《「お前ごときが魔王に勝てると思うな」とガチ勢に勇者パーティを追放されたので、王都で気ままに暮らしたい》検死3 救えなかった男
振り上げられる巨大な腕。
夜空を分斷するように天高くそそり立つそれに向けて、ライナスは弓を引く。
あれが様々な生を接続、あるいは同化して作られた腕だとするなら、その數は無限ではないはず。
どうせ本を狙ったところで傷口がねじれ、まともにダメージは與えられないのだ。
そしてフラムがいない今、コアの破壊も困難。
ならばまずは堅実に、腕の弱化を狙う。
「が逃げたぞ、殘念だったなヒューグ。二人いたら、壊れるまで一時間ぐらいは楽しめそうだったのに」
貞帯から解き放たれたヒューグは、もはやを隠しもしない。
フラムたちがいなくなったその苛立ちをぶつけるように、彼はライナスに向けて腕を叩きつける。
ズオオオォオオンッ!
大地を揺らし、地面をえぐり、地形を破壊する強烈な一撃。
これがただ腕を振り回しただけで実現するというのだから、恐ろしい威力である。
飛び上がって回避したライナスは、さらに風をにまとい空中でもう一度ジャンプし、首を狙って飛來する魔力の刃をかわした。
「相変わらずわけわかんねえ攻撃だなッ!」
騎士剣キャバリエアーツや殺規則ジェノサイドアーツは、まだ理解できる。
だが正義執行ジャスティスアーツは、バートの説明を聞いてもいまいち納得できないのだ。
正義執行ジャスティスアーツとは、に存在するエネルギーである魔力を、魔法とは別の形で顕現させる技のこと。
そもそも魔法は、生まれながらに持つ屬のものしか扱うことが出來ない。
さらに、自分の屬であっても、十分な魔力量と、の魔力をにコントロールし、そして己のむ形に変える集中力と想像力が必要である。
余談ではあるが、発時に魔法の名前を宣言するのは、その想像を手助けするための手法の一つだ。
だが、正義執行ジャスティスアーツには屬など関係ない。
魔力というエネルギーを、己の心や面に応じた形に変え、武を介して外に放出する。
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もっとも、魔法より習得が面倒な上に、魔法ほど自由自在に魔力をることが出來ないという欠點から、教會騎士団の人間ぐらいしか使っていない。
結果、臆病さと勇敢さを兼ね備えたバートは障壁という形で力を顕現させ、『正義を執行するために悪を殺せばいい』とシンプルに考えるヒューグは、敵の首を執拗に狙う刃という形になったらしいが――
やはり何度考えても、なぜヒューグがそのような結論に至ったのかが、全く理解できない。
どうやら騎士団にる前は繰り返しを襲っていたこと、そしてその後は貞帯をに著け、そのおかげで才能が開花したことが関連しているようだ。
しかしまあ、ライナスにとってはどうでもいいことだし、思考のリソースを割くだけ無駄なのだが。
首を狙った斬撃を回避したライナスは、空中を舞いながら矢を放つ。
腕に命中すると、矢じりが風魔法によって炸裂し、その表面を削った。
だがすぐに側から新たなパーツが湧き出てきて、傷を埋める。
その程度は予想の範疇だ、落ち著いて、次の一撃が來る前に、同じ場所を狙って抜く。
「目障りだな、あいつ。ああそうだな、ヒューグ。でも――」
ヒューグは地表を削り取るように全てを薙ぎ払う。
迫りくる腐臭を放つ壁を前に、ライナスは高く飛び上がった。
「――男もたまには悪くないぞ、ヒューグ」
「勘弁してくれよっ!」
頬を引きつらせながら、三本の矢を束ねて放つ。
冗談には聞こえない、が満たせれば誰でもアリなのか。
「そう思うとしいな、お前でもいい、誰でもいい、注げるのならならば」
するとヒューグの腕が急速に、普通の人間の腕と同じサイズにまでんだ。
そしてその先端が、まるで剣のように尖った形狀に変形する。
今までが機を犠牲にして威力に特化した形態だとしたら、これは――
