《手違いダンジョンマスター~げられた魔達の楽園を作りたいと思います~》レッツ収穫祭! その3
さぁ、収穫祭もいよいよ大詰めだ。
殘す野菜は初心者でも頑張れば行ける、そう、キュウリだ!
収穫時期も割と早いキュウリだが、なんで大とかと時期が被るんだろう、とっても不思議だ。
まぁ、ダンジョンって魔力が渦巻いてるらしいし、そう言う関係なんじゃないかな。
そうこうしているにキュウリ畑に到著した。ここは他の畑と違って、一応ビニールハウスとなっている。
実はダンジョンには森林エリアや迷宮エリアの様なフィールドの選択の他にも、気候や気溫などもDPを消費して設定することが出來る。
目下の目標としては10層くらいが目安ではあるんだが、そうだな……もっと階層を増やすことになれば1層まるごと臺風の様な環境にして見たいと思っている。
誰も住めないと思うけどね。
と言う訳で、この村エリアは春風のように心地よい風が吹いていて、住むのには最適となっている。
まぁ、時々どんな仕様なのか知らないが突風が吹くんだけど……。
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そうなると作、キュウリのように支柱に絡まって天井から下がるように長する野菜なんかは突風で大変な事になるわけだよ。
なので頑張ってビニールハウスを建てました。
その製作行程には々とあった様な無かった様な気がするが、あれ? 思い出せないな、今度誰かに聞いてみよう。
ビニールハウスに近づいていくと、なにやらガヤガヤと騒がしい聲が聞こえてくる。
ふふふ、皆楽しそうに収穫してるんだろうか、早速混ぜて貰おうかな。
「おーす、やってるかー? ベフッ?!」
ビニールハウスのり口を開け、中にろうとしたと同時に何かが俺の顔面に衝突し、仰向けに倒れる。
「いってぇ……あれ、キュウリ」
顔からポロッと落ちたものの正を見ると、立派に育ったキュウリだった。なぜにキュウリが飛んでくる……。
飛んできた方向を見ると、宙を舞うキュウリキュウリキュウリ。
そんな中、宙を舞うキュウリを必死に捕まえようとしている2匹のスライムがいた。
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片方は橙のスライムであるコスケと、街にまで護衛してくれた緑のスライム、ロクロウである。
いやーパン食い競爭見ているようなじだ、周辺にる他のホブゴブリン達も悪戦苦闘しているのがよく分かる。
「なんで食べが、飛ぶんだよ!」
それは俺も思う。
「コスケ! 口じゃなく手をかせ!」
「僕ら口も手も無いんだよ、ロクロウ馬鹿じゃない?」
「キュウリの前に貴様を切る!」
「當たりしか出來ないのに?」
「揚げ足を取るなぁ!」
「足もないのに!?」
ジャンプしてキュウリに食らいつきながらもコスケがナチュラルにロクロウを煽っている。
いや、まぁ言ってることは正しいなと思うのは俺だけだろうか。
ともあれ、ここは大慘事の阿鼻喚地獄だ、俺も収穫の手伝いをしないとな。
「くらえ、ダイビングキャッチ!」
ミス! キュウリの急カーブによりすり抜けられる
「これはどうだ。忍び寄って後ろから!」
ミス! 見事なバレルロールにより避けられてしまう。
「こなくそ! DP使用! 蟲取網ぃ!」
ミス! 普通に空ぶって近くにいたコスケを捕まえてしまった!
