《勇者のパーティーから追い出されましたが、最強になってスローライフ送れそうなので別にいいです》彼らの村を壊すのは
  ロジスの言葉を聞くや否や、俺は手元に著火しそれを噴出。居ても立っても居られないと自分に出せる最高速で集落へと向かう。
  ラトラは、サウリールは、皆はどうなったのか。に去來する不安がさらに焦りを呼び、な挙を狂わせる。直撃は無いものの、聳え立つ木々がのあちこちを掠めていく為軸がブレそうになる。一度バランスを崩せば、この速度で地面に叩きつけられる事になる。そうなれば無事では済まない。
「ぐぅっ……!!」
  目の前にフッと飛び出て來た一本の木。慌ててを捻り躱したものの、急激な方向転換にはミシミシと悲鳴を上げる。
  だが、これで漸く森が開けた。この先に行けば集落が見える筈だーー
「ーーあ」
  地面へと足をり、勢いを殺しながら著地する。
  覚悟はして來たつもりだ。だが、目の前に広がる景は余りにも衝撃的だった。
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  つい先程まで堂々たる威風で俺のことを見送った門は、微塵となり今や殘骸だけに。古來から獣人に伝わっていただろうか、門の真ん中に掲げられていた仮面の様なものが真っ二つになってカランコロンと音を立てている。
  無造作に立ち並んでいた家々は元から破壊され、無事な所を數えるほうが難しい。戦闘の余波などでは無く、明らかに『破壊する』という意思が込められた、徹底的な破壊。この家の住人が仮に居たままであれば、もう……。
  ただの二日といえ、俺が見慣れていた景はすでに跡形も無くなっていた。地面に殘された痛々しい爪痕が、ここで起きた慘劇の恐ろしさを語っている。
「っ、二人は無事なのか……?」
ラトラ、サウリール。そして集落の人々。彼らの安否が不明と言う事実が、俺を焦燥に駆り立てる。見える範囲に死が転がっていない事は唯一の救いだ。
そして、この事態を引き起こした張本人である――狂獣。
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バキリ、と木材を圧し折る音。また一つ家が破壊された。奴の剛腕が、一切の手加減など無く振るわれる。そこにいた人々の思いなど知った事ではないとでも言うように。
だが、この瞬間こそ好都合。破壊に気を取られているからこそ、背後にいる俺には気付かない。
「好き勝手しやがって……また昨日と同じ目に遭わしてやるよ」
に滾る怒りを靜かに噛みしめ、一気に手のひらから噴出させる。今まで以上に意志が込められたそれは、これまでに無いほどの推進力を齎した。
――この速度なら、気付かれてもそのまま倒せる!
加熱する速度との中で、しかし思考は冷靜に。幾度も戦いを繰り返す中で自然とについてしまった、いつもの覚だ。冷え切った考えの中で、俺は靜かに狙いを定める。
急所の首筋。これ以上被害を拡大させないよう、一瞬で刈り取る。殺意と共に、俺は右腕を突き出す。
指先が奴のにれた。あとコンマ二秒、一秒、ゼロ。須臾しゅゆが永遠にもじられるほど引き延ばされた覚の中で、掌がようやく狂獣の首筋へと到達する。
瞬間、轟音。掌を起點として放たれた発は、熱と轟音を伴って狂獣を焼く。った、という確かな手ごたえが脳に伝わってくる。
破の衝撃で流されるを立て直し、地面へと著地。先日の調子からして、この一撃ならばほぼ確実に瀕死まで追い込めるだろう――
「――っ!!!?」
死。その一文字が頭に浮かんだ瞬間、俺は全力で後ろへと飛び退る。
次の瞬間、先ほどまで俺が立っていた地點を、丸太のように太い腕が凪ぐ。轟音と共に抉り取られる地面。直撃はしていない筈なのに、その余波だけでが震える。
仕留めきれなかった。ガリと軋むほどに奧歯を噛みしめる。侮ったわけでも無く、加減をした訳でも無い。むしろ先日よりも強烈な一撃を、意識の外からぶつけた筈だ。なのに何故。
「……まさかこいつは」
こちらを睥睨する狂獣の目は真っ赤に輝き、閉まり切らない口からはダラダラと涎が絶え間なく垂れ落ちている。兇悪な相貌は理を失ったことでより一層兇悪になり、もはや敵意とも殺意とも取れないがありありと見て取れる。
極めつけは、中から溢れる程に垂れ流されている魔力。先日はじなかったこの覚は、間違えもしない魔獣のだ。自分の攻撃が通用しなかった事も、魔獣になることで強化されていたのだとすれば説明が付く。
『禍ツ気に侵されたか。戯けめ、仮にも生態系の頂點がこうなってしまっては、面目も丸つぶれと言うものだろう……いや、あ奴の二つ名には相応しい末路か』
醒めた聲で呟く霊。僅かな理すら失った獣に掛けるようなは無いとでも言うように、虛空へと軽く腰掛ける。
『詰まらぬ。長い生の中で忌の力に手を出すような輩は多々見てきたが、これはその中でも一等詰まらぬ結末だ。この我が直々に手を下す必要すらない、疾く去いねよ獣畜生が』
