《手違いダンジョンマスター~げられた魔達の楽園を作りたいと思います~》まだ早い?
ギルドに帰るなり、アスカに説教された。
それはもう、怒り狂ってびまくると言うものではなく、むしろ対極に位置する靜かな怒りでしたよ。
あれが1番質が悪いと俺は思う。
あの場の空気が凍りつくような怒られ方は苦痛だ。
そんなアスカに依頼をけようと言われたのは3度目だ。
おまけにこれ、1日の間でだぞ。普通ではあり得ないだろうに。
どうやって斷るかなんて考えてたら、運は俺に味方した訳で……。
「クロト、私は行かなければならない」
なんか付嬢から貰った手紙を読んだ後にカッコいい臺詞を言い出した。
なんでも、暫くは戻ってこれないらしい。
ヤッタァァァァァァァァァァァァァ!!!
誰かは知らんがグッジョブだ!
俺は心どころか機の下でもガッツポーズをするくらい嬉しかった。
もうがくのを拒んでいるので、嬉しいお知らせだ、今日はあれだな、パーティーだな。
その後は気持ちも楽になったわけで、アスカの見送りも満面の笑みである。
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暫くどころかもう來なくても大丈夫です。の意味を込めて全力で手を振りましたとも。
そしてその後、鉛のごとく重いに鞭を打ち、宿屋に帰還を果たした。
そう、冒険者が俗に言う『竜狩りの試練』に打ち勝ったのだ。
大層な名前だが、アスカの無茶ぶりを生き殘った者のみが與えられる『お疲れ様』の稱號は同じ稱號を持つ被害者……もとい、合格者から贈られるのだ。
なお、合格率は強制的なので基本百パーセントで、皆でめ會う口実となる。
「俺のときはな、オークの群れに突っ込まされたんだよ。10匹位いたんだが、『竜狩り』が5匹も任せてくれやがった訳で死を覚悟したね」
「おいおい、俺なんて訓練だぜ? 朝から晩まで、休みなしで転がされてみろ。一気に無気力になるわ」
何故か俺の目の前には厳ついスキンヘッドのおっさんが二人居るわけだが……。
現在宿屋1階に併設されている食堂で飯を食べている。
普通に座った筈なのに食堂にるなり冒険者から何とも言えない暖かな目で見られ、このおっさん二人組が座ってきた。
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アスカの被害者らしく、その被害報告を武勇伝の様に語る姿には悲壯漂う。
なお、サノーは付嬢に捕まった模様。
「まぁ、確かに『竜狩り』は無茶ぶりをしてくるんだが、助かる事もあるな」
ドカッと背もたれに背中を預けた左のおっさん。
「あぁ、そりゃ分かるわ。あの訓練のせいって言うのかおって言うのか……何にせよ危ないときはがくようにはなったな」
「俺も1人で魔の群れに當たったときは何とか対処できた。ある意味命救われた様なもんだからな」
アスカの愚癡から褒め稱えた言葉にクラスチェンジだ。
周りのおっさんどもも頷いたり語ったりしている。
「ま、何にせよ経験になって活きてくるのは確かだな」
「『竜狩りの試練』はキツイが悪くねぇよ。現にけてきた奴らの生存率は高いからな」
「お前さんも良い験したと思っておくと良い」
「は、はぁ。じゃあ質問なんですけど、アスカを悪いと思ってないなら何で話しかける事はしないんですかね?」
そう言うとおっさん達は顔を見合わせて苦笑いをする。そして敬語は要らんと言われた。
「『竜狩り』を目の前にするとが震えるんだよな」
トラウマを植え付けられていた様だ。
「お前さんはどんな試練だったんだ?」
「……採取依頼と、急のコボルト退治だったな」
「さっき注された奴じゃねぇか……あれってもう達されたのか!?」
「アスカが無雙したらしいけど……俺は後ろで迷子だったから分からない」
「なんだよお前知らなかったのかよ、どうもただのコボルトだけで上位種は見つけられなかったって話だぜ」
「マジかよ……二日酔いで寢てたから報集めて無かったわ。ダッハッハ!」
とりあえず俺が上位種と遭遇した話しは伏せておこう。バレたら面倒だしな……。
目立つのも難しいが目立たないって言うのも存外に難しいんだな。
それもこれもアスカとサノーのせいでは無かろうか……。
ちくしょう、出張るんじゃ無かったわ。
さて、コボルト上位種は見つからなかったって話だし、恐らくは逃げたのか。
まぁ、元気にやっていると良いなとか祈っておくとしよう。
その後は、またしだけ話をした後、寢ることにした。
ラッキーなことに、おっさん達が料理代を奢ってくれたのは助かった。
◇◇◇
宿でぐっすり寢て、起きれば晝を過ぎていた。
凄くが痛いです、助けてください。
やっぱりあれよ、普段運しない人間が急に冒険者なんぞやるとろくなことにならん。
ダンジョンに帰ったら2度と冒険者なんかするもんか、今度からはサノーに任せる。
中が筋痛でピキピキいってるので、今日は依頼はけない、ギルドにも行かない。
惰眠を貪るんだい!!