「あ、主君。やっほー! 見ての通り苦戦しているんだよ」
「よ、コスケ。見れば分かるし験もした、ご苦労様」
「いやー、これ僕らじゃ荷が思いと思うんだけど……ロクロウは足遅いし。ジンパチは、すぐに諦めるし」
「あー、ロクロウは素早くは無いって自分で言ってたもんな」
そのロクロウを見ると「おのれ、なぜ素早い! ぬおおお、後ろからキュウリが!」等と騒いでいる。楽しそうなので放置だ。
そしてもう1匹のスライムの存在を思い出した、だいたい3匹ずつ分けて畑に編していたのだからもう1匹いるのは當たり前か、忘れていた……。
網にったコスケを取りだして抱え、案の元、ビニールハウスの外で銀の水溜まりを発見する。
「ジンパチ、主君が來たよ。挨拶くらいしなって」
俺の元から離れたコスケが勢いよく銀の水溜まりに落下する。
ぐちゃ、と変な音と、うめき聲の様なものをあげた銀の水溜まりはうようよと元の姿に戻っていく。
「あー、ボス。ご苦労様、わざわざこんなところまで」
「おう、お疲れ。ジンパチはこんな所で何してたんだ?」
「聞いてよ主君、ジンパチの奴2、3回キュウリに挑戦して失敗したからって卑屈になって出てったんだよ」
「ムリムリ、オイラにこの仕事は出來ない。役立たずは消えた方が良いって」
「卑屈だなぁ……」
銀なんだからもうししっかりしてほしいな、モチなんて自信の塊だぞ。見習うと良い。
「だってオイラ、コスケ見たいにお気楽に出來ないし、ロクロウ見たいに努力も出來ないし……十勇士で一番役立たずだし」
「主君、こいつ毆って良いよね?」
「待て待て落ち著け、毆るのは早い」
……ジンパチはどうも、他の連中と自分を比較しているみたいだな。
それで他の連中が自分にないものを持っていて、自分よりも出來るってことに劣等を……と言うじだろうか。
まぁ、その気持ちは分からんでもない。
俺にだってそう言うことはあったし、まぁ立ち直ったけど。
「なぁ、ジンパチ。前にも言ったが、覚えてるか? 得意な事を頑張れば良いって」
「えーと、言ってた。でもオイラ得意な事なんてないし、あってもたかが知れてるし」
「うーん、そうだな。ジンパチ、キュウリを獲るときにどう考えていた?」
「え? そりゃ、ロクロウとかコスケみたいにジャンプとかして……」
「そこにお前の意思はあったか?」
「意思?」
「コスケ、どうやって捕まえようかなんて考えたりしたか?」
「急に僕? そうだね、考えるのって得意じゃないから力任せにやろうと必死だったよ、ロクロウも同じ」
俺はジンパチに向き直る。
「ジンパチは自分で考えてみたりしたか?」
「え、えーと、考えはしたけど……オイラの作戦なんか使えないし、言うだけ無駄だと思ったから」
「え、ジンパチ考えてたの!? それなら言ってたしかったんだよ」
「いやいや、でもオイラの意見なんて」
「ジンパチ、勘違いしてるぞ」
「勘違い?」
「お前もコスケもロクロウも、同じ十勇士で対等な立場なんだ、遠慮する必要はないんだ」
「そうだよ! もしかしたらジンパチの作戦が上手く行くかもしれないんだよ!」
ピョンピョンと跳ねながらコスケが言う。
「上手く行かなかったら、迷かけるじゃん」
「ジンパチ、アホだね。僕ら十勇士は誰かのミスを指摘なんてするわけ無いじゃん! 仲間のミスは皆で責任をとる! これが十勇士のあり方なんだよ! それに僕はジンパチの意見が聞きたい! 僕らで思い付かなかった事をジンパチが考えてるかもしれないし!」
「いや、オイラの考えなんて大したことじゃ……」
「焦れったいなもう! やらないで後悔するよりやって後悔するんだよ! さぁ、言うんだよ!」
「う、わ、分かったよ」
「じゃあ、ロクロウもれて作戦を立てるんだよ!」
そう言うや否や、コスケはジンパチを引きずり、ビニールハウスへと戻って行った。
まぁ、これでし踏み出せれば良いと思う、俺が思うに十勇士にはそれぞれ才能がある。