「男だろうがだろうが、臓への挿は等しく暖かくて気持ちいいらしいな、ヒューグ」
高速移形態とでも呼ぶべきだろうか。
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軽になったで、ライナスに接近するヒューグ。
その速度は、普通の人間だった頃の彼を遙かに上回っている。
スピードに自信のあるライナスですら焦ってしまうほどだ。
「速さでの戦いなら乗りたいところだが……今はんなことしてる場合じゃねえんだよ」
彼のプライドはナイフでの戦いをんだが、あんな化と正面から撃ち合うなど正気ではない。
心を切り捨て、時間稼ぎという役目に専念する。
まずは後退しながら矢で足元を狙い、牽制。
普通の矢と、炸裂、分裂を織りぜつつ、多彩な攻撃でとにかく近づかせない。
ヒューグは幾度となく腕で空を切り、正義執行ジャスティスアーツによる首狩りを狙ったが、全てライナスに避けられてしまった。
彼の強みは、通常の斬撃と首を狙った斬撃の同時攻撃だ。
それは化になった今でも変わらない。
ゆえに正義執行ジャスティスアーツのみでの攻撃は、大した脅威ではなかった。
もっとも、きを阻害するばかりで、ライナスの攻撃も彼にまともなダメージを與えられていないし、彼自もその欠點を把握しているはずなのだが。
「そろそろ來るか……?」
つまり、何かしら現狀を打破するための方法を、持っているということ。
そして敵の外見と、オリジンコアを使っているということから推察するに、おそらくヒューグはあの腕から何かを出してくる。
まるで答え合わせをするように、彼はライナスを追いかけながら腕を前にかざした。
するとその一部が、ずるりと地面にこぼれ落ちる。
それは様々な生のパーツを組み合わせた、キマイラよりもさらにでたらめな生命。
前足は猿で、後ろ足は鳥。
他のも顔も何もかもが、モザイクアートのようにつぎはぎで作られている。
そいつは用に四本の足を使い、ライナスに接近した。
ライナスは二本の矢をつがえ、一方でヒューグを、もう一方で産み落とされた怪を狙う。
無論、一人を狙ったときより威力も度も落ちる。
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ヒューグは足元でぜたそれを軽々と避けた。
しかし怪の方は、あっさりと々に砕け散る。
耐久は大したことないようだ。
「數で攻めてくるタイプか……」
再び答え合わせ。
ヒューグはまた腕を前にかざし、今度は十ほどの怪を産み落とした。
速度もヒューグ本人より緩慢だが、このまま量で押されれば、いずれ追い詰められる。
ライナスが進んでいるのは、フラムが逃げたのとは別の方向だ。
ヒューグは目の前に存在する敵に集中しているようで、あちらを追跡する様子はない。
フラムが安全域まで離れるのに必要な時間は、あと二、三分と言ったところか。
他のコアを取り込んだ人間の実力からしても、今のヒューグが全力を出し切っているとは考えにくかった。
下手に藪蛇をつついて本気を出されるより、その前に逃げ切ってしまいたい――そう考えたライナスは、弓を降ろして彼に背中を向けた。
そして全速力で、先にある木々の生い茂る山に向かって駆ける。
「私は自が嫌いだ、寂しいから。母は私をしてはくれなかった、認知もされずに金にならないと嘆くばかりだったのさ。だから逃したくないんだよ。そこにがあるから。だろう、ヒューグ」
ヒューグも一段階ギアを上げ、腕を振り彼を追いかける。
山に突すると、ライナスは木々の間を抜け、時にその幹を蹴って加速しながら前進した。
一方でヒューグは、立ちはだかる樹木を強引に腕で薙ぎ払い追いかけてくる。
無論、腕を振るうたびにタイムラグが生じてしまう。
その差が、二人の距離を徐々に離していった。
確かにコアを取り込んだことで、ヒューグの能力は向上しただろう。
しかし、どんなにが強化されたところで、彼には高速戦闘の経験や慣れ・・がない。