「陛下、本日はギルドとやらに行かれないので?」
現在宿屋の部屋、誰もっては來ないのでロクロウは彷徨いている……訳ではなく、ベッドで橫になってる俺の枕元にちょこんといるのだ。
「ロクロウ、俺達はまだ街に來たばかりだ。それにここへは遊びに來たんじゃないぞ、報収集の為だ。気長に行こう」
「なるほど、仰る通りです。私の頭が回らず、申し訳ございません」
「気にしない気にしない、それにサノーもいるし、俺が居なくても冒険者関連の報収集はしてくれる……と思う」
サノーなぁ、なーんか怖いんだよな。
こう、んでは無いんだけど、ユキムラやロクロウは忠誠心ってのがあるんだけど、サノーやウノーにはそれがないし、いつか裏切るのではと引っ掛かりがある。
思いたくは無いんだけど、何があるか分かったもんじゃないし、自分で連れ出しておいてなんだけど、あまり一緒に行は控えたいところだ。
ミスト? おいおい、アイツは子ゴブリンみたいにお菓子あげてればなつくから論外だ。
そう言えばDPはどのくらいになっているのだろうか。
ダンジョンに帰らないとまさかウィンドウすら開けないとはダンジョンマスターとはなんとも限定的な強さしか持たない職業なのだろう。
ラビィのアホが要らない事をしてなければそこそこ増えているとは思うが、ラビィのことだきっと何か仕出かしているに決まっている。
「そうなるとスッゴい不安。帰りたくなってきた」
「心中お察し致します」
ロクロウもラビィのヤバさ分かっているみたいだ。
うん、嫌だなぁ……ダンジョンに帰るなり階層1つがイチゴミルクの空パックで溢れてる何て事になってないことを祈る。切実に。
さて、これからどうするかだが……。
ロクロウにいった通り、戦闘力皆無な俺に冒険者職はキツイ、きたくない、働きたくない。
こういうのには戦闘力があって、顔立ちも良いサノーに冒険者からの報集めは任せよう。
となると俺の方は……一般的な常識とかその辺りを調べた方が良いか?
俺の常識がここで通じるかはイマイチだからなぁ……食事も箸なんて無いわけだし。
あ、でもダンジョンの事を広めるのも大事だったな。
でも待てよ……昨日のコボルト戦での報では冒険者達は結構無傷だったらしいし、もしかすると俺の想定以上に強いかもしれない。
あの大量の冒険者が急依頼で集まるってことは大挙して俺のダンジョンを攻略しに來ると言う事では?
となると、まだ第3層位までしかないうちのダンジョンはあっという間に攻略されるんじゃね?
戦力的にミストは自分の村を守るために何度も撃退していたって言うから心配はない。
だが他が問題だ、ユキムラや進化したゴブリンもとい、ホブゴブリンの力がよく分からない。
訓練をしているとは言え、冒険者からすれば誤差でしかない場合はかなり危険じゃないか?
「……ダンジョンを広めるのはまだ早い……か?」
「どうされましたか?」
「ロクロウ、ダンジョンを広めるのはまだ先になりそうだ」
「はて?」
とりあえず、俺の懸念をロクロウに話した。
「むむ、確かにそう言われますと、考え直す必要がありそうですね」
「あぁ、何もかも報が足りていない今はダンジョンの強化に努めようと思う。皆には悪いが、もうしだけ我慢してもらう」
「いえ、陛下の考えに賛同できぬ者などダンジョンにはおりません。居たとすれば私が斬り棄てましょう」
「騒だなぁ……」
中途半端な戦力では痛い目をみるかもしれない、この計畫は頓挫するが、俺のいる世界の勢、戦力、國同士の力関係を図らない限りは水面下で土臺を作るしかない。
それに、舐めプしてダンジョンが滅びたんじゃ遅いし、行はさっさとするべきだろう。
「じゃあ數日以にはこの街を出るか……それまではしだけ調べものを済ませて、ある程度の報を持ち帰る」
「では、冒険者を見張らせているスライムにサノー殿へと伝言を頼みましょう」
冒険者を見張らせているスライム? あ、あーあれか、キン達ダンジョン見ちゃった組みに張り付かせている隠スライム達か。確かにあれは便利そうだ。
「じゃあ伝言の方は任せるとして、よし外行くか」
「おの方は……」
おろおろしながらロクロウが忙しなくいている。
「ただの筋痛だ、心配はない。それよりもしでも報集めしたいし」
「無理はなさらないでください」
そう言うとロクロウは俺の服にり込む。
「よし、報収集開始だな」
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