他のメンバーも徐々に片鱗を見せているけれど、さて誰が開花するのか楽しみでもある。
これがジンパチのきっかけとなってくれれば嬉しいんだが。
「さて、俺も戻るとするかね」
ビニールハウスへと戻ることにした。
◇◇◇
ビニールハウスに戻ると、3匹のスライムと、數匹のホブゴブリン達が集まっていた。
お、キュウリみっけ、蟲取網ぃ! ……空振りだ。
「さ、ジンパチ。話すんだよ!」
「わ、分かったってば。えーと、ここのキュウリは熱に反応すると思う」
「熱?」
「うん、溫とかそんなじ。現に、ボスが今も網で捕まえようとしてるけれど。網には反応してないんだ、ボスが未だに捕まえられないのは単に下手なだけだと思う」
あれ? なんか俺の話してる? 聞いてなかったな。
「なら網を使えば良い訳か」
「ううん、それだと時間がかかるし。捕まえたキュウリを見張る為に人が必要になってくる」
「ならどうすればいい?」
「キュウリを1ヶ所に導して、最後に何か大きい網とかで捕まえれば良いと思うんだけど……あ、ごめん上手く行くわけないよね」
説明中にどんどん靜かになっていくビニールハウスの雰囲気にビビり、ジンパチは卑屈に戻っていく。
「す」
「す?」
「スゴいぞジンパチ!」
「へ?」
「ほらね、やっぱり良い作戦があったんだよ! どうだい、ロクロウこれでやってみたいんだよ」
「勿論だ、盲點だった。ジンパチ、ぜひとも詳しく話してくれ」
周囲のホブゴブリン達もうんうんと頷き、賛同していた。
こうして、ジンパチの提案の元、作戦は実行となった。
◇◇◇
作戦としては単純に橫1列となり、キュウリを角に追い込んでいく。
そして最終的には巨大な網を使い、一気に捕まえると言うものだ。
もしも取り殘しがあっても、數はない、よってすぐに獲は終了となった。
なお、巨大な網はどこぞのダンジョンマスターの提供でお送りします。
「流石だったぞジンパチ。私は貴様の良いところを新しく発見した」
「うんうん、ジンパチって頭が良いんだよきっと! これからも期待するよ!」
「いやいや、オイラの作戦なんてそんな……」
「謙遜するな、私も貴様には負けてられないな」
「だね、僕もジンパチに置いていかれないように頑張るんだよ」
「いやいや、オイラ十勇士でショボいし、勝ってるところなんて……」
「何を言ってるんだ、あんな作戦を立てられる者など他にいないぞ」
「基本的に皆脳筋だからね、筋ないけど! その點、ジンパチの頭は絶対に僕らより優れてるって、自信を持つんだよ」
「ほ、譽められた? へ、へへ……うん、オイラしずつだけど頑張るよ」
なかなか良い雰囲気になっている。
それに時間帯もそろそろ夕方位だし、頃合いだな。
「よし、皆、お疲れ! 帰るぞ!」
「はっ!」
「勿論だよ!」
「了解、ボス」
その後全員で集まり、収穫祭のお疲れ様會として、宴を繰り広げるのだった。
◇◇◇
【ダンジョン第1層 森林エリア】
宴をこっそりと抜け出し、俺はダンジョンのり口へと転移した。
今頃大賑わいの宴の席には居なかった者を探すため、そして何を考えているのか問いただすためだ。
そいつは案の定、ダンジョンのり口から出る所だった。
ちょうと鉢合わせする様なバッチリなタイミングであったと同時に、すれ違ってたらし恥ずかしかったなと思った。
「こんな時間にどこ行くんだ?」
「……」
その者は答えなかった。
ただ、を噛み締めて、罪悪が表に出ている事からこちらを裏切るとかそう言う事ではないって事が分かって一安心する。
「宴の最中だ、一人だけ無粋な真似するなよ、他の奴等も待ってるぞ?」
「……」
まだ答えないか~。
もうし強く言ってみるかな。
「裏切るつもりじゃ無いだろうな? ──族長」
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