その差は、コアをもってしても埋められないものだ。
子供の頃から、冒険者として王國の各地を渡り歩いてきたライナスは、あらゆる地形に対応したき方をに著けていた。
たとえ一度も踏みれたことのない森だったとしても、方法さえ心得ていれば、立ちはだかる木が進行の障害になることはない。
むしろ相手の視界を妨げる遮蔽として、有効活用できる。
「力があるからって、油斷しすぎたな」
得意の地形にい込んだライナスは、背後から接近するヒューグとは別の方向に矢を放った。
するとそれはぐにゃりと曲がり、迂回して敵を抜く。
ヒューグは直前で反応し叩き落としたが、導弾は一だけではない。
「煩わしい、どうして私に抗うのかがわからない。気持ちよくなりたいのは萬共通の願いだろう? なあ、ヒューグ」
見えない場所から飛來する矢に、彼は苛立っていた。
大したダメージはない、腕で振り払えばいいだけだ。
しかし、耳元を飛び回る羽蟲にストレスをじない人間はいない。
一刻も早く叩き潰して、そして溜まりに溜まったを、その開いた傷口にぶちまけてしまいたい。
彼は天高く腕をばし、それをライナスがいると思われる方向に叩きつける。
山が真っ二つに割れるかと思うほどの、重い一撃。
さらにそのまま薙ぎ払い、目の前に立つ樹木をこそぎ排除した。
「よく見える、私の犯したかったもあそこにいるよ、ヒューグ」
高く跳躍したライナスは、まだ辛うじて無事な木の上に立ち、ヒューグを見下ろす。
「これで視界が晴れたって喜んでんのか? 滅茶苦茶やりすぎなんだよ、お前」
そして呆れ顔でそう言い、複數の矢を天に放った。
矢はある程度の高度まで上昇すると、くるりと方向を転換し下降を始める。
さらに途中で弾け、複數の破片が雨となって降り注いだ。
それらは地面に當たっただけでは止まらず、地中深くに埋まっていく。
ズドドドドォッ!
くぐもった発音が響いた。
土に沈んだ破片が全てぜたのだ。
そして、ヒューグが木々を薙ぎ払ったことで緩んでいた地盤が、崩壊を始める。
の奧底に響くような地鳴りと、足元の揺れに、彼のきが止まった。
そして斜面は崩壊し、大量の土砂がちっぽけな人間を押しつぶしていく。
急いで腕でガードするヒューグだったが、自然の脅威には敵わない。
「山を舐めるな、って騎士団の訓練で言われたはずだ。なくとも俺は、先輩から耳が腐るほど言われてきたぞ」
ライナスは巻き込まれぬよう、さらに山の上へ移していた。
すっかり土砂に飲み込まれ、ヒューグがしばらくきが取れなくなったことを確認すると、そそくさと撤退を始める。
さすがにここから追いつかれることは無いだろう。
もっとも、まだ死んだわけじゃない。
いずれ安全な地域にも進出して、町を潰し殺して回るはずだ。
その前に、どうにかしてトドメを刺す方法を考えなければ。
「ま、今は逃げるけどな。フラムちゃんたちがキマイラに襲われたりしてなけりゃいいけど――」
◇◇◇
フラムを追って山を降りたライナス。
おそらくこちらに逃げたはずだ、と當たりはつけていたが、なかなか見つからない。
「こんなことなら、待ち合わせ場所ぐらい決めとくんだったな」
ライナスは頭をかきながらぼやいた。
彼も、突然のヒューグの登場に焦っていたのだ。
とはいえ、この暗闇の中、長時間の単獨行は避けたいところ。
茂みを抜けて、町と町とを繋ぐ街道に出た彼は、足を止める。
北と南へ続く比較的広い道は、魔力街燈で淡く照らされていた。
そこで周囲を見回したライナスは――が一人、佇んでいるのを発見する。
白いローブに、金の髪の。
たとえ後ろ姿であっても、ライナスが彼を見間違えるはずがなかった。
「マリアちゃんっ!」
それは紛れもなく、ライナスの探していた本人である。
マリアは彼の聲を聞くと、ゆっくりと振り返る。
ライナスは彼に駆け寄り、手を握ると、無表な仮面を見て無事を喜んだ。
「よかった、もう會えないかと思ったよ。怪我は無いか?」
マリアからの返事はない。
