタンブレイド》ォッ!」
ゴオォォォッ――!
巨大な剣が振るわれると、一瞬だけ、時が止まったように全ての音が消えた。
そして、次の剎那――
ゴバアァァァッ!
けたたましい衝突音と共に、壁も、上から落ちてきた建も、々に砕け散った。
ネクトの放った必殺の一撃は、あっさりと返されてしまったわけだ。
だが、無數の瓦礫が降り注ぐ中、年は渦を歪めながら笑っている。
「……へえ、前言撤回しなきゃ。やっぱすごいよ、英雄は」
「もう巻き込む心配も無い。ここからは、全力で行かせてもらう」
「どうぞどうぞ、む所さ! そして証明しなきゃね、英雄よりボクらの方が優れてるんだってことを!」
◇◇◇
ガディオと別れた場所から、力同士がぶつかりあうとてつもない音が聞こえてくる。
彼は本當に無事なのだろうか――フラムは引き返したくなる気持ちをぐっと抑え込んで、前に進んだ。
デインがどこに居るかなんて宛はない。
けれど、向かった方向からして、一番怪しいのはやはり西區の教會だ。
みなが寢靜まっている今の時間なら、本堂には誰も居ない。
神父や修道の居住スペースも別にあったはず。
を隠すにしても、誰かと合流するにしても、うってつけの場所ではないだろうか。
「しつこいっ!」
眼球を蹴散らしながら、とにかく足をかす。
意識をすれば気だるさはある。
ミルキットとエターナの捜索を行い、インクのあの姿を見て、デインの部下と戦い騎士剣《キャバリエアーツ》を発し、そして今も走り続けているのだ。
むしろ、どうして自分がここまでけるのか不思議なほどだった。
裝備のおかげというのもあるだろう。
しかし――あそこで、ガディオと再會しなかったら、セーラの生存を聞かなかったら、こうは行かなかったかもしれない。
とっくに、諦めていたかもしれない。
けれど今は、あいつと戦うための気力に満ちている。
門をくぐり、庭を通り、大きな木製の扉を押し開く。
薄暗い堂。
正面にはオリジンを模したと言われる人型の像が飾られており、床にはいくつもの長椅子が並んでいる。
その最前列に、大きな態度で、足を組みながら座る男の姿があった。
り口を閉め、武裝を顕現させ、フラムは彼に近づく。
足音を消そうとは思わない、なぜならとっくに、扉を開く音で気づかれているからだ。
中央に敷かれた絨毯の上を、ちょうど半分ほど進んだ時、彼はフラムに背を向けたまま口を開いた。
「來ちまうんだろうなあとは思ってたよ。そういうしつこさがお前にはあるってよぉ。なんつーか、経験則っての? それでわかっちまうんだ。僕って結構冒険者歴長いからさ、勘も冴えてるんだよね」
聲の調子はいつもと変わらない。
人の神経を逆でするような、心底不愉快な雑音だ。
フラムは聞く気などなかった。
近づいたら問答無用で剣を振り下ろし、首を落とすつもりだったのだ。
今のところ、まだ眼球は堂にはってきていない。
り口を閉めたおかげだろう。
だがそれも時間の問題で、不利な狀況になる前に、とにかくフラムは事を終わらせなかった。
まあ、そう簡単にいくはずが無いことぐらい、彼にもわかってはいたが。
「でも、雇い主との合流前に來るのはちーっとばかし計算違いだったかなぁ。僕としたことが、とんだ失態だ。があったらりたいね」
フラムは無言で歩み寄る。
「ああ、そうだ。あのインクってガキなら奧の部屋に居る。ネクトとかいうクソガキとの約束だからな、危害は加えていない。ただ、いつ意識を失ってまたあの化になるかわかんねえぜ? なあ、フラムちゃんよお」
間合いにると、魂喰いを持ち上げ――首を狙って振り下ろす。
「おっとぉ!」
彼は、そんな見えいた攻撃を、前のめりになって立ち上がり避けた。
そして、2人は向き合う。
殺意をむき出しにして睨みつけるフラムと、下卑た笑みを浮かべるデイン。
どこまでも平行線で、両極端で――互いにわかり合うことなど永遠に無いのであろう。
例え、世界が何度回ったとしても。
「顔つきが変わったな、何か良いことでもあったのか?」
「……殘念だけど、その通り。どうもみんな生きてるみたい」
「はっ……そうかよ。どうでもいいな」
デインはクロスボウを構え、フラムに向ける。
「どうせお前はここで死ぬんだ、フラム」
彼はクロスボウに裝填されたボルトの鋭利な先端を見ても、怖気づくことはなかった。
闘気は萎えず、魂喰いを両手で強く握りしめる。
「それは――あんたの方だっての、デインッ!」
フラムが啖呵を切り、ダンッ、と床を蹴り加速する。
デインはさらに口角を吊り上げ、トリガーに當てられた指に力を込めた。
出され、真っ直ぐにフラムの心臓を狙うボルト。
彼は一切ガードしようとせず、そのままでブロードヘッドをけ止める。
そして――「リヴァーサルッ!」――反転の魔法を発、跳ね返ってきたそれをデインは首を傾け、避けた。
しかし鏃やじりは頬を掠め、顔にうっすらと傷が浮かぶ。
さらにフラムは速度を緩めず、薄する。
右手で大剣をなぎ払う。
またにやりと笑いながら、それを避けるデイン。
犬歯をむき出しにして、怒りの形相で睨み返すフラム。
正と負――あまりに溫度差のある2人の視線が錯する。
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