〜1000年後〜

辺境の街カデアルの領主家、ダステル家に次男である男の子が生まれた。この世に生をけた喜びをんでいるかのように、産聲をあげている。

だが、この赤子が生まれた瞬間、出産に立ち寄っていた醫師も、付き添いの助手も、赤子の親である夫婦も皆言葉を失った。

その理由は明確である。

赤子の髪が白かったのである。只の白ではない。しい白銀である。そのため、彼らは何も言うことができなかったのだ。

部屋の中には赤子の産聲だけが虛しく響き渡っている。

「どうされますか・・・」

「どうもこうもない・・・私はこの子を自分の息子としては迎えれることはできん・・・」

彼らが何故ここまで揺しているかと言うと、古くから白銀の髪は魔族の象徴とされているのだ。そのため、忌み子として扱われ周りから隔離されるのだ。

普通なら隔離をして置くだけでいいのだが、この赤子はまごうことなき貴族のを引いているのである。貴族のというのはとても重いものなのだ。

「とにかく話は後だ。ナタリアを休ませよう」

赤子を産んだ母親はとても疲弊しているのだ。まずは一旦休ませた後で話をすることにしようと言うことだ。

「あなた・・・ごめんなさい」

「いいんだナタリア。これも運が悪かったんだ。私の後継なら長男のルースがいるだろう。だから大丈夫だ」

この2人には既に四人の子供がいるのである。男子が1人と子が3人である。なので後継には問題がないのだが。

「せめてルースの遊び相手になればいいんだ。を抱かせない程度にな・・・」

「そうですね」

そんな會話をした後に、母親の方は眠りにつき、父親の方は部屋を後にした。

◇

それから5年後

ユリエルと名付けられた赤子は5歳になっていた。

順調にすくすくと育ち、元気な子になっていた。他の兄弟たちとも仲は良く、よく5人で遊んでいたのだ。

「おーいユリ！こっちだぞ！」

「待ってよ兄様！置いてかないでよ！」

長男のルースとユリエルは、小さな丘へと向かい走っていた。そんな様子を眺めながら、長のアランが笑っている。

「またユリがルースに置いていかれているわね。クスクス・・・ユリは足が遅いんだからルースが手加減しないと置いてかれちゃうのに」

「お姉様、ルースにそれを求めるのは無理でしょう」

次のフレンが口を挾む。ルースは昔から負けず嫌いなのだ。弟に手加減できるわけもない。そんなことはわかっていると言うように、アランが答えを返す。

「わかっているわよ。ルースについて行きたかったら、ユリが足を速くすることね。まあ、當分無理でしょうけど・・・そういえばクレアはどこ？」

三のクレアが先程から見當たらないのである。一緒にこの丘にきたはずなのだが・・・

「あそこでお晝寢をしています。さきほどからずっと」

「相変わらずよく寢るわね」

三のクレアは非常によく寢る子なのである。よくユリエルを抱き枕にして晝寢をしているが、今日はユリエルがルースと遊んでいるので仕方なく芝生で1人、晝寢をしているのであろう。