彼はじっと、無言でライナスを見つめている。
その雰囲気で、ライナスは彼が自分との再會を歓迎していないことを察した。
元々マリアは、オリジン側の人間だ。
怪我などするはずがないのだ。
だというのに心配そうに聲を掛けるライナスの行は、ひょっとすると白々しく寫ったかもしれない。
「まだわたくしの心配をしてくれるのですか」
マリアは悲しげに言う。
數えきれないほどの罪を犯してきた自分を、なぜライナスは見捨ててくれないのか。
そんな笑顔を、自分に向けてくれるのか。
「心配されたくないんなら、俺と一緒に來てくれよ」
「わかっているんですよね」
「何のことだ?」
「わたくしがここにいる理由です」
ライナスは「はぁ」と肺に溜まった重苦しい空気を吐き出す。
今までも目を背けてきたわけじゃない。
微かに殘っていた、“最良の可能”を信じてきただけだ。
だがいい加減に、“最悪の可能”とも向き合わなければならないようだ。
「ヒューグの様子を見に來た、か?」
これが偶然の出會いであるものか。
その必要があったから、マリアはここにいたのだ。
「その通りです。コアを埋め込んだ彼が、ちゃんとフラムさんを追ってくれているのか、確認する必要がありましたので」
「困ったもんだな。あいつ化になってもまだ好き勝手に暴れてやがったぞ」
「そのようですね」
「フラムちゃんは逃げた、ここにはいない」
「はい。せっかく見つけたのですが、また探さなければなりません」
「つまり暇ってわけだ」
「……やることはまだ殘っています」
「そう言わずに、しぐらい話に付き合ってくれよ」
ヒューグにコアを與えたのが自分だと知りながらも、食い下がるライナス。
マリアは何も言えなかった。
「俺、ずっと思ってたんだ。確かにマリアちゃんはコアを使ってる、そのせいで顔がそうなっちまった。でもさ、チルドレンって連中とは違って、コアを埋め込んだだけの人間ってのは、普通の心臓は殘ってるんだよな?」
チルドレンは、期にコアと心臓をれ替えられた子どもたちだった。
つまり、後天的にコアを埋め込んだだけのエキドナやヒューグとは違う。
普通の人間の要素を殘しながら、オリジンの力を扱うものたちなのだ。
「だったら、コアを取り除けば、普通の人間に戻れるんじゃないか?」
「戻ったところで、どうするんです」
「可能の否定はしないんだな」
「……確かに、コアを取り込んだだけの人間なら、取り除けば元には戻るでしょう。ただし、反でがボロボロになるとは思いますが」
それも、近くに回復魔法を使える人間さえいれば克服できる。
マリアの場合、自がそれを使えるため、やろうと思えば一人でもからコアを排除できるはずであった。
「じゃあそうしよう、それで俺と一緒に遠くに逃げるんだ」
手を差しべるライナス。
もちろんマリアは、その手を取ったりはしない。
「が戻っても、罪は消えません」
「罪なんざ全部背負ってる人間の方がないぐらいだ」
「わたくしは人殺しですよ?」
「冒険者なら誰だって、人間の一人や二人ぐらい殺したことはある」
全員と言い切ると語弊があるが、それでもほとんど全ての冒険者が、人間とやりあったことがある。
時に犯罪者を相手にしたり、同じモンスターを狙う冒険者同士で戦闘になったり――ライナスのようなSランク冒険者だと、嫉妬で命を狙われることもあった。
「……わたくしはつまらない人間です、途中で飽きるかもしれません」
「それはねえな。どんな場所でも、いつまででも、俺がマリアちゃんと一緒にいて飽きることなんてありえない。いつまでも添い遂げてみせるよ」
ライナスは言ってから、ちょっとクサすぎるかなと恥した。
だが、良くも悪くも、その言葉はマリアの心に響いたらしい。
「きっと、ライナスさんについていけば、わたくしは幸せになれるんでしょうね」
「ああ、それは保障する」
彼は有言実行する男だ。
特にマリアに関することで、噓はつかない。
「だからこそ、わたくしはあなたの手を取れないのです」
