《手違いダンジョンマスター~げられた魔達の楽園を作りたいと思います~》友人
「あれ? 聞こえなかったかな……俺と友達になれ」
「いや、聞こえてはいたさ。意外すぎてどう反応すれば良いのか分からなかったのさ」
ん? そんなもんか? ……サイゾウとユリの方を向くと2匹ともピョンピョン跳ねている。何が言いたいのか分からないので、無視する。
「まぁ、昨日の敵は今日の友ってな」
「負けたのはついさっきなのさ!」
ギャーギャーと騒ぐ子供ゾンビ。うるさい奴だな。昨日だとかさっきだとかどうでも良くないか?細かいこと気にしてちゃ剝げるぞ。
すると今度は騒いでいたと思えば俯いてしまう。忙しい奴だな。
「……君の要求は良く分かったよ。でも悪いね、ボクはアンデットで魔なのさ。人間である君と友達になんてなれるわけがないのさ」
シュンとした様子で子供特有の元気さが無くなる子供ゾンビ。魔がどうとか関係あんのか?
「それにボクは人間は余り信用出來ないのさ、悪いけどそう言う理由で友達にはなれない……何か他の要求で頼むのさ」
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過去に何かあったのだろうか……まあ、俺には関係ないけどな。それと、他の要求も一切するつもりはない。俺が勝利した時點でお前は俺の友達確定なのだから。
「それに、魔と人が相容れないみたいなこと言ったか。殘念だが、俺とサイゾウ達は心を通わせているぞ、ちゃんとな」
「ボクだって心を通わすことは可能……そう思った事はあるのさ、でも上手くいったことはなかった。この見た目だ、誰もが近寄りもしなければ攻撃してくる始末さ」
「見た目がどうしたって言うんだ。そんなことを俺は気にしないぞ」
過去の話を持ち出すな、何度も言うが興味がない。同もしてやれないからな。
「でも、ボク達は……」
「ごちゃごちゃうるさい!」
「イテッ!?」
差し出していた手を振り上げて子供ゾンビの脳天へと落とす。チョップだ。
子供ゾンビは思わぬ攻撃に驚いたのか唖然としていた。まるで、何でチョップされたのか分からない様だった。
「良いか、お前がアンデットだなんだ何て関係ない。お前は話す、考える、を持っている。それがあるなら他に何がいるんだ? アンデットだから友達にはなれない? バカ言ってんじゃないよ」
「え、えっと……」
「それに何を勘違いしているが知らんが俺は人間と仲良くしろだなんて一言も言ってない!」
「へ?」
キョトンとする子供ゾンビ。……話を聞いていなかったのだろうか。
「良いか? 俺は他の人間と仲良くしてほしいとは思っていない。強要するつもりもないし、世の中無理なものは無理だからな」
「じゃあ、友達っていうのは?」
「たから、俺と・・友達になってほしいんだ、他の人間と仲良くしなくても別に構わない。俺はお前が必要なんだよ」
戦力的に……と言うのも含めてだが。というかこの世界で俺も人間の友達なんかいないっつーの。
「は、ははははは!」
「ん?」
何いきなり笑い出してるんだコイツ、意味がわからん。頭がおかしくなったか?