「しかしあの子たちはよく飽きずに走れるわね。普通すぐバテるでしょ」

「それは姉様の力がなさすぎるためだと思いますよ」

「そ、そんなことないわよ ！！」

アランは兄弟の中では1番力がないのだ。の子なので仕方ないのかもしれないが、それでも後の2人はそれなりに力はあるのである。

「コホン。もう日が沈みかけていることですし帰りましょう」

「あ、逃げた」

アランがルースとユリエルを呼びに向かい、フレンがクレアを起こしに向かう。

「2人とも！帰るわよ！！」

ルースが返事をする。まだまだ元気そうだ。

「姉様、ユリエルの足が速くなる方法ってないかな？」

「そんなもの走り続けるしかないでしょ」

「やっぱりそうか〜。じゃあこれからも走らせようか」

「ほどほどにしときなさいよ」

ユリエルが遅れてやってくる。息が上がり、を上下させながらよろよろと駆け寄ってくる。

「はあはあはあ、兄様速いよ・・・僕が全くついていけないよ」

「まあ、お前は遅いからな。俺についていけるように頑張れよ」

ルースとそんなことを話していると、フレンとクレアがやってきた。クレアはかなり眠そうだ。夕食の時に眠ってしまわないか心配になる。

「じゃあ、帰りましょう」

アランのそんな聲で、5人は家に急いだ。

◇

夕食の時間。兄弟姉妹たちは手を洗い食堂へと足を運ぶ。両親と夕食を取るためだ。皆外で遊んでいたため、腹ペコの狀態である。

「皆帰ったか。ては洗ってきたか？」

「「「「「はい！」」」」」

全員が返事をするが、父親であるバルドはユリエルには視線を合わせず、席に著く。隣にいる母親も、ユリエルとは視線を合わせない。そのままいつものように食事が始まった。

「ルース。ちゃんと野菜も食べなさい」

「アラン。君も1人の淑なんだから、もっとおしとやかに食べるんだよ」

「フレンはもうしたくさん食べれるようにならないとな」

「クレア、食事中に寢てはいけないよ」

食事中、他の兄弟姉妹には話かけているが、ユリエルは未だに直接聲をかけてもらったことはない。ユリエル自はわかっていないのだ。自分が話しかけられない理由を。

「ルース、今日はほかに何か気になったことがなかったかい？」

次のルースの言葉が、これからのユリエルの生活を一変させることになる。

「今日はユリと走っていたんですが、ユリが今日こけて腕からが出てしまったんですが、ユリの傷はすぐに治ったんです」

この一言を聞いた瞬間、バルドとナタリアは顔を見合わせ、初めて、、、ユリエルに顔を向けた。

「それは本當か？」

ユリエルは若干怯えながら、質問に答える

「は、はい。腕を怪我しましたが、すぐに、治りました」

そう答えると、バルドは考え込んだ顔をし・・・

「ユリエル、あとで私の部屋へ來なさい」

「え？は、はい」

いったいどんな風の吹き回しだろうか。これまで一切自分と話さなかった父がいきなり話しかけてきたのだ。

その後、ユリエルはしの期待としの不安を持ちながら食事を進めるのであった。

◇

夕食後。ししてからユリエルは父の書斎へと向かった。

コンコン

「れ」

返事がしたのでユリエルは父の書斎へとる。

「失禮、します。あの・・父上、いったい・・・」

「傷がすぐに治ると言っていたな」

「は、はい」

「ここでそれを見せなさい」

いきなりそんなことを言われたのだがそんなことはできない。なぜならユリエルは今怪我をしていないからだ。

「え、父上・・・僕は今怪我をしていませんが・・・」

「・・・・」

父が無言で近ずいてきた。

そして・・・

グチャッ！！

「イギっ！！！？」

いきなり手にしていた羽ペンでユリエルの腕を突き刺し、捻りを加え、を抉った。

「うがあああああああああ！！？」

ユリエルは突然の痛みに聲をあげ、ぶ。その腕からはおびただしい量のを出している。

「腕を見せろ！！」

父に怒鳴られるが、それに答えている余裕はユリエルにはなかった。

が、徐々に痛みが引いていくのがわかった。いったいなぜ・・・

「・・・本當に治っているようだな」

「父上・・・これはいったい・・・」

ユリエルはわけがわからないと言ったような顔をし、父に問うが、返ってきたのはひどく殘酷な言葉だった。

「悪魔だ」

「え？」

「お前は悪魔に取り憑かれているんだ！！」

「悪魔に・・・・？」

父は自分、、に悪魔が付いているといった。それは、自分が人と違うからだろうか、この治癒力の所為なのだろうか。わからなかった。

「付いてきなさい」

父に命令され、自分、、は父についていった。

向かった先は、地下だった。なにやら牢屋のようなものがあり、その中には拷問と思われるものが多數置いてあった。なんの間違いもなく、人を傷つけるためだけのものだ。そして・・・・

「そこにりなさい」

「え？」

「いいかられッ ！！」

父に怒鳴られ、涙目になりながら自分は牢屋の中にった。

そして、これから先は、まさに生き地獄だった。

「これからお前の中の悪魔を追い払う。お前を解放するんだ」

自分は察した。解放と言う名の慘殺が始まるんだと・・・・