「マリアちゃん……だから俺、そういうのは気にしないって」
「違うんです」
マリアは元に人差し指を當てると、ぞぶりとに沈めた。
「お、おいっ!?」
驚くライナスをよそに、彼はまるでファスナーを降ろすように、指を下に降ろしていく。
當然ローブの前は開き、素が曬されることとなる。
普通ならば扇的に見える姿だが、はだけたの中央に真っ直ぐ赤い一本線がっているせいで、異様さの方が勝ってしまっていた。
そして、へその下で指を止めると、マリアは両手の指をの裂け目にれ、ジャケットでもぐように、ぐちゅりとを見せつけた。
「ん……ふ」
マリアは快楽でもじているかのように、頬を赤らめ、っぽい聲をらす。
「どうですか、ライナスさん」
そして扇的に微笑んだ。
「……マリアちゃん、それは」
ライナスの目に寫る、捻れた。
心臓らしき臓が脈していることは辛うじてわかるが、他の臓はどれがどれなのか區別がつかない。
配置も形もてんでバラバラで、そもそも本來はにあるはずの心臓だって、橫腹に移しているのだ。
たとえコアを取り除いたとしても、彼のそのが人間に戻ることはないだろう。
むしろオリジンの力を失い、命を維持できなくなるかもしれない。
「わたくしはもう、コアを取り込んだだけの人間ではないのです。とっくに、人でなしの化になっているんですよ」
それは、ライナスの心をへし折るのには、十分すぎるインパクトがあった。
絶句する彼を見て、マリアは寂しそうに微笑む。
だが、『それでも諦めたくない』と言われるよりは、気が楽だった。
「さて、わたくしとしては、オリジン様の邪魔をするあなたを逃がすわけにはいきません」
「待ってくれ、俺はまだ……っ!」
もう聲は屆かない。
マリアの諦めもついた。
あとは、殘りない未練もろとも、全てを消してしまうだけだ。
「ここで、死んでもらいます」
故郷を滅ぼされ、両親を殺された。
その加害者である魔族を憎み、救ってくれた人類をした。
しかし人類こそが、真の加害者であった。
その事実を知った瞬間に、人間としてのマリア・アフェンジェンスはもう終わっている。
費やした時間も、與えてきた慈や善意も、全てを踏みにじられた。
心まで失えば、殘るのはただただ純粋な、この世界に対する憎悪だけ。
「フォトンフューリー」
彼の背後に浮かび上がった無數のの珠が、夜を照らす。
そのうちの一つが街燈に接すると、パチンと弾け周囲に存在するものを消失・・させた。
人でも、れればその部位がえぐられたように消し飛ぶだろう。
それは人のでは及ばぬ領域。
人を捨て、完全なるオリジンの使徒と化した彼の――
--------------------
マリoア・アフェ、、、゛ス
朱ェ騾:オ
筋±?:18267
炊サ・:48141
fD好キ:19220
敏捷:9802
壊れた:41628
--------------------
――紛れもない、本気の魔法である。
「マリアちゃん、もうどうにもならないのかよ!」
ライナスはマリアから距離を取りつつも、諦めずに呼びかける。
しかし、彼は即座に否定した。
「はい、どうにもなりません」
その諦観は、言葉程度では覆せない領域に達している。
それでもライナスはさらに聲をかけようとしたが、迫る魔法を回避するので一杯で、そんな余裕はなかった。
數百個にも及ぶ拳大のの粒は、ゆっくりと彼の方に近づいたかと思うと――突如、急加速する。
「くっそおおぉおおおおッ!」
ライナスは弓を構え、矢筒の殘弾をありったけつかみ、一気に放つ。
殘弾など気にしている場合ではない。
まずは今、生き殘ることを考えなければ。
放たれた矢は砕け、マリアの放ったとほぼ同數の、風の魔力を宿した破片に分かれる。
確かに彼の魔法の威力は相當なものだ。
だが、それは対象がなんであれ、れたら弾け消滅する・・・・機雷なのだとライナスは見抜いていた。
つまり、何かが當たりさえすれば無力化できる。