「そうかい、人間じゃなくて君個人と友達になれって事だね」
「最初からそう言ってるんだけどな……」
説明不足か? お世辭にも教えるのが上手い訳じゃないしな。勘違いも生まれた事だろう、そこはすまんかったとしか……。
「くくく、こんなに自分勝手な人間は初めて見たよ。面白い人間だよ君は」
「おおぅ、そうか……」
そんなに自分勝手だっただろうか……俺にはわからんな。それよりもコイツに問答無用で攻撃してきた奴の方が自分勝手だと思うんだが。
「それで、どうなんだ? 俺と友達になるか?」
俺は手を出し、問いかける。
「ふふ、こんなに面白い奴がいるんだ。斷る理由は無くなったのさ」
「それは何よりだ」
子供ゾンビは俺の手を握り返す。これで一先ず此方のピンチは乗りきったと言うべきか。
正直、斷られてたら泣いてたしこれ以上の手は思い付かなかった。
咄嗟に考えたとは言え、我ながらなかなかの賭けに出たものだ。
コイツと友達になろうとったのは此方の安全のための建前に過ぎない。だが、それだけなら棒倒しの要求は危害を加えないことにすれば良かったのかもしれない。普通ならばそうすると思う。
けど勝負をしているとき、コイツは楽しそうに遊んでいた。それだけなら別に良い、負けたときに文句を言っていたが本音は悔しいよりも楽しかったと表に出ていた。
そして試しに友達になれと言った時に確信した。一瞬だが、本當に嬉しそうな、それこそ年相応の子供の様な笑顔を見せたのだ。
その時にやっぱり勿ないと思ってしまった。確かにゾンビで生きているか良くわからない狀態だがちゃんとがある。寂しい思いだってするのは當然だろう。
だからこそ見過ごせない。恐らく久し振りに退屈しのぎになり、その一回切りだとコイツはまた悲しむのではないか? なら本當に友人になっても良いと思った。だから建前の裏にある本音で諦めずにったんだ。
「一件落著だな」
「スライム君、君達にも酷いことをしたね。謝るのさ」
子供ゾンビはサイゾウとユリに頭を下げる。一瞬なにかと思ったが、最初に吹き飛ばしてたな。あれは驚いた。死を覚悟したからな俺。
「それはもう気にしてませんよ! 気になるのは、私達はの子だよスライム君じゃないです!」
「えぇ!? スライムに別なんて何であるのさ!?」
「知りませんよ!」
急にワイワイ騒ぎだしたな……。それにしても疲れた。
俺はそのまま地面に仰向けに寢転がる。凄く凄くすごーく疲れた。歩き続けたあとに熊に襲われるし、逃げたと思えば今度は熊以上の奴を相手にしたし、凄く長い1日だったとじる。
「暫くイベントは良いや」
本當に死ぬかと思った。やっぱり戦いとか向いてないわ、うん、戦闘はサイゾウ達に當たり前のように任せて俺はなにもしないスタンスで行こう。
「そうだ、君、名前を聞いてなかったね」
「ん? そっか、俺の名前は白石黒斗だよ。お前は?」
「ボクに名前なんてないよ、強いて言えばワイトだね」
マジか……この子供、ゾンビじゃなくてワイトだったのかよ。てことはかなりの上位個って奴じゃん。俺ってば良くこんなのに勝てたな……まともな勝負はしてないけど。
こんなのとやり合うことにならなくて良かったと心底安心しているが、1歩間違えれば俺もこの周りに未だに集っているゾンビの一員だったのかと思うと背筋がゾクッとする。
「ま、俺の事は何とでも呼んでくれ」
「分かったのさ、宜しくねクロト」
「あぁ、宜しく」
再び握手をわす。俺の方が背は斷然高いのだが今は寢転がっているのでワイトを見上げるじで変な握手になってしまったな。
「所でヘトヘトなんだけど、どこかで休めないか?」
「ん? それならこの村……ボクの國で休んで行けば良いのさ!」
絶対それ心休まらねぇだろ何言ってんだこの野郎、ぶっとばすぞ。
なんて事は言えない。自力が違うし、おまけにここ以外で休む場所なんて無いからだ。それに友人の好意だ仕方ないから甘えることにする。
「それは助かるな、所でここって人は來ないのか?」
「んーとね、結構定期的にボクを討伐しに來るね。まぁ、返り討ちにしてるけどね、弱いのに良い迷なのさ」
この村の存在バレてるのかよ。しかしあれだな、もしかするとこのままだとダンジョンにまで飛び火するかもしれないな。
「提案なんだが村を移しないか?」
「折角のボクの國を? そんなことはしないさ、ここまで築くのに結構時間がかかったんだから」
まあ、暗くて良くは見えないけどズタボロな所はないし、寧ろゾンビまみれな癖に綺麗な村だからな。1から作るとなると大変だろうな。
「サイちゃん私、ご主人さんの言いたいことが分かるよ」
「ふふふ、奇遇ね。私だって分かりますよ!」
あー、どうやらサイゾウ達にはバレてるらしいな。別に良いけど……。
「じゃあその苦労が無ければ乗ってくれるのか?」
「そりゃ、それなら考えるさ」
「そうか、なら俺が用意するから數日後迎えに來るわ。取り敢えず今日は寢る」
「え? ちょ、え!? どう言うことなのさ、教えてよぉ!」
ワイトは無視して俺は1つの家を借りてそこで、サイゾウ達を抱き枕にして眠りにつく。
あぁ、ヒンヤリしてて気持ちいい……ぐぅ。
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