「そんなこと言って、こいつが大人しく消えると思う、か!?」
容赦なく振るわれる剛腕を、直前でバック宙することで辛うじて回避。橫やりを挾まれたおかげで霊への文句も中途半端なものになってしまった。
バック宙からの著地と同時に、足裏へと噴點を展開。一気に破させ高空へと飛び上がる。
「(いくら奴でも弱點へと幾度も発をぶつけりゃただではいられない筈……もう一度、今度は脳天に全力を叩きつける!)」
狙いを定め、下を向く――だが次の瞬間、予想だにしなかった景が視界に映った。
おかしい、自分は高空に飛び上がったはずなのに、すぐ近くに狂獣がいる。思ったよりも飛んだ距離がなかった? いいや違う、高度は完璧だ。周りの風景もおかしくない。違って見えるのは、狂獣のサイズだけ。
違う! 違う違う!! これは俺の高度が低いんじゃなくて、狂獣が接近してい――
「ガッ!!?」
ミシリ、という音が頭の中に響き渡る。右足を摑まれた、という事実に気が付いたのはその直後に激痛が走ってからの出來事だった。
枯れ木のごとく狂獣の腕によって振り回される俺の。三半規管がシェイクされて平衡覚がまともに保てない。振り回される事による遠心力が、一瞬の浮遊へと変貌した瞬間に自分が投げ飛ばされたのだという事を自覚することが出來た。
「ッまだだァ!!!」
急激に掛かったGによりブラックアウトしそうな意識を懸命につなぎ止め、自の飛ばされている方向とは逆ベクトルになるように破を引き起こす。
だが、繊細な作が出來ないこの狀況では、完璧に向きを調節することは葉わない。殺しきれなかった勢いのまま、俺のは地面へとけを取ることもままならないままに叩きつけられた。
全にじる衝撃と痛み。言葉にならない聲がきとなってれ出ていく。
「ガッ……こいつは、し不味いな……」
明らかに狂獣の反応速度が上昇している。力に関しては一度もけ止めたことが無い為分からないが、煙漂う戦場で一気に高空へと飛び上がった自分の姿を捉え切るのは至難の業のはずだ。
確かに一度使った技とはいえ、それにしても反応が早すぎる。普通であれば上空を警戒する程度で終わっていただろうに、あろうことか魔獣へと変異した狂獣は俺の事を追って見せた。それも覚ではない、恐らくは目・で。
それにこの覚、恐らく何本か骨がイカれているだろう。摑まれた右足に、叩きつけられたあばら。その他の箇所も響くような鈍痛をじる。到底満足とは言えない狀態だ。
そんな俺に追い打ちを掛けるように、狂獣が咆哮を上げながら四本の腕で襲い掛かってくる。満足に移することもできない俺は、そのまま狂獣の掌に押しつぶされて――
「――幻だよ」
狂獣の手がれた瞬間、ふわりと消え去る俺の姿。それはまるで、砂漠の海に浮かび上がる蜃気樓のように。
「蜃気樓による虛像……殘念ながら種も仕掛けもあるマジックだ。これである程度時間は稼げるか?」
俺自が負傷した瞬間、虛像を作り出しある程度距離を取ってに隠れたのは正解だったようだ。理を無くした今であれば、視界からってくる報を疑わない。そう考えての判斷が功を奏した。
だが、これは勢を立て直す猶予が與えられただけの話。俺自の傷は全くと言っていいほど癒えていない。機力を失った右足を見つめながら、一つため息をつく。
「クソ、何とかできねぇか……」
切れる手札は殘りない。それでもどうにか打開策を探ろうと、俺の頭は全力で回転を始めた。
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※書籍版2巻でます! 10/15に、gaノベル様から発売! コミカライズもマンガup で決定! 主人公アクトには、人の持つ隠された才能を見抜き、育てる才能があった。 しかしそれに気づかない無知なギルドマスターによって追放されてしまう。 數年後、アクトは自分のギルド【天與の原石】を作り、ギルドマスターの地位についていた。 彼はギルド構成員たちを次から次へと追放していく。 「鍛冶スキルなど冒険者ギルドに不要だ。出ていけ。鍛冶師ギルドの副支部長のポストを用意しておいたから、そこでせいぜい頑張るんだな」 「ありがとうございます! この御恩は忘れません!」 「(なんでこいつ感謝してるんだ?)」 【天與の原石】は、自分の秘めた才能に気づかず、理不盡に追放されてしまった弱者たちを集めたギルドだった。 アクトは彼らを育成し、弱者でなくなった彼らにふさわしい職場を用意してから、追放していたのだ。 しかしやっぱり新しい職場よりも、アクトのギルドのほうが良いといって、出て行った者たちが次から次へと戻ってこようとする。 「今更帰ってきたいだと? まだ早い。おまえ達はまだそこで頑張れる」 アクトは元ギルドメンバーたちを時に勵まし、時に彼らの新生活を邪魔するくそ上司たちに制裁を與えて行く。 弱者を救済し、さらにアフターケアも抜群のアクトのギルドは、より大きく成長していくのだった。
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