破片と衝突した魔力の塊は、白い輝きを放っては消えていく。
その隙に、さらにマリアとの距離を取るライナス。
しかし彼は取りさず、冷靜に再び手をかざす。
「フォトンフューリー・イリーガルフォーミュラ」
先ほどよりもさらに多くのの粒が作られ、ライナスの追尾を開始した。
もう矢は殘っていない。
かといって、走って逃げ切るのは難しそうである。
あとは、自力で避けきらなければならない。
目を見開き、近づく弾幕の全ての大きさと距離、速度を見極める。
そして、最短で全弾を回避できるルートを構築。
完全回避は不可能と判斷、だが一、二発を打ち消せば突破は可能。
プランを決定、実行する――
心臓を狙った初撃を橫に回避。
次はを捻り、そこで飛びあがって後方宙返り、著地したらすぐに慣を利用してバク転、そのまま後退。
三度回転したら、腰を低く落として今度は前進。
右足で跳躍、前に飛び込み、片手が地面に付いたらのバネで跳ね上がる。
空中に浮かんだを風の魔法でさらに高く押し上げ――ここで最初の回避不能地點が訪れる。
ライナスはナイフを一本引き抜き、それを投げつけ相殺してを消した。
かなり上等な短剣だったのだが、命より高いものはない。
著地してからもギリギリの攻防が続く。
當たれば即死という極限狀態に、わずか一秒にも満たない間が永遠のようにじられた。
と言っても、いくつかの粒はを掠めている。
そのせいで服はボロボロで、生じた切り傷からなくはないが流れ出していた。
鋭い痛みに顔をしかめながらも、集中は途切れさせない。
そして、気合と奇跡と執念が――彼にその窮地の出を功させた。
「ふうぅ……」
どうにか生き殘り、息を吐き出すライナス。
「往生際が悪いですよ、ライナスさん」
「諦めるつもりはねえ!」
強く言い放った。
先程は戸い、怖気づいてしまったが、臓が捻れているからなんだと言うのだ。
マリアをすのに、そんなものはあまりに些細な問題である。
「どうせ無駄だというのに……あなたも、そう思いますよね?」
マリアはライナスの背後にいる誰か・・に向けてそう言った。
殺気をじ振り向いた彼に、紅刃の大剣が襲いかかる。
「何っ!?」
ヒューグ以外の味方がいたことはもちろん、その人の正自もライナスにとっては予想外だった。
殘る一本の短剣を抜きけ止めるも、太刀打ちできない。
意識が吹き飛ぶほどの衝撃が彼の全に叩きつけられる。
「がぁっ……!」
ライナスのはいとも簡単に吹き飛ばされ、そのまま石畳の上に転がった。
仰向けに倒れる彼に、マリアはゆっくりと近づいていく。
「づ、う……それは……ダメだろ。マリアちゃん……っぐ……それだけは、やっちゃいけねえよ……!」
無表に見下ろす仮面に向けて、ライナスは憤った。
それは彼がマリアに対して抱く、初めての怒りである。
それほどまでに、彼の連れてきたその仲間・・は、冒涜的だったのだ。
「頼む……これ以上、人間の……尊厳を、踏みにじらないでくれ……!」
「関係ないですね。言ったではないですか、わたくしはもう、人でなしなのだと」
マリアの中の真っ當な覚は、それを『間違いだ』と諌める。
だから正しかった。
清廉潔白な聖として生きてきた価値観、その真逆こそが、今の彼がやるべきことなのだ。
そうやって自分を追い詰めて、後戻り出來ない場所までやってきた。
そしてまた、今日も――
「ジャッジメント」
彼は、過ちを犯す。
「ぐ……ぁ……」
倒れたライナスのを貫く、の剣。
地面に磔にされ、主要臓を破壊され、口からは「ごぼっ」と唾と混ざりあったが大量に溢れ出る。
彼は虛ろな瞳でマリアを見ながら、手をばした。
だが、その手が彼にれることはない。
「さようなら、ライナスさん」
マリアはそう言い放ち、さらに心の中でこう続ける。
『わたくし、あなたのことが大好きでした』
だから殺した。
自らの手で、迷いを完全に斷ち切るために。
そして背中を向け、彼と共にその場を離れていく。
遠ざかっていく足音を聞きながら、ライナスの心は無力に満たされていった。
「マリア、ちゃ……おれ、は……」
彼は薄れゆく意識の中で、うわ言のように繰り返す。
◇◇◇
とても悲しいお知らせがあります。
人が死にました。
名前は、ライナス・レディアンツ。
死因は、信じていたのに稽にも殺されたことです。
年二十四歳。
らしいですね、どこまでもつまらない人生でした。
虛しいですね。
喜劇は笑いましょう。
『あはははははははっ』
『はははははっ』
『ひひひっ、ふふふふふっ』
『うっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ』
楽しい死に方でした。
ご冥福をお祈りしま――
◇◇◇
マリアの足音が聞こえなくなってから、どれぐらい経っただろうか。
ライナス・レディアンツは、類まれなる生命力の持ち主であった。
そう、彼が立ち去ってもなお、その命の燈火は、辛うじて消えていなかったのである。
「……あ、ぁ。そ……か」
生きている限り、彼は諦めない。
自でも呆れるほどひたむきにマリアのことを想う。
なぜそこまで彼に惚れたのか、彼は自分でもわからなかった。
元々、ライナスは癖が悪い方だ。
それに惚れっぽい。
最初は一目惚れで、『いつものあれだな』程度にしか思っておらず、旅の間だけでも楽しめればいいと考えていた。
それが今では、他のなんて考えられないほど、夢中になっている。
「はっ……ぐぶっ……おま、え……っぱ、天才……だわ……」
口から泡立った赤いを吐き出しつつ、獨り言をつぶやく。
思い出すのは、マリアの姿……ではなく、何かとお騒がせな、ムカつく野郎の面だ。
「……ってたんだな……こう、なる、こと……も」
は死んでも、意志は死なず。
最後の力を振り絞って、上著の懐に手を潛り込ませる。
指先が、冷たく固い水晶にれる。
「だか、ら……俺に、これ……を……」
彼の口元は笑っていた。
預言者めいた、友……と呼ぶべきなのかもわからない、とある男の言葉を思い出して――
外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。
【一話1000字程度でスマホの方にもおススメです!】 主人公は魔導學校を卒業し、スキル【即死《デストラクション》】を手に入れる。 しかしそのスキルは、発動すれば自分が即死してしまうという超外れスキルだった。 身一つで放り出され、世界を恨む主人公。 だが、とある少女との出會いをきっかけに、主人公は【即死】の隠された能力に気付く。 「全て、この世界が悪いのよ。この世界の生きとし生けるもの全てが」 「……ふうん。で、仮にそうだとして、君はどうするんだ」 「私の望みは一つだけ。ねえ、私と一緒にこの世界を滅ぼさない?」 「すっげー魅力的な提案だね、それ」 最強の力を手に入れた主人公は、少女と共に自分を見捨てた世界に復讐を果たすことを決意する。 隠れ最強主人公の、復讐無雙冒険譚。 ※カクヨムにも改稿版の投稿始めました! ご一読ください! https://kakuyomu.jp/works/1177354054893454407/episodes/1177354054893454565
8 180【書籍化】俺は冒険者ギルドの悪徳ギルドマスター~無駄な人材を適材適所に追放してるだけなのに、なぜかめちゃくちゃ感謝されている件「なに?今更ギルドに戻ってきたいだと?まだ早い、君はそこで頑張れるはずだ」
※書籍版2巻でます! 10/15に、gaノベル様から発売! コミカライズもマンガup で決定! 主人公アクトには、人の持つ隠された才能を見抜き、育てる才能があった。 しかしそれに気づかない無知なギルドマスターによって追放されてしまう。 數年後、アクトは自分のギルド【天與の原石】を作り、ギルドマスターの地位についていた。 彼はギルド構成員たちを次から次へと追放していく。 「鍛冶スキルなど冒険者ギルドに不要だ。出ていけ。鍛冶師ギルドの副支部長のポストを用意しておいたから、そこでせいぜい頑張るんだな」 「ありがとうございます! この御恩は忘れません!」 「(なんでこいつ感謝してるんだ?)」 【天與の原石】は、自分の秘めた才能に気づかず、理不盡に追放されてしまった弱者たちを集めたギルドだった。 アクトは彼らを育成し、弱者でなくなった彼らにふさわしい職場を用意してから、追放していたのだ。 しかしやっぱり新しい職場よりも、アクトのギルドのほうが良いといって、出て行った者たちが次から次へと戻ってこようとする。 「今更帰ってきたいだと? まだ早い。おまえ達はまだそこで頑張れる」 アクトは元ギルドメンバーたちを時に勵まし、時に彼らの新生活を邪魔するくそ上司たちに制裁を與えて行く。 弱者を救済し、さらにアフターケアも抜群のアクトのギルドは、より大きく成長していくのだった。
8 184転生して進化したら最強になって無雙します
主人公はある日突然意識を失い、目が覚めるとそこは真っ白な空間だった、そこでとある神にスキルを貰い異世界へ転生することに そして貰ったスキルで最強になって無雙する 一応Twitterやってるので見てみてね、つぶやきはほぼないけど…… @eruna_astr ね?
8 113老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
彼は、誰もが羨む莫大な資産を持っていた…… それでも彼は、この世にある彼の資産全てを、赤の他人に譲る遺書を書く…… 真田(サナダ) 英雄(ヒデオ)56歳は伝説的圧倒的技術を持つプレイヤーだった。 40年続くMMORPG ヴェルフェリア・オンライン。 時代の進化によって今終わろうとしているRPG。 サービス終了とともに彼は自分の人生を終えようとしていた。 そんな彼のもとに一つの宅配便が屆く。 首に縄をかけすべてを終わらせようとしていた彼の耳に入ったのは運営會社からという言葉だった。 他のどんなことでも気にすることがなかったが、大慌てで荷物を受け取る。 入っていたのはヘッドマウントディスプレイ、 救いを求め彼はそれをつけゲームを開始する。 それが彼の長い冒険の旅の、そして本當の人生の始まりだった。 のんびりゆったりとした 異世界? VRMMO? ライフ。 MMO時代の人生かけたプレイヤースキルで新しい世界を充実して生き抜いていきます! 一話2000文字あたりでサクッと読めて毎日更新を目指しています。 進行はのんびりかもしれませんがお付き合いくださいませ。 ネット小説大賞二次審査通過。最終選考落選まで行けました。 皆様の応援のおかげです。 今後ともよろしくお願いします!!
8 81存在定義という神スキルが最強すぎて、異世界がイージー過ぎる。
高校生の主人公 ─── シンはその持つスキルを神に見込まれ、異世界へと転移することに。 シンが気が付いたのは森の中。そこには公爵家に生まれ育ったクリスティーナという少女がいた。 クリスティーナを助ける際に【存在定義】という名の神スキルを自分が持っていることに気付く。 そのスキルを駆使し、最強の力や仲間、財寶を手に入れたシン。 神に頼まれた事を行うのと一緒にした事は……のんびりな日常? ※基本のんびりと書いていきます。 目標は週一投稿!
8 84拾ったのはダンジョンコアでした!?
僕は前世の記憶を持つ子供だった。 僕は前世の記憶が蘇った時には孤児になり住んでいる村の村長さんに育てられていた。 僕はいつも通り村長さんのお手伝いをしていると森の中で水晶を見つけた。 水晶は水晶ではなくてダンジョンコアだったのだ。 ダンジョンコアを拾った僕はダンジョンマスターになった。 これはダンジョンコアを拾ったことでダンジョンマスターになった僕